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ワクチン価格の適正化に向け、各国政府が一歩前進――WHO総会

スイス・ジュネーブで開催中の世界保健機関(WHO)年次総会に集った各国政府は5月25日、子ども1人あたりの予防接種費用の暴騰に警鐘を鳴らし、ワクチン価格の適正化と透明性向上を求める決議を採択、全加盟国が賛同した。国境なき医師団(MSF)は各国政府の示した強い意志を歓迎する一方で、これをきっかけに各国政府、製薬企業、専門家が一つとなって、価格引き下げに向けた取り組みを続けていく必要があると主張している。




[画像: http://prtimes.jp/i/4782/270/resize/d4782-270-507599-0.jpg ]



<ワクチン価格は14年で68倍、多くの国は購入できず>

MSF必須医薬品キャンペーンのエグゼクティブ・ディレクター、マニカ・バラセガラム医師は「今回の決議は明るい兆しですが、同時にこれは、世界の多くの人にとってワクチンが極めて高額になっているという現実の裏返しでもあります。各国政府が具体的な取り組みを始めなければ、財政的に可能な範囲でしか子どもたちに予防接種を行えないという事態になるでしょう」と指摘する。

MSFは2015年1月発行の報告書『焦点を変える――価格の適正化と研究・開発の壁』(日本語版概要:http://www.msf.or.jp/news/detail/pdf/20150120_trs_jp.pdf)の中で、最貧国の子ども1人の予防接種費用が2001年と比べ68倍に跳ね上がり、多くの国々がこうした高価格ワクチンを購入できずにいると指摘。肺炎球菌ワクチンはその一つであり、肺炎球菌感染症によって年間約100万人の子どもの命を奪われていると報告した。

<価格引き下げのために各国は一致団結を>

ワクチンがこれほど高価格になっている理由の一つは、価格の情報がほとんど公表されず、開発途上国や人道援助団体の多くが製薬企業との交渉をうまく進められないことにある。WHOは今総会で価格の適正化に向けた重要な一歩として、価格設定の透明性を向上するよう勧告した。

総会では、日本のほか、アルジェリア、オーストラリア、ブラジル、コロンビア、レバノン、リビア、エクアドル、エジプト、インドネシア、ニジェール、ナイジェリア、南アフリカ共和国、タイ、パキスタン、フィリピン、韓国など60ヵ国以上がワクチンの高価格に関する懸念を表明した。採択がわずかでも遅れれば、ワクチンで予防可能な病気でさらに多くの子どもが亡くなるとして、議決を急ぐよう指摘した国も多い。各国がこの勢いを借りてワクチンの購入価格を公表し、今回の要請が製薬企業と世界中の国際保健医療専門家の耳に届き、価格引き下げのために一致団結することが望まれる。

バラセガラム医師は「ワクチンの高価格が理由で子どもたちを守れないことに、各国はいらだっています。一方で、足並みをそろえて、国レベルのワクチン購入額を公表し、価格適正化を促すという切り札は各国の手のうちにあります。今回の決議で、さらなる行動の必要性が示されました。公衆衛生は企業の利益に優先されなければなりません。子どもの命を救うワクチンが、貧しい国における大規模ビジネスと化してはいけないのです」と訴える。
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