ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査から「趣味学習の実態・効果」を発表 趣味(好きなことや興味・関心のあること)の学習によって、約4割が将来のキャリア展望、仕事の意欲が向上
[24/02/01]
提供元:PRTIMES
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趣味について仲間と学ぶ「コミュニティ参加型」の学習は、仕事や収入への効果が高い傾向
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、産業能率大学・齊藤研究室と共同で実施した「ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査」(調査対象は35歳〜64歳の就業者 N数=36,537)から「趣味(好きなことや興味・関心のあること)の学習の実態、効果」の結果を発表いたします。
本調査では、35〜54歳をミドル、55〜64歳をシニアと定義し、主に下記3項目についての定量的な分析結果を報告いたします。
[表: https://prtimes.jp/data/corp/111116/table/26_1_4b6183fe19e5633c09bfd5733c2ebb0f.jpg ]
※1 学び直す意欲はあるが、趣味の学習だけしている層
■目的と背景
2023年8月に発表した日本の就業者(ミドル・シニア層)の報告書※2では、仕事に関する学び直し※3を実行しているミドル・シニアは就業者全体の14.4%であり、約8割が学び直しを行っていないことがわかりました。ミドル・シニア従業員の活性化は、組織にとって重要な経営課題です。一方、曖昧で不確かな将来へ備えることは多くの従業員にとっても重要な課題となっています。
本調査では、仕事に関連はしないものの学びを行動化している「趣味学習層」※4に着目し、その実態を確認するとともに、趣味の学習は仕事やキャリアにどの程度効果があるのか、どうすれば学習対象を仕事や自身のキャリアにも向けることができるのかを把握することを目的に実施しました。
※2 「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査【PART1】」(2023年8月)
※3 学び直し:業務の時間外に、仕事やキャリアに関して、継続して学習すること。
※4 趣味学習層:仕事やキャリアに関連する学習には積極的ではないが、業務外の時間を使って、仕事やキャリアとは無関係の趣味に関する学習を継続している層
【学び直しのタイプ】 本調査では、学び直す意欲と学習実施状況に基づき、以下の3タイプ(詳細6タイプ)に分類。
[画像1: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-19a077be161c6c80bbb0-0.jpg ]
■主なトピックス ※トピックスの詳細については「主なトピックス(詳細)」をご確認ください
1. ミドル・シニアの趣味の学習実態と学習の効果 「仕事・収入面」、「心理面」
1. ミドル・シニア就業者の中で、仕事やキャリアに関することを学び直している「学び直し層」は14.4%。そのうち、4.4%が同時に趣味の学習もしており、趣味の学習だけをしている「趣味学習層(8.2%)」と合わせると、12.6%が趣味の学習を行っている。
2. 30代後半は学び直し層・趣味学習層ともに多いが、40代〜50代前半にかけていずれも減少。50代後半〜60代に再び趣味学習層が増加。学び直し層はより減少する。
3. 「広報・宣伝・編集」「コンサルタント」「教育関連」「Webクリエイティブ」などは、学び直し層、趣味学習層ともに多い。知的でクリエイティブな職種は、仕事・趣味問わず学習行為に積極的なことがうかがえる一方で、学び直しはせず趣味の学びしかしていない人も多い。
4. ミドル・シニア就業者の趣味の学習内容としては、「文化(学問、芸術など)」が最も多く、32.2%を占める。次いで、「語学」、「ビジネス・仕事(投資関連含む)」、「スポーツ・アウトドア」が続く。
5. 趣味の学習を通じて半数が人間関係の拡大、4割が将来の生活やキャリア、仕事の意欲向上の効果を実感。
6. 趣味学習の習熟度(学習分野の習得度合い)が高いほど、仕事や収入への波及効果を実感。
7. 「新たな収入源につながった」と答えた割合が多い趣味の学習内容は、「資産形成・資産運用」「経済・金融」「科学技術・工学」「介護」等。 「宗教」「読書」「歴史」などは収入源につながっている割合が少ない。
8. 趣味の学習を通じて、「仕事の成果向上」や「収入源の増加」などを感じるミドル・シニア就業者ほど、将来のキャリアや収入への不安が少ない。
9. 「コミュニティ参加型」の学び方が、趣味の学習による仕事や収入への効果が高い傾向。
10. 「学ぶことが楽しい」といった趣味の学習による幸福感を感じる割合は、学習期間3か月〜6か月未満で急激に高まり、学び直し層よりも短期間で幸福感を感じる傾向。
2. 意欲あり趣味層と学び直し層の類似点
11. 意欲あり趣味層(仕事やキャリアに関することを学び直す意欲があるが趣味の学習だけしている)は、ミドル・シニア就業者の学び直しを促す上で重要なポイントとなる「個人特性」や「学び方」などが、学び直し層と類似しており、その意味で、学び直しのポテンシャルがあると言える。
12. しかし、意欲あり趣味層は、仕事やキャリアに関することを学び直す意欲や行動を高める「仕事と興味関心の一致度」や「キャリアのセルフアウェアネス※5」が学び直し層よりも低い(その他の層よりは学び直し層に近い)。
3. 意欲あり趣味層が学び直し層に移行するにはどうしたらよいか
13. 「キャリアのセルフアウェアネス」「仕事と興味関心の一致度」は、キャリア自律支援策や、育成支援策を受けているミドル・シニア就業者で高い傾向がある。キャリア自律支援策や育成支援策が、意欲あり趣味層の学び直しを促進することが示唆された。
■主なトピックス(詳細)
1. ミドル・シニアの趣味の学習実態と学習の効果 「仕事・収入面」、「心理面」
1. ミドル・シニア就業者の中で、仕事やキャリアに関することを学び直している「学び直し層(14.4%)」のうち、4.4%が同時に趣味の学習も実施。趣味の学習だけしている「趣味学習層(8.2%)」と合わせると、12.6%が趣味の学習を行っている。
[画像2: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-d37376daeed1bbb8d908-1.jpg ]
以降は、趣味学習層(8.2%)に焦点をあて、分析した。
2. 30代後半は学び直し層(業務外の時間に仕事・キャリアに関する学習をする者。趣味の学習を並行する者も含む)・趣味学習層(業務外に趣味だけ学習)ともに多いが、40代〜50代前半にかけていずれも減少。50代後半〜60代に再び趣味学習層が増加。学び直し層はより減少。男女とも、年代の経過に伴い”C”型の動きをする。
[画像3: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-0f1cb107e3955537e90c-2.jpg ]
3. 「広報・宣伝・編集」「コンサルタント」「教育関連」「Webクリエイティブ」などは、学び直し層、趣味学習層ともに多い。知的でクリエイティブな職種は、仕事・趣味問わず学習行為に積極的なことがうかがえる一方で、学び直しはせず趣味の学びしかしていない人も多い。
[画像4: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-f0252d3b18c6b4d3b038-3.jpg ]
4. ミドル・シニア就業者の趣味の学習内容としては、「文化(学問、芸術など)」が最も多く、32.2%を占める。次いで、「語学」、「ビジネス・仕事(投資関連含む)」、「スポーツ・アウトドア」が続く。
[画像5: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-e0e2e244ddb2b36aaf9e-4.jpg ]
5. 趣味の学習を通じて、仕事や収入の面でどのような効果を実感しているかを見た。「人間関係が広がった」は約半数が実感。次いで、「社会に参加している実感が得られた(37.7%)」「将来の生活への不安が減った(37.3%)」が多い。社会関係資本の増加だけでなく、約4割は将来の生活やキャリア、仕事のモチベーションへの効果を感じている。
[画像6: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-d16c3afb329197a0e3a6-5.jpg ]
6. 趣味学習の習熟度(学習分野について習得している度合い)が高いほど、仕事や収入への波及効果を実感。特に、「報酬を受け取れる/社会に認められる」と答えた趣味学習層(約6%)は、半数以上が「新たな収入源につながった」等の効果を実感。
[画像7: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-25cb63ced780a4a253ab-6.jpg ]
7. 「新たな収入源につながった」割合が多い趣味の学習内容は、「資産形成・資産運用」「経済・金融」「科学技術・工学」「介護」等。 「宗教」「読書」「歴史」などは収入源につながっている割合が少ない。
[画像8: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-cf814ae4c4c762f28216-7.jpg ]
8. 趣味の学習を通じて、「仕事の成果向上」や「収入源の増加」といった仕事や収入への波及効果を実感しているミドル・シニア就業者ほど、将来のキャリアや収入への不安感・危機感が少ない。
[画像9: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-a5286d3042b1a859969c-9.jpg ]
9. 学び方のタイプにより、学習効果は異なる。趣味学習層は「コミュニティ参加型」が仕事や収入への効果を実感しやすく、特に「社会関係資本の増加」の実感度が高い。仲間と趣味について学ぶ活動は、仕事や収入にもつながりやすいことが分かる。学び直し層は「一人でコツコツ型」も仕事や収入への効果実感が高く、異なる傾向がある。
[画像10: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-f1a366560a35152ac68f-10.jpg ]
10. 「学ぶことが楽しい」といった趣味の学習による幸福感を感じる割合は、学習期間3か月〜6か月未満で急激に高まり、学び直し層よりも短期間で幸福感を感じる傾向。まずは幸福感を感じやすい趣味の学習に取り組むことを通じて、学習行為への抵抗感をなくすことが期待できると考えられる。
[画像11: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-aed7a1ece3992ce569b4-11.jpg ]
2. 意欲あり趣味層と学び直し層の類似点
11. 意欲あり趣味層は、ミドル・シニア就業者の学び直しと関連する個人特性や過去経験、職場の人材マネジメント施策や学び方が、学び直し層と類似。具体的には、自分の興味関心を追求する行動や、学びを楽しむマインド、刺激を受けられる人脈に差がなかった。また、上司が学び直しに熱心、業務の負荷が低い、職務範囲が無限定、副業・兼業が自由といった環境面も差がなかった。意欲あり趣味層は、その他の多くの点でも学び直し層に近く、その意味で、学び直しのポテンシャルがあると言える。
[画像12: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-62be6ba1e3bfe9520b81-12.jpg ]
12. 意欲あり趣味層は、学び直す意欲や行動を高める「仕事と興味関心の一致度」「キャリアのセルフアウェアネス」「自己追求行動」のいずれも、他の分類に比べれば学び直し層に最も近い。特に、「自己追求行動」は、学び直し層と差がない。
[画像13: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-fa09e96498b998fc22ed-13.jpg ]
3. 意欲あり趣味層が学び直し層に移行するにはどうしたらよいか
13. 趣味学習層の「キャリアのセルフアウェアネス」「仕事と興味関心の一致度」は学び直し層に比べて低かったが、これらは、「キャリアプランニング研修」「キャリアの透明性(キャリアパスの明示、社内公募等)」「副業・兼業の自由さ」といったキャリア自律支援策や、「目標管理」といった育成支援策を受けているミドル・シニア就業者では高い傾向が見られる。そのため、これら施策で意欲あり趣味層の「キャリアのセルフアウェアネス」や「仕事と興味関心の一致度」が高まれば、学び直しの実施や趣味学習自体の仕事・収入への波及効果の増加につながる。
[画像14: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-f1512bc4a0f264c9411f-14.jpg ]
■調査結果からの提言
[画像15: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-0566df3e4878b190ae72-15.png ]
【はたらく個人へ向けて】
趣味の学習は、「人間関係が広がる」、「将来のキャリアや生活不安の解消に活きる」
大人になるにつれ、「学び」と聞くと資格取得や昇格試験のための机上の勉強が想起され、本来の楽しさから遠ざかってしまう人も少なくない。現在、ミドル・シニア層においても「リ・スキリング(学び直し)」が重要な課題となっているが、「学び」とは本来的に広く、多様であったことを思い返せば、職業的側面に限定されるものではない。本調査では、楽しみながら行っている趣味的領域の学習を通じ、仕事や収入への波及効果が確認された。趣味の学習は、熟練せずとも楽しみや喜びを感じられる傾向もあるため、自身のキャリアと結び付けることができれば、職業生活をより豊かにする機会ともなり得る。
学び方は人それぞれだが、コミュニティ参加型の趣味の学びは仕事にも活かされやすい
もし、仕事に関連した学び直しに二の足を踏むのならば、まずは興味・関心を向けられる趣味的領域の学びに踏みだしてみてはどうか。学ぶ内容や個人の学習観によって学び方も様々あるが、時に他者と関わり、教え・学び合う機会を持つことは、新たな人的ネットワークを築く事にもつながる。興味・関心を共にする仲間ができれば、そのコミュニティは職場でも家でもない、新たな居場所ともなり得る。ミドル・シニア層にとっては、趣味的学習を通じて多様な居場所を持つことが、将来のより豊かな生活につながるかもしれない。
【経営層・人事部門に向けて】
趣味的領域を学ぶ「趣味学習層」は、潜在的な「学び直し層」(仕事・キャリア領域を学ぶ層)として期待できる
日本の就業者は加齢とともに「学び」から遠ざかる傾向がある。刻々と変化するビジネス環境に適応していくためにも、従業員の学び直しを促進したいと考える組織は多い。しかし、その気のない者に対して組織側が一方的に手厚く教育訓練を課したところで、その効果は限定的なものとなろう。
趣味的領域に「学び」を見出している「趣味学習層」は、学びのレディネス(学習への前向きな態度・習慣)を有しているため、個人のキャリア意識を高める施策などを通じて仕事領域との接合を見いだせれば、学び直しへの移行が期待できる。学習の内容も大事だが、いかに従業員側の能動性を引き出し、学習への前向きな態度や習慣を促すかが重要なポイントとなる。
趣味学習層の学び直し層への移行には、キャリア意識を高めるための教育施策が有効
これまでの企業の人材育成において、「実務に直結する学び」には教育予算を充てるが、趣味的領域は福利厚生の位置づけとしていた組織は少なくない。変化の激しい今日、どのような学びが実務に直結し、何がしないのかの線引きは益々難しい。だとすれば、「何を学ぶか」ではなく、従業員の学ぶ姿勢(意欲)や学び得た有形・無形の資産を社内にいかに往還する(周囲に共有し、活かす)ことができているかを評価してはどうか。これは単に趣味活動を補助するのではなく、その活動の中に仕事にも活かしうる「学び」を見出すことのできる人財を育む施策と位置付けたい。
趣味の学習は、人脈を広げ、仕事への意欲を向上させる越境学習※6としての効果が期待できる
趣味の学習の学び方については「コミュニティ参加型(38.9%)」が最も多かった。興味・関心を共にする仲間と集って学び合う情景が目に浮かぶ。このような学び方は、社内外での多様な人脈形成につながり、仕事の成果や創造性が高まる傾向が確認された。従業員が自身の興味・関心に基づいた学びを行い、周囲と共有する機会を設けることは、非学習層の学習意欲を刺激することにもつながる可能性がある。このような試みとして、企業内の部活動など、趣味的活動や学習イベントを組織として開催する事例もあるが、自社らしい教育施策や組織開発施策としての工夫の余地も多分にあると考える。
※6 越境学習:法政大学大学院の石山 恒貴教授は、越境学習を「自分にとってのホームとアウェイを行き来することによる学び」と定義している。
●本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所+産業能率大学 齊藤研究室」と記載してください。
●調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/middle-senior-learning2.html
●構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
■調査概要
[画像16: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-dbce0d7d9097e779902f-16.png ]
■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
■【産業能率大学 経営学部 経営学科 齊藤弘通 教授】について
<https://www.sanno.ac.jp/undergraduate/about/faculty/ba/saito_hiromichi.html>
専門は人材育成論、質的調査法。慶應義塾大学文学部卒業、法政大学大学院政策創造研究科博士課程修了。博士(政策学)。専門社会調査士。産業能率大学総合研究所を経て現職。主に、高等教育機関における社会人教育の実態や学修効果、ビジネスパーソンの継続的な学び直しのあり方などを調査・研究。
■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。
はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、産業能率大学・齊藤研究室と共同で実施した「ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査」(調査対象は35歳〜64歳の就業者 N数=36,537)から「趣味(好きなことや興味・関心のあること)の学習の実態、効果」の結果を発表いたします。
本調査では、35〜54歳をミドル、55〜64歳をシニアと定義し、主に下記3項目についての定量的な分析結果を報告いたします。
[表: https://prtimes.jp/data/corp/111116/table/26_1_4b6183fe19e5633c09bfd5733c2ebb0f.jpg ]
※1 学び直す意欲はあるが、趣味の学習だけしている層
■目的と背景
2023年8月に発表した日本の就業者(ミドル・シニア層)の報告書※2では、仕事に関する学び直し※3を実行しているミドル・シニアは就業者全体の14.4%であり、約8割が学び直しを行っていないことがわかりました。ミドル・シニア従業員の活性化は、組織にとって重要な経営課題です。一方、曖昧で不確かな将来へ備えることは多くの従業員にとっても重要な課題となっています。
本調査では、仕事に関連はしないものの学びを行動化している「趣味学習層」※4に着目し、その実態を確認するとともに、趣味の学習は仕事やキャリアにどの程度効果があるのか、どうすれば学習対象を仕事や自身のキャリアにも向けることができるのかを把握することを目的に実施しました。
※2 「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査【PART1】」(2023年8月)
※3 学び直し:業務の時間外に、仕事やキャリアに関して、継続して学習すること。
※4 趣味学習層:仕事やキャリアに関連する学習には積極的ではないが、業務外の時間を使って、仕事やキャリアとは無関係の趣味に関する学習を継続している層
【学び直しのタイプ】 本調査では、学び直す意欲と学習実施状況に基づき、以下の3タイプ(詳細6タイプ)に分類。
[画像1: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-19a077be161c6c80bbb0-0.jpg ]
■主なトピックス ※トピックスの詳細については「主なトピックス(詳細)」をご確認ください
1. ミドル・シニアの趣味の学習実態と学習の効果 「仕事・収入面」、「心理面」
1. ミドル・シニア就業者の中で、仕事やキャリアに関することを学び直している「学び直し層」は14.4%。そのうち、4.4%が同時に趣味の学習もしており、趣味の学習だけをしている「趣味学習層(8.2%)」と合わせると、12.6%が趣味の学習を行っている。
2. 30代後半は学び直し層・趣味学習層ともに多いが、40代〜50代前半にかけていずれも減少。50代後半〜60代に再び趣味学習層が増加。学び直し層はより減少する。
3. 「広報・宣伝・編集」「コンサルタント」「教育関連」「Webクリエイティブ」などは、学び直し層、趣味学習層ともに多い。知的でクリエイティブな職種は、仕事・趣味問わず学習行為に積極的なことがうかがえる一方で、学び直しはせず趣味の学びしかしていない人も多い。
4. ミドル・シニア就業者の趣味の学習内容としては、「文化(学問、芸術など)」が最も多く、32.2%を占める。次いで、「語学」、「ビジネス・仕事(投資関連含む)」、「スポーツ・アウトドア」が続く。
5. 趣味の学習を通じて半数が人間関係の拡大、4割が将来の生活やキャリア、仕事の意欲向上の効果を実感。
6. 趣味学習の習熟度(学習分野の習得度合い)が高いほど、仕事や収入への波及効果を実感。
7. 「新たな収入源につながった」と答えた割合が多い趣味の学習内容は、「資産形成・資産運用」「経済・金融」「科学技術・工学」「介護」等。 「宗教」「読書」「歴史」などは収入源につながっている割合が少ない。
8. 趣味の学習を通じて、「仕事の成果向上」や「収入源の増加」などを感じるミドル・シニア就業者ほど、将来のキャリアや収入への不安が少ない。
9. 「コミュニティ参加型」の学び方が、趣味の学習による仕事や収入への効果が高い傾向。
10. 「学ぶことが楽しい」といった趣味の学習による幸福感を感じる割合は、学習期間3か月〜6か月未満で急激に高まり、学び直し層よりも短期間で幸福感を感じる傾向。
2. 意欲あり趣味層と学び直し層の類似点
11. 意欲あり趣味層(仕事やキャリアに関することを学び直す意欲があるが趣味の学習だけしている)は、ミドル・シニア就業者の学び直しを促す上で重要なポイントとなる「個人特性」や「学び方」などが、学び直し層と類似しており、その意味で、学び直しのポテンシャルがあると言える。
12. しかし、意欲あり趣味層は、仕事やキャリアに関することを学び直す意欲や行動を高める「仕事と興味関心の一致度」や「キャリアのセルフアウェアネス※5」が学び直し層よりも低い(その他の層よりは学び直し層に近い)。
3. 意欲あり趣味層が学び直し層に移行するにはどうしたらよいか
13. 「キャリアのセルフアウェアネス」「仕事と興味関心の一致度」は、キャリア自律支援策や、育成支援策を受けているミドル・シニア就業者で高い傾向がある。キャリア自律支援策や育成支援策が、意欲あり趣味層の学び直しを促進することが示唆された。
■主なトピックス(詳細)
1. ミドル・シニアの趣味の学習実態と学習の効果 「仕事・収入面」、「心理面」
1. ミドル・シニア就業者の中で、仕事やキャリアに関することを学び直している「学び直し層(14.4%)」のうち、4.4%が同時に趣味の学習も実施。趣味の学習だけしている「趣味学習層(8.2%)」と合わせると、12.6%が趣味の学習を行っている。
[画像2: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-d37376daeed1bbb8d908-1.jpg ]
以降は、趣味学習層(8.2%)に焦点をあて、分析した。
2. 30代後半は学び直し層(業務外の時間に仕事・キャリアに関する学習をする者。趣味の学習を並行する者も含む)・趣味学習層(業務外に趣味だけ学習)ともに多いが、40代〜50代前半にかけていずれも減少。50代後半〜60代に再び趣味学習層が増加。学び直し層はより減少。男女とも、年代の経過に伴い”C”型の動きをする。
[画像3: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-0f1cb107e3955537e90c-2.jpg ]
3. 「広報・宣伝・編集」「コンサルタント」「教育関連」「Webクリエイティブ」などは、学び直し層、趣味学習層ともに多い。知的でクリエイティブな職種は、仕事・趣味問わず学習行為に積極的なことがうかがえる一方で、学び直しはせず趣味の学びしかしていない人も多い。
[画像4: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-f0252d3b18c6b4d3b038-3.jpg ]
4. ミドル・シニア就業者の趣味の学習内容としては、「文化(学問、芸術など)」が最も多く、32.2%を占める。次いで、「語学」、「ビジネス・仕事(投資関連含む)」、「スポーツ・アウトドア」が続く。
[画像5: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-e0e2e244ddb2b36aaf9e-4.jpg ]
5. 趣味の学習を通じて、仕事や収入の面でどのような効果を実感しているかを見た。「人間関係が広がった」は約半数が実感。次いで、「社会に参加している実感が得られた(37.7%)」「将来の生活への不安が減った(37.3%)」が多い。社会関係資本の増加だけでなく、約4割は将来の生活やキャリア、仕事のモチベーションへの効果を感じている。
[画像6: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-d16c3afb329197a0e3a6-5.jpg ]
6. 趣味学習の習熟度(学習分野について習得している度合い)が高いほど、仕事や収入への波及効果を実感。特に、「報酬を受け取れる/社会に認められる」と答えた趣味学習層(約6%)は、半数以上が「新たな収入源につながった」等の効果を実感。
[画像7: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-25cb63ced780a4a253ab-6.jpg ]
7. 「新たな収入源につながった」割合が多い趣味の学習内容は、「資産形成・資産運用」「経済・金融」「科学技術・工学」「介護」等。 「宗教」「読書」「歴史」などは収入源につながっている割合が少ない。
[画像8: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-cf814ae4c4c762f28216-7.jpg ]
8. 趣味の学習を通じて、「仕事の成果向上」や「収入源の増加」といった仕事や収入への波及効果を実感しているミドル・シニア就業者ほど、将来のキャリアや収入への不安感・危機感が少ない。
[画像9: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-a5286d3042b1a859969c-9.jpg ]
9. 学び方のタイプにより、学習効果は異なる。趣味学習層は「コミュニティ参加型」が仕事や収入への効果を実感しやすく、特に「社会関係資本の増加」の実感度が高い。仲間と趣味について学ぶ活動は、仕事や収入にもつながりやすいことが分かる。学び直し層は「一人でコツコツ型」も仕事や収入への効果実感が高く、異なる傾向がある。
[画像10: https://prtimes.jp/i/111116/26/resize/d111116-26-f1a366560a35152ac68f-10.jpg ]
10. 「学ぶことが楽しい」といった趣味の学習による幸福感を感じる割合は、学習期間3か月〜6か月未満で急激に高まり、学び直し層よりも短期間で幸福感を感じる傾向。まずは幸福感を感じやすい趣味の学習に取り組むことを通じて、学習行為への抵抗感をなくすことが期待できると考えられる。
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2. 意欲あり趣味層と学び直し層の類似点
11. 意欲あり趣味層は、ミドル・シニア就業者の学び直しと関連する個人特性や過去経験、職場の人材マネジメント施策や学び方が、学び直し層と類似。具体的には、自分の興味関心を追求する行動や、学びを楽しむマインド、刺激を受けられる人脈に差がなかった。また、上司が学び直しに熱心、業務の負荷が低い、職務範囲が無限定、副業・兼業が自由といった環境面も差がなかった。意欲あり趣味層は、その他の多くの点でも学び直し層に近く、その意味で、学び直しのポテンシャルがあると言える。
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12. 意欲あり趣味層は、学び直す意欲や行動を高める「仕事と興味関心の一致度」「キャリアのセルフアウェアネス」「自己追求行動」のいずれも、他の分類に比べれば学び直し層に最も近い。特に、「自己追求行動」は、学び直し層と差がない。
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3. 意欲あり趣味層が学び直し層に移行するにはどうしたらよいか
13. 趣味学習層の「キャリアのセルフアウェアネス」「仕事と興味関心の一致度」は学び直し層に比べて低かったが、これらは、「キャリアプランニング研修」「キャリアの透明性(キャリアパスの明示、社内公募等)」「副業・兼業の自由さ」といったキャリア自律支援策や、「目標管理」といった育成支援策を受けているミドル・シニア就業者では高い傾向が見られる。そのため、これら施策で意欲あり趣味層の「キャリアのセルフアウェアネス」や「仕事と興味関心の一致度」が高まれば、学び直しの実施や趣味学習自体の仕事・収入への波及効果の増加につながる。
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■調査結果からの提言
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【はたらく個人へ向けて】
趣味の学習は、「人間関係が広がる」、「将来のキャリアや生活不安の解消に活きる」
大人になるにつれ、「学び」と聞くと資格取得や昇格試験のための机上の勉強が想起され、本来の楽しさから遠ざかってしまう人も少なくない。現在、ミドル・シニア層においても「リ・スキリング(学び直し)」が重要な課題となっているが、「学び」とは本来的に広く、多様であったことを思い返せば、職業的側面に限定されるものではない。本調査では、楽しみながら行っている趣味的領域の学習を通じ、仕事や収入への波及効果が確認された。趣味の学習は、熟練せずとも楽しみや喜びを感じられる傾向もあるため、自身のキャリアと結び付けることができれば、職業生活をより豊かにする機会ともなり得る。
学び方は人それぞれだが、コミュニティ参加型の趣味の学びは仕事にも活かされやすい
もし、仕事に関連した学び直しに二の足を踏むのならば、まずは興味・関心を向けられる趣味的領域の学びに踏みだしてみてはどうか。学ぶ内容や個人の学習観によって学び方も様々あるが、時に他者と関わり、教え・学び合う機会を持つことは、新たな人的ネットワークを築く事にもつながる。興味・関心を共にする仲間ができれば、そのコミュニティは職場でも家でもない、新たな居場所ともなり得る。ミドル・シニア層にとっては、趣味的学習を通じて多様な居場所を持つことが、将来のより豊かな生活につながるかもしれない。
【経営層・人事部門に向けて】
趣味的領域を学ぶ「趣味学習層」は、潜在的な「学び直し層」(仕事・キャリア領域を学ぶ層)として期待できる
日本の就業者は加齢とともに「学び」から遠ざかる傾向がある。刻々と変化するビジネス環境に適応していくためにも、従業員の学び直しを促進したいと考える組織は多い。しかし、その気のない者に対して組織側が一方的に手厚く教育訓練を課したところで、その効果は限定的なものとなろう。
趣味的領域に「学び」を見出している「趣味学習層」は、学びのレディネス(学習への前向きな態度・習慣)を有しているため、個人のキャリア意識を高める施策などを通じて仕事領域との接合を見いだせれば、学び直しへの移行が期待できる。学習の内容も大事だが、いかに従業員側の能動性を引き出し、学習への前向きな態度や習慣を促すかが重要なポイントとなる。
趣味学習層の学び直し層への移行には、キャリア意識を高めるための教育施策が有効
これまでの企業の人材育成において、「実務に直結する学び」には教育予算を充てるが、趣味的領域は福利厚生の位置づけとしていた組織は少なくない。変化の激しい今日、どのような学びが実務に直結し、何がしないのかの線引きは益々難しい。だとすれば、「何を学ぶか」ではなく、従業員の学ぶ姿勢(意欲)や学び得た有形・無形の資産を社内にいかに往還する(周囲に共有し、活かす)ことができているかを評価してはどうか。これは単に趣味活動を補助するのではなく、その活動の中に仕事にも活かしうる「学び」を見出すことのできる人財を育む施策と位置付けたい。
趣味の学習は、人脈を広げ、仕事への意欲を向上させる越境学習※6としての効果が期待できる
趣味の学習の学び方については「コミュニティ参加型(38.9%)」が最も多かった。興味・関心を共にする仲間と集って学び合う情景が目に浮かぶ。このような学び方は、社内外での多様な人脈形成につながり、仕事の成果や創造性が高まる傾向が確認された。従業員が自身の興味・関心に基づいた学びを行い、周囲と共有する機会を設けることは、非学習層の学習意欲を刺激することにもつながる可能性がある。このような試みとして、企業内の部活動など、趣味的活動や学習イベントを組織として開催する事例もあるが、自社らしい教育施策や組織開発施策としての工夫の余地も多分にあると考える。
※6 越境学習:法政大学大学院の石山 恒貴教授は、越境学習を「自分にとってのホームとアウェイを行き来することによる学び」と定義している。
●本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所+産業能率大学 齊藤研究室」と記載してください。
●調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/middle-senior-learning2.html
●構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
■調査概要
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■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
■【産業能率大学 経営学部 経営学科 齊藤弘通 教授】について
<https://www.sanno.ac.jp/undergraduate/about/faculty/ba/saito_hiromichi.html>
専門は人材育成論、質的調査法。慶應義塾大学文学部卒業、法政大学大学院政策創造研究科博士課程修了。博士(政策学)。専門社会調査士。産業能率大学総合研究所を経て現職。主に、高等教育機関における社会人教育の実態や学修効果、ビジネスパーソンの継続的な学び直しのあり方などを調査・研究。
■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。
はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。