リナグリプチンの新たな臨床試験結果により、スルホニル尿素薬と同等の有効性があり、スルホニル尿素薬より心血管イベントが少ないことが示された
[11/07/19]
提供元:PRTIMES
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メトホルミンとの初回併用投与におけるリナグリプチンの有意な有効性と良好な忍容性が第3相臨床試験で裏付けられた
(この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国イーライリリーが6月27日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したものです。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。)
2011年6月27日、ドイツ、インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は本日、リナグリプチンが第3相臨床試験結果により血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善することを発表しました。リナグリプチン+メトホルミン併用投与とスルホニル尿素薬+メトホルミン併用投与とを検討した2年以上の長期試験では、血糖降下作用(ヘモグロビンA1c[HbA1c(NGSP値)]測定の評価)においてリナグリプチンはスルホニル尿素薬と同等であることが明らかになったほか、スルホニル尿素薬と比べて、体重減少が認められ(-1.4 kg vs. +1.3 kg、調整平均差、-2.7 kg、p<0.0001)、低血糖発現率が減少し(7.5 % vs. 36.1 %、p<0.0001)、心血管イベントが減少しました(1.5 % vs. 3.4%、相対リスク 0.46 [0.23〜0.91] p=0.02)1。この結果は、6月24日〜28日にサンディエゴにて開催される第71回米国糖尿病学会(ADA)にて発表される予定です。
ベーリンガーインゲルハイム 医薬開発担当上級副社長 Prof.クラウス・デュギは次のように述べています。「リナグリプチンとメトホルミンの併用投与により、スルホニル尿素薬と比べて有意な血糖コントロールが得られました。また、スルホニル尿素薬と異なり、低血糖発現率や体重の増加を伴いませんでした。さらに、この併用療法により心血管イベントの相対リスクが50%減少しました。この試験結果は、これまでに得られているリナグリプチンの心血管イベントに関するデータを裏付けるものです。」
リナグリプチンを24週間にわたって検討した別の試験では、血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者にリナグリプチン 2.5 mg 1日2回投与とメトホルミン 1,000 mg 1日2回投与を併用投与したところ、平均HbA1cにベースラインから最大1.7%の減少が認められました2。リナグリプチン+メトホルミン併用投与は忍容性が良好であるうえ、リナグリプチン、メトホルミンをそれぞれ単独投与したときよりも血糖コントロールの改善が見られました。同試験では、リナグリプチン+メトホルミン併用投与で体重増加は認められず、低血糖リスクもきわめて低いものでした(5例、1.8%)2。血糖コントロール不十分な患者(ベースラインHbA1c>11%)からなる非盲検群では、リナグリプチン 2.5 mg 1日2回投与とメトホルミン 1,000 mg 1日2回投与の併用によって、HbA1cが3.7%減少しました2。
また、腎機能障害の程度が正常・軽度・中等度・重度の2型糖尿病患者を対象にリナグリプチンの検討も行われました3。3件のランダム化プラセボ対照第3相臨床試験(n=2,141)の分析により、リナグリプチン投与患者において、腎機能の程度にかかわらず、プラセボ補正後平均HbA1cに一貫して確実な減少が認められました:腎機能正常患者-0.63%(p<0.0001)、軽度・中等度の腎機能障害患者-0.69%(それぞれp<0.0001, p=0.0174)3。別の試験では、重症腎機能障害(RI)があり、血糖コントールも十分でない2型糖尿病患者を対象にリナグリプチンを投与したところ、投与から12週間後にプラセボ補正後平均HbA1cに-0.6%(p<0.0001)という有意な減少が認められました4。いずれの群でも腎機能は安定し、高リスク集団にかかわらず心血管死は各群に1人ずつでした4。
ベーカーIDI心臓病・糖尿病研究所(オーストラリア) 副所長でチーフサイエンティフィックオフィサーのMark Cooper(マーク・クーパー)医師は次のように述べています。「2型糖尿病では腎機能の低下を伴うことが多く、それによって血糖降下剤の選択が限定されます。この試験でリナグリプチンは、腎機能の程度にかかわらず良好な安全性を示したうえ、腎臓病を合併している、かなり進行した段階の2型糖尿病患者においてさえ、HbA1cを低下させるという効果を示しました。」
糖尿病について
1型および2型糖尿病の患者数は米国で約2,580万人5、世界で2億2,000万人6と推定されています。これらの患者の大半は2型糖尿病であり、糖尿病全体の95%を占めるとされています。糖尿病は、インスリンというホルモンを体が適切に生成したり、使用したりできない場合に発症する慢性疾患です7。
リナグリプチン試験について
2年間にわたりスルホニル尿素薬と同等の有効性を示したうえ、心血管イベントに関する安全性を向上(39-LB)1
この2年間にわたる試験では、血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者を対象に、継続投与中のメトホルミン(1,500 mg/日以上、10週間以上)にリナグリプチンまたはスルホニル尿素薬を追加投与した場合の長期的な有効性と安全性を検討しました。
・ 継続的にメトホルミンを投与していた(1,500 mg/日以上、10週間以上)2型糖尿病患者に、リナグリプチン 5 mg/日(N=764)投与群またはスルホニル尿素薬1〜4 mg/日(N=755)投与群に無作為に分けた。治療期間は2年間。
・ 治験責任医師が定義した治験薬関連の低血糖がみられた患者数は、スルホニル尿素薬併用投与群と比べてリナグリプチン併用投与群の方が少なかった。体重もリナグリプチン併用投与群では減少がみられたが、スルホニル尿素薬併用投与群では増加した(-1.4 kg vs. +1.3 kg、調整平均差、−2.7 kg、p<0.0001)。
・ 心血管イベントがみられた患者数は、スルホニル尿素薬併用投与群(26人)においてリナグリプチン併用投与群(13人)の2倍となりました。リナグリプチン併用投与群は、複合心血管エンドポイントの相対リスクに50%の減少がみられた(RR、0.50、95% CI、0.26〜0.96、p=0.04)。
・ ベースラインの特性は両群でバランスがとれていた(両群共にHbA1c 7.7%)。
・ 有効性エンドポイントは、HbA1cのベースラインからの変化量であった。安全性エンドポイントでは、事前に規定された心血管イベントを評価した。本試験では2年間にわたり、メトホルミンの追加投与としてのリナグリプチン(n=764)とスルホニル尿素薬 1〜4 mg/日(n=755)を評価した。
血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者におけるメトホルミンとの併用投与(279-OR)2
この24週間にわたる試験では、血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者におけるリナグリプチン+メトホルミン併用投与を検討しました。
・ リナグリプチン2.5 mg 1日2回+メトホルミン500 mgまたは1,000 mgの併用投与により、プラセボ補正後平均HbA1cにそれぞれ-1.3%、-1.7%の減少がみられた。この併用投与の治療法はいずれも、単独療法群より優れていた。血糖コントロール不十分な患者において、HbA1cのベースラインからの平均変化量は-3.7%であった。
・ リナグリプチン+メトホルミン併用投与は忍容性が良好であったうえ、リナグリプチン、メトホルミンをそれぞれ単独投与したときよりも血糖コントロールを改善した。有害事象発現率に群間差はみられなかった。併用投与中の低血糖イベント総数は少なかった(合計で、リナグリプチン2.5 mg +メトホルミン500 mgまたは1,000 mg投与群へランダム化された患者のうち5例[1.8%])。リナグリプチン2.5 mg +メトホルミン500 mgまたは1,000 mg併用投与群の治療後の体重差は、メトホルミン1,000 mg投与群に対し-0.23 kgであった。
・ 治療群は、リナグリプチン2.5 mg 1日2回+メトホルミン500 mg(低用量)1日2回併用投与群とリナグリプチン2.5 mg 1日2回+メトホルミン1,000 mg(高用量)1日2回併用投与群の2群、リナグリプチン 5 mg 1日1回投与群、メトホルミン 500 mg 1日2回投与群、メトホルミン1,000 mg 1日2回投与群、プラセボ投与群の計6群であった。ベースラインHbA1cが11%以上だった患者は、リナグリプチン2.5 mg +メトホルミン1,000 mg 1日2回の非盲検併用投与群であった(n=66)。平均ベースラインHbA1cは8.5〜8.7%であり、非盲検群は11.8%であった。
腎機能障害のある/ない2型糖尿病患者における有効性と安全性(1068-P)3
この3件の国際臨床試験の分析では、腎機能障害のある2型糖尿病患者、ない2型糖尿病患者における、リナグリプチンの有効性と安全性への腎機能の影響を検討しました。
・ リナグリプチン治療から24週間後、全3群において、腎機能(糸球体ろ過率[GFR]および腎機能障害マーカーによって評価し、尿アルブミン/クレアチニン比で表す)は影響を受けなかった。リナグリプチン投与群の患者には、全3群にわたり、一貫したプラセボ補正後平均HbA1cの変化がみられた。ベースラインからのHbA1c変化量は、RI正常群および軽度RI群の両方で-0.6%、中等度RI群で-0.7%であった。有意な群間差はみられなかった(p=0.865)。
・ リナグリプチンは全般的に忍容性が良好であった。正常/軽度RI/中等度RI群でリナグリプチン投与による重篤な有害事象を報告した患者の割合はそれぞれ2.5%、5.4%、3.7%であり、プラセボと同程度であった(それぞれ3.4%、3.8%、8.3%)。
・ いずれの試験においても主要評価項目はベースラインから24週目までのHbA1cの変化量であった。本データでは、正常群(GFR 80 mL/分以上、n=1,684)、軽度RI群(GFR 50 mL/分から80 mL/分未満、n=418)、中等度RI群(GFR 30 mL/分から50 mL/分未満、n=39)の2型糖尿病患者2,141人について評価した。
重度腎機能障害のある患者における有効性と安全性(413-PP)4
本試験では、2型糖尿病(HbA1c 7%〜10%と定義)に加えて重度RI(GFR 30 mL/分/1.73 m2未満と定義)のある患者における、リナグリプチンの有効性および安全性への腎機能の影響を検討しました。
・ 血糖コントロール不十分な患者(ベースラインHbA1c 9%以上と定義)のサブグループにおけるベースラインからの変化量は、プラセボ投与群(n=13、‐0.28%)よりもリナグリプチン5mg1日1回投与群(n=11、p= 0.0021、-1.5%)の方が有意に改善した。全患者のベースラインからの変化量は、リナグリプチン5mg1日1回投与群(n=66、p= 0.0001、-0.8%)とプラセボ投与群(n=62、-0.2%)で同程度であった。
・ 重篤な有害事象を報告した患者の割合は、リナグリプチン投与群でそれぞれ86.8%、23.5%、プラセボ投与群でそれぞれ81.5%、26.2%であった。低血糖発現率は、リナグリプチン投与群51.5%、プラセボ投与群27.7%であった。なお、リナグリプチン投与群患者66人のうち61人がインスリン投与および/またはスルホニル尿素薬の治療を受けていた患者であり、用量を変更しなかったことが同群の低血糖を発現させたことが示唆される。腎機能は試験期間を通して両投与群で安定しており、この高リスク集団にもかかわらず心血管死も少数であった(リナグリプチン投与群1人[1.5%]、プラセボ投与群3人[4.6%])。
・ 主要評価項目は、ベースラインから12週目までのHbA1cの変化量であった。本試験では、糖尿病に対するインスリン投与および/またはスルホニル尿素薬の治療をこれまで通り継続した患者を対象に、リナグリプチン 5 mg 1日1回投与群(n=68)とプラセボ投与群(n=65)とを比較検討した。
リナグリプチンについて:
リナグリプチンは、インクレチンホルモンであるGLP-1(グルカゴン様ペプチド‐1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の不活化に関与する酵素DPP-4(ジペプチジル・ペプチダーゼ-4)の阻害剤です。リナグリプチンは、DPP-4を選択的に阻害することにより、インクレチンホルモンであるGLP-1の血中濃度を高めることで、血糖低下作用を発揮します8。DPP-4阻害剤は、血糖依存的にインスリン分泌を促進するため、単独投与においては低血糖の発現リスクが低いと言われています。また、本剤は主に糞中に未変化体のまま排泄される世界初の胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤です9,10。
リナグリプチンは2011年5月に米国で承認されました。また、日本では、7月1日に食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られない2型糖尿病患者の治療薬(単独療法)として、日本ベーリンガーインゲルハイムが、トラゼンタ(R)錠 5mg(一般名:リナグリプチン)」の製造販売承認を取得しました。トラゼンタ(R)は日本で、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造、販売を行い、日本イーライリリーと一緒に共同販促(コ・プロモーション)をいたします。日本での効能効果と用法用量は、以下の通りです。
【日本での効能効果】
2型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る)
【日本での用法用量】
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する」になります。
このプレスリリースには、2型糖尿病治療薬であるリナグリプチン錠について、リリーの現在の予想に基づく前向き声明が含まれていますが、医薬品の研究開発プロセスおよび商品化には常に多大なリスクと不確実性が伴います。今後の試験結果や患者経験がこれまでに試験から得られた知見と一致するという保証も、リナグリプチンが商業的に成功を収めるという保証もありません。こうしたリスクや不確実性については、米国証券取引委員会に提出されたリリーの最新のフォーム10-Kおよび10-Qに記載されています。なお、リリーは将来の予想に関する記述を更新する義務を負いません。
REFERENCES
1. Gallwitz B, Uhlig-Laske B, Bhattacharaya S, et al. Linagliptin has Similar Efficacy to Glimepiride but Improved Cardiovascular Safety over 2 Years in Patients with Type 2 Diabetes Inadequately Controlled on Metformin 71th Scientific Sessions of the American Diabetes Association, San Diego, California. 2011;Poster 39-LB.
2. Haak T, Meinicke T, Jones R, et al. Combination of Linagliptin and Metformin Improves Glycemic Control in Type 2 Diabetes: A Randomized Trial with an Open-Label Arm in Patients with Poor Glycemic Control. 71th Scientific Sessions of the American Diabetes Association, San Diego, California. 2011;Oral presentation 279.
3. Cooper M, von Eynatten M, Emser A, et al. Efficacy and Safety of Linagliptin in Patients With Type 2 Diabetes With or Without Renal Impairment: Results from a Global Phase 3 Program. 71th Scientific Sessions of the American Diabetes Association, San Diego, California. 2011;1068-P.
4. Sloan L, Newman J, Sauce C, et al. Safety and Efficacy of Linagliptin in Type 2 Diabetes Patients with Severe Renal Impairment. 71th Scientific Sessions of the American Diabetes Association, San Diego, California. 2011;Poster 413-PP.
5. International Diabetes Federation. IDF Atlas. 2010 [cited 2010; Available from: http://www.idf.org/types-diabetes
6. International Diabetes Federation. Diabetes prevalence. 2009 [cited 2009 September 2009]; Available from:
7. World Health Organization. Fact sheet N°312. 2011:http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs312/en/.
8 Rauch T, et al: 承認時資料 2型糖尿病患者を対象としたバイオマーカー検討試験
9 林直之他:承認時資料 健康成人を対象とした単回投与試験
10 林直之 他:承認時資料 健康成人を対象とした反復投与試験
(この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国イーライリリーが6月27日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したものです。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。)
2011年6月27日、ドイツ、インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は本日、リナグリプチンが第3相臨床試験結果により血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善することを発表しました。リナグリプチン+メトホルミン併用投与とスルホニル尿素薬+メトホルミン併用投与とを検討した2年以上の長期試験では、血糖降下作用(ヘモグロビンA1c[HbA1c(NGSP値)]測定の評価)においてリナグリプチンはスルホニル尿素薬と同等であることが明らかになったほか、スルホニル尿素薬と比べて、体重減少が認められ(-1.4 kg vs. +1.3 kg、調整平均差、-2.7 kg、p<0.0001)、低血糖発現率が減少し(7.5 % vs. 36.1 %、p<0.0001)、心血管イベントが減少しました(1.5 % vs. 3.4%、相対リスク 0.46 [0.23〜0.91] p=0.02)1。この結果は、6月24日〜28日にサンディエゴにて開催される第71回米国糖尿病学会(ADA)にて発表される予定です。
ベーリンガーインゲルハイム 医薬開発担当上級副社長 Prof.クラウス・デュギは次のように述べています。「リナグリプチンとメトホルミンの併用投与により、スルホニル尿素薬と比べて有意な血糖コントロールが得られました。また、スルホニル尿素薬と異なり、低血糖発現率や体重の増加を伴いませんでした。さらに、この併用療法により心血管イベントの相対リスクが50%減少しました。この試験結果は、これまでに得られているリナグリプチンの心血管イベントに関するデータを裏付けるものです。」
リナグリプチンを24週間にわたって検討した別の試験では、血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者にリナグリプチン 2.5 mg 1日2回投与とメトホルミン 1,000 mg 1日2回投与を併用投与したところ、平均HbA1cにベースラインから最大1.7%の減少が認められました2。リナグリプチン+メトホルミン併用投与は忍容性が良好であるうえ、リナグリプチン、メトホルミンをそれぞれ単独投与したときよりも血糖コントロールの改善が見られました。同試験では、リナグリプチン+メトホルミン併用投与で体重増加は認められず、低血糖リスクもきわめて低いものでした(5例、1.8%)2。血糖コントロール不十分な患者(ベースラインHbA1c>11%)からなる非盲検群では、リナグリプチン 2.5 mg 1日2回投与とメトホルミン 1,000 mg 1日2回投与の併用によって、HbA1cが3.7%減少しました2。
また、腎機能障害の程度が正常・軽度・中等度・重度の2型糖尿病患者を対象にリナグリプチンの検討も行われました3。3件のランダム化プラセボ対照第3相臨床試験(n=2,141)の分析により、リナグリプチン投与患者において、腎機能の程度にかかわらず、プラセボ補正後平均HbA1cに一貫して確実な減少が認められました:腎機能正常患者-0.63%(p<0.0001)、軽度・中等度の腎機能障害患者-0.69%(それぞれp<0.0001, p=0.0174)3。別の試験では、重症腎機能障害(RI)があり、血糖コントールも十分でない2型糖尿病患者を対象にリナグリプチンを投与したところ、投与から12週間後にプラセボ補正後平均HbA1cに-0.6%(p<0.0001)という有意な減少が認められました4。いずれの群でも腎機能は安定し、高リスク集団にかかわらず心血管死は各群に1人ずつでした4。
ベーカーIDI心臓病・糖尿病研究所(オーストラリア) 副所長でチーフサイエンティフィックオフィサーのMark Cooper(マーク・クーパー)医師は次のように述べています。「2型糖尿病では腎機能の低下を伴うことが多く、それによって血糖降下剤の選択が限定されます。この試験でリナグリプチンは、腎機能の程度にかかわらず良好な安全性を示したうえ、腎臓病を合併している、かなり進行した段階の2型糖尿病患者においてさえ、HbA1cを低下させるという効果を示しました。」
糖尿病について
1型および2型糖尿病の患者数は米国で約2,580万人5、世界で2億2,000万人6と推定されています。これらの患者の大半は2型糖尿病であり、糖尿病全体の95%を占めるとされています。糖尿病は、インスリンというホルモンを体が適切に生成したり、使用したりできない場合に発症する慢性疾患です7。
リナグリプチン試験について
2年間にわたりスルホニル尿素薬と同等の有効性を示したうえ、心血管イベントに関する安全性を向上(39-LB)1
この2年間にわたる試験では、血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者を対象に、継続投与中のメトホルミン(1,500 mg/日以上、10週間以上)にリナグリプチンまたはスルホニル尿素薬を追加投与した場合の長期的な有効性と安全性を検討しました。
・ 継続的にメトホルミンを投与していた(1,500 mg/日以上、10週間以上)2型糖尿病患者に、リナグリプチン 5 mg/日(N=764)投与群またはスルホニル尿素薬1〜4 mg/日(N=755)投与群に無作為に分けた。治療期間は2年間。
・ 治験責任医師が定義した治験薬関連の低血糖がみられた患者数は、スルホニル尿素薬併用投与群と比べてリナグリプチン併用投与群の方が少なかった。体重もリナグリプチン併用投与群では減少がみられたが、スルホニル尿素薬併用投与群では増加した(-1.4 kg vs. +1.3 kg、調整平均差、−2.7 kg、p<0.0001)。
・ 心血管イベントがみられた患者数は、スルホニル尿素薬併用投与群(26人)においてリナグリプチン併用投与群(13人)の2倍となりました。リナグリプチン併用投与群は、複合心血管エンドポイントの相対リスクに50%の減少がみられた(RR、0.50、95% CI、0.26〜0.96、p=0.04)。
・ ベースラインの特性は両群でバランスがとれていた(両群共にHbA1c 7.7%)。
・ 有効性エンドポイントは、HbA1cのベースラインからの変化量であった。安全性エンドポイントでは、事前に規定された心血管イベントを評価した。本試験では2年間にわたり、メトホルミンの追加投与としてのリナグリプチン(n=764)とスルホニル尿素薬 1〜4 mg/日(n=755)を評価した。
血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者におけるメトホルミンとの併用投与(279-OR)2
この24週間にわたる試験では、血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者におけるリナグリプチン+メトホルミン併用投与を検討しました。
・ リナグリプチン2.5 mg 1日2回+メトホルミン500 mgまたは1,000 mgの併用投与により、プラセボ補正後平均HbA1cにそれぞれ-1.3%、-1.7%の減少がみられた。この併用投与の治療法はいずれも、単独療法群より優れていた。血糖コントロール不十分な患者において、HbA1cのベースラインからの平均変化量は-3.7%であった。
・ リナグリプチン+メトホルミン併用投与は忍容性が良好であったうえ、リナグリプチン、メトホルミンをそれぞれ単独投与したときよりも血糖コントロールを改善した。有害事象発現率に群間差はみられなかった。併用投与中の低血糖イベント総数は少なかった(合計で、リナグリプチン2.5 mg +メトホルミン500 mgまたは1,000 mg投与群へランダム化された患者のうち5例[1.8%])。リナグリプチン2.5 mg +メトホルミン500 mgまたは1,000 mg併用投与群の治療後の体重差は、メトホルミン1,000 mg投与群に対し-0.23 kgであった。
・ 治療群は、リナグリプチン2.5 mg 1日2回+メトホルミン500 mg(低用量)1日2回併用投与群とリナグリプチン2.5 mg 1日2回+メトホルミン1,000 mg(高用量)1日2回併用投与群の2群、リナグリプチン 5 mg 1日1回投与群、メトホルミン 500 mg 1日2回投与群、メトホルミン1,000 mg 1日2回投与群、プラセボ投与群の計6群であった。ベースラインHbA1cが11%以上だった患者は、リナグリプチン2.5 mg +メトホルミン1,000 mg 1日2回の非盲検併用投与群であった(n=66)。平均ベースラインHbA1cは8.5〜8.7%であり、非盲検群は11.8%であった。
腎機能障害のある/ない2型糖尿病患者における有効性と安全性(1068-P)3
この3件の国際臨床試験の分析では、腎機能障害のある2型糖尿病患者、ない2型糖尿病患者における、リナグリプチンの有効性と安全性への腎機能の影響を検討しました。
・ リナグリプチン治療から24週間後、全3群において、腎機能(糸球体ろ過率[GFR]および腎機能障害マーカーによって評価し、尿アルブミン/クレアチニン比で表す)は影響を受けなかった。リナグリプチン投与群の患者には、全3群にわたり、一貫したプラセボ補正後平均HbA1cの変化がみられた。ベースラインからのHbA1c変化量は、RI正常群および軽度RI群の両方で-0.6%、中等度RI群で-0.7%であった。有意な群間差はみられなかった(p=0.865)。
・ リナグリプチンは全般的に忍容性が良好であった。正常/軽度RI/中等度RI群でリナグリプチン投与による重篤な有害事象を報告した患者の割合はそれぞれ2.5%、5.4%、3.7%であり、プラセボと同程度であった(それぞれ3.4%、3.8%、8.3%)。
・ いずれの試験においても主要評価項目はベースラインから24週目までのHbA1cの変化量であった。本データでは、正常群(GFR 80 mL/分以上、n=1,684)、軽度RI群(GFR 50 mL/分から80 mL/分未満、n=418)、中等度RI群(GFR 30 mL/分から50 mL/分未満、n=39)の2型糖尿病患者2,141人について評価した。
重度腎機能障害のある患者における有効性と安全性(413-PP)4
本試験では、2型糖尿病(HbA1c 7%〜10%と定義)に加えて重度RI(GFR 30 mL/分/1.73 m2未満と定義)のある患者における、リナグリプチンの有効性および安全性への腎機能の影響を検討しました。
・ 血糖コントロール不十分な患者(ベースラインHbA1c 9%以上と定義)のサブグループにおけるベースラインからの変化量は、プラセボ投与群(n=13、‐0.28%)よりもリナグリプチン5mg1日1回投与群(n=11、p= 0.0021、-1.5%)の方が有意に改善した。全患者のベースラインからの変化量は、リナグリプチン5mg1日1回投与群(n=66、p= 0.0001、-0.8%)とプラセボ投与群(n=62、-0.2%)で同程度であった。
・ 重篤な有害事象を報告した患者の割合は、リナグリプチン投与群でそれぞれ86.8%、23.5%、プラセボ投与群でそれぞれ81.5%、26.2%であった。低血糖発現率は、リナグリプチン投与群51.5%、プラセボ投与群27.7%であった。なお、リナグリプチン投与群患者66人のうち61人がインスリン投与および/またはスルホニル尿素薬の治療を受けていた患者であり、用量を変更しなかったことが同群の低血糖を発現させたことが示唆される。腎機能は試験期間を通して両投与群で安定しており、この高リスク集団にもかかわらず心血管死も少数であった(リナグリプチン投与群1人[1.5%]、プラセボ投与群3人[4.6%])。
・ 主要評価項目は、ベースラインから12週目までのHbA1cの変化量であった。本試験では、糖尿病に対するインスリン投与および/またはスルホニル尿素薬の治療をこれまで通り継続した患者を対象に、リナグリプチン 5 mg 1日1回投与群(n=68)とプラセボ投与群(n=65)とを比較検討した。
リナグリプチンについて:
リナグリプチンは、インクレチンホルモンであるGLP-1(グルカゴン様ペプチド‐1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の不活化に関与する酵素DPP-4(ジペプチジル・ペプチダーゼ-4)の阻害剤です。リナグリプチンは、DPP-4を選択的に阻害することにより、インクレチンホルモンであるGLP-1の血中濃度を高めることで、血糖低下作用を発揮します8。DPP-4阻害剤は、血糖依存的にインスリン分泌を促進するため、単独投与においては低血糖の発現リスクが低いと言われています。また、本剤は主に糞中に未変化体のまま排泄される世界初の胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤です9,10。
リナグリプチンは2011年5月に米国で承認されました。また、日本では、7月1日に食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られない2型糖尿病患者の治療薬(単独療法)として、日本ベーリンガーインゲルハイムが、トラゼンタ(R)錠 5mg(一般名:リナグリプチン)」の製造販売承認を取得しました。トラゼンタ(R)は日本で、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造、販売を行い、日本イーライリリーと一緒に共同販促(コ・プロモーション)をいたします。日本での効能効果と用法用量は、以下の通りです。
【日本での効能効果】
2型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る)
【日本での用法用量】
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する」になります。
このプレスリリースには、2型糖尿病治療薬であるリナグリプチン錠について、リリーの現在の予想に基づく前向き声明が含まれていますが、医薬品の研究開発プロセスおよび商品化には常に多大なリスクと不確実性が伴います。今後の試験結果や患者経験がこれまでに試験から得られた知見と一致するという保証も、リナグリプチンが商業的に成功を収めるという保証もありません。こうしたリスクや不確実性については、米国証券取引委員会に提出されたリリーの最新のフォーム10-Kおよび10-Qに記載されています。なお、リリーは将来の予想に関する記述を更新する義務を負いません。
REFERENCES
1. Gallwitz B, Uhlig-Laske B, Bhattacharaya S, et al. Linagliptin has Similar Efficacy to Glimepiride but Improved Cardiovascular Safety over 2 Years in Patients with Type 2 Diabetes Inadequately Controlled on Metformin 71th Scientific Sessions of the American Diabetes Association, San Diego, California. 2011;Poster 39-LB.
2. Haak T, Meinicke T, Jones R, et al. Combination of Linagliptin and Metformin Improves Glycemic Control in Type 2 Diabetes: A Randomized Trial with an Open-Label Arm in Patients with Poor Glycemic Control. 71th Scientific Sessions of the American Diabetes Association, San Diego, California. 2011;Oral presentation 279.
3. Cooper M, von Eynatten M, Emser A, et al. Efficacy and Safety of Linagliptin in Patients With Type 2 Diabetes With or Without Renal Impairment: Results from a Global Phase 3 Program. 71th Scientific Sessions of the American Diabetes Association, San Diego, California. 2011;1068-P.
4. Sloan L, Newman J, Sauce C, et al. Safety and Efficacy of Linagliptin in Type 2 Diabetes Patients with Severe Renal Impairment. 71th Scientific Sessions of the American Diabetes Association, San Diego, California. 2011;Poster 413-PP.
5. International Diabetes Federation. IDF Atlas. 2010 [cited 2010; Available from: http://www.idf.org/types-diabetes
6. International Diabetes Federation. Diabetes prevalence. 2009 [cited 2009 September 2009]; Available from:
7. World Health Organization. Fact sheet N°312. 2011:http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs312/en/.
8 Rauch T, et al: 承認時資料 2型糖尿病患者を対象としたバイオマーカー検討試験
9 林直之他:承認時資料 健康成人を対象とした単回投与試験
10 林直之 他:承認時資料 健康成人を対象とした反復投与試験