有識者研究会の政策提言をGHCがデータ分析で協力
[20/09/29]
提供元:PRTIMES
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新型コロナで「医療資源配分に課題」「専門医不在」病院が半数
「医療崩壊の阻止と経済の両立」を掲げる有識者ら有志で構成される「コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会」(コロナ医療体制研究会 ※1=座長:小宮山宏・三菱総研理事長兼プラチナ構想ネットワーク会長)の活動において、病院経営のコンサルティングなどを行う株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC ※2=本社:東京都新宿区、代表取締役社長:渡辺幸子)はこのほど、データ分析の側面で支援を行いました。コロナ医療体制研究会は9月25日、「医療提供体制崩壊の防止と経済社会活動への影響最小化のための6つの提言」とした政策提言を発表。この中に、新型コロナの重症患者がICU(集中治療室)以外の病床で治療を受けたり、軽症患者が重症患者向け病床に入院していたりする状況や、重症患者に対応できる専門医が不在だったりする病院が全体の半数であるなどとするGHCのデータ分析結果が盛り込まれました。
医療崩壊防止へ6つの提言
コロナ医療体制研究会は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大を防止し、犠牲者を最大限抑えながら、経済社会活動への悪影響を極力最小化して行くための政策提言を行うことが目的です。医療・看護の現場の専門家、経済学者、知事、医療コンサルタント、政策経験者らが結集し、客観的かつ豊富なデータ分析をもとに、多角的な視点から精力的な議論を重ねてきました。GHCは医療コンサルタントという立場から、客観的かつ豊富なデータ分析の提供を行っています。
今回、コロナ医療体制研究会が提言したのは以下の6つです(詳細・記者会見の様子は「https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35715/report」)。
医療機関の集約化・役割分担・連携を大胆に推進
診療所等の力を活かし、病院・保健所の負担を軽減し、検査を迅速化
メリハリのある財政支援によりコロナに対応する医療提供体制を強化
高リスク者を重点的に防御
検査体制を増強し、迅速な検査実施を実現
リスクを踏まえた合理的な行動抑制を進め、偏見・社会的非難を解消
ここでは当社が特にキーとなるデータ分析結果を提供した「1.」の「医療機関の集約化・役割分担・連携を大胆に推進」についてご紹介します。
入院患者の7割は軽症
GHCはこのたび、コロナ医療体制研究会の協力要請を受けて、新型コロナ感染者の診療データを分析。分析対象は重篤な患者に対応する「急性期」の機能を備えた「DPC対象病院 ※3」で、GHCがデータを保有する対象567病院のうち、データの連続性を加味した341病院の計5801症例のデータを分析しました(分析対象期間は2020年2〜6月)。
データ分析の結果、入院患者の65.5%が呼吸管理の治療が必要ない軽症でした(図表1)。
[画像1: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-833298-0.jpg ]
新型コロナ患者への医療機関の対応は、軽症、中等症、重症で異なります。今春の感染拡大当初は、すべての感染者を入院させる対応をしていましたが、感染拡大の中盤以降、軽症はホテルや自宅で隔離する対応が一般的になりつつあります。そのため、軽症患者の入院は徐々に減少するはずですが、入院に占める軽症患者の割合の推移を見てみると、5月7割、6月8割、7月9割とむしろ増えています。必ずしも入院が必要ではない患者が多数を占めていたという結果です(図表2=このデータのみ追跡可能な直近までのデータを確認するため分析期間は2020年2〜7月。対象数は372病院6641症例で、データの連続性は考慮していない)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-130163-1.jpg ]
ICUの平均稼働率は5〜6割
重症患者の対応はどうでしょうか。重症はICU・HCU(高度治療室)・救命救急室(ER)など「ユニット」と呼ばれる重症患者を治療するための専門病床で、集中治療専門医が人工心肺装置(ECMO)などの医療機器を用いて治療に当たることが多いです。
データ分析の結果、新型コロナ患者を受け入れる病院が所有するICUの平均稼働率は、感染拡大の今年2月では7割弱、4〜5月で5〜6割という状況でした(図表3)。データからはICU病床数自体が逼迫していたとは読み取れません。稼働率の低さは、感染防止のため予定手術を延期したり、ICUでコロナ感染者と一般患者を一緒に受け入れることができないという構造的な問題が影響したりしていたことなどが考えられます。
[画像3: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-241192-3.jpg ]
重症患者を「一般病床」で治療24%
その一方で、軽症、中等症、重症それぞれの受け入れ病床を機能別に見ると、分析対象の341病院のICU病床数が必ずしも逼迫していないという状況の中で、集中治療が必要な重症患者のうち「一般病床」で治療を受けた症例が全体の24%ありました(図表4)。逆に軽症者の17%がユニットに入院しており、これに感染症病床を含めると軽症者の55%が重症あるいは中等症の専門病床に入院しているという状況でした。
[画像4: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-962263-4.jpg ]
重症患者の治療は、病床などハード面のほか、ソフト面である専門の治療ができる集中治療専門医の確保も欠かせません。データ分析の結果、コロナ受入れ病院で集中治療専門医が在籍する病院は48%。集中治療専門医が治療に使うECMOを保有する病院は73%でした(図表5)。
[画像5: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-629937-2.jpg ]
コロナ医療体制研究会はこうした状況を踏まえて、ICUやECOMなどのハード面の不足以上に専門医の不足を指摘。その上で日本は病院数が多く、医師が各病院に分散してしまっており、重症患者の対応が十分でないケースが少なくないとしています。そのため、「医療機関の集約化・役割分担・連携を大胆に推進」と政策提言しているわけです。
GHCは引き続きコロナ医療体制研究会をデータ分析の側面でご支援し、日本の持続可能な医療提供体制に必要な政策提言を支えていきます。また、新型コロナはもちろん、それ以外にも日本の医療政策にかかわる重要なデータ分析結果について、随時、情報公開してまいります。
(※1)コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会
(1)医療提供体制の崩壊防止、(2)新型コロナのリスクの正確な理解の普及と感染防護の重点化、(3)リスクを踏まえた合理的な行動抑制の設計と感染防護策の改善――が必要との観点から、各界の有識者らで構成されている。メンバーは以下の通り(五十音順)。▼井伊雅子(一橋大学 国際・公共政策大学院 教授)▼大橋博樹(多摩ファミリークリニック 院長)▼草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会 理事長)▼小林慶一郎(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/東京財団政策研究所 研究主幹)▼座長・小宮山宏(三菱総合研究所 理事長/プラチナ構想ネットワーク 会長)▼佐藤主光(一橋大学大学院経済研究科 教授)▼鈴木富雄(大阪医科大学地域総合医療科学寄附講座 特任教授)▼寺澤達也(東京理科大学 上席特任教授)▼土居丈朗(慶應義塾大学経済学部 教授)▼南郷栄秀(地域医療推進機構 東京城東病院 総合診療科科長)▼森山美知子(広島大学大学院医系科学研究科 成人看護開発学 教授)▼湯崎英彦(広島県知事)▼渡辺幸子(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン 代表取締役社長)
(※2)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、ヘルスケア企業出身者、IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、「質の高い医療を最適なコストで」という理念を実践する具体的な手法として、米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、広めたパイオニアです。URL:https://www.ghc-j.com/
(※3)DPC対象病院
包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。対象病院は1757病院(2020年4月時点)。
「医療崩壊の阻止と経済の両立」を掲げる有識者ら有志で構成される「コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会」(コロナ医療体制研究会 ※1=座長:小宮山宏・三菱総研理事長兼プラチナ構想ネットワーク会長)の活動において、病院経営のコンサルティングなどを行う株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC ※2=本社:東京都新宿区、代表取締役社長:渡辺幸子)はこのほど、データ分析の側面で支援を行いました。コロナ医療体制研究会は9月25日、「医療提供体制崩壊の防止と経済社会活動への影響最小化のための6つの提言」とした政策提言を発表。この中に、新型コロナの重症患者がICU(集中治療室)以外の病床で治療を受けたり、軽症患者が重症患者向け病床に入院していたりする状況や、重症患者に対応できる専門医が不在だったりする病院が全体の半数であるなどとするGHCのデータ分析結果が盛り込まれました。
医療崩壊防止へ6つの提言
コロナ医療体制研究会は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大を防止し、犠牲者を最大限抑えながら、経済社会活動への悪影響を極力最小化して行くための政策提言を行うことが目的です。医療・看護の現場の専門家、経済学者、知事、医療コンサルタント、政策経験者らが結集し、客観的かつ豊富なデータ分析をもとに、多角的な視点から精力的な議論を重ねてきました。GHCは医療コンサルタントという立場から、客観的かつ豊富なデータ分析の提供を行っています。
今回、コロナ医療体制研究会が提言したのは以下の6つです(詳細・記者会見の様子は「https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35715/report」)。
医療機関の集約化・役割分担・連携を大胆に推進
診療所等の力を活かし、病院・保健所の負担を軽減し、検査を迅速化
メリハリのある財政支援によりコロナに対応する医療提供体制を強化
高リスク者を重点的に防御
検査体制を増強し、迅速な検査実施を実現
リスクを踏まえた合理的な行動抑制を進め、偏見・社会的非難を解消
ここでは当社が特にキーとなるデータ分析結果を提供した「1.」の「医療機関の集約化・役割分担・連携を大胆に推進」についてご紹介します。
入院患者の7割は軽症
GHCはこのたび、コロナ医療体制研究会の協力要請を受けて、新型コロナ感染者の診療データを分析。分析対象は重篤な患者に対応する「急性期」の機能を備えた「DPC対象病院 ※3」で、GHCがデータを保有する対象567病院のうち、データの連続性を加味した341病院の計5801症例のデータを分析しました(分析対象期間は2020年2〜6月)。
データ分析の結果、入院患者の65.5%が呼吸管理の治療が必要ない軽症でした(図表1)。
[画像1: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-833298-0.jpg ]
新型コロナ患者への医療機関の対応は、軽症、中等症、重症で異なります。今春の感染拡大当初は、すべての感染者を入院させる対応をしていましたが、感染拡大の中盤以降、軽症はホテルや自宅で隔離する対応が一般的になりつつあります。そのため、軽症患者の入院は徐々に減少するはずですが、入院に占める軽症患者の割合の推移を見てみると、5月7割、6月8割、7月9割とむしろ増えています。必ずしも入院が必要ではない患者が多数を占めていたという結果です(図表2=このデータのみ追跡可能な直近までのデータを確認するため分析期間は2020年2〜7月。対象数は372病院6641症例で、データの連続性は考慮していない)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-130163-1.jpg ]
ICUの平均稼働率は5〜6割
重症患者の対応はどうでしょうか。重症はICU・HCU(高度治療室)・救命救急室(ER)など「ユニット」と呼ばれる重症患者を治療するための専門病床で、集中治療専門医が人工心肺装置(ECMO)などの医療機器を用いて治療に当たることが多いです。
データ分析の結果、新型コロナ患者を受け入れる病院が所有するICUの平均稼働率は、感染拡大の今年2月では7割弱、4〜5月で5〜6割という状況でした(図表3)。データからはICU病床数自体が逼迫していたとは読み取れません。稼働率の低さは、感染防止のため予定手術を延期したり、ICUでコロナ感染者と一般患者を一緒に受け入れることができないという構造的な問題が影響したりしていたことなどが考えられます。
[画像3: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-241192-3.jpg ]
重症患者を「一般病床」で治療24%
その一方で、軽症、中等症、重症それぞれの受け入れ病床を機能別に見ると、分析対象の341病院のICU病床数が必ずしも逼迫していないという状況の中で、集中治療が必要な重症患者のうち「一般病床」で治療を受けた症例が全体の24%ありました(図表4)。逆に軽症者の17%がユニットに入院しており、これに感染症病床を含めると軽症者の55%が重症あるいは中等症の専門病床に入院しているという状況でした。
[画像4: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-962263-4.jpg ]
重症患者の治療は、病床などハード面のほか、ソフト面である専門の治療ができる集中治療専門医の確保も欠かせません。データ分析の結果、コロナ受入れ病院で集中治療専門医が在籍する病院は48%。集中治療専門医が治療に使うECMOを保有する病院は73%でした(図表5)。
[画像5: https://prtimes.jp/i/46782/14/resize/d46782-14-629937-2.jpg ]
コロナ医療体制研究会はこうした状況を踏まえて、ICUやECOMなどのハード面の不足以上に専門医の不足を指摘。その上で日本は病院数が多く、医師が各病院に分散してしまっており、重症患者の対応が十分でないケースが少なくないとしています。そのため、「医療機関の集約化・役割分担・連携を大胆に推進」と政策提言しているわけです。
GHCは引き続きコロナ医療体制研究会をデータ分析の側面でご支援し、日本の持続可能な医療提供体制に必要な政策提言を支えていきます。また、新型コロナはもちろん、それ以外にも日本の医療政策にかかわる重要なデータ分析結果について、随時、情報公開してまいります。
(※1)コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会
(1)医療提供体制の崩壊防止、(2)新型コロナのリスクの正確な理解の普及と感染防護の重点化、(3)リスクを踏まえた合理的な行動抑制の設計と感染防護策の改善――が必要との観点から、各界の有識者らで構成されている。メンバーは以下の通り(五十音順)。▼井伊雅子(一橋大学 国際・公共政策大学院 教授)▼大橋博樹(多摩ファミリークリニック 院長)▼草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会 理事長)▼小林慶一郎(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/東京財団政策研究所 研究主幹)▼座長・小宮山宏(三菱総合研究所 理事長/プラチナ構想ネットワーク 会長)▼佐藤主光(一橋大学大学院経済研究科 教授)▼鈴木富雄(大阪医科大学地域総合医療科学寄附講座 特任教授)▼寺澤達也(東京理科大学 上席特任教授)▼土居丈朗(慶應義塾大学経済学部 教授)▼南郷栄秀(地域医療推進機構 東京城東病院 総合診療科科長)▼森山美知子(広島大学大学院医系科学研究科 成人看護開発学 教授)▼湯崎英彦(広島県知事)▼渡辺幸子(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン 代表取締役社長)
(※2)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、ヘルスケア企業出身者、IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、「質の高い医療を最適なコストで」という理念を実践する具体的な手法として、米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、広めたパイオニアです。URL:https://www.ghc-j.com/
(※3)DPC対象病院
包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。対象病院は1757病院(2020年4月時点)。