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骨密度から骨質へ-新たな骨質診断の提案 骨質評価X線回折装置「R-AXIS BQ」を発売

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
大阪大学大学院工学研究科
株式会社リガク


骨の強度は従来からの指標である骨密度に加えて、生体アパタイトの配向性といった
骨質パラメータによって支配されることが分かってきた。
「R-AXIS BQ」は生体アパタイトの配向性を手掛かりにすることで
より正確に“骨の強さ”を導き出すことを可能とした世界初の骨質評価X線回折装置です。
※BQ=Bone Quality(骨質) ※配向性=結晶の並び方や向き



【新規発表事項】 
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、大阪大学大学院工学研究科の中野貴由教授は、分析機器メーカの株式会社リガク(東京都昭島市)と共同で、骨質と骨密度を同時に測定するX線回折装置を開発しました。本装置の開発は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の平成15年度産業技術研究助成事業「アパタイト・ナノ結晶配向を利用した新たな臨床用硬組織評価・診断法の開発」(平成15年10月〜平成20年9月)において行われたもので2008年7月25日からリガクが販売を開始しました。
本装置は、骨のサンプルを専用ステージにセットするだけで、X線回折ののち、専用のソフトウェアで骨質ならびに骨密度を全自動で測定できます。測定に要する時間は5分以内。価格は最大定格出力3kWの機種が2,500万円、5.4kWの機種が3,300万円(いずれも税別)で、医療機関や製薬会社等への販売が見込まれています。


1.開発背景と技術の概要
本格的な高齢化社会を迎え、変形性関節症や骨粗鬆症などの人体の硬組織(骨、歯)疾患の深刻化が叫ばれて久しい。前者(変形性関節症)の日本国内における患者数は推定500万人(予備軍を含めると3,000万人)で、治療法のひとつである人工インプラント置換術数は年間約4万件が報告されています。また、後者の推定患者数は1,000万人にのぼり、50代女性の実に4人に1人が骨粗鬆症ともいわれていました。一方、再生医工学技術の急進展により、これまで再生不可能とされていた骨の再生も可能となってきました。
しかしながら、骨の再生組織が本来の組織・特性を回復しているか否かの確認(表面的には治ったように見えても、強度が十分であるかを見極めること)は困難で、臨床応用が緊急の課題となっています。以上のような現状に対応するためには、レントゲン、CTを使った診断手法は限界を迎えつつあります。
 近年、骨の強度を診断する上で新たな指標として注目を集めているのが骨質です。従来の指標である骨密度(Bone Density)は、生体アパタイトの密度(存在量)を測定するものだったのに対し、骨質(Bone Quality)は、骨強度を表わす骨密度以外の支配因子です。今回の研究・装置開発では、骨質の中でも生体アパタイトの配向性に着目。元来、骨はコラーゲン線維と生体アパタイトナノ粒子が結合した、高度に制御された微細構造を持っています。生体アパタイトナノ粒子は一定の方向に規則正しく並ぶことで強度を保っているため、この配向性を解析することで骨強度と強い相関を示す骨質パラメータを算出することができます。
配向性を解析するためにはX線回折法が威力を発揮しますが、骨解析に特化し、しかも骨試料作製のためのハンドリングを最小限に抑えた装置はこれまで存在しませんでした。


2.本装置の特徴
1)透過型光学系とイメージングプレートの組み合わせ
 従来の配向性測定は、主に測定面を露出しなければならない反射法で、そのためには骨試料の加工が必要でした。本装置は試料のX線透過能の高いMoK?特性X線を用いて、二次元検出器湾曲イメージングプレートの特徴を生かし、測定面を露出する必要がない透過法を用いることで非破壊による骨質のマッピング測定を可能にしました。

2)骨密度も同時解析可能(吸収係数解析)
 X線吸収を単一波長である特性X線を用いることで高分解能で測定可能であり、骨密度(面積骨密度)も同時に解析できます。

3)幅広いサイズの骨に対応可能な骨質解析専用ステージ
 ラット、マウス等の小型動物骨や骨生検した骨切片等に幅広く適用可能。専用の骨質測定ステージと解析ソフトウェアにより、骨質解析を簡単に行うことができます。

4)サンプルをマウントするだけの全自動測定
 解析対象の大部分を占める長管骨や扁平骨ではサンプルをマウントするだけで、2種類の自動センタリング法による試料位置の決定からX線吸収プロファイル、骨質配向性の測定、解析データの表示までを全自動で行なうことができます。測定手順は、1.サンプルの長さを入力→2.サンプルマウント→3.測定条件入力→4.測定開始の4ステップで解析結果を得られます。       
      
                                    
3.今後の展望
骨強度の正確な診断を可能とする本装置は、以下の項目への応用が期待されます。
◆遺伝子組換え動物の骨質解析・骨質変化機構の解明
◆再生骨の骨質解析、骨再生度合い、骨再生機構の解明
◆骨疾患の程度や発生メカニズムの解明
◆骨疾患の創薬支援
◆骨粗鬆症などの病疾患への薬剤投与効果の検証
◆インプラント周囲骨の骨質解析から新規インプラントの最適設計へ
本装置は、骨解析に特化した世界初の実用化装置であり、NEDO技術開発機構の支援のもと、大阪大学の産学連携・医工連携によって開発されました。現時点でできる限りの全自動化を推し進めたことで、X線回折の初心者でも、骨の質的解析、様々なパラメータの算出を可能としています。
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