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リムパーザとベバシズマブとの併用療法、米国において、HRD陽性の進行卵巣がんに対する初回治療後の維持療法として承認取得

無増悪生存期間中央値は、リムパーザとベバシズマブ併用療法群では37.2カ月ベバシズマブ単剤療法群では17.7カ月。進行卵巣がん患者さんの腫瘍組織において、2人に1人がHRD陽性を有する

本資料はアストラゼネカ英国本社が2020年5月11日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。

アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot])およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、5月11日、リムパーザ(一般名:オラパリブ)がベバシズマブとの併用療法において、初回治療後の維持療法として米国で承認されたことを発表しました。治療対象は、初回治療である白金製剤ベースの化学療法とベバシズマブとの併用療法に対して完全または部分奏効を示し、病的変異または病的変異が疑われるBRCA遺伝子変異陽性、および/またはゲノム不安定性のいずれかにより定義される相同組換え修復機能不全(HRD)陽性の進行性上皮性卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がんの成人患者さんです。米国食品医薬品局(FDA)が承認したコンパニオン診断検査に基づいて患者さんの治療が選択されます。

今回の承認は、第III相PAOLA-1試験(https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2019/2019100401.html)のバイオマーカーによるサブグループ解析結果に基づいています。本試験のHRD陽性の進行卵巣がん患者さんに対して、ベバシズマブとリムパーザの併用療法による維持療法により、病勢進行または死亡のリスクが67%(ハザード比0.33に相当)低下することが示されました。リムパーザを追加することで、リムパーザとベバシズマブ併用療法群では無増悪生存期間(PFS)中央値が37.2カ月に延長したのに対し、ベバシズマブ単独療法群では17.7カ月でした。

進行卵巣がん患者さんの腫瘍組織において、約2人に1人にHRD陽性が認められます。進行卵巣がん患者さんの初回治療における主な目的は、長期寛解を達成して病勢進行をできるだけ遅らせることです。

Centre Léon Bérardの腫瘍内科医でGINECOグループの会長であり、PAOLA-1試験の治験責任医師のIsabelle Ray-Coquard氏は次のように述べています。「卵巣がんは重篤な疾患です。PAOLA-1試験において示されたHRD陽性患者さんに対するベネフィットの大きさは、非常に印象的でした。リムパーザとベバシズマブの併用療法は、HRD陽性の進行卵巣がん患者さんに対する新たな標準治療となり得ると考えており、臨床現場で使用されていくことを期待しています」。

アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニットの責任者Dave Fredricksonは次のように述べています。「今回の承認は、卵巣がん患者さんにおけるリムパーザの新たなマイルストーンとなりました。3年を超えるPFS中央値を示したことで、この治療困難な疾患においてもより多くの患者さんの再発を遅らせることができるという新たな希望をもたらすことができました。本試験で示された結果より、HRD陽性が卵巣がんの特定の患者集団であることが確認されたとともに、HRD検査が進行卵巣がん患者さんの診断と治療選択のための重要な要素であるということが分かりました」。

MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynesは次のように述べています。「バイオマーカーとPARP阻害剤の役割に関する理解が進んだことにより、この悪性度の高いがんに対する治療が根本的に変わってきました。今回のPAOLA-1試験に基づく承認において、初回治療後の維持療法としてリムパーザとベバシズマブの併用療法からベネフィットを得る可能性がある患者さんを特定するために、診断時のHRD検査がいかに重要であるかを強調するものです」。

なお、第III相PAOLA-1試験の詳細データは、The New England Journal of Medicine(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1911361)誌に発表されています。

現在、PAOLA-1試験結果を基に、欧州、日本、その他の国でリムパーザの薬事承認審査が進んでいます。広範な開発プログラムの一環として、リムパーザに対して複数のがん種にわたり単剤療法および他剤との併用療法で試験が進行中です。その中には、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性、かつHER2陰性のハイリスク原発性乳がん患者さんに対する術後補助療法の治療薬候補としてリムパーザを評価する第III相OlympiA試験などが含まれます。

※HRD陽性の進行卵巣がんに対するリムパーザのベバシズマブとの併用療法は、本邦未承認です。

以上

*****

財務的対価
アストラゼネカは今回の米国におけるリムパーザ承認に伴い、MSDが2020年第2四半期中に計上予定である社外提携収入1億ドルを同社より受領する予定です。

卵巣がんについて
卵巣がんは、世界における女性がんの死因として8番目に多いがんです(1)。2018年には、約30万人が新たに診断され、約18万5,000人が死亡しました(2)。多くは進行卵巣がん(III期またはIV期)と診断され、5年生存率は約30%です(3)。卵巣がん患者さんの約50%がBRCA1/2遺伝子変異を含むHRD陽性を有しており(4,5)、卵巣がん患者さんの約22%がBRCA1/2遺伝子変異を有しています(5)。

進行卵巣がんの患者さんにとって初回治療の最大の目的は、完全寛解の達成を目指し、病勢の進行を出来る限り遅らせ、生活の質を維持することです(6,7,8,9)。

米国においては、2018年に進行卵巣がんの初回治療として、ベバシズマブが化学療法との併用療法で承認されました。この承認後2年以内に、進行卵巣がん患者さん全体の半数近くがベバシズマブと化学療法による併用療法を受けています(10)。

PAOLA-1について
PAOLA-1試験は、新たにFIGO進行期分類III-IV期の高異型度漿液性または類内膜卵巣がん、卵管がんまたは腹膜がんと診断され、白金製剤ベースの化学療法とベバシズマブとの併用療法による初回治療により完全または部分奏効を示した患者さんを対象とし、初回治療後の維持療法としてリムパーザとベバシズマブの併用療法あるいはベバシズマブ単剤療法の有効性および安全性を比較検討した無作為化二重盲検第III相試験です。アストラゼネカとMSDは、本試験において主要評価項目であるPFSを達成したことを2019年8月に発表(https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2019/2019082201.html)しています。

なお、今回のリムパーザの適応拡大に伴い、Myriad Genetics社のmyChoice CDx検査がリムパーザのコンパニオン診断検査として同様に米国で承認されています。

相同組換え修復機能不全について
卵巣がんのサブグループであるHRDは、BRCA遺伝子変異をはじめ、その他多くの遺伝的異常を含みます。BRCA遺伝子変異と同様に、HRDは正常細胞のDNA修復機構を妨げ、リムパーザを含むPARP阻害剤に対する感受性をもたらします(5)。

リムパーザについて
リムパーザ(一般名:オラパリブ)はファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復の欠損を有する細胞または腫瘍におけるDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬です。リムパーザによるPARP阻害はDNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させます。リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のPARP依存性の腫瘍タイプにおいて試験が進行中です。

リムパーザは、白金製剤感受性再発卵巣がんの維持療法として、現在EU諸国を含む多くの国で承認されています。白金製剤ベースの初回化学療法に奏効後のBRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんの維持療法としても米国、EU、日本、中国およびその他数カ国において承認されています。また、本剤は化学療法による治療歴のある生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がんの適応症でも米国、日本を含む多くの国において承認されており、EUにおいては、局所進行乳がんも含まれます。さらに、米国およびその他数カ国においては、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの治療薬としても承認されています。加えて、卵巣がん、乳がん、膵がんおよび前立腺がんに関する薬事承認審査が他の国・地域において進行中です。

アストラゼネカとMSDが共同で開発と商業化を行っているリムパーザは、全世界で3万人を超える患者さんの治療に使用されています。リムパーザはPARP阻害剤として最も広範かつ最先端の臨床試験開発プログラムを有しており、アストラゼネカとMSDは、さまざまながん種にわたり、リムパーザが単剤療法および他の薬剤との併用療法としてPARP依存性腫瘍に及ぼす影響を解明するために協業しています。リムパーザはDDRを標的とした新薬であり、アストラゼネカのポートフォリオを牽引する基盤となる薬剤です。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携
2017年7月、英国アストラゼネカ社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、世界初のPARP阻害剤であるリムパーザおよびMEK阻害剤セルメチニブについて、複数のがん種において共同開発・商業化するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。両社は、リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として共同開発します。なお、リムパーザおよびセルメチニブと、各々の会社が保有するPD-L1またはPD-1阻害剤との併用療法は各々の会社で開発します。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域
アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを保有しています。2014年から2020年までの期間に少なくとも6つの新薬発売を予定し、低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当て、成長基盤としてオンコロジー治療を進展させることに尽力しています。中核となる成長基盤に加え、当社は、Acerta Pharma社を介した血液学領域への投資に象徴されるような、戦略を加速する革新的な提携および投資についても積極的に追求していきます。

アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子変異と耐性メカニズム、DNA損傷修復および抗体薬物複合体の4つの科学的基盤を強化し、個別化医療を推し進める併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

References
1. Cancer.org. (2020). Ovarian Cancer Statistics | How Common Is Ovarian Cancer. Available at: www.cancer.org/cancer/ovarian-cancer/about/key-statistics.html. [Accessed March 2020].
2.The World Health Organization. IARC. Globocan 2018. Available at: http://gco.iarc.fr/ Accessed March 2020].
3. National Cancer Institute. (2019). Cancer Stat Facts: Ovarian Cancer Available at: https://seer.cancer.gov/statfacts/html/ovary.html [Accessed March 2020].
4. Moschetta et al. (2016). BRCA somatic mutations and epigenetic BRCA modifications in serous ovarian cancer. Annals of Oncology, 27(8), pp.1449-1455.
5.da Cunha Colombo Bonadio et al. (2018). Homologous recombination deficiency in ovarian cancer: a review of its epidemiology and management. Clinics (Sao Paulo). 2018;73(suppl 1):e450s.
6. Moore, K. (2018). Maintenance Olaparib in Patients with Newly Diagnosed Advanced Ovarian Cancer. New England Journal of Medicine, 379(26), pp.2495-2505.
7.Raja et al. 2012. Optimal first-line treatment in ovarian cancer. Annals on Oncology. 23 Suppl 10, x118-127.
8. NHS Choices, Ovarian Cancer Available at:
https://www.nhs.uk/conditions/ovarian-cancer/treatment/ [Accessed March 2020].
9. Ledermann et al. (2013). Newly diagnosed and relapsed epithelial ovarian carcinoma: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Annals of Oncology, 24, pp.vi24-vi32.
10. AstraZeneca data on file. Kantar Health, Q1 2020.
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