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ＷＯＷＯＷで毎週水曜午後5:00放送中の「シアターコクーン豪華4本立て！」の2週目（4月13日）は、1965年にワルシャワで初演され、巨匠・ムロジェックの集大成といわれる作品「タンゴ-ＴＡＮＧＯ-」だ。本舞台は、長塚圭史の大胆な演出の元、実力と個性を兼ね備えた俳優・森山未來が初顔合わせで登場。破壊された伝統と自由化の政治情勢の中、“秩序”の再建を求め、家族を相手に“革命”を決起する青年・アルトゥルを演じる。

2010年11月。東京・Bunkamuraのシアターコクーンには、長塚と森山の初タッグに期待を寄せる演劇ファンが駆けつけた。舞台が始まると、ステージ上には、自由を興じる家族らが賭け事に熱中する姿がある。そこへ怒りに震えるアルトゥル（森山）が現れ、祖母・エウゲーニャ（片桐はいり）を戒める。観客はまず、家族の中に秩序を蘇らせようと憤る森山の哲学的で難解な長セリフに驚かされる。さらに、伝統を破壊し、今では実験演劇を繰り返す父・ストーミルを演じるベテラン俳優・吉田鋼太郎の限界まで体を張った演技に誰もが目を見張る。自由と秩序の狭間で揺れる息子と父を演じる森山と吉田。2人が、鬼気迫る口調で論じ合う長回しの演技は、怖いぐらいに真剣ながらも、滑稽でおかしみがあり、観客からは笑いが漏れる場面も。重いテーマを投げかけながらも、片桐ら脇を固める個性的なベテラン陣が笑いを誘い、無秩序に話しながらも一体感のある舞台を見事に作り出していく。
また物語は、アルトゥルと対をなす存在の美しい従姉・アラ（奥村佳恵）が登場することで、現代演劇の要素が加わっていく。アルトゥルの理論が通じない奔放な彼女に、アルトゥルは伝統的な結婚をしようとプロポーズするのだが…。

家族の中で独裁者となっていくアルトゥルの“秩序”と“愛”の行方は？ラストに向かって怒りや悲しみを、言葉だけでなく手の指の先から足のつま先まで全身を使って演じていく森山。また、何度も観客を裏切っていく長塚の演出は必見！観る者を圧倒する舞台をぜひ、体感してほしい。（文・長谷亜紀子）

「シアターコクーン豪華4本立て！」（毎週水曜午後5:00）の第２段、「タンゴ-ＴＡＮＧＯ-　長塚圭史×森山未來」は、4月13日（水）午後5:00にＷＯＷＯＷで放送。

画像クレジット：撮影／谷古宇正彦