第65回世界保健機関(WHO)年次総会:拘束力のある研究開発の協定締結を
[12/05/21]
提供元:PRTIMES
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プレスリリース
2012年5月21日
各国の保健担当相が集う第65回WHO年次総会(5月21日より開催)にて、満たされていない医療ニーズに対応することを目指した研究開発に関して、拘束力のある協定締結に向けたプロセスを開始するか否かが決定される。今回の総会で決議されれば、各国は研究開発の協定実現に向けた第一歩を踏み出すことになり、国境なき医師団(MSF)は、この協定案の推進を各国保健相に呼びかけている。
MSFの必須医薬品キャンペーン政策責任者、ミシェル・チャイルズは次のように話す。
「医療の革新は現在、開発途上国の人びとのニーズに対応していません。各国政府には、この状況を変える力と責任があります。研究開発に関する協定について、わかりやすく説得力のある事例はすでに存在します。WHO加盟国は二の足を踏んでいる場合ではありません」
今日の医療に関する研究開発のシステムでは、保健医療上の重要性ではなく、商業的利益が圧倒的に優先される。研究の焦点は最も収益があがる分野に置かれ、途上国の人びとが苦しむ結核や熱帯病などの重大な医療問題は、取り組みがなされないままである。
MSFの医療チームは、この不備がもたらす影響を活動地で目の当たりにしており、適切な医療手段が存在しない地域で患者に質の高い医療を提供する困難に直面している。薬や診断ツール、ワクチンがあっても、それらは、整備された環境での使用を前提としており、多くの場合、MSFの活動地には適していない。充足されていない医療ニーズとして、より効果的な薬剤耐性結核の治療薬、小児エイズの治療薬、シャーガス病の治療効果の測定法、薬剤耐性を持つ致死性感染症治療のための新しい抗生物質、低温流通体系(コールドチェーン)や注射を使わず接種できるワクチンが挙げられる。
MSFの必須医薬品キャンペーンのディレクター、ティド・ フォン・シェーン・アンゲラー医師はこう語る。「現地で活動するMSFのチームは、どこに医療ニーズがあるかを把握しています。しかし、それを把握するだけでは、問題解決にならないのです。優先すべき研究に資金を集め、医療研究に注がれる資金を医療ニーズの方向へと導き、イノベーションの結実を安価で入手可能なものにする必要があります。研究開発協定が実現すれば、これに変革をもたらすことができるのです」
WHOが医療革新を模索する目的で立ち上げた専門家グループ「研究開発とその資金調達および調整のための諮問専門家作業部会(CEWG: Consultative Expert Working Group on Research and Development: Financing and Coordination)」が、2012年4月に報告書を発表した。その報告書によると、「世界的な共通課題である開発途上国に圧倒的に被害をもたらす病気に対応するには、研究開発を促進するための十分な資金と協力を確実に出来る拘束力のある協定が必要である」と結論付けている。
協定という形での取り組みには、臨床結果に基づいた優先事項の決定プロセスが構築でき、批准国は、その優先事項への取り組みを義務づけられることになるという重大な利点がある。その協定のもとで資金援助を受けた研究は、価格と流通に関する協定を取り決め、開発業者が製品の権利に関して柔軟な取り決めを適用し、開かれた技術革新の支援を行うなどによって、手の届く価格で製品を流通させることが可能になる。
過去10年間で、製品開発に関する協力は、技術革新における隔たりを埋め、資金拠出機関からの資金援助につながってきたが、段階的なものにとどまっている。
WHOの提唱で交渉と批准が行われた国際的に拘束力のある協定の前例として、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約( WHO Framework Convention on Tobacco Control)」がある。