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地中海:1日で3000人の海難救助を支援

8月29日、国境なき医師団(MSF)の捜索救助船「ディグニティ・ワン」は、約20隻のゴムボートと数隻の木造船で漂流していた約3000人の救助を行った。ボートの中には1隻で600〜700人を乗せていたものもあり、多くの子どもも含まれていた。今回のケースは、自国を逃れ難民と移民となる人びとが緊急に必要としている、人道的な形での保護がいまだになされていないことを改めて示唆しており、安全かつ合法的な代替策の提供が早急に求められている。




[画像1: http://prtimes.jp/i/4782/346/resize/d4782-346-217450-1.jpg ]


過去最大の救助の1つ

ディグニティ・ワンのプログラム・コーディネーターを務めるニコラス・パパクリソストムーは「約1年前にMSFが始めた捜索救助活動の中でも、1日に救助した人が最も多かったケースの1つです。このような信じ難い数は、人びとが自国でいかに深刻な状況に直面しているかを物語っています。命の危険を冒してでもヨーロッパで安全と保護を求めざるを得なくなっているのです」と話す。ディグニティ・ワンの標準乗船者数は400人だが、昨日は極端な状況であったため435人の男性・女性・子どもが乗船した。他の遭難者に対してMSFは、他団体が備蓄していた700着の救命胴衣を配布し、高速複合艇に乗船させることで、最大限の人数を同じ海域にいる他の捜索救助船に移動できるようにした。

医療チームリーダーのアントニア・ゼンプは「8ヶ月で生まれた、生後5日の未熟児の双子を救助できました。すばらしい体験となりました」と話す。「お母さんは1人で子どもたちと旅していました。双子のうち1人は体調を崩していて、嘔吐し低体温で反応がありませんでした。最初のトリアージ※で、医療チームは医療搬送を要請することに決めました。男の子はひどく衰弱していて、イタリアまで長くかかるディグニティ・ワンではもたないとみられたからです。お母さんと双子を別の船に移し、陸まで搬送しました」

※重症度、緊急度などによって治療の優先順位を決めること

[画像2: http://prtimes.jp/i/4782/346/resize/d4782-346-549478-2.jpg ]


保護者のいない未成年も多数

MSFの医療チームから治療を受けた人は、疲弊し、出血性下痢、脱水、発熱、低体温症、皮膚病などを患っていた。ディグニティ・ワンに救助された435人のうち、353人は男性、82人は女性。年齢別では5歳未満の子どもが13人、未成年が110人おり、このうち92人は保護者がいなかった。

ディグニティ・ワンは、イタリアのヴィーボ・ヴァレンティアに向かい、435人の乗客はそこで上陸する予定。補給が済み次第、ディグニティ・ワンはすぐ海に戻って捜索救助活動を続ける。

EUは安全かつ合法的な代替策を

イタリア沿岸警備隊によると、8月29日は約6500人が命の危険を冒して荒れた地中海を渡航し、複数の団体による40の捜索救助活動によって支援を受けた。パパクリソストムーは「事態が示唆しているのは、難民と移民が緊急に必要としている人道的な形での保護に、欧州連合(EU)は国境および域内において対応できていないということです。国際移住機構(IOM)と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計によると、2016年だけで既に3167人以上が地中海で命を落としています。EUに求められているのは、難民と移民に安全かつ合法的な代替策を提供し、彼らが必死に求めている援助と保護を受けられるようにすることです」と話す。

今年の捜索救助活動を開始した2016年4月21日以降、MSFはディグニティ・ワン、バーボン・アルゴス、アクエリアス(「SOS メディテラネ」との共同運航)の3隻で、85回にわたる救助作戦を行ない、合計1万1365人を救助した。
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