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サッポロビール那須工場にて世界初の宇宙大麦のビール醸造開始〜第114回日本育種学会において岡山大学と共同で最新の研究成果を発表〜

サッポロビール株式会社(本社・東京、社長・福永 勝)は、世界で初めて宇宙を旅した大麦の子孫を原料としたビール醸造を10月2日(木)より当社那須工場にてスタートします。当社では、宇宙におけるビール用大麦の可能性を探るため、2006年より岡山大学資源生物科学研究所(倉敷市、以下『岡山大学』)の杉本学准教授(専攻:細胞分子生化学)と「極限環境ストレスの大麦への影響調査」に関する共同研究を行っております。


本研究は、ロシア科学アカデミー生物医学研究所(以下『IBMP』)が、国際宇宙ステーションを利用して取り組む「宇宙環境における植物の適応能力とライフサイクルに関する研究」に参画している岡山大学が行う研究の一環であり、宇宙空間等のストレス環境が大麦に与える影響を解明することを目的としたものです。国内で唯一育種研究に携わる当社の長年の成果が認められ、サッポロビールが開発した品種「はるな二条」を宇宙での試料種子として提供する等の協力を行ってきました。

2006年に行なわれた宇宙実験では、国際宇宙ステーションのロシア実験棟内で5ヶ月間保管した大麦種子を持ち帰り、その子孫を当社群馬工場内にあるバイオ研究開発部の試験圃場で栽培、本年5月に無事収穫を迎えました。既にこれまでの研究で、宇宙を旅した大麦種子の発芽、生長、種子の稔実に変化がないことが明らかとなり、宇宙で安定的に大麦を栽培できる可能性が確認できています。

今般、宇宙環境が大麦の生体成分に及ぼす影響を調べる研究の一環として、宇宙大麦を原料とした麦芽やビールを製造して成分の分析を行い、地球の大麦と比較します。ビールの完成は11月上旬ごろを予定しており、完成したビールについては、さまざまな実験、調査のほか、何らかの形で宇宙科学の進歩や子供たちの教育に役立てたいと考えています。

なお、本研究の最新の成果と宇宙大麦種子の農業特性に関する研究成果を10月11、12日に滋賀県立大学で開催される第114回日本育種学会にて発表します。

創業以来130年以上原料にこだわり続けてきた当社は、引続き原料の可能性を引き出す共同研究に取組んでいくことでビール文化の新たな一頁として、宇宙への無限の可能性の追求や夢をご提案したいと願っています。



-----記------



1.宇宙ビール醸造の概要
   期 間    2008年10月2日(木)〜11月上旬
   場 所    サッポロビール那須工場
   数 量    約100L製造予定(原料麦芽約20kg) 
   原 料    麦芽(100%宇宙大麦)、ホップ

   
2. 第114回日本育種学会(10月11、12日 於;滋賀県立大学)発表要旨

宇宙環境で生育する大麦のストレス応答・防御遺伝子の発現

Elena Shagimardanova1・杉本 学1・Oleg Gusev2・Gail Bingham3・Margarita Levinskikh4 ・Vladimir Sychev4
(1. 岡山大 資源生物科学研究所、2. 農業生物資源研究所、3. Space Dynamic Laboratory, Utah State University, USA、4. Institute for Biomedical Problems, RAS, Russia)

宇宙環境が植物の生育や遺伝子・タンパク質発現に及ぼす影響を明らかにする目的で、国際宇宙ステーション(ISS)内に設置している植物栽培装置を用いて大麦「はるな二条」の栽培を行った。ISS内で28日間発芽生育した大麦の葉からRNAを抽出し、ストレス応答・防御遺伝子の発現をReal-Time PCR等により解析した結果、活性酸素類消去酵素遺伝子の誘導が認められ、宇宙環境で生育する大麦に酸化ストレスが発生していることが示唆された。


宇宙大麦の特性解析 −宇宙環境に曝露した大麦種子の後代における農業特性調査−

木原 誠1・金谷良市1・保木健宏1・荒井正一1・斉藤 渉1・高橋 進1・林 勝弘1・伊藤一敏2・Oleg Gusev3・Margarita Levinskikh4・Vladimir Sychev4・杉本 学5
(1. サッポロビール バイオ研究開発部、2. サッポロビール 価値創造フロンティア研究所、
3. 農業生物資源研究所、4. Institute for Biomedical Problems, RAS, Russia、5. 岡山大 資源生物科学研究所)

国際宇宙ステーション(ISS)内で5ヶ月間にわたり保存された「はるな二条」の種子(第1世代)を人工気象庫で栽培した。第1世代に稔実した種子(第2世代)を試験圃場に播種し、通常のはるな二条を対照として各種農業形質の比較調査を行った。得られた結果をt検定により統計解析した結果、いずれの形質でも対照、試験間で有意差は認められなかった。以上のことから、ISS内で5ヶ月間にわたり保存された種子の後代においては、今回調査した農業形質に関する変異は認められないことが明らかとなった。



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