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フランスでテロ対策強化

懸念される人権の危機

フランスのマニュエル・ヴァルス首相は1月21日、テロ撲滅のため新たな対策を導入すると発表した。アムネスティはこうした措置のいくつかは、フランスが遵守義務を課されている人権に関する国際基準や欧州基準の違反につながりかねないと懸念している。特に気がかりなのは表現の自由と個人の生活の侵害だ。襲撃事件は、表現の自由の重要性をフランスのみならず世界中にあらためて示した。襲撃は、まさに表現の自由への攻撃であり、その対策でこの権利を踏みにじっては本末転倒である。






導入が提案されている措置は、「名誉棄損」や「侮辱」を刑法犯罪とする、テロ関連で有罪となったり捜査されたことのある人物をデータベース化する、テロを煽ったり擁護していると思われるインターネットサイトは司法判断がなくても遮断できるなどだ。

●名誉棄損の刑法犯罪化
「出版の自由に関する法律」のもと、誹謗中傷や侮辱などで被害を被った場合、被害者による申し立てが必要で、差し止め命令には限度があり、時効は3カ月である。刑法犯罪になれば、表現の自由を守るこうしたセーフガードが失われる。アムネスティは、対象が公人であろうと私人であろうと、名誉棄損は民事で取り扱われるべきであり、これを犯罪とする法律にはすべて反対している。このところフランスでは「テロ擁護」で逮捕されるケースが続出しているが、こうした行為を刑法で禁じれば、表現の自由を侵害するような職権起訴が増えるであろう。

●インターネットの遮断
提案によれば、2014年11月に制定されたテロ対策強化法をこの1週間以内に施行するという。この法のもと内務大臣は、テロを煽ったり擁護していると思われるウェブサイトの遮断を、インターネット・プロバイダーに要請できる。こうした決定に対し司法判断が必須であることは示されておらず、決定に対し不服申し立てができる手続きについても明示されていない。「テロリズム擁護」の概念もあいまいで、不法な規制が科されかねない。サイト遮断が表現の自由を侵害しないよう、司法による精査が必要である。

●「テロリスト・データベース」
政府は過去にテロ関連で有罪となったり、捜査を受けたことのある人物のデータベースを構築すると発表している。リストに載った者は、転居や国外旅行の際には当局への報告義務が課されるとのことだ。どういう者が該当するのか、リストの除外にはどのような手続きが必要なのかなど、詳細はまだ不明である。しかし、データベースそのものの存在と、報告義務により、個人の生活の権利、移動の自由、無罪推定の原則が脅かされる恐れがある。

パリでの恐ろしい襲撃事件の余波の中、フランスには慎重な対策が求められる。苦難の末に勝ち取ってきた人権が脅かされることがあってはならない。自由の保障と安全保障のバランスを見出すことが肝要だ。


[画像: http://prtimes.jp/i/5141/76/resize/d5141-76-461500-1.jpg ]
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