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家電と自動車の利用者に対し省エネ行動を促すナッジ活用手法の確立に向けた大規模社会実証 平成29年度成果(速報)

家電の電力消費量及び自動車の燃料消費量の削減を目的とした社会実証を通じ、ナッジを活用したエネルギー使用量の見える化やアドバイスの提供による省エネ効果を確認

 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(本社:東京都千代田区、代表執行役社長:近藤聡、以下 DTC)、一般財団法人電力中央研究所(本部:東京都千代田区、理事長:各務正博、以下 電中研)、東京電力エナジーパートナー株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:川崎敏寛、以下、東電EP)、凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下 凸版印刷)は、環境省「平成29年度低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」の採択案件「家電・自動車等利用に関するナッジを活用した低炭素型行動変容モデルの構築」(以下、本事業)において、2017年7月から4件の実証を行いました。




 実証の結果、ナッジを活用した省エネ情報の提供によって、実証開始後に省エネ効果が定量的に観察されましたので平成29年度分の結果速報としてお知らせいたします。この結果は、数カ月という短い期間を対象としたものであるため、今後も継続的に省エネ効果を検証していく予定です。

 ナッジ(nudge)は、英語で「そっと後押しする」という意味を持つ言葉であり、2017年ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学の行動経済学者リチャード・セイラー氏と、ハーバード大学の法学者キャス・サンスティーン氏が提唱した行動変容を促すための方法論です。欧米では省エネ政策の立案や改善にナッジが反映されつつあり、日本においても環境省が主体となり行動科学的アプローチの普及を目指す「ナッジ・ユニット」を発足するなど、国内外でナッジを活用した取り組みが広がっています。

 そこで本事業では、家庭からのCO2排出量の7割を占める家庭の電力消費と自動車の燃料消費由来のCO2を削減可能な「省エネ行動を促すナッジ活用手法(低炭素型行動変容モデル)」の構築を目的とした実証を行いました。

 本事業の「背景および目的」、「各社の役割」については、2017年5月30日のリリース(https://www.toppan.co.jp/news/2017/05/newsrelease20170530.html)をご参照ください。


各実証の結果概要
 平成29年度に実施した実証では、家電利用時の省エネ行動を促進する実証3件と、自動車利用時の燃費改善行動(エコドライブ)を促進する実証1件を実施しました(一部の実証は継続中)。

【ラボ1:スマートメータ版ホームエナジーレポート実証】
■2017年12月中旬から、東電EPの契約者4万世帯に、スマートメータ版ホームエナジーレポート(以下、HER:Home Energy Report)を実証サービスとして郵送し、情報提供による省エネ効果の検証を行っています。
■電気使用量の特徴や省エネアドバイスを、行動科学の知見を応用してわかりやすく情報提供するという、海外の先行事例でも重視されてきたHERの基本的手法に加えて、本実証では、スマートメータから取得する1時間ごとのデータからHERを発行するという新たな取り組みを行っています(図1)。
[画像1: https://prtimes.jp/i/33034/33/resize/d33034-33-705743-0.jpg ]


■ランダム化比較対照実験と呼ばれる手法に基づき、HERを郵送する4万世帯と郵送しない2万世帯の使用量を比較することで省エネ効果を明らかにするとともに、郵送4万世帯の中でも、情報提供方法の工夫(6項目)による効果向上余地を検証しています(図2)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/33034/33/resize/d33034-33-837387-1.jpg ]



■省エネ効果は郵送開始後から拡大傾向にあり、3カ月経過時点において、郵送世帯全体で1%弱の省エネ効果が確認されています(図3)。郵送頻度や使用量比較方法など様々な条件下で情報提供していますが、それらを総合しても、郵送していない世帯の使用量を統計的有意に下回っています。

[画像3: https://prtimes.jp/i/33034/33/resize/d33034-33-172063-2.jpg ]


■郵送世帯の中でも、自世帯の前年同月使用量との比較を掲載したHERと比べて、他世帯の同月使用量との比較を掲載したHERを郵送している世帯の省エネ効果が大きい点が特徴的です(図4)。行動科学では、人には周囲の行動に合わせようとする同調性があると考えられていますが、本速報は、省エネ的な(省エネが進んでいる)世帯や平均的な世帯の使用量を目にすることで規範意識(社会において他者の目を気にすること)が高まるという仮説を裏付けるものであり、ナッジの有効性を示唆するものです。
[画像4: https://prtimes.jp/i/33034/33/resize/d33034-33-712198-3.jpg ]



【ラボ2:スマートフォンを活用した家庭向け省エネサービス実証】
■東電EPの契約者2千世帯に、スマートフォンを活用したアプリを実証サービスとして提供し、情報提供による省エネ効果の検証を行っています。

■各家庭に設置する専用デバイスと連携したアプリでは、スマートメータで計測したデータ及び分電盤主要回路から取得したデータに基づくリアルタイム使用量の閲覧やプッシュ通知受信(図5)、及びエアコンなどの遠隔操作ができます。利便性向上と省エネ促進の両立を図る点や、一般的な家庭用エネルギーマネジメントシステム(HEMS)よりもシステムが簡易である点が特徴的です。
[画像5: https://prtimes.jp/i/33034/33/resize/d33034-33-469378-4.jpg ]


■アプリ提供世帯の省エネ効果は、マッチング法と呼ばれる手法に基づき、使用量傾向が似ているアプリ非提供2千世帯の使用量と比較することで検証しています。真冬で使用量が多くなる2月には、約3%の省エネ効果が確認されました。

■12月中旬からは、使用量変化についてお知らせする各種プッシュ通知の実証を行いました。その結果、月・週・日の使用量が過去の水準を上回った場合に配信するアラート(例:昨日までに先週を超過)の開封率が、月・週の初めに定期的に配信するレポート(例:先週は先々週より○%増)の開封率よりも高い傾向にあることが明らかになりました(図6)。また、使用量の増減に応じて、「省エネ余地がありそう」「すばらしいですね」といったフレーズを加えることで、開封率が高くなる傾向も見られました。このようなパーソナル化された適時の情報配信や、行動科学を意識した表現は、省エネ意識の向上を図ることができると考えられています。
[画像6: https://prtimes.jp/i/33034/33/resize/d33034-33-441720-5.jpg ]



【ラボ3:新築戸建住宅を対象とした省エネルギーアドバイス実証】
■HEMSが導入された新築戸建住宅の居住世帯を対象に、住宅オーナー向けの会報誌への展開を見据えて、紙媒体による汎用的な省エネルギーアドバイス(以下、エコライフアドバイス)を提供することによる省エネ効果の検証を行いました。

■省エネ効果は、A4版両面のエコライフアドバイスを郵送する世帯(介入群)と郵送をしない世帯(対照群)の電力使用量や省エネ行動を比較することで検証しました。なお、介入群と対照群はそれぞれ、夏期約260世帯ずつ、冬期約590世帯ずつで、介入群には夏期と冬期それぞれでエコライフアドバイスを3回送付しました。

■夏期実証後に実施したアンケート結果によれば、介入群の省エネ行動の実施数は対照群の実施数を統計的に上回りました(図7)。
[画像7: https://prtimes.jp/i/33034/33/resize/d33034-33-976748-6.jpg ]

■夏期のエアコン消費電力量を削減するための対策としてすだれ設置を取り上げ、行動に対する負担が少ないことを強調するために「すだれフック」で簡単に取り付けられることをアドバイスしまし た。その結果、介入群の3%弱の世帯で「すだれフック」が入手され、対照群に比べて入手世帯が多い傾向が見られました。

■夏期において、介入群の電力消費量に削減傾向が観察されました。冬期においても介入群内で行動科学を適用したグループは適用しないグループに比べて電力消費量に削減傾向が観察されました。なお、夏期及び冬期における介入群と対照群の電力消費量について、統計的に有意な差は確認できませんでした。


【ラボ4:スマートフォンアプリを活用したエコドライブサービスの実証研究】
■乗用車の保有モード燃費(新車だけでなくすでに使用されている車も含んだ我が国全体での保有車両のカタログ燃費の平均値)は改善していますが、実走行燃費(実際の走行時の燃費)の改善率は保有モード燃費との改善率から年々乖離する傾向にあります。

■実走行燃費を改善して車両の省エネ性能を最大限発揮できるようドライバーの行動変容を促すことを目的として、スマートフォンアプリ(「くるま省エネ」アプリ)を活用したエコドライブサービスの確立に向けた検討を行いました。

■実走行燃費については、ドライバーの運転特性や路面状態や渋滞等の周辺環境の影響に関するメカニズムが十分に明らかにされていないため、まずドライバーの運転特性と乗用車の燃料消費に関するメカニズムの解析を行いました。

■乗用車のエコドライブ促進を目的とした実証については、海外を含め大規模な事例がないことから、平成29年度は小規模なプレ実証としました。プレ実証では、「くるま省エネ」アプリを利用する25名と利用しない50名の燃料消費量を比較することで燃費改善効果の把握が可能かを検証しました(図8)。
[画像8: https://prtimes.jp/i/33034/33/resize/d33034-33-717782-7.jpg ]


■平成29年度の成果としては、速度変化から燃料消費量を推定するための燃費モデルを構築し、複数の走行シナリオにおける燃料消費量を推定したところ、急激な加減速の抑制と等速走行が燃費改善に大きく寄与することが確認されました。

■プレ実証を通じて、スマートフォンアプリを通じたエコドライブの促進により、エコドライブ行動が促進可能であることが示唆されました。また、エコドライブ促進によって燃費改善効果が高まる傾向にあることが示唆されました。


今後の取り組み
 平成30年度も引き続き、産官学が連携したコンソーシアム体制で臨みます。本コンソーシアムには、DTC、電中研、東電EP、凸版印刷の4社に加えて、オリックス自動車株式会社、有限責任監査法人トーマツ、公益財団法人未来工学研究所、イデアラボ、国立大学法人東京大学 先端科学技術研究センター(西成活裕研究室)、山梨県 エネルギー政策課といった、家電や自動車利用の省エネ化に取り組むプレーヤーが協力事業者として参画します。

 平成30年度からは、これまでの取り組みに加えて新たにブロックチェーン技術を活用した省エネ行動を促進する仕組みについても検討を開始し、プレ実証を行うことも予定しています。具体的には、ブロックチェーン技術を用いたシステム(プロトタイプ)を構築し、個人単位におけるエネルギー消費量やCO2排出量、行動履歴といったデータの取得を目指します。また、将来的な普及方策として、個人のCO2削減量に応じてインセンティブを付与するスキームや、事業者が省エネ・省CO2を促進したことを定量的に示すことができるような仕組みについてのプレ実証を行います。


【平成30 年度以降の各テーマにおける各社の役割】

[画像9: https://prtimes.jp/i/33034/33/resize/d33034-33-311177-8.jpg ]


以 上
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