【矢野経済研究所プレスリリース】車載用リチウムイオン電池世界市場に関する調査を実施(2021年)〜2020年の車載用リチウムイオン電池世界出荷容量は前年比25.9%増の167.5GWh〜
[21/03/16]
提供元:DreamNews
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株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、車載用リチウムイオン電池(Lithium-ion Battery、以下LiB)世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにいたしました。ここでは、世界の車載用LiB市場推移・予測について公表いたします。
1.市場概況
2020年における車載用LiB世界市場規模は容量ベースで、前年比125.9%の167.5GWhとなり、xEV(EV、PHEV、HEV)の市場成長と連動し車載用電池市場も拡大した。xEVタイプ別に見ると、HEVが2.36GWh(前年比120.3%)、PHEVが17.0GWh(同183.6%)、EVは148.1GWh(同121.6%)と推計する。
コロナ禍で2020年の自動車世界市場全体では前年比マイナス推移となっているが、xEVに関しては欧州、中国を中心に前年を上回る推移となった。HEVに関しては欧州、北米、中国で販売台数が伸びており、PHEVは欧州での伸びが主な牽引役となっている。EVはTeslaの「Model 3」が前年に引き続き販売を伸ばしており、一方、中国では低容量EVが急激な販売増となっている。
2.注目トピック〜各国で電動化政策、加速の動き
欧州では、2021年基準で世界で最も厳しい目標を設けており、さらに、2030年において乗用車のCO2排出量を企業平均で2021年目標から37.5%削減する規制案が2019年3月に欧州議会で可決され、今後、同規制に対応するためにはクリーンディーゼルやHEV、PHEVだけではクリアできず、自動車メーカーはCO2等の温室効果ガスを排出しないEVの販売割合を大きく引き上げる必要がある。2020年には新型コロナウイルス感染拡大による経済後退への対策としてxEVに対する補助金の追加実施等が行われ、PHEV、EVは前年を上回る市場規模となっているが、補助金依存の側面も否定できず、今後どの程度の市場成長が維持出来るかには懸念も残る。
中国は、2020年10月、「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」を発表し、2035年を目途に新車販売の全てを環境対応車(50%をEVを柱とする新エネ車、残りの50%をHEV ※HEVにはM-HEV、代替燃料車含む)とする方針が打ち出された。2019年よりNEV規制が実施されており、「CAFE/NEVクレジット管理政策」改定案では新たに「低燃費車」(燃費がCAFE目標値以下の車)優遇として、要求されるクレジットがガソリン・ディーゼル車の半分とする内容が記載されている。引き続きEVを軸に据えているが、HEVに注力度が徐々に上がっている状況にあると見られる。
北米は、他のエリアに比べ低燃費規制の厳格化が遅れたことや、自動車メーカーの政府に対する影響力の強さ等を背景に、他国に比べ比較的緩和された規制となっており、トランプ政権下では2020年3月に規制を更に緩和する新たな基準が発表されていた。しかし、2021年以降、バイデン政権下では再び規制強化へシフトする向きにあると見られる。米国の場合、カリフォルニア州等の州単位で独自規制が推進されており、自動車メーカーに一定量のEVやPHEV、FCVの販売を義務づけるZEV規制がxEV市場の牽引役となっている。なお、連邦政府としてのZEV普及政策、目標は現時点では存在しないが、バイデン政権下において、今後新たに設定される可能性もあると見られる。
日本では、2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」において、日本政府として初めて2050年までの二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)が表明され、2030年代半ばまでにICE(内燃機関)車の新車販売ゼロを目指す方向で調整が行われている。東京都も2030年までに新車販売の50%をEV等にする目標を独自に設定していたが、同目標を100%に引き上げるとしている(※両目標共にHEVは電動車に含む)。
3.将来展望
xEV市場を取り巻く市場環境を考慮し、成長率高めの「政策ベース予測」と成長率低めの「市場ベース予測」、2つのシナリオで成長予測を行った。
「政策ベース予測」は、世界的な環境規制強化の動きと各国政府の普及政策、それに対応した自動車メーカー各社の電動化シフトを背景に、自動車メーカー各社及び各国政府のxEV導入目標台数が概ね計画通りに実現されることを想定し、比較的高い成長率で推移するシナリオを読み込んでいる。
xEVの導入を妨げる諸問題(充電インフラ等)が解決され、専用プラットフォームでの量産規模の拡大等で、車両価格も既存のICE車に近づき、PHEV、EVの大衆化がある程度進む見通しとしている。政策ベース予測における車載用LiB世界市場規模は容量ベースで、2025年で835.1GWh、2030年には1,809.2GWhになると予測する。
一方、「市場ベース予測」では、使い勝手の良さや車両価格の求めやすさなどの消費者側のニーズを含め、xEV普及拡大に向けた各種課題解決にある程度の時間を要する設定とし、政策ベース予測に比べて成長率は低めで推移するシナリオとなっている。
足元のxEV市場は特にEV、PHEVに関して、引き続き補助金政策が成長エンジンになっている側面が強いと見られる。車両価格低減に向けた取り組み(専用プラットフォームの適用、電池コスト低減に向けた電池材料、セル、パック技術開発等)が推進されている状況にあるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済後退を受け、自動車市場全体が縮小傾向にある中、自動車メーカー各社はICE車に比べ利幅が少ないPHEV、EVの展開が当初の想定よりも困難となり、また経済環境を考慮すると消費者による購買拡大も、やはり当初の見込み程には至らないと予測する。市場ベース予測における車載用LiB世界市場規模は2025年で422.9GWh、2030年には764.4GWhになると予測する。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2671
調査要綱
1.調査期間: 2020年8月〜2021年2月
2.調査対象: 自動車メーカー、車載用リチウムイオン電池メーカー(日本、欧州、中国、韓国)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接調査、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2021年02月26日
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株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
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1.市場概況
2020年における車載用LiB世界市場規模は容量ベースで、前年比125.9%の167.5GWhとなり、xEV(EV、PHEV、HEV)の市場成長と連動し車載用電池市場も拡大した。xEVタイプ別に見ると、HEVが2.36GWh(前年比120.3%)、PHEVが17.0GWh(同183.6%)、EVは148.1GWh(同121.6%)と推計する。
コロナ禍で2020年の自動車世界市場全体では前年比マイナス推移となっているが、xEVに関しては欧州、中国を中心に前年を上回る推移となった。HEVに関しては欧州、北米、中国で販売台数が伸びており、PHEVは欧州での伸びが主な牽引役となっている。EVはTeslaの「Model 3」が前年に引き続き販売を伸ばしており、一方、中国では低容量EVが急激な販売増となっている。
2.注目トピック〜各国で電動化政策、加速の動き
欧州では、2021年基準で世界で最も厳しい目標を設けており、さらに、2030年において乗用車のCO2排出量を企業平均で2021年目標から37.5%削減する規制案が2019年3月に欧州議会で可決され、今後、同規制に対応するためにはクリーンディーゼルやHEV、PHEVだけではクリアできず、自動車メーカーはCO2等の温室効果ガスを排出しないEVの販売割合を大きく引き上げる必要がある。2020年には新型コロナウイルス感染拡大による経済後退への対策としてxEVに対する補助金の追加実施等が行われ、PHEV、EVは前年を上回る市場規模となっているが、補助金依存の側面も否定できず、今後どの程度の市場成長が維持出来るかには懸念も残る。
中国は、2020年10月、「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」を発表し、2035年を目途に新車販売の全てを環境対応車(50%をEVを柱とする新エネ車、残りの50%をHEV ※HEVにはM-HEV、代替燃料車含む)とする方針が打ち出された。2019年よりNEV規制が実施されており、「CAFE/NEVクレジット管理政策」改定案では新たに「低燃費車」(燃費がCAFE目標値以下の車)優遇として、要求されるクレジットがガソリン・ディーゼル車の半分とする内容が記載されている。引き続きEVを軸に据えているが、HEVに注力度が徐々に上がっている状況にあると見られる。
北米は、他のエリアに比べ低燃費規制の厳格化が遅れたことや、自動車メーカーの政府に対する影響力の強さ等を背景に、他国に比べ比較的緩和された規制となっており、トランプ政権下では2020年3月に規制を更に緩和する新たな基準が発表されていた。しかし、2021年以降、バイデン政権下では再び規制強化へシフトする向きにあると見られる。米国の場合、カリフォルニア州等の州単位で独自規制が推進されており、自動車メーカーに一定量のEVやPHEV、FCVの販売を義務づけるZEV規制がxEV市場の牽引役となっている。なお、連邦政府としてのZEV普及政策、目標は現時点では存在しないが、バイデン政権下において、今後新たに設定される可能性もあると見られる。
日本では、2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」において、日本政府として初めて2050年までの二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)が表明され、2030年代半ばまでにICE(内燃機関)車の新車販売ゼロを目指す方向で調整が行われている。東京都も2030年までに新車販売の50%をEV等にする目標を独自に設定していたが、同目標を100%に引き上げるとしている(※両目標共にHEVは電動車に含む)。
3.将来展望
xEV市場を取り巻く市場環境を考慮し、成長率高めの「政策ベース予測」と成長率低めの「市場ベース予測」、2つのシナリオで成長予測を行った。
「政策ベース予測」は、世界的な環境規制強化の動きと各国政府の普及政策、それに対応した自動車メーカー各社の電動化シフトを背景に、自動車メーカー各社及び各国政府のxEV導入目標台数が概ね計画通りに実現されることを想定し、比較的高い成長率で推移するシナリオを読み込んでいる。
xEVの導入を妨げる諸問題(充電インフラ等)が解決され、専用プラットフォームでの量産規模の拡大等で、車両価格も既存のICE車に近づき、PHEV、EVの大衆化がある程度進む見通しとしている。政策ベース予測における車載用LiB世界市場規模は容量ベースで、2025年で835.1GWh、2030年には1,809.2GWhになると予測する。
一方、「市場ベース予測」では、使い勝手の良さや車両価格の求めやすさなどの消費者側のニーズを含め、xEV普及拡大に向けた各種課題解決にある程度の時間を要する設定とし、政策ベース予測に比べて成長率は低めで推移するシナリオとなっている。
足元のxEV市場は特にEV、PHEVに関して、引き続き補助金政策が成長エンジンになっている側面が強いと見られる。車両価格低減に向けた取り組み(専用プラットフォームの適用、電池コスト低減に向けた電池材料、セル、パック技術開発等)が推進されている状況にあるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済後退を受け、自動車市場全体が縮小傾向にある中、自動車メーカー各社はICE車に比べ利幅が少ないPHEV、EVの展開が当初の想定よりも困難となり、また経済環境を考慮すると消費者による購買拡大も、やはり当初の見込み程には至らないと予測する。市場ベース予測における車載用LiB世界市場規模は2025年で422.9GWh、2030年には764.4GWhになると予測する。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2671
調査要綱
1.調査期間: 2020年8月〜2021年2月
2.調査対象: 自動車メーカー、車載用リチウムイオン電池メーカー(日本、欧州、中国、韓国)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接調査、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2021年02月26日
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