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低環境負荷なナノ粒子めっき法による導電性マイクロビーズの作製

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
大阪府立大学産学官連携機構


携帯電話など液晶ディスプレイ(LCD) 等に使用されているマイクロビーズについて
従来の無電解めっき法に比べ作業が容易で、精度も高く製作することができる
省資源、低環境負荷な「ナノ粒子めっき法」を開発


【新規発表事項】 
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、大阪府立大学産学官連携機構の准教授 椎木弘氏は、従来のめっき法に比べ作業が容易で精度も高い「ナノ粒子めっき法」を開発し、導電性マイクロビーズを作製しました。
携帯電話など液晶ディスプレイ(LCD)を使った製品には立体的に重なる回路を電気的に接続する異方導電性膜(注1)が使われています。開発した「ナノ粒子めっき法」は、これを作る重要な要素技術のひとつである導電性マイクロビーズ(注2)の金めっきを、導電性、工程の簡素さ、省資源、低環境負荷などの面で大きく向上させています。
従来の無電解めっき法(注3)により作られたものと比較し、導電性(1Ω以下)、めっき表面の均一性、分散性、さらには歩留まり(80〜90%)の点で、優れた品質の金めっき導電性ビーズを大量に作ることができます。省資源の面でも、従来法より約40%も金を節約できます。
従来の無電解めっき法では、作業者に高度な技能や経験が必要でしたが、今回確立したナノ粒子めっき法は、それらを必要としないやさしい技術です。

(注1)異方導電性膜(ACF):導電性を持つ微細なマイクロビーズをエポキシ樹脂などの絶縁性粘着剤と混ぜ合わせたものを膜状に成型したフィルム。プリント基板の電極と部品の電極の間にACFを挟んで圧力を加えると、分散しているマイクロビーズのうち電極間にあるものは上下の電極と接触して導電する経路を形成する。電極のない部分はビーズが電極と接触しないので、横に並ぶ電極間の絶縁は保たれる。
(注2)マイクロビーズ:微少なプラスチック製ビーズ。本研究で使用したものは直径6マイクロメートル。
(注3)電気めっきとは異なり、通電による電子ではなく、めっき液に含まれる還元剤の酸化によって放出される電子により、液に含浸することで被めっき物に金属ニッケル皮膜を析出させるめっき法。

1.研究成果概要
携帯電話に代表される個人用携帯情報端末など液晶ディスプレイ(LCD)を使った製品の薄型化、小型化の需要はますます高まっています。それに伴いLCDおよび画像信号を送る集積回路には、高密度、多接点、積層の実装が必要であり、三次元の回路を電気的に接続する異方導電性膜が欠かせません。この異方導電性膜には、導電性を得るために金めっきを施したマイクロビーズが使われています。
従来の無電解めっきにおいて良質なめっき皮膜を得るには、めっき浴の管理が難しく、作業者に高度な技能や経験が求められてきました。加えて、マイクロビーズなど微小材料へのめっきは表面積の増大にともなう製造工程の複雑化や大量のめっき浴を必要とするなど、コストや効率面でも問題が少なくありません。さらに、得られた皮膜の導電性、密着性、均一性などの品質の維持、管理とその評価もサイズの縮小にともない困難になります。金ナノ粒子とバインダーの混合溶液にプラスチックを浸け攪拌するだけで精度の高いめっきができるこの技術は、これらの問題をクリアしただけでなく、熟練の技術、特別な操作や特殊な装置が不要であり、省資源や環境負荷の低減をも実現しています。


2.競合技術への強み
1)簡単な作業:金ナノ粒子とバインダーの混合液にプラスチックを浸して攪拌するだけで、高品質のめっきができます。
2)少ない工程:従来のめっき法では、6工程の作業が必要でしたが、ナノ粒子めっき法ではエッチング、感受化処理、触媒化処理などの工程が不要のため、3工程で済みます。
3)省資源:マイクロビーズの導電性獲得のための金めっきにおいては、従来の製法に比べて、金を約40%も節約することができます。
4)低い環境負荷:めっきの工程に有害物質を使いません。
5)低い製造コスト:上記により、導電性マイクロビーズおよびこれを使用した異方導電性膜を約2分の1の低コストで製造することができます。

3.今後の展望
今回は開発したのはナノ粒子めっき法による導電性マイクロビーズの作製法という要素技術です。この研究で得ようとしたのは導電性でしたが、この要素技術をさらに拡げて、たとえば金ナノ粒子を光を通すように並べる等の研究に発展させることができると考えています。また、バイオ系の研究者から、金ナノ粒子を標識として使えないかという相談も寄せられており、こちらの研究も進めています。導電性マイクロビーズの作製法については、分散剤の添加量の最適化と循環式製造技術の開発により大量合成を目指します。また、品質、製造の両面から実用化を前提とした検討を行っていきます。
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