ウイルス検出をもっと簡単、迅速に。グローバルサーベイランス適用を目指して
[08/07/29]
提供元:PRTIMES
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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
鳥取大学農学部獣医学科
ヒトや鳥・獣のウイルスを電気的な信号変化をとらえて
即座に、高感度に検知するまったく新しい測定原理のバイオセンサ
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、鳥取大学助教の尾崎弘一氏はヒトや鳥・獣のウイルスを即座に、高感度に検知する全く新しい測定原理のバイオセンサを開発しました。
今後、新型インフルエンザの出現が確実視され、ヒトと動物に感染するウイルスのグローバルな監視が喫緊の課題となっている中、ナノテク分野とウイルス学分野という異分野の研究者が共同開発したカーボンナノチューブ(CNT)利用のバイオセンサは、ウイルスの高感度検知という課題へ高次元に応え、感染したウイルスのスピーディかつ高感度な検出を実現するものとして注目されています。
本バイオセンサで、インフルエンザウイルス等の病原体を即座に検知し、予防医療や養鶏産業等のウイルス対策に大きく貢献するとともに、様々な特異的抗体を固定したチップを用意することで、ウイルスだけでなく広範な抗原を検出することができる小型・低コストのセンサとしても活用が期待されます。
1.研究成果概要
本研究で開発したセンサチップは、CNT(カーボンナノチューブ)を2つの電極間に渡したCNT-FET(注1)素子を用いています。特定のウイルスのタンパク質に特異的に結合する抗体をチップ裏面のディテクター部に固定し、抗原(ウイルス)を含む液を滴下すると抗体が抗原と結合し、そのときCNTを流れる電流に変化が起きます。その電気的な変化を拾うことで、ウイルスの型を高感度かつ迅速に検出します。
インフルエンザのような人獣共通感染症の制圧には、ワクチンや抗ウイルス薬の開発、医療機関の整備に加え、野生生物や家畜・ニワトリ等の家禽やヒトに対して寄生する病原体の全世界規模の監視体制(グローバルサーベイランス)が不可欠です。本研究で開発したセンサシステムは、迅速・高感度にウイルスの検出を行うことができ、量産の道が開ければセンサ本体を携帯電話サイズまで小型化し安価に提供できるため、高いレベルのグローバルサーベイランスを実現することができます。
(注1)FET:電界効果トランジスタ(Field effect transistor)
2.競合技術への強み
1)高感度・高速:従来の検出方法では感度に問題があったため、ウイルス感染初期の摘発が困難でした。本研究で開発したセンサにより、すばやく高感度な摘発・診断が可能になります。
2)小型化:携帯電話サイズまで小型化できます。
3)低コスト:デバイスが安価で構造が複雑でないため、大量生産すれば安価に供給することができます。
4)結果は自動的に集積・共有可能:検出結果は電気信号として取り出されるため、人の手を介さずにデータが集積され、ネットワークと組合わせることで広範囲での情報収集と共有が可能になります。
従来から行われてきたウイルス分離法は、家畜が感染したという報告を受けると、獣医がサンプルを採取し、ウイルスを分離・増殖して型を同定していました。時間も手間もかかるこの方法を簡便化するイムノクロマト法(特異的な抗体が固定されている濾紙にウイルス液を滴下すると濾紙に染みこみ、反応が起こると発色する)は感度に問題があり、また人の眼で確認して結果を入力するので結果の記録・集積に手間がかかりましたが、本技術はこれら検査時間、コスト、結果共有の即時性等の課題を全て解決するものです。
3.今後の展望
北海道大学内の設備ではチップをたくさん作ることが難しいので、現時点では実験データが十分とはいえません。今後、共同研究先企業の協力を得てチップを大量生産し、実験を重ねて実用化を達成するシステム構築を進めていきます。これまでは病原性のない安全な抗原を実験に使用してきましたが、今後は安全性を確立した上で、実際の動物から採取した体液をサンプルに用いて応用試験を展開する予定です。また、このシステムにおけるCNTが示す現象の原理はよく分かっていません。この物理的、電気的な原理を解明するための研究も進めていきます。
今後、CNTセンサ検出部の集積化と装置の小型化について、またあらゆる分野での微量検出を可能とするための検出システムのデザインの研究を進めていく予定です。
鳥取大学農学部獣医学科
ヒトや鳥・獣のウイルスを電気的な信号変化をとらえて
即座に、高感度に検知するまったく新しい測定原理のバイオセンサ
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、鳥取大学助教の尾崎弘一氏はヒトや鳥・獣のウイルスを即座に、高感度に検知する全く新しい測定原理のバイオセンサを開発しました。
今後、新型インフルエンザの出現が確実視され、ヒトと動物に感染するウイルスのグローバルな監視が喫緊の課題となっている中、ナノテク分野とウイルス学分野という異分野の研究者が共同開発したカーボンナノチューブ(CNT)利用のバイオセンサは、ウイルスの高感度検知という課題へ高次元に応え、感染したウイルスのスピーディかつ高感度な検出を実現するものとして注目されています。
本バイオセンサで、インフルエンザウイルス等の病原体を即座に検知し、予防医療や養鶏産業等のウイルス対策に大きく貢献するとともに、様々な特異的抗体を固定したチップを用意することで、ウイルスだけでなく広範な抗原を検出することができる小型・低コストのセンサとしても活用が期待されます。
1.研究成果概要
本研究で開発したセンサチップは、CNT(カーボンナノチューブ)を2つの電極間に渡したCNT-FET(注1)素子を用いています。特定のウイルスのタンパク質に特異的に結合する抗体をチップ裏面のディテクター部に固定し、抗原(ウイルス)を含む液を滴下すると抗体が抗原と結合し、そのときCNTを流れる電流に変化が起きます。その電気的な変化を拾うことで、ウイルスの型を高感度かつ迅速に検出します。
インフルエンザのような人獣共通感染症の制圧には、ワクチンや抗ウイルス薬の開発、医療機関の整備に加え、野生生物や家畜・ニワトリ等の家禽やヒトに対して寄生する病原体の全世界規模の監視体制(グローバルサーベイランス)が不可欠です。本研究で開発したセンサシステムは、迅速・高感度にウイルスの検出を行うことができ、量産の道が開ければセンサ本体を携帯電話サイズまで小型化し安価に提供できるため、高いレベルのグローバルサーベイランスを実現することができます。
(注1)FET:電界効果トランジスタ(Field effect transistor)
2.競合技術への強み
1)高感度・高速:従来の検出方法では感度に問題があったため、ウイルス感染初期の摘発が困難でした。本研究で開発したセンサにより、すばやく高感度な摘発・診断が可能になります。
2)小型化:携帯電話サイズまで小型化できます。
3)低コスト:デバイスが安価で構造が複雑でないため、大量生産すれば安価に供給することができます。
4)結果は自動的に集積・共有可能:検出結果は電気信号として取り出されるため、人の手を介さずにデータが集積され、ネットワークと組合わせることで広範囲での情報収集と共有が可能になります。
従来から行われてきたウイルス分離法は、家畜が感染したという報告を受けると、獣医がサンプルを採取し、ウイルスを分離・増殖して型を同定していました。時間も手間もかかるこの方法を簡便化するイムノクロマト法(特異的な抗体が固定されている濾紙にウイルス液を滴下すると濾紙に染みこみ、反応が起こると発色する)は感度に問題があり、また人の眼で確認して結果を入力するので結果の記録・集積に手間がかかりましたが、本技術はこれら検査時間、コスト、結果共有の即時性等の課題を全て解決するものです。
3.今後の展望
北海道大学内の設備ではチップをたくさん作ることが難しいので、現時点では実験データが十分とはいえません。今後、共同研究先企業の協力を得てチップを大量生産し、実験を重ねて実用化を達成するシステム構築を進めていきます。これまでは病原性のない安全な抗原を実験に使用してきましたが、今後は安全性を確立した上で、実際の動物から採取した体液をサンプルに用いて応用試験を展開する予定です。また、このシステムにおけるCNTが示す現象の原理はよく分かっていません。この物理的、電気的な原理を解明するための研究も進めていきます。
今後、CNTセンサ検出部の集積化と装置の小型化について、またあらゆる分野での微量検出を可能とするための検出システムのデザインの研究を進めていく予定です。