G7サミットおよびG7財務大臣会合、G7保健大臣会合に向けた提言
[23/04/28]
提供元:PRTIMES
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グローバルヘルス・タスクフォース、より強靭な保健医療体制に向けたグローバルな連帯を促進するためのアクションを発表
[画像1: https://prtimes.jp/i/19334/20/resize/d19334-20-795920e6e4b2dc2ba2e9-3.jpg ]
4月28日、日本国際交流センターが事務局を務める「2023年G7グローバルヘルス・タスクフォース」(主査:城山英明 東京大学未来ビジョン研究センター 教授)は、来る5月にG7サミット(主要国首脳会議)および関係閣僚会議としてG7財務大臣会合、G7保健大臣会合が開催されるにあたり、将来起こり得る健康危機に効果的に対応する国際的な体制を構築する上で、2023年のG7に求められるアクションをまとめた提言を発表しました。
新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)のパンデミックが宣言されてから3年以上が経過し、新型コロナの経験を踏まえたパンデミックの予防・備え・対応(PPR)に関する国際的な議論が今なお続いています。過去のG7の合意(注1)及びその他の国際的な議論を踏まえ、本タスクフォースは、新型コロナのようなパンデミックを再び起こさないよう、緊張と対立の深まる国際社会にあって国際的な連帯を継続的に後押しするため、2023年のG7に求められるアクションとして以下の3点を提案し、木原誠二内閣官房副長官に手交いたしました。
また、2024年のG7にPPRの議論が確実に引き継がれるためには、広島G7後のフォローアップが不可欠として、本タスクフォースに国際アドバイザーとして関わった海外の有識者から岸田文雄総理大臣に宛てた手紙を提出しました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/19334/20/resize/d19334-20-f0a81ad153139ecf9a59-1.jpg ]
◆提言全文 (英文)
Promoting Global Solidarity to Advance Health System Resilience: Recommendations for the G7 Meetings in Japan
https://www.jcie.or.jp/japan/wp/wp-content/uploads/2023/04/Promoting-Global-Solidarity-to-Advance-Health-System-Resilience-Recommendations-for-the-G7-Meetings-in-Japan.pdf
日本語要旨(より強靭な保健医療体制のためのグローバルな連帯の促進:2023年G7への提言)
https://www.jcie.or.jp/japan/wp/wp-content/uploads/2023/04/HiroshimaG7GHTF_recommendations_summary_J.pdf
本タスクフォース提言の主要メッセージは医学誌ランセットにも投稿された。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)00690-6/fulltext
提言全文 要旨
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成するための各国主導の努力を後押しする
日本は2013年以来、UHC(注2)を国際保健外交の中心理念として推進してきた。将来の健康危機に備えるためには、各国がUHCという目標の下で、未知なる感染症が起きた時に、医療崩壊を起こさない、かつ感染に対する脆弱性や重症化リスクの高い人々に適切なサービスが提供される、公平で強靭性を備えた保健医療体制を整えることが極めて重要となる。こうした認識に基づき、G7には以下を求める。
● 低・中所得国支援において、既存の感染症対策の中で未知なる感染症への対応能力を強化する。その際、特に、プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)(注3)やコミュニティの保健人材の能力をジェンダーに配慮した形で強化するなど、新たな感染の検知、感染拡大予防を後押しする。
● 感染症の重症化リスクにもなる非感染性疾患のリスク・ファクター(不健康な食事、喫煙等)へのグローバルな取組みを支援し、保健医療サービスへのアクセスを妨げる多様な障壁を取り除くべく、差別の解消や社会福祉分野の取り組みを含め、対策を強化する。
● 低所得国の債務状況が悪化する一方、保健分野の資金需要は急激に増加している。各国の国家予算において保健に対する国内資金の動員を支援しつつ、各国の持続可能で効率的な保健財政を実現すべく開発援助資金の協調を促進する。加えて、UHCを実現する施策及びその資金のあり方に関わる知の集積の場としてUHCファイナンシング・センターの設置を検討する。
共有財としての感染症危機対応医薬品等(MCM)への迅速かつ公平なアクセスを促進する包括的なアプローチを推進する
パンデミックに効果的に対応する上で、新しい検査、ワクチン、治療といった感染症危機対応医薬品等(medical countermeasures: MCM)を国民に迅速に提供することは国家の責務である。しかしながら、技術・開発力、原材料、資金力が偏在している世界にあって、新型コロナで見られたワクチン格差のような不公平が二度と起こらないようにするためには、国際的な連携と、イノベーションと製造能力の分散化(技術移転、自発的ライセンス合意、等)を含む格差を是正する仕組みが不可欠となる。G7には、UHCへのコミットメントに基づき、健康危機時における革新的技術への公平なアクセスを実現する重要性を再確認し、以下を求める。
● MCMの研究開発をさらに促進するため、薬剤耐性を含む既存の疾病・脅威に関する研究開発への長期的な投資を拡充すると共に、日本医療研究開発機構(AMED)/先進的研究開発戦略センター(SCARDA)等、将来パンデミックになり得る病原体に対する公的研究開発支援機関間のグローバルな連携、国際共同臨床試験ネットワークの強化、規制当局の調整をさらに推進する。
● MCMへの迅速なアクセスを後押しすべく、イノベーションと製造に関わる地域拠点を強化し、供給についてもCOVAXのようなグローバルな仕組みを補完する形で、事前合意に基づく地域単位の供給体制が構築されるよう後押しする。
● MCMへの公平なアクセスを後押しするため、各G7国の公的資金を投じて実施する研究開発事業に対し、最終製品への公平なアクセスに配慮することを条件づけると共に、標準化したデジタル技術を活用したオープンイノベーションを推進する。加えて、研究、開発、臨床試験、承認、生産、適切な価格設定、供給、必要な人への提供までが切れ目なく推進されるよう、グローバル・サウスや非政府アクターの参画を得て「アクセス・イニシアティブ」を立ち上げる。
グローバルレベル及び地域レベルにおいて、保健分野を超えて国家及び非国家アクター間の効果的な協力を促進するグローバル・ガバナンスを強化する
世界規模のパンデミックに対応するためには、グローバルな連帯が不可欠ではあるが、ACTアクセラレーターのようなグローバルな仕組みでだけでは、公平なアクセスや地域の事情に合った対応を達成するには不十分である。加えて、イノベーション、説明責任・透明性の担保、格差是正には非政府アクターの参画も必須となる。健康に与える様々な要因、特に、人と動物の健康、環境や生態系の繋がりへの対応も喫緊の課題となっている。以上を踏まえ、G7には以下を求める。
● 健康危機に対するグローバルな連帯を促進するために、WHOでのPPRの規範に関する合意を推進する。健康危機に付随する保健分野を超えた経済安全保障等の課題に対応しうる多様なアクターの参画を得たハイレベルなガバナンスの創出を後押しすると共に、資金においても、各国の自助努力を支援しつつも、危機時の機動的ファイナンスを含むPPRのためのグローバルな資金を持続可能な形で手当てする方法を検討する。迅速な予防・研究開発が可能となるよう、標準化したデジタル技術を活用し、病原体の分析や臨床試験等の多様な専門性を持つ人材を派遣できるよう、各国の保健省や感染症研究機関間の調整機能を強化する。
● 地域におけるMCMに関する研究開発、共同臨床試験、薬の安全対策、生産、供給、分配、そしてサーベイランスといったPPRのインフラを地域安全保障の観点から強化する。特に、サーベイランスについては、域内の高度安全実験施設(BSL4施設)の活用と連携強化を含め、バイオセキュリティ分野の域内協力として推進する。
● 気候変動に対する保健セクターの対応を後押しすると共に、人・動物の健康、環境・生態系を包括的に考えるOne Healthの施策を推進するために、G7にOne Health協議のトラックを設け、メンバー国の取組みをモニターし、感染症のサーベイランスについても疾病を超えたOne Healthのアプローチの統合を図る。
注1)PPRについては、英国が議長国を務めた2021年G7サミットでは、パンデミックが宣言されてから100日以内に診断薬及びワクチンの開発、治療法の確立を目指す「100日ミッション」が打ち出された。ドイツが議長国を務めた昨年のG7サミットでは、新たな感染症例の発生(アウトブレーク)を一早く検知するために必要となるサーベイランスの強化、そして検知及びウイルス解析、臨床試験等を迅速に進めるための多様な専門家の養成と国際連携の強化が「パンデミックへの備えのための合意(Pact for Pandemic Readiness)」として打ち出されている。
注2)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC):全ての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる状態(WHO. 2010. The world health report: health systems financing: the path to universal coverage.で定義されたUHCの和訳)
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/44371/9789241564021_eng.pdf?sequence=1&isAllowed=y
注3)プライマリ・ヘルス・ケア(PHC):健康増進、疾病予防から治療、リハビリテーション、緩和ケアに至る一連の流れの中で、人々のニーズに焦点を当て、できるだけ早期に、人々の日常的な環境に近いところで、可能な限り高いレベルの健康とウェルビーイング(福祉)を公平に保障する、社会全体の健康に対するアプローチ
(WHO and UNICEF. 2018. A vision for primary health care in the 21st century: Towards UHC and the SDGs.で定義されたPHCの和訳)
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/328065/WHO-HIS-SDS-2018.15-eng.pdf?sequence=1&isAllowed=y
◆岸田総理大臣あて書簡
広島G7サミット後のフォローアップのため、本タスクフォースに国際アドバイザーとして関わった海外の有識者から岸田文雄総理大臣に宛てた手紙を提出しました。
英文 https://bit.ly/3LgO7SR 和文 https://bit.ly/41N8gae
◆関連文書 「100日ミッション・プラス」班 提言
本タスクフォース内の3つの班のうち「100日ミッション・プラス」班が、G7に求められるアクションに加え、日本として「100日ミッション・プラス」関連分野において求められることを別途提言書にまとめて公表しました。
100日ミッション達成に向けたG7への提言
―国際保健に資するイノベーションとテクノロジーの推進、研究開発の加速と将来のパンデミックと現存の脅威への対応のための公平なアクセスとデリバリーの確保―
https://www.jcie.or.jp/japan/wp/wp-content/uploads/2023/04/f34d6f3f2b82930ede3b3744af03d9e5.pdf
2023年G7グローバルヘルス・タスクフォース/Hiroshima G7 Global Health Task Force
https://www.jcie.or.jp/japan/report/activity-report-15993/
2022年7月、グローバルヘルス戦略に関する政官民プラットフォームである「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会(委員長:武見敬三 参議院議員、幹事・事務局:(公財)日本国際交流センター)https://www.jcie.or.jp/japan/report/activity-report-3276/ の下に組織された、研究者・実務家を中心としたグループ(主査:城山英明 東京大学公共政策大学院、大学院法学政治学科研究科、未来ビジョン研究センター 教授)。本タスクフォース内には、テーマごとに、1. 強靭・公平・持続可能なUHC、2. 100日ミッション及び製造・供給のあり方(略して「100日ミッション・プラス」)、3. グローバルヘルス・アーキテクチャー構築、の3つの班が設けられた。本タスクフォースは、国際アドバイザーからの意見聴取に加え、The Civil Society 7(C7)関係者を含む国内外の市民社会組織代表、その他のグローバルヘルス関係者と意見交換を行い、2023年のG7で取り上げるべきグローバルヘルスに関わる議題設定に対して学術的な見地からインプットを行い、本提言をまとめた。なお、本タスクフォースには、政府関係者もオブザーバーとして参加し、厚労科研で実施された「2023年G7保健関連会合における我が国の効果的なプレゼンスの確立および喫緊の課題に対応するための国際保健政策への貢献に資する研究」(https://ifi.u-tokyo.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2023/03/policy_recommendation_tg_20230322.pdf)との連携の下、運営された。
[画像3: https://prtimes.jp/i/19334/20/resize/d19334-20-319ff96ac221b070060c-0.png ]
日本国際交流センター(JCIE)は、民間レベルでの国際的な政策対話と協力を推進する公益法人。国際社会の安定と発展は、政府による外交のみならず、様々な民間アクターの参画によって強化されるべき公共財であるという信念のもと、地球的視点に立ち国内外の諸課題解決に貢献する。東京と米国ワシントン・ニューヨークを拠点に、人間の安全保障の視座のもと、外交・安全保障、民主主義の擁護、グローバルヘルス(国際保健)、グローバル化における外国人財、女性のエンパワメントなど、多角的なテーマで国際交流や政策対話・政策提言活動を行う。
[画像1: https://prtimes.jp/i/19334/20/resize/d19334-20-795920e6e4b2dc2ba2e9-3.jpg ]
4月28日、日本国際交流センターが事務局を務める「2023年G7グローバルヘルス・タスクフォース」(主査:城山英明 東京大学未来ビジョン研究センター 教授)は、来る5月にG7サミット(主要国首脳会議)および関係閣僚会議としてG7財務大臣会合、G7保健大臣会合が開催されるにあたり、将来起こり得る健康危機に効果的に対応する国際的な体制を構築する上で、2023年のG7に求められるアクションをまとめた提言を発表しました。
新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)のパンデミックが宣言されてから3年以上が経過し、新型コロナの経験を踏まえたパンデミックの予防・備え・対応(PPR)に関する国際的な議論が今なお続いています。過去のG7の合意(注1)及びその他の国際的な議論を踏まえ、本タスクフォースは、新型コロナのようなパンデミックを再び起こさないよう、緊張と対立の深まる国際社会にあって国際的な連帯を継続的に後押しするため、2023年のG7に求められるアクションとして以下の3点を提案し、木原誠二内閣官房副長官に手交いたしました。
また、2024年のG7にPPRの議論が確実に引き継がれるためには、広島G7後のフォローアップが不可欠として、本タスクフォースに国際アドバイザーとして関わった海外の有識者から岸田文雄総理大臣に宛てた手紙を提出しました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/19334/20/resize/d19334-20-f0a81ad153139ecf9a59-1.jpg ]
◆提言全文 (英文)
Promoting Global Solidarity to Advance Health System Resilience: Recommendations for the G7 Meetings in Japan
https://www.jcie.or.jp/japan/wp/wp-content/uploads/2023/04/Promoting-Global-Solidarity-to-Advance-Health-System-Resilience-Recommendations-for-the-G7-Meetings-in-Japan.pdf
日本語要旨(より強靭な保健医療体制のためのグローバルな連帯の促進:2023年G7への提言)
https://www.jcie.or.jp/japan/wp/wp-content/uploads/2023/04/HiroshimaG7GHTF_recommendations_summary_J.pdf
本タスクフォース提言の主要メッセージは医学誌ランセットにも投稿された。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)00690-6/fulltext
提言全文 要旨
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成するための各国主導の努力を後押しする
日本は2013年以来、UHC(注2)を国際保健外交の中心理念として推進してきた。将来の健康危機に備えるためには、各国がUHCという目標の下で、未知なる感染症が起きた時に、医療崩壊を起こさない、かつ感染に対する脆弱性や重症化リスクの高い人々に適切なサービスが提供される、公平で強靭性を備えた保健医療体制を整えることが極めて重要となる。こうした認識に基づき、G7には以下を求める。
● 低・中所得国支援において、既存の感染症対策の中で未知なる感染症への対応能力を強化する。その際、特に、プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)(注3)やコミュニティの保健人材の能力をジェンダーに配慮した形で強化するなど、新たな感染の検知、感染拡大予防を後押しする。
● 感染症の重症化リスクにもなる非感染性疾患のリスク・ファクター(不健康な食事、喫煙等)へのグローバルな取組みを支援し、保健医療サービスへのアクセスを妨げる多様な障壁を取り除くべく、差別の解消や社会福祉分野の取り組みを含め、対策を強化する。
● 低所得国の債務状況が悪化する一方、保健分野の資金需要は急激に増加している。各国の国家予算において保健に対する国内資金の動員を支援しつつ、各国の持続可能で効率的な保健財政を実現すべく開発援助資金の協調を促進する。加えて、UHCを実現する施策及びその資金のあり方に関わる知の集積の場としてUHCファイナンシング・センターの設置を検討する。
共有財としての感染症危機対応医薬品等(MCM)への迅速かつ公平なアクセスを促進する包括的なアプローチを推進する
パンデミックに効果的に対応する上で、新しい検査、ワクチン、治療といった感染症危機対応医薬品等(medical countermeasures: MCM)を国民に迅速に提供することは国家の責務である。しかしながら、技術・開発力、原材料、資金力が偏在している世界にあって、新型コロナで見られたワクチン格差のような不公平が二度と起こらないようにするためには、国際的な連携と、イノベーションと製造能力の分散化(技術移転、自発的ライセンス合意、等)を含む格差を是正する仕組みが不可欠となる。G7には、UHCへのコミットメントに基づき、健康危機時における革新的技術への公平なアクセスを実現する重要性を再確認し、以下を求める。
● MCMの研究開発をさらに促進するため、薬剤耐性を含む既存の疾病・脅威に関する研究開発への長期的な投資を拡充すると共に、日本医療研究開発機構(AMED)/先進的研究開発戦略センター(SCARDA)等、将来パンデミックになり得る病原体に対する公的研究開発支援機関間のグローバルな連携、国際共同臨床試験ネットワークの強化、規制当局の調整をさらに推進する。
● MCMへの迅速なアクセスを後押しすべく、イノベーションと製造に関わる地域拠点を強化し、供給についてもCOVAXのようなグローバルな仕組みを補完する形で、事前合意に基づく地域単位の供給体制が構築されるよう後押しする。
● MCMへの公平なアクセスを後押しするため、各G7国の公的資金を投じて実施する研究開発事業に対し、最終製品への公平なアクセスに配慮することを条件づけると共に、標準化したデジタル技術を活用したオープンイノベーションを推進する。加えて、研究、開発、臨床試験、承認、生産、適切な価格設定、供給、必要な人への提供までが切れ目なく推進されるよう、グローバル・サウスや非政府アクターの参画を得て「アクセス・イニシアティブ」を立ち上げる。
グローバルレベル及び地域レベルにおいて、保健分野を超えて国家及び非国家アクター間の効果的な協力を促進するグローバル・ガバナンスを強化する
世界規模のパンデミックに対応するためには、グローバルな連帯が不可欠ではあるが、ACTアクセラレーターのようなグローバルな仕組みでだけでは、公平なアクセスや地域の事情に合った対応を達成するには不十分である。加えて、イノベーション、説明責任・透明性の担保、格差是正には非政府アクターの参画も必須となる。健康に与える様々な要因、特に、人と動物の健康、環境や生態系の繋がりへの対応も喫緊の課題となっている。以上を踏まえ、G7には以下を求める。
● 健康危機に対するグローバルな連帯を促進するために、WHOでのPPRの規範に関する合意を推進する。健康危機に付随する保健分野を超えた経済安全保障等の課題に対応しうる多様なアクターの参画を得たハイレベルなガバナンスの創出を後押しすると共に、資金においても、各国の自助努力を支援しつつも、危機時の機動的ファイナンスを含むPPRのためのグローバルな資金を持続可能な形で手当てする方法を検討する。迅速な予防・研究開発が可能となるよう、標準化したデジタル技術を活用し、病原体の分析や臨床試験等の多様な専門性を持つ人材を派遣できるよう、各国の保健省や感染症研究機関間の調整機能を強化する。
● 地域におけるMCMに関する研究開発、共同臨床試験、薬の安全対策、生産、供給、分配、そしてサーベイランスといったPPRのインフラを地域安全保障の観点から強化する。特に、サーベイランスについては、域内の高度安全実験施設(BSL4施設)の活用と連携強化を含め、バイオセキュリティ分野の域内協力として推進する。
● 気候変動に対する保健セクターの対応を後押しすると共に、人・動物の健康、環境・生態系を包括的に考えるOne Healthの施策を推進するために、G7にOne Health協議のトラックを設け、メンバー国の取組みをモニターし、感染症のサーベイランスについても疾病を超えたOne Healthのアプローチの統合を図る。
注1)PPRについては、英国が議長国を務めた2021年G7サミットでは、パンデミックが宣言されてから100日以内に診断薬及びワクチンの開発、治療法の確立を目指す「100日ミッション」が打ち出された。ドイツが議長国を務めた昨年のG7サミットでは、新たな感染症例の発生(アウトブレーク)を一早く検知するために必要となるサーベイランスの強化、そして検知及びウイルス解析、臨床試験等を迅速に進めるための多様な専門家の養成と国際連携の強化が「パンデミックへの備えのための合意(Pact for Pandemic Readiness)」として打ち出されている。
注2)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC):全ての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる状態(WHO. 2010. The world health report: health systems financing: the path to universal coverage.で定義されたUHCの和訳)
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/44371/9789241564021_eng.pdf?sequence=1&isAllowed=y
注3)プライマリ・ヘルス・ケア(PHC):健康増進、疾病予防から治療、リハビリテーション、緩和ケアに至る一連の流れの中で、人々のニーズに焦点を当て、できるだけ早期に、人々の日常的な環境に近いところで、可能な限り高いレベルの健康とウェルビーイング(福祉)を公平に保障する、社会全体の健康に対するアプローチ
(WHO and UNICEF. 2018. A vision for primary health care in the 21st century: Towards UHC and the SDGs.で定義されたPHCの和訳)
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/328065/WHO-HIS-SDS-2018.15-eng.pdf?sequence=1&isAllowed=y
◆岸田総理大臣あて書簡
広島G7サミット後のフォローアップのため、本タスクフォースに国際アドバイザーとして関わった海外の有識者から岸田文雄総理大臣に宛てた手紙を提出しました。
英文 https://bit.ly/3LgO7SR 和文 https://bit.ly/41N8gae
◆関連文書 「100日ミッション・プラス」班 提言
本タスクフォース内の3つの班のうち「100日ミッション・プラス」班が、G7に求められるアクションに加え、日本として「100日ミッション・プラス」関連分野において求められることを別途提言書にまとめて公表しました。
100日ミッション達成に向けたG7への提言
―国際保健に資するイノベーションとテクノロジーの推進、研究開発の加速と将来のパンデミックと現存の脅威への対応のための公平なアクセスとデリバリーの確保―
https://www.jcie.or.jp/japan/wp/wp-content/uploads/2023/04/f34d6f3f2b82930ede3b3744af03d9e5.pdf
2023年G7グローバルヘルス・タスクフォース/Hiroshima G7 Global Health Task Force
https://www.jcie.or.jp/japan/report/activity-report-15993/
2022年7月、グローバルヘルス戦略に関する政官民プラットフォームである「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会(委員長:武見敬三 参議院議員、幹事・事務局:(公財)日本国際交流センター)https://www.jcie.or.jp/japan/report/activity-report-3276/ の下に組織された、研究者・実務家を中心としたグループ(主査:城山英明 東京大学公共政策大学院、大学院法学政治学科研究科、未来ビジョン研究センター 教授)。本タスクフォース内には、テーマごとに、1. 強靭・公平・持続可能なUHC、2. 100日ミッション及び製造・供給のあり方(略して「100日ミッション・プラス」)、3. グローバルヘルス・アーキテクチャー構築、の3つの班が設けられた。本タスクフォースは、国際アドバイザーからの意見聴取に加え、The Civil Society 7(C7)関係者を含む国内外の市民社会組織代表、その他のグローバルヘルス関係者と意見交換を行い、2023年のG7で取り上げるべきグローバルヘルスに関わる議題設定に対して学術的な見地からインプットを行い、本提言をまとめた。なお、本タスクフォースには、政府関係者もオブザーバーとして参加し、厚労科研で実施された「2023年G7保健関連会合における我が国の効果的なプレゼンスの確立および喫緊の課題に対応するための国際保健政策への貢献に資する研究」(https://ifi.u-tokyo.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2023/03/policy_recommendation_tg_20230322.pdf)との連携の下、運営された。
[画像3: https://prtimes.jp/i/19334/20/resize/d19334-20-319ff96ac221b070060c-0.png ]
日本国際交流センター(JCIE)は、民間レベルでの国際的な政策対話と協力を推進する公益法人。国際社会の安定と発展は、政府による外交のみならず、様々な民間アクターの参画によって強化されるべき公共財であるという信念のもと、地球的視点に立ち国内外の諸課題解決に貢献する。東京と米国ワシントン・ニューヨークを拠点に、人間の安全保障の視座のもと、外交・安全保障、民主主義の擁護、グローバルヘルス(国際保健)、グローバル化における外国人財、女性のエンパワメントなど、多角的なテーマで国際交流や政策対話・政策提言活動を行う。