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サッポロビールとポッカサッポロが2015年度農芸化学技術賞を同時受賞〜同賞初、グループ内で同時受賞を達成〜

サッポロホールディングス(株)のグループ企業であるサッポロビール(株)とポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)は、このたび公益社団法人日本農芸化学会より、2015年度農芸化学技術賞を同時受賞しました。

 同賞は「農芸化学分野において注目すべき技術的業績をあげた正会員に授与」(同学会ホームページhttp://www.jsbba.or.jp/)されるもので、極めて権威ある賞です。同一企業グループ内での同時受賞は、同賞初の快挙となりました。
 当グループは今後も研究開発力を磨き、連携しながら魅力ある商品開発をしてまいります。
 なお、2015年3月26日(木)にホテルグランヴィア岡山を会場として、授賞式並びに受賞者講演が開催されます。

                        記

1.賞題
 2015年度日本農芸化学会農芸化学技術賞

2.受賞論文表題
 『ビール泡品質向上への一貫した取組み』(サッポロビール株式会社)
 『交流高電界殺菌法を利用した果汁製品の製造』(ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社)

3.受賞業績概要
 『ビール泡品質向上への一貫した取組み』(サッポロビール株式会社)
 今回の受賞は、「泡持ちに優れた大麦の開発」、「醸造工程での取組み」、「生ビールサーバー、カラン(注1)開発」の3点が、製造から販売まで一気通貫した泡品質向上への取り組みとして評価されました。


「泡持ちに優れた大麦の開発」

 当社はビール製造の要である大麦について、泡持ちプラス成分である蛋白質、マイナス成分である脂質に関する研究を行ってきました。蛋白質については泡を長く保つ要因である、泡表面の粘度を上昇させる成分を多く含む大麦を選抜する技術を開発しました。

 脂質については大麦由来の脂質の酸化により泡持ちや香味耐久性の低下が起こることがわかっており、その改善を目的として岡山大学と共同で在来大麦遺伝資源から脂質酸化を触媒する酵素リポキシゲナーゼ-1(以下LOX-1と表記)のないLOXレス変異を探索しました。開発では大麦の栽培性や品質面で多くの課題に直面しましたが幾多の改良を経て、2001年カナダのサスカチュワン大学と共同でLOXレスの性質をもつビール大麦の開発を開始するに至りました。その後北米、豪州さらに日本において同大麦の品種登録出願を行い、北米での栽培は商業ベースにまで拡大しております。さらに世界主要産地への普及を目指し、現在、欧州でも同様のプログラムを進めています。

 LOXレス麦芽は、ビールの鮮度を飛躍的に長持ちさせ、ビールの泡持ちを向上させる「旨さ長持ち麦芽」として「サッポロ生ビール黒ラベル」に使用されています。

「醸造工程での取り組み」

 醸造工程では、泡持ちにプラスとなる蛋白質をのちの工程まで維持しつつ、かつ他の品質に影響を及ぼさない最適な仕込条件を見出し、工場での実製造へ展開しました。さらにこの蛋白質は熱による凝固も起こるため、煮沸工程ではカロリー制御を導入し、熱エネルギーの適正化を行いました。また、酵母由来の蛋白質分解酵素(略称PrA)は製品ビールの保存中に泡持ちを低下させると言われており、その管理を発酵および貯酒工程で徹底し製品中のPrA低減にも取組んでいます。
 これら醸造工程での取組みは社内横断組織である「泡プロジェクト」として全工場へ展開、定着化に努めました。

「生ビールサーバー、カラン開発」

 2002年より、サーバーの冷却回路を定期的に交換し自社の整備施設で徹底的に分解洗浄する独自の生ビール品質管理システム「サッポロセパレシステム」を導入しています。また、グラス壁面方向へ泡付けするカランを新たに開発することにより、泡付け時の泡の落下によるビール液面の“もまれ”がなくなり、ガスの揮散を防ぎ、粒径の細かい泡をより長く維持させることが可能となりました。
 これらの技術と併せて、グラスの形状や洗浄状況、注出時の液温管理などにも配慮し、2014年からサッポロ生ビール黒ラベルを中心とした「パーフェクト樽生協力店制度」の活動を開始し、現在約400店の全国の飲食店様にて展開いただいています。

(注1) ビールの注出口


『交流高電界殺菌法を利用した果汁製品の製造』(ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社)

 交流高電界殺菌法は、食品中を電気が流れることで食品自体が発熱することに加えて電気的な殺菌作用が生じ、これらの相乗効果により、食品中の微生物を迅速かつ効率的に殺菌できる技術です。
 従来の加熱殺菌よりも食品が熱にさらされる時間が短くなるため、よりよい品質で加工食品を製造することができます。
 ポッカサッポロでは、2014年2月より「ポッカレモン100」を中心とした果汁製品を製造するラインに、業界で初めて交流高電界殺菌法を導入し、より品質にこだわった果汁製品の製造販売を行っています。

本技術の詳細につきましては、下記URLをご参照ください。
 『新しい殺菌法(交流高電界殺菌法)を利用した果汁製品の製造が始まります』
 http://www.pokkasapporo-fb.jp/company/news/release/131203_01.html
 ポッカサッポロ社リリース
 http://www.pokkasapporo-fb.jp/company/news/release/150129_01.html


参考情報
LOXレス大麦について

1.「LOX-1」とは
 「LOX-1」は脂質酸化酵素のひとつであり、ビール大麦中に含まれる。
 ビールの製造工程中に脂質を酸化し、ビールの泡持ち悪化や老化臭の原因となる物質を生成する。

2.「LOXレス大麦」の品種改良とは

 「LOX-1」を持たない系統にビール原料用大麦を何代も重ねて交配させることで、ビール原料としての資質を持ち、且つ「LOX-1」を持たない品種を作り出す。
 当社では、数千系統もある大麦種の中から「LOX-1」を持たない系統のビール大麦を効率良く選抜するための遺伝子分析方法「DNAマーカー」(特許出願済)を独自で開発した。

3. 品種登録とは

 農産物の品種登録は、通常各国の農林水産省に当たる国家機関に申請し認可を受けなければならない。申請には、その風土に合った品種であることを証明するため、安全性、耐病性、採算性(収穫量)栽培性など、数年にわたる現地での試験栽培が必要となる。

4.「LOXレス大麦」の品種登録状況

 2008年に北米初のLOXレス品種「CDC PolarStar」として品種登録出願。その後本品種の普及を進め、現在では17千ヘクタール(2013年度)もの大規模な栽培実績に到達。また豪州でもアデレード大学と共同で豪州初のLOXレス品種「SouthernStar」を2013年に商業生産を開始。日本では2013年12月には国内初となるLOXレス品種「札育2号」を出願。

5.「LOXレス大麦」の優位性

 ビールの泡持ちや香味耐久性の維持・向上を目指して開発されたビール大麦。当社では北米、豪州、日本、そしてヨーロッパというビール大麦主要産地への普及を目指している。

6.協働契約栽培について

 厳選された良質な麦やホップを安定的に調達するため、産地、品種、生産者を選定して契約を行い、フィールドマンと呼ばれるサッポロビールの社員(麦やホップの専門家、原料技術者)が現地に直接赴き、栽培から加工までの管理に関わりながら生産者や製麦業者、ホップ加工業者と協働で畑からつくりこんでいくシステム。使用原料の生産地、生産者、栽培方法などを明らかにすることで「生産者の顔が見える原料」を使用した信頼できる商品を製造し、安心して購入いただける商品を提供している。

以上
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