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『Slow Progress』 未だ国際社会に遅れを取る日本の象牙取引管理

〜 最新の国内実店舗市場調査に関する報告書を発表 〜

◆2017年年末をもって中国本土で象牙取引が禁止されたことによる、日本市場の違法輸出の動向の変化および、「種の保存法」改正後の遵守状況を把握するため、2017年に実施した調査結果をアップデートした。
◆象牙の違法輸出を促す販売者の顕著な姿勢はわずかに抑制されたが、依然として60%が違法輸出に繋がる販売の姿勢を示した。
◆改正法の遵守状況においては、調査した販路の大部分で、事業者の情報開示に関して、不遵守率(最大83%)が高かった。
◆TRAFFICは、2017年に続く今回の調査結果を受け、日本政府が、野生生物の違法取引撲滅の重要性を認識した政策を国際社会に示す必要性と、象牙の国内取引を原則停止する為の法的・規制的な措置を緊急に検討することを改めて提言する。





[画像1: https://prtimes.jp/i/18383/41/resize/d18383-41-842574-0.jpg ]

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区 会長:末吉竹二郎 以下、WWFジャパン)内の野生生物取引監視部門であるTRAFFIC(トラフィック)は、2017年に続き、国内の象牙取引を合法的に認めている日本の現状を調査し、報告書『Slow Progress: 日本の象牙市場の再評価(2018年)』にまとめ、本日、公開いたしました。

2017年の調査では、日本から中国への象牙の違法輸出の横行が明らかになりました。本調査は、2017年12月に中国本土で象牙取引が禁止されたあとの日本市場からの違法輸出の動向の変化、および2018年6月に施行された改正「種の保存法」の遵守状況を把握することを目的に、実施したものです。

[画像2: https://prtimes.jp/i/18383/41/resize/d18383-41-718308-1.jpg ]

TRAFFICは、2018年6月〜8月にかけて、屋内骨董フェア、屋外骨董市、骨董・古美術街、観光エリア・象牙専門店、ハンコ販売店の実店舗における目視調査とインタビュー調査、および日本最大規模の公開オークションにおける全形象牙の取引調査を実施しました。2017年に調査した主要な調査場所に加え、6カ所の骨董市場と43のハンコ販売店を、今回新たに調査対象としました。

その結果、2017年の調査時に比べ、屋内骨董フェアでは象牙製品を取り扱う店舗数と象牙製品の量が半減したことが明らかになりました。これは、経済産業省がフェア主催者に指導を行なうなど、管理強化を実施してきた効果と考えられます。しかし、その他では象牙の販売量にほとんど変化がみられませんでした。

また象牙を販売する販売者の態度に、若干改善の兆しが見られるものの、違法輸出を促す販売者が引き続き存在することも分かりました。違法輸出に繋がる販売を完全に拒否する販売者は2017年に9%だったのに対し2018年は26%に増加。このうち11%は、「外国人客には販売しない」ことを明言しました。その一方で、違法輸出に繋がる販売を容認した販売者は、2017年の73%に対し、2018年は60%と、いまだに半数以上を占め、販売者の供述からも外国人による持ち出しが継続していることが分かりました。

改正「種の保存法」により、象牙の販売を行なっている事業者の登録と、登録している事業者情報の掲示が2018年6月から義務となりましたが、ハンコ販売店を除いてその遵守状況は悪く、屋内外骨董フェア/市や骨董・古美術街などの他の事業者では不遵守率が最大83%という結果でした。実際に無登録で営業している店舗も、確認できるだけで31%にのぼりました。

これら法改正後の国内象牙市場の改善は限定的であり、多くの課題が残ることがわかりました。2020年にオリンピック・パラリンピックを迎える中、TRAFFICは、2017年に続き今回の調査結果を受け、日本政府が、野生生物の違法取引撲滅の重要性を認識し、そのための政策を国際社会に示す必要性と、違法取引に寄与しない狭い例外を除き象牙の国内取引を停止するための法的・規制的措置を緊急に検討すべきであると再び提言します。 TRAFFICは、10月1日からロシア・ソチで開幕する、ワシントン条約第70回常設委員会に参加し、日本についても、こうした市場の最新状況の評価を踏まえた厳格な議論がされるように働きかけます。

■関連資料:
2018年9月13日発表 日本におけるインターネットでの象牙取引 
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/3725.html

2017年12月20日 日本の国内象牙市場が違法輸出の温床に 
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/170.html


WWF(World Wild Fund For Nature)とは
1961年にスイスで設立された地球環境保全団体です。人と自然が調和して生きられる未来を築くため、現在100カ国以上で、希少な野生生物の保護や、森や海などの自然環境の保全、自然資源の持続可能な利用、地球温暖化の防止などを目指したプロジェクトを展開しています。

TRAFFICとは
英国ケンブリッジに本部を置く国際組織。ワシントン条約が発効した翌1976年、野生生物取引に関する調査・モニタリングの必要性を受け、IUCN(国際自然保護連合)とWWF(世界自然保護基金)の共同プログラムとして設立されました。そのネットワークは世界各地に広がり、他の多くの団体と連携しながら、過度な利用から野生生物を守り、持続可能なレベルで管理される社会の実現をめざして、活動を続けています。日本においては、WWFジャパンの野生生物取引監視部門として活動しています。

ワシントン条約について
1973年3月3日、米国ワシントンで採択され、1975年に発効した「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)」です。野生の動植物が国際取引によって過度に利用されるのを防ぐため、 国際協力によって種を保護するための条約です。現在183の国と地域が加盟し、およそ5,600種の動物種と30,000種の植物種がその規制の対象となり、取引が禁止または、規制されています。およそ2〜3年に一度開催される締約国会議では、条約加盟国が参加し、条約の施行の見直しを行っています。

ワシントン条約常設委員会について
ワシントン条約常設委員会は、条約の施行に関する政策方針を条約事務局に提供したり、事務局の予算管理を監督したりするほか、動物委員会、植物委員会やワーキンググループの調整・監督、締約国会議から指示を受けた事項や決議案の作成などの業務を行う機関です。メンバーは、6地域の代表等によって構成され、会合は通常年1回開催されます。
<参考情報> ワシントン条約施行の仕組み http://www.trafficj.org/aboutcites/aboutcites2.pdf
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