鳩山政権の「100日評価」は「C」評定 ―言論NPO、「鳩山政権100日評価」を公表−
[09/12/25]
提供元:DreamNews
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■鳩山政権の「100日評価」は「C」評定■
評価対象は民主党マニフェストの全項目に及びますが、今回はその中で中核的な政策分野と考える予算編成や経済政策、外交・安全保障など12分野に絞って評価をまとめ、その合計の平均点を鳩山政権の100日時点での全体の採点とすることとしました。この結果、鳩山政権の100日評価はA〜Cの3段階評価で「C」と判断されました。(1)100日時点での実績、(2)実行過程、(3)説明責任の3項目で評価を行いましたが、判断がCとなったのは、このうち(2)実行過程と(3)説明責任で特に評価が低かったためです。
12分野の中でAとされたものはなく、医療・介護政策、環境政策、雇用政策、新しい公共(2)の4分野がBとされましたが、残りの8分野はC判定となりました。実行過程、説明責任に対する評価は全分野で厳しく、外交・安全保障分野の実行過程は0点(20点満点)、少子化対策や年金・医療制度分野の説明責任が2点(20点満点)などとなっています。
また、言論NPOでは民主党が先の選挙のマニフェストで掲げた169の政策項目の取り組み状況についても検証を行いました。これによると、「未着手」のものが87項目、「修正」が9項目、「断念」と「先送り」は各1項目となりました。「達成」は6項目、「着手」は60項目でした。
<言論NPOの評価基準>
(1)「100日時点での実績」(40点満点):
「マニフェストでの約束が実現に向けて動いているか」、「約束達成への道筋が見えているか」、「政策の体系性と整合性の視点から、修正が行われる場合も、その変更が妥当で、上位の目的の実現に近づくものであるか」を判断します。
(2)「実行過程」(30点満点):
「国民との約束を軸とするマニフェストのサイクルが動いており、政治がリーダーシップをとってそれを進めているか」、「約束実現のために必要な体制やインプットの投入が行われているか」を判断します。
(3)「説明責任」(30点満点):
「国民との約束の実行」という視点から、このプロセスにおいて適切な説明が行われているかを判断します。
鳩山政権の100日 総合評価
マニフェスト型の政治サイクルにおいては、政府はまず選挙時の約束について、どういう優先順位でいつまでに取り組むのかを政府の約束として公表するところから始まり、その結果やプロセスにおいては約束の実行に責任を持つために、国民への説明責任が問われます。
予算編成のプロセスなどを見ても、鳩山政権ではマニフェストの実現を軸とした運営が精力的に図られてきたと、基本的には評価することができます。国家戦略局や行政刷新会議が設置され、閣僚委員会や政務三役などを軸とした省庁運営も行われました。しかし100日間でこれらが十分に機能したとは言えず、さらに閣僚間、連立与党間での意見調整によって結論が遅れたことも事実です。個別政策課題で首相の発言がブレや混乱を繰り返し、閣僚発言との食い違いも見られるなど、首相のリーダーシップの欠如も明らかとなりました。また、「政策は政府へ一元化」とされていたはずが、党の重点要望により政府の意思決定が促されるという結果となりました。
マニフェストでは、無駄の削減によって16.8兆円の財源を捻出することが盛り込まれたにもかかわらず、「事業仕分け」などでの削減は目標額に及ばず、最終的には「埋蔵金」の深掘りや国債の増発に頼るしかなく、将来世代に負担を転嫁することでしか、答えを見つけることができませんでした。また、外交政策についても、基本的な外交戦略を欠いたままに米軍基地問題は地元と連立与党、米国の狭間で迷走し、結論は先送りという事態に追い込まれてしまいました。こうした事態は、そもそもマニフェストやその作成過程自体に問題があったことによるものであり、マニフェストの再修正は不可欠な状況となっています。
■鳩山政権への3つの要望
これらの評価を通じて、言論NPOのマニフェスト評価会議は、国民との約束を軸とする政治を実現するために、以下の3点を政権発足100日目の鳩山政権に要望したいと考えます。
(1)今回の予算編成結果を受けて、先の選挙で国民に提案したマニフェストの修正に関して首相は国民に説明すべきであり、その際には「4年間での16.8兆円の財源捻出」の方法と、政府としてマニフェストをどう実行していくのかという方針を「政府の約束」として具体的に説明していただきたい。これらの体系的な説明は遅くても来年の通常国会の施政方針演説で行うべきである。
(2)これまでの100日間の政権の自己評価を通じて、民主党のマニフェストについて修正がある場合は再構成し、来年7月の参議院選挙までに新しいマニフェストを提案し、国民の信を問い直していただきたい。マニフェストの作成と実行のサイクルを実現するという観点から、マニフェストの作成と自己評価の公表に関して党や政府との間で関係や仕組みを構築し、それをどういう形で進めるのか説明していただきたい。
(3)政治主導や政策の内閣一元化について、政府として透明でわかりやすい政策実行プロセスを確立していただきたい。また連立与党間の合意に関して、次回以降はより詳細で評価可能なものにしていただきたい。
■言論NPOについて http://www.genron-npo.net/
言論NPOは「健全な市民社会」には「健全な議論」が必要との思いから、非営利で新しいメディアや議論の舞台を作ろうと8年前に発足した非営利組織です。現在、有権者主体の政治と緊張ある政策論議のためのマニフェスト評価、議論の舞台をアジアに広げるための「東京-北京フォーラム」の開催、当事者としての対案を専門家による各種会議の議論をもとに作成し、政府などに提言する等の活動を行っています。
【認定特定非営利活動法人 言論NPO概要】
所在地:〒103-0027 東京都中央区日本橋1-20-7
設立:2001年11月 代表者:工藤 泰志
【お問い合わせ先】
認定NPO法人 言論NPO事務局(担当:宮浦、高田)
TEL:03-3548-0511 FAX:03-3548-0512
評価対象は民主党マニフェストの全項目に及びますが、今回はその中で中核的な政策分野と考える予算編成や経済政策、外交・安全保障など12分野に絞って評価をまとめ、その合計の平均点を鳩山政権の100日時点での全体の採点とすることとしました。この結果、鳩山政権の100日評価はA〜Cの3段階評価で「C」と判断されました。(1)100日時点での実績、(2)実行過程、(3)説明責任の3項目で評価を行いましたが、判断がCとなったのは、このうち(2)実行過程と(3)説明責任で特に評価が低かったためです。
12分野の中でAとされたものはなく、医療・介護政策、環境政策、雇用政策、新しい公共(2)の4分野がBとされましたが、残りの8分野はC判定となりました。実行過程、説明責任に対する評価は全分野で厳しく、外交・安全保障分野の実行過程は0点(20点満点)、少子化対策や年金・医療制度分野の説明責任が2点(20点満点)などとなっています。
また、言論NPOでは民主党が先の選挙のマニフェストで掲げた169の政策項目の取り組み状況についても検証を行いました。これによると、「未着手」のものが87項目、「修正」が9項目、「断念」と「先送り」は各1項目となりました。「達成」は6項目、「着手」は60項目でした。
<言論NPOの評価基準>
(1)「100日時点での実績」(40点満点):
「マニフェストでの約束が実現に向けて動いているか」、「約束達成への道筋が見えているか」、「政策の体系性と整合性の視点から、修正が行われる場合も、その変更が妥当で、上位の目的の実現に近づくものであるか」を判断します。
(2)「実行過程」(30点満点):
「国民との約束を軸とするマニフェストのサイクルが動いており、政治がリーダーシップをとってそれを進めているか」、「約束実現のために必要な体制やインプットの投入が行われているか」を判断します。
(3)「説明責任」(30点満点):
「国民との約束の実行」という視点から、このプロセスにおいて適切な説明が行われているかを判断します。
鳩山政権の100日 総合評価
マニフェスト型の政治サイクルにおいては、政府はまず選挙時の約束について、どういう優先順位でいつまでに取り組むのかを政府の約束として公表するところから始まり、その結果やプロセスにおいては約束の実行に責任を持つために、国民への説明責任が問われます。
予算編成のプロセスなどを見ても、鳩山政権ではマニフェストの実現を軸とした運営が精力的に図られてきたと、基本的には評価することができます。国家戦略局や行政刷新会議が設置され、閣僚委員会や政務三役などを軸とした省庁運営も行われました。しかし100日間でこれらが十分に機能したとは言えず、さらに閣僚間、連立与党間での意見調整によって結論が遅れたことも事実です。個別政策課題で首相の発言がブレや混乱を繰り返し、閣僚発言との食い違いも見られるなど、首相のリーダーシップの欠如も明らかとなりました。また、「政策は政府へ一元化」とされていたはずが、党の重点要望により政府の意思決定が促されるという結果となりました。
マニフェストでは、無駄の削減によって16.8兆円の財源を捻出することが盛り込まれたにもかかわらず、「事業仕分け」などでの削減は目標額に及ばず、最終的には「埋蔵金」の深掘りや国債の増発に頼るしかなく、将来世代に負担を転嫁することでしか、答えを見つけることができませんでした。また、外交政策についても、基本的な外交戦略を欠いたままに米軍基地問題は地元と連立与党、米国の狭間で迷走し、結論は先送りという事態に追い込まれてしまいました。こうした事態は、そもそもマニフェストやその作成過程自体に問題があったことによるものであり、マニフェストの再修正は不可欠な状況となっています。
■鳩山政権への3つの要望
これらの評価を通じて、言論NPOのマニフェスト評価会議は、国民との約束を軸とする政治を実現するために、以下の3点を政権発足100日目の鳩山政権に要望したいと考えます。
(1)今回の予算編成結果を受けて、先の選挙で国民に提案したマニフェストの修正に関して首相は国民に説明すべきであり、その際には「4年間での16.8兆円の財源捻出」の方法と、政府としてマニフェストをどう実行していくのかという方針を「政府の約束」として具体的に説明していただきたい。これらの体系的な説明は遅くても来年の通常国会の施政方針演説で行うべきである。
(2)これまでの100日間の政権の自己評価を通じて、民主党のマニフェストについて修正がある場合は再構成し、来年7月の参議院選挙までに新しいマニフェストを提案し、国民の信を問い直していただきたい。マニフェストの作成と実行のサイクルを実現するという観点から、マニフェストの作成と自己評価の公表に関して党や政府との間で関係や仕組みを構築し、それをどういう形で進めるのか説明していただきたい。
(3)政治主導や政策の内閣一元化について、政府として透明でわかりやすい政策実行プロセスを確立していただきたい。また連立与党間の合意に関して、次回以降はより詳細で評価可能なものにしていただきたい。
■言論NPOについて http://www.genron-npo.net/
言論NPOは「健全な市民社会」には「健全な議論」が必要との思いから、非営利で新しいメディアや議論の舞台を作ろうと8年前に発足した非営利組織です。現在、有権者主体の政治と緊張ある政策論議のためのマニフェスト評価、議論の舞台をアジアに広げるための「東京-北京フォーラム」の開催、当事者としての対案を専門家による各種会議の議論をもとに作成し、政府などに提言する等の活動を行っています。
【認定特定非営利活動法人 言論NPO概要】
所在地:〒103-0027 東京都中央区日本橋1-20-7
設立:2001年11月 代表者:工藤 泰志
【お問い合わせ先】
認定NPO法人 言論NPO事務局(担当:宮浦、高田)
TEL:03-3548-0511 FAX:03-3548-0512