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イノベーションワークショップ2013「イノベーションで日本を強く」開催

第3回 IT融合時代を迎えてあるべき国家情報化

フューチャー イノベーション フォーラム(略称=FIF、代表=牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャーアーキテクト株式会社会長兼社長)は、10月10日(木)にイノベーションワークショップ2013「イノベーションで日本を強く」の第3回を開催しました。




【開催概要】
 講演者: e-CORPORATION.JP株式会社 代表取締役社長
      総務省 電子政府推進委員、青森市情報政策調整監、佐賀県情報企画監 廉宗淳
 テーマ: IT融合時代を迎えてあるべき国家情報化
 日 時: 2013年10月10日(木) 18:00〜20:00
 会 場: フューチャーアーキテクト株式会社

【講義概要】
既存の産業とITが融合し新しいビジネスモデルが誕生する「IT Conversions(IT融合)」という言葉が、情報化のキーワードになっている。韓国では10年前から国策として「IT Conversions」に力を入れ、行政・企業が一体となり改革を行った結果、国民が行政・民間サービスを効率的に受けられる世界トップクラスのIT先進国になった。国が主導となり、推進していった韓国の取り組みを紹介しつつ、「イノベーション」とは何かを示唆する。

◆ 事例1:KTX(韓国高速鉄道)
韓国のKTXには改札口がない。車掌が無線端末を持っており、予約が入っている座席と空席を一覧で把握しているため、乗客はチケットさえ予約すればそのまま鉄道に乗ることができる。これは韓国だけでなく、欧米にも多くあるケースだ。ICTを使い何かを変えていくときには、いったん現状を否定してみる必要がある。先般の韓国鉄道公社の発表によると、改札がないことによる不正乗車の損失金額は年間約3億円と推定されていた。高性能な改札機を導入した場合の設置費やメンテナンス費などを考えると、ITを行使して、改札口をなくすのも一つの選択肢として良いのではないだろうか。

◆ 事例2:仁川国際空港
ASQ(世界空港協議会)による評価で8年連続、世界一サービスの良い空港に選ばれた仁川国際空港は、関西国際空港と成田空港をモデルに造られた。騒音問題をクリアするため海辺に建設することになったが、埋立地では激化していく国際競争のなかでコスト面において不利になると考え、仁川の陸地を起点に少し離れた島一帯の用地確保を行った。建設当初から規模拡大を前提としており、敷地内の広大な遊休地は現在ゴルフ場として活用されている。賃料収入が得られるほか、滑走路の建設が決定した際、大きな建物がないため工事を始めやすいという利点がある。
また韓国では、空港運営にITが重要な役割を果たしている。事前に集約された搭乗データによって、いつどこにどれくらいの人の流れがあるのか、どのゲートをいくつ空けなければならないのか、お客様の荷物をどのタイミングでどこに流せばいいのかなどが全てシミュレーションされている。そのため、出入国にかかる平均所要時間は入国18分、出国14分と、かなりスピーディに行われている。またITを活用した空港運営のビジネスモデルを海外に輸出しており、イラクのアルビル空港やロシアのハバロフスク空港をはじめ、フィリピン、インドネシアといった国々にも広がっている。

◆ 事例3:アサン病院
韓国の病院では患者だけではなく面会客、職員、外国人までもがお客様としてマーケティングが行われている。その代表例が「現代アサン病院」という病床数2,680のアジアで最も大きな病院だ。一日の流動人口が5万人にも及び、病院内で様々なビジネスが行われている。たとえば証券会社や旅行代理店、デパ地下にレストランといったテナントが入っており、一泊20万円のVIP病室の利用権も販売されている。また一日に約1万人訪れる外来患者を効率よく診察するため、CT、MRIの空き状況、病室、手術室の利用状況がPOSで一元管理され、効率的な稼働を維持している。
韓国の大規模病院はWEBと電話による予約が基本だ。病院に行くとまず導線誘導機に診察券を入れ、訪問科の場所や導線の案内を受ける。診療が終わると支払いは診療費収納機で行い、薬は処方箋発行機で受け取りたい薬局を指定する。すぐに薬局にデータが送られ、患者は窓口で直接薬を受け取ることができ、紙の処方箋を発行してもらう必要はない。

◆ 事例4:行政分野でのIT活用
国連の電子政府ランキングで韓国は2年連続で1位を獲得したが、日本は18位に位置している。両国のちがいは住民票ひとつをとっても大きい。韓国では住民票の移動がインターネットで簡単にできる。さらに住民票の移動と同時に、健康保険や年金、雇用保険、運転免許証、学校の転校届などのあらゆる情報が一括して変更できるため、いくつもの役所に行く必要がない。一方、日本は住民票の自動交付機が役所の中にあり、1,700の自治体が統一されていないパッケージを使っていることからコスト負荷も高い。電子政府とは国民のためのサービスであり、役所の都合で機械化されているのは単なる電算化である。また日本はICTの専門家が役所にいないことも問題だと思っている。
韓国では3年前から国民は個人情報を提出する義務がなくなり、役所側も国民に個人情報の提出を求めてはならないという法律ができた。本人確認をする場合、銀行であれば顧客が住民登録番号を入力すると行員は専用端末でその人の住民票を見ることができる。役所と銀行のシステムが連携しており、紙の住民票がなくても本人確認が行えるという仕組みだ。もちろんログ管理は確実にできており、個人情報の管理は徹底されている。また領収書を多数発行する病院などは国税と連携しており、個人の支払いデータは病院経由で国税が把握しているため、年末調整に向けて領収書を集めておかなくてもよい。
世界一になった韓国の電子行政が10年間で使った費用は、メンテナンス費も含め累計で約2兆円といわれるが、その2兆円を日本は毎年使っている。人口とITコストは比例するものではないし、韓国の行政の仕組み、都道府県や各省庁の役割は日本の形式と類似しているので、日本にもできないことはない。そもそも韓国はあらゆる面で日本を手本にして進めてきたのだから、なおのことである。韓国の事例には省庁や自治体という枠を超えた連携のヒントが多々あると思う。

◆ 真の情報化とIT Conversions
「真の情報化」とはあらゆる分野において既存の業務と情報技術を融合させ、革新的な新しいサービスを創出することである。「イノベーション」とは改善ではなく、過去と断絶した手段によって革新を起こすことだと思っている。日本のITベンダーをはじめITに携わる人は「真の情報化」によってイノベーションを興し、より豊かなサービスを提供していかなければならない。
医療分野でも教育分野でも「真の情報化」の流れは必至であり、ITの知識は必ず必要とされる。医者や教育者は自身の得意分野のことはわかっているが、ITに関する知識は私たちIT業界の人間に大きなアドバンテージがあることを忘れてはならない。ITを武器に従来のビジネスモデルを大きく変えるという気概をもって、「イノベーション」にチャレンジしてほしい。


【本ワークショップに関するお問い合わせ】FIF事務局 T E L:03‐5740‐5817  
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