HIV/エイズ:新薬と「ウイルス量検査」の導入を阻む高コストの壁
[14/07/23]
提供元:PRTIMES
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国境なき医師団(MSF)は、オーストラリアのメルボルンで開催中の「第20回国際エイズ会議」にあわせ、HIV/エイズ治療について2本の報告書を発表した。その中でMSFは、高コストの壁が、HIV/エイズの新薬および治療の効果測定に最適な「ウイルス量検査」の普及を阻んでいると指摘、治療をより多くの対象者に届け、治療のウイルス抑制効果を確実にするためには、必要な薬やツールにかかる費用を適正にし、各国が協力し合わなければならないと主張している。
「開発途上国では現在、約1200万人が抗レトロウイルス薬(ARV)治療を受けています。早期に治療を開始し、それを生涯にわたって継続する人が増えていますので、第1選択治療の負担軽減と、第1選択治療が効果を示さなかった場合に適正なコストで提供できる第2選択治療が必要です」。MSF必須医薬品キャンペーンのメディカル・ディレクターを務めるジェニファー・コーン医師はそう語る。
<ウイルス量検査>
最善のケアの実現には、治療を補完する追加的なツールも求められる。血中のHIVウイルス量を測定し、当該の患者の治療効果を把握する定期的なウイルス量のモニタリングもそのひとつだ。
コーン医師によると、ウイルス量測定でアドヒアランス(患者自身の能動的参加による服薬順守)問題についても早期の察知が可能だという。また、これをカウンセリングやその他の支援と組み合わせれば、第1選択治療をより適正な費用でより長期間継続する助けとなる。現行の治療が効かず、第2、第3の治療法に移行すべき患者も、ウイルス量測定によって、より適切かつ速やかに特定できるのだ。
<重いコスト負担>
報告書の1つ『検出不可域を目指して』は、インド、ケニア、マラウイ、南アフリカ、ジンバブエにおけるウイルス量測定の利用を記録。そこからわかることは、定期的なウイルス量測定の実践を熱望しながら、それを大規模に行える国がほとんどないという現状だ。報告書では、各国が負担する検査費用が、導入拡大を阻む特に大きな壁だと結論づけている。
同報告書ではさらに、ウイルス量検査導入のコストと手間を減らすために各国がとり得る施策として、価格交渉、機器購入の代わりとなるレンタル、普及はしているものの精度で劣るCD4リンパ球数測定の割愛、より効率的な検体採取技術の採用などを説明している。これらの施策は一部の国で成果を上げ、価格交渉によってウイルス量検査のコスト低下を実現。ケニアでは検査1回の費用が約10米ドル(約1014円)となった。しかし、資金拠出者には、さらに一歩踏み込み、ウイルス量測定が最も必要とされる地域への導入費用支援が望まれる。
「HIVウイルス量を検出不可の水準まで引き下げ、その水準を維持するために必要なツールは把握できています。しかし、MSFの活動地では大抵の場合、コストが高すぎるのです」コーン医師はそう訴える。
ウイルス量測定の導入は緩やかで万全とはいえないが、第1選択治療の効果がなく、第2選択治療に移行すべき患者の多くが特定できるだろう。そこで重要な問題となるのが、第2選択治療で使用する薬の価格だ。
<治療を受けられない何百万もの人びと>
MSFが毎年発行している薬価の報告書『ARV価格引き下げの謎を解く』の2014年版では、第1選択治療と、大部分の第2選択治療の費用が過去1年で低下したものの、第2選択治療の費用は依然として第1選択治療の2倍以上と算定。確認された最低価格の12倍もの対価を支払う例もある中所得国にとって、状況は悪化している。
インドでMSF必須医薬品キャンペーン責任者を務めるリーナ・メンガニーは次のように指摘している。「治療の受けられない人が何百万人もおり、治療中の人も多くがほかの治療法に移行する必要があります。より大勢の人の治療を目指すのであれば、各国は適正価格の薬剤の普及を阻む特許の壁を乗り越えなければなりません」。
<報告書>
「検出不可域を目指して:5ヵ国でのウイルス量測定の利用」
(原題:Getting to Undetectable: Usage of HIV Viral Load Monitoring in Five Countries)
本報告書はMSFによる一連の発行物の第5巻にあたる。発行目的は、製品、コスト、活動計画について、為政者、HIV感染者、一般の人びとに情報を提供し、ウイルス量測定の普及拡大を後押しすることだ。ウイルス量測定とアドヒアランス支援は、できる限り多くの人にウイルス抑制治療を届け、それを継続させるために不可欠だとMSFは考えている。
http://msfaccess.org/content/issue-brief-getting-undetectable-usage-hiv-viral-load-monitoring-five-countries
「ARV価格引き下げの謎を解く(第17版)」
(原題:Untangling the Web of Antiretroviral Price Reductions, 17th edition)
過去14年間、MSF必須医薬品キャンペーンは本報告書を通じて、特許の壁やARVの価格と普及状況を観察するとともに、適正価格の良質な薬剤の流通を促す政策立案を求めてきた。
www.msfaccess.org/utw17