第44回 東京モーターショー 2015
[15/10/29]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
ボッシュのモビリティ ソリューションズ: 電動化、自動化、ネットワーク化
自動車機器直納(OE)営業および
コーポレート・マーケティング・セールス担当
ボッシュ 取締役会メンバー
マルクス・ハインによるプレゼンテーション
於:東京モーターショー
2015年10月29日
推定時間:約15分
本稿は実際の講演内容と異なる場合があります。
ご来場の皆さま
個人のモビリティは変化しつつあります。技術は急速に進歩しつつあり、ほんの数年前に想像できたことよりも、もっと高度な安全性、快適性、経済性、そして環境への優しさを実現できるようになっています。
日本では、こうした変化はあらゆる所で明らかです。しかし、ここ東京モーターショー以上に明らかな場所はありません。このモーターショーは電動化、自動 化、ネットワーク化という3つのトレンドが今後も優勢であり続ける未来を、かいま見させてくれます。ボッシュでは、特に日本では、この3つすべての分野が 進歩し続けています。このすぐあとの自動運転についての発表において、この事実がいっそう際立つことになると思います。
成長し続けるモビリティ ソリューションズ
しかし最初に、私たちの事業概況を手短かに説明させていただきます。当社のモビリティ ソリューションズ事業は、数年来の力強い成長の道を歩み続けています。2015年の名目成長は約10%を予想しています。為替調整後では5%となります。 言いかえると、当社は世界的な自動車生産を上まわる速度で成長しています。
地域的にみると、アジア太平洋が当社の事業の主要な原動力であり続けています。中国での最近の情勢にもかかわらず、全体としては、2015年には現地通貨 で前年比2桁の成長を見込んでいます。この地域での私たちの成功は、日本の自動車メーカーとの強力な関係によるところが大きいといえます。よくご存じのよ うに、成功のためには幅広い国際的なプレゼンスが不可欠ですが、ボッシュが優れているのは、まさにこの点です。自動車業界の顧客が世界中のどこにいようと も、ボッシュはその近くにいます。現在、日本では6つの拠点でモビリティソリューションズの製造を行っています。私たちの世界の自動車製造ネットワークは 106の拠点からなり、この数はたえず増え続けています。
拡大し続けるグローバルな展開により、日本の自動車メーカーに対する当社の売上高は、2014年には約13%増加しました。日本のメーカーは、世界で自動 車市場の約30%を占めており、新興ASEAN諸国においては市場の90%を占めています。二輪車市場でも、日本のメーカーは強力なプレイヤーです。安価 なモビリティへの世界的な需要の結果、二輪車市場は2021年までに現在よりも3分の1成長すると予想されます。
統合型モビリティ ソリューションズのサプライヤー
事業セクターの新しい名前が示しているように、もはや私たちは顧客にコンポーネントを供給しているだけではありません。近年、自動車業界向けに、また自動 車業界を超えて、ボッシュはモビリティ ソリューションズ一式のプロバイダーへと進化を遂げてきました。電動化であれ、自動化であれ、ネットワーク化であれ、現在と未来のモビリティの全分野を通 じて、私たちほどのノウハウを持つ企業は、ほとんど存在しません。こうした分野における当社の活動概要と、私たちのブースで体験していただける技術革新の 背景についてご説明したいと思います。
従来のエンジンにも明るい未来がある
ダウンサイジング、ハイブリッド車や電気自動車など、いずれエンジンフードを開けたときに目にするのは、今日の標準的な内燃機関を搭載した車両とは大きく 違ったものになっているはずです。ただ、大きな変化が起きたとしても、今後10年間は内燃機関が自動車の原動機としての主役の座を降りることはない見込み で、5年後も新車の98%以上が部分的であれ、化石燃料を動力源として利用していると予想されています。
これを踏まえ、ボッシュでは、クリーンで燃費性能に優れた内燃機関のための技術を高度化し続けることに注力しています。最適化されたポート噴射、洗練され た直噴システム、ターボチャージャー、あるいはトランスミッションコントロールやシステムアプリケーション等、一連のソリューションを用いて、ボッシュは 世界中の自動車メーカーが乗用車向けの、更に厳しくなる燃費目標を達成する手助けができます。ガソリン車については、2015年のクラス最高のパワートレ インをベースにした場合でさえ、さらに最大で15%の燃費節減の可能性があると見ています。
電動化による効率の向上
とはいえ、厳しさを増す排出ガス低減目標と、将来の燃費基準を満たすための努力においては、電動化が前進への道であると信じています。世界屈指のハイブ リッド車の市場浸透率を誇る日本のマーケットがそれを物語っています。ボッシュは、2025年までに世界の新車の少なくとも15%以上が電動化されると予 測しています。
eモビリティに関しては、ボッシュは幅広いコンポーネントとシステムを提供しており、マイルドハイブリッドからプラグイン ハイブリッド、さらには電気自動車まで、二輪車においては電動二輪車やeスクーターにいたるまで、あらゆるソリューションを自動車メーカーに提案していま す。中でも、燃費向上に寄与しコストパフォーマンスの優れたソリューションである48Vのブースト回生システムは、日本など小型車の人気の高いマーケット に適しているといえます。なぜならこのハイブリッドテクノロジーは、特に小型車セグメントに魅力的な付加価値を提供しすぐに元が取れるためです。これま で、私たちは電動パワートレインに関して約30件の量産プロジェクトを完成させてきました。私たちのノウハウはコンポーネントだけには限らず、例えば車両 の充電インフラ用のソフトウェア プラットフォームも提供しています。
また今日ここ日本におりますので、燃料電池技術に関する私たちの活動についても簡単に説明させていただきます。私たちにとって、この技術は電動化戦略の一 部でもあります。子会社のボッシュ エンジニアリングを通じて、ボッシュはすでに燃料電池車向けのコンポーネントやエンジニアリングサービスを提供しています。しかし、数年以内に、定置運転 やオフハイウェイ車向けにも燃料電池のチャンスが増えると見ています。
もちろん、電動パワートレインを成功させるためには、バッテリー技術をさらに進化させる必要があります。私たちは、ここに大躍進の可能性を見ています。 ボッシュは、リチウムを陽極とする全固体バッテリーセルを考案したエンジニアを擁する、米国の技術系企業Seeo社を買収しました。これまで産業面で掲げ られてきた目標は、2020年までにバッテリーのエネルギー密度を2倍に引き上げ、コストを半分に引き下げることでした。この全固体技術は、株式会社GS ユアサおよび三菱商事株式会社との折半出資の合弁会社であるリチウム エナジー アンド パワー社の作業を補完するものであり、これによって私たちはエネルギー密度をさらに高められると信じています。ボッシュはこうしたeモビリティの大きな進 展のために、ノウハウと少なからぬ資金を投入しています。
自動化により道路交通の安全性をさらに向上
ボッシュが自動運転の開発に取り組む第一の理由は、道路交通のさらなる安全性の向上であり、これは今でも変わりません。国連によると、交通事故の死亡者数 は世界中で毎年約130万人に達すると推定され、日本においても、その数は約4,000人に上ります。そして、そうした事故の90%はドライバーのミスに 起因していると考えられています。もし私たちが、複雑な状況や単調な状況下でドライバーの運転操作をサポートすることができるならば、事故を防ぎ、人命救 助に繋げることができます。今日までに、ボッシュが1995年に市場投入したESCなどの安全システムによって、死傷事故は30%減少しました。より高度 な自動化へと進むことにより、ドイツ国内だけでも事故発生率をさらに37%減少させることができると見込んでいます。こうした事故のない未来のビジョンこ そが、全世界で約2,000人いるボッシュのドライバーアシスタンスシステム開発者に携わるエンジニアのモチベーションの源となっているのです。
この点に関して、2013年より、ボッシュはドイツと米国の公道で、自動運転技術を搭載したテスト車両の試験走行を実施してきました。そして今、ここ日本 でも、公道試験を開始しました。これにより、日本は自動運転の開発を進めていく上で、重要な第3の拠点となるでしょう。日本では、道路条件や交通状況が異 なるため、現地におけるシステムの適切な調整とカスタマイズ化が必要となります。日本政府は、達成段階の一つとして、2020年のオリンピックにおいて自 動運転車を初めて市場で実用化させることを目指しています。私たちは、2020年までに、ボッシュの技術を用いた車両の自動走行が高速道路上で実現できる と予測しています。
鍵を握るネットワーク化
電動化と自動運転の鍵を握るのはネットワーク化です。ネットワーク化によって、車両はより安全、より効率的になり、よりリラックスして運転できるようにな ります。車両をインターネットにつなぐためにボッシュが追求しているメインアプローチは2つです。そのひとつは、ドライバーが携帯しているスマートフォン の活用です。ボッシュには、AndroidとiOSベースのデバイスを車両のインフォテインメントシステムにつなぐ統合型ソリューション「mySPIN」 があり、 様々なアプリのセントラルディスプレイでの手軽な操作を可能とします。もうひとつは、車中で指令センターとして機能するコネクティビティコントロールユ ニット(CCU)です。このCCUはSIMカードを内蔵し、セルラーモジュール経由で通信するほか、GPSによる車両の位置検出もできます。ネットワーク 化された車両だけが、どんなセンサーよりも遠くを見通すことができ、どんな地図よりも新鮮なマップ情報を得ることができます。これが進めば、クルマはコー ナーの先の光景を、視界に入る前に現実さながらに見通せるようになります。私たちはそのために、交通渋滞、交通事故、工事現場などのダイナミックな情報に よりエレクトロニックホライズンの強化を図ることが出来ます。それにより自動運転が一段と安全なものとなるだけでなく、ハイブリッド車においてはどこで減 速し、制動エネルギーを電力に回生すれば走行距離を延ばせるかを把握できるようになります。部品交換などのサービスを受ける時期も、警告灯が故障発生を知 らせる前に、クルマが自分で判断することを可能にします。
また、ネットワーク化は、リース会社、交通インフラの運営業者、あるいは個人のドライバーなどを顧客対象とした幅広い新しいサービスを生み出しつつありま す。最近のソリューションの例としては、ボッシュの新しいクラウドベースの逆走警告があります。この純粋なソフトウェア機能は、ただちに逆走を検知し、ク ラウドを通じて迅速に対向車のドライバーに警告を発することができます。もう一つは、駐車スペース検索エンジンで、舗装路に取り付けられたボッシュのマイ クロメカニカルセンサーが駐車スペースの利用状況をリアルタイムで送信します。このように、ソフトウェアはますます重要性を増し、それに伴って優秀なソフ トウェアスペシャリスに対するニーズも増大しています。
現地でのエンジニアリングの重視
あらゆる活動において私たちが最も重視するのが、現地でのエンジニアリングです。さきほど、ボッシュの世界の製造ネットワークについて触れましたが、世界 の開発ネットワークも拡大を続けています。ボッシュのエンジニアは高度な技術的能力を備えており、これに関して日本は重要な役割を果たしています。
当社ではこうしたモビリティソリューションズの開発のために、約4万人の従業員が研究開発部門で働いており、その3分の1はソフトウェアエンジニアです。 アジア太平洋地域では18,000人超のエンジニアが働いており、この数は今後ますます増える見込みです。私たちがここに開発力を集中させているのには相 応の理由があります。私たちの予測では、2016年には全世界の自動車販売台数の半分をこの地域が占めることになると見ているからです。
現在、日本では11カ所の研究開発センターで1,300人超のスタッフが働いています。ボッシュの横浜拠点は、セーフティシステムのための研究開発セン ターとしてはドイツ国外では最大級の規模で、ここは特に、二輪車向けセーフティテクノロジーの開発を専門としています。実際、私たちは日本を二輪車向けシ ステムの開発をリードする国として位置づけています。
すでに今年、ボッシュは二輪車に関するすべてのノウハウを集約し、横浜を本部とする新しい事業部門を立ち上げました。この「モーターサイクル・パワース ポーツ」と呼ばれる部門は、二輪車メーカーの個別の要件にさらに効率的に取り組むとともに、革新的な二輪車向け ソリューションに完全に集中することで、走る喜びを犠牲にすることなく、二輪車をいっそう安全、効率的、快適なものにすることを目的としています。
私たちのソリューションは、アジアの大衆市場価格帯のものから、排気量1,000cc以上の高性能なマシンにいたるまで、あらゆる二輪車をカバーしていま す。ボッシュは二輪車向けのセーフティシステムにおけるマーケット リーダーです。そのなかでも主力となる製品は、ABSや二輪車版ESCであるモーターサイクル用スタビリティ コントロール(MSC)などのソリューションです。
日本における革新的なブランドコミュニケーション イニシアチブ
まとめに入る前に、ここ日本で立ち上げた稀に見るプロジェクトについて、少しだけお話したいと思います。9月、私たちは渋谷の本社に「カフェ 1886 アット ボッシュ(café 1886 at Bosch)」という名のボッシュブランドのカフェをオープンしました。ボッシュの会社設立の年にちなんで名づけられたこのユニークなイニシアチブは、快 適な飲食エリアと、隣接のショールームを組み合わせ、当社の過去、現在、未来の技術革新を紹介しています。カフェで販売しているボッシュブランドのコー ヒーは、ボッシュのパッケージング テクノロジー事業部のユニークなバルブによって、新鮮さを保ち続けることができます。お手元のプレスキットに同封いたしました試供品を、どうぞお楽しみく ださい。「カフェ 1886 アット ボッシュ」では、皆さまのお越しをお待ちしております。
結論
ご来場の皆さま、モビリティは過渡期にあります。電動化によって自動車はもっと効率的で経済的になりつつあり、自動化によって運転時の安全性と利便性が向 上しつつあり、ネットワーク化によって運転体験の多くの側面が変化しつつあります。ボッシュのコーポレート スローガンは、何よりもまず人々に恩恵をもたらす技術革新を追求することです。それこそ、私たちが「Invented for life」(人と社会に役立つ革新の技術)と呼ぶものです。3つの開発分野すべてにおいてリーディング サプライヤーの一つとなっているボッシュは、未来のモビリティ化を形作るお手伝いをしているだけではありません。日本の、そして世界中の人々の生活の質を 向上させるお手伝いをしているのです。
ご清聴ありがとうございました。
自動車機器直納(OE)営業および
コーポレート・マーケティング・セールス担当
ボッシュ 取締役会メンバー
マルクス・ハインによるプレゼンテーション
於:東京モーターショー
2015年10月29日
推定時間:約15分
本稿は実際の講演内容と異なる場合があります。
ご来場の皆さま
個人のモビリティは変化しつつあります。技術は急速に進歩しつつあり、ほんの数年前に想像できたことよりも、もっと高度な安全性、快適性、経済性、そして環境への優しさを実現できるようになっています。
日本では、こうした変化はあらゆる所で明らかです。しかし、ここ東京モーターショー以上に明らかな場所はありません。このモーターショーは電動化、自動 化、ネットワーク化という3つのトレンドが今後も優勢であり続ける未来を、かいま見させてくれます。ボッシュでは、特に日本では、この3つすべての分野が 進歩し続けています。このすぐあとの自動運転についての発表において、この事実がいっそう際立つことになると思います。
成長し続けるモビリティ ソリューションズ
しかし最初に、私たちの事業概況を手短かに説明させていただきます。当社のモビリティ ソリューションズ事業は、数年来の力強い成長の道を歩み続けています。2015年の名目成長は約10%を予想しています。為替調整後では5%となります。 言いかえると、当社は世界的な自動車生産を上まわる速度で成長しています。
地域的にみると、アジア太平洋が当社の事業の主要な原動力であり続けています。中国での最近の情勢にもかかわらず、全体としては、2015年には現地通貨 で前年比2桁の成長を見込んでいます。この地域での私たちの成功は、日本の自動車メーカーとの強力な関係によるところが大きいといえます。よくご存じのよ うに、成功のためには幅広い国際的なプレゼンスが不可欠ですが、ボッシュが優れているのは、まさにこの点です。自動車業界の顧客が世界中のどこにいようと も、ボッシュはその近くにいます。現在、日本では6つの拠点でモビリティソリューションズの製造を行っています。私たちの世界の自動車製造ネットワークは 106の拠点からなり、この数はたえず増え続けています。
拡大し続けるグローバルな展開により、日本の自動車メーカーに対する当社の売上高は、2014年には約13%増加しました。日本のメーカーは、世界で自動 車市場の約30%を占めており、新興ASEAN諸国においては市場の90%を占めています。二輪車市場でも、日本のメーカーは強力なプレイヤーです。安価 なモビリティへの世界的な需要の結果、二輪車市場は2021年までに現在よりも3分の1成長すると予想されます。
統合型モビリティ ソリューションズのサプライヤー
事業セクターの新しい名前が示しているように、もはや私たちは顧客にコンポーネントを供給しているだけではありません。近年、自動車業界向けに、また自動 車業界を超えて、ボッシュはモビリティ ソリューションズ一式のプロバイダーへと進化を遂げてきました。電動化であれ、自動化であれ、ネットワーク化であれ、現在と未来のモビリティの全分野を通 じて、私たちほどのノウハウを持つ企業は、ほとんど存在しません。こうした分野における当社の活動概要と、私たちのブースで体験していただける技術革新の 背景についてご説明したいと思います。
従来のエンジンにも明るい未来がある
ダウンサイジング、ハイブリッド車や電気自動車など、いずれエンジンフードを開けたときに目にするのは、今日の標準的な内燃機関を搭載した車両とは大きく 違ったものになっているはずです。ただ、大きな変化が起きたとしても、今後10年間は内燃機関が自動車の原動機としての主役の座を降りることはない見込み で、5年後も新車の98%以上が部分的であれ、化石燃料を動力源として利用していると予想されています。
これを踏まえ、ボッシュでは、クリーンで燃費性能に優れた内燃機関のための技術を高度化し続けることに注力しています。最適化されたポート噴射、洗練され た直噴システム、ターボチャージャー、あるいはトランスミッションコントロールやシステムアプリケーション等、一連のソリューションを用いて、ボッシュは 世界中の自動車メーカーが乗用車向けの、更に厳しくなる燃費目標を達成する手助けができます。ガソリン車については、2015年のクラス最高のパワートレ インをベースにした場合でさえ、さらに最大で15%の燃費節減の可能性があると見ています。
電動化による効率の向上
とはいえ、厳しさを増す排出ガス低減目標と、将来の燃費基準を満たすための努力においては、電動化が前進への道であると信じています。世界屈指のハイブ リッド車の市場浸透率を誇る日本のマーケットがそれを物語っています。ボッシュは、2025年までに世界の新車の少なくとも15%以上が電動化されると予 測しています。
eモビリティに関しては、ボッシュは幅広いコンポーネントとシステムを提供しており、マイルドハイブリッドからプラグイン ハイブリッド、さらには電気自動車まで、二輪車においては電動二輪車やeスクーターにいたるまで、あらゆるソリューションを自動車メーカーに提案していま す。中でも、燃費向上に寄与しコストパフォーマンスの優れたソリューションである48Vのブースト回生システムは、日本など小型車の人気の高いマーケット に適しているといえます。なぜならこのハイブリッドテクノロジーは、特に小型車セグメントに魅力的な付加価値を提供しすぐに元が取れるためです。これま で、私たちは電動パワートレインに関して約30件の量産プロジェクトを完成させてきました。私たちのノウハウはコンポーネントだけには限らず、例えば車両 の充電インフラ用のソフトウェア プラットフォームも提供しています。
また今日ここ日本におりますので、燃料電池技術に関する私たちの活動についても簡単に説明させていただきます。私たちにとって、この技術は電動化戦略の一 部でもあります。子会社のボッシュ エンジニアリングを通じて、ボッシュはすでに燃料電池車向けのコンポーネントやエンジニアリングサービスを提供しています。しかし、数年以内に、定置運転 やオフハイウェイ車向けにも燃料電池のチャンスが増えると見ています。
もちろん、電動パワートレインを成功させるためには、バッテリー技術をさらに進化させる必要があります。私たちは、ここに大躍進の可能性を見ています。 ボッシュは、リチウムを陽極とする全固体バッテリーセルを考案したエンジニアを擁する、米国の技術系企業Seeo社を買収しました。これまで産業面で掲げ られてきた目標は、2020年までにバッテリーのエネルギー密度を2倍に引き上げ、コストを半分に引き下げることでした。この全固体技術は、株式会社GS ユアサおよび三菱商事株式会社との折半出資の合弁会社であるリチウム エナジー アンド パワー社の作業を補完するものであり、これによって私たちはエネルギー密度をさらに高められると信じています。ボッシュはこうしたeモビリティの大きな進 展のために、ノウハウと少なからぬ資金を投入しています。
自動化により道路交通の安全性をさらに向上
ボッシュが自動運転の開発に取り組む第一の理由は、道路交通のさらなる安全性の向上であり、これは今でも変わりません。国連によると、交通事故の死亡者数 は世界中で毎年約130万人に達すると推定され、日本においても、その数は約4,000人に上ります。そして、そうした事故の90%はドライバーのミスに 起因していると考えられています。もし私たちが、複雑な状況や単調な状況下でドライバーの運転操作をサポートすることができるならば、事故を防ぎ、人命救 助に繋げることができます。今日までに、ボッシュが1995年に市場投入したESCなどの安全システムによって、死傷事故は30%減少しました。より高度 な自動化へと進むことにより、ドイツ国内だけでも事故発生率をさらに37%減少させることができると見込んでいます。こうした事故のない未来のビジョンこ そが、全世界で約2,000人いるボッシュのドライバーアシスタンスシステム開発者に携わるエンジニアのモチベーションの源となっているのです。
この点に関して、2013年より、ボッシュはドイツと米国の公道で、自動運転技術を搭載したテスト車両の試験走行を実施してきました。そして今、ここ日本 でも、公道試験を開始しました。これにより、日本は自動運転の開発を進めていく上で、重要な第3の拠点となるでしょう。日本では、道路条件や交通状況が異 なるため、現地におけるシステムの適切な調整とカスタマイズ化が必要となります。日本政府は、達成段階の一つとして、2020年のオリンピックにおいて自 動運転車を初めて市場で実用化させることを目指しています。私たちは、2020年までに、ボッシュの技術を用いた車両の自動走行が高速道路上で実現できる と予測しています。
鍵を握るネットワーク化
電動化と自動運転の鍵を握るのはネットワーク化です。ネットワーク化によって、車両はより安全、より効率的になり、よりリラックスして運転できるようにな ります。車両をインターネットにつなぐためにボッシュが追求しているメインアプローチは2つです。そのひとつは、ドライバーが携帯しているスマートフォン の活用です。ボッシュには、AndroidとiOSベースのデバイスを車両のインフォテインメントシステムにつなぐ統合型ソリューション「mySPIN」 があり、 様々なアプリのセントラルディスプレイでの手軽な操作を可能とします。もうひとつは、車中で指令センターとして機能するコネクティビティコントロールユ ニット(CCU)です。このCCUはSIMカードを内蔵し、セルラーモジュール経由で通信するほか、GPSによる車両の位置検出もできます。ネットワーク 化された車両だけが、どんなセンサーよりも遠くを見通すことができ、どんな地図よりも新鮮なマップ情報を得ることができます。これが進めば、クルマはコー ナーの先の光景を、視界に入る前に現実さながらに見通せるようになります。私たちはそのために、交通渋滞、交通事故、工事現場などのダイナミックな情報に よりエレクトロニックホライズンの強化を図ることが出来ます。それにより自動運転が一段と安全なものとなるだけでなく、ハイブリッド車においてはどこで減 速し、制動エネルギーを電力に回生すれば走行距離を延ばせるかを把握できるようになります。部品交換などのサービスを受ける時期も、警告灯が故障発生を知 らせる前に、クルマが自分で判断することを可能にします。
また、ネットワーク化は、リース会社、交通インフラの運営業者、あるいは個人のドライバーなどを顧客対象とした幅広い新しいサービスを生み出しつつありま す。最近のソリューションの例としては、ボッシュの新しいクラウドベースの逆走警告があります。この純粋なソフトウェア機能は、ただちに逆走を検知し、ク ラウドを通じて迅速に対向車のドライバーに警告を発することができます。もう一つは、駐車スペース検索エンジンで、舗装路に取り付けられたボッシュのマイ クロメカニカルセンサーが駐車スペースの利用状況をリアルタイムで送信します。このように、ソフトウェアはますます重要性を増し、それに伴って優秀なソフ トウェアスペシャリスに対するニーズも増大しています。
現地でのエンジニアリングの重視
あらゆる活動において私たちが最も重視するのが、現地でのエンジニアリングです。さきほど、ボッシュの世界の製造ネットワークについて触れましたが、世界 の開発ネットワークも拡大を続けています。ボッシュのエンジニアは高度な技術的能力を備えており、これに関して日本は重要な役割を果たしています。
当社ではこうしたモビリティソリューションズの開発のために、約4万人の従業員が研究開発部門で働いており、その3分の1はソフトウェアエンジニアです。 アジア太平洋地域では18,000人超のエンジニアが働いており、この数は今後ますます増える見込みです。私たちがここに開発力を集中させているのには相 応の理由があります。私たちの予測では、2016年には全世界の自動車販売台数の半分をこの地域が占めることになると見ているからです。
現在、日本では11カ所の研究開発センターで1,300人超のスタッフが働いています。ボッシュの横浜拠点は、セーフティシステムのための研究開発セン ターとしてはドイツ国外では最大級の規模で、ここは特に、二輪車向けセーフティテクノロジーの開発を専門としています。実際、私たちは日本を二輪車向けシ ステムの開発をリードする国として位置づけています。
すでに今年、ボッシュは二輪車に関するすべてのノウハウを集約し、横浜を本部とする新しい事業部門を立ち上げました。この「モーターサイクル・パワース ポーツ」と呼ばれる部門は、二輪車メーカーの個別の要件にさらに効率的に取り組むとともに、革新的な二輪車向け ソリューションに完全に集中することで、走る喜びを犠牲にすることなく、二輪車をいっそう安全、効率的、快適なものにすることを目的としています。
私たちのソリューションは、アジアの大衆市場価格帯のものから、排気量1,000cc以上の高性能なマシンにいたるまで、あらゆる二輪車をカバーしていま す。ボッシュは二輪車向けのセーフティシステムにおけるマーケット リーダーです。そのなかでも主力となる製品は、ABSや二輪車版ESCであるモーターサイクル用スタビリティ コントロール(MSC)などのソリューションです。
日本における革新的なブランドコミュニケーション イニシアチブ
まとめに入る前に、ここ日本で立ち上げた稀に見るプロジェクトについて、少しだけお話したいと思います。9月、私たちは渋谷の本社に「カフェ 1886 アット ボッシュ(café 1886 at Bosch)」という名のボッシュブランドのカフェをオープンしました。ボッシュの会社設立の年にちなんで名づけられたこのユニークなイニシアチブは、快 適な飲食エリアと、隣接のショールームを組み合わせ、当社の過去、現在、未来の技術革新を紹介しています。カフェで販売しているボッシュブランドのコー ヒーは、ボッシュのパッケージング テクノロジー事業部のユニークなバルブによって、新鮮さを保ち続けることができます。お手元のプレスキットに同封いたしました試供品を、どうぞお楽しみく ださい。「カフェ 1886 アット ボッシュ」では、皆さまのお越しをお待ちしております。
結論
ご来場の皆さま、モビリティは過渡期にあります。電動化によって自動車はもっと効率的で経済的になりつつあり、自動化によって運転時の安全性と利便性が向 上しつつあり、ネットワーク化によって運転体験の多くの側面が変化しつつあります。ボッシュのコーポレート スローガンは、何よりもまず人々に恩恵をもたらす技術革新を追求することです。それこそ、私たちが「Invented for life」(人と社会に役立つ革新の技術)と呼ぶものです。3つの開発分野すべてにおいてリーディング サプライヤーの一つとなっているボッシュは、未来のモビリティ化を形作るお手伝いをしているだけではありません。日本の、そして世界中の人々の生活の質を 向上させるお手伝いをしているのです。
ご清聴ありがとうございました。