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英国の大麻由来のCBD製品におけるTHC濃度の健康指針の概要仮訳を公表

英国の業界団体であるメディカルカンナビスセンター(CMC)、カンナビノイド産業協会(ACI)、保守的な薬物政策改革グループ(CDPRG)が共同で21年3月に「CBD製品におけるTHC濃度の健康指針-安全性評価と規制に関する推奨事項:Health Guidance Levels for THC in CBD products-Safety Assessment & Regulatory Recommendations」をまとめました。

本報告書は全40頁ありますが、日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)では、
その概要を仮訳しましたので7月16日にWEBサイトにて公表します。

概要
カンナビス・サティバ(Cannabis Sativa)という植物から抽出されるカンナビジオール(CBD)は、ウェルネス製品として消費者の関心が急速に高まっており、英国では年間約3億ポンド(約460億円)の市場規模があり、推定で130万人のユーザーがいると言われています。CBD自体は規制物質ではありませんが、CBD製品には、様々なテトラヒドロカンナビノール(THC)化合物を含む、少なくとも12種類の規制対象となりうる化学物質が含まれています。

ヘンプ、CBD、その他のカンナビノイドを含む製品の規制状況については、一般市民や英国企業の間で混乱が生じていますが、英国内務省の解釈では、規制管理された化学物質が検出されない場合でも、すべてのCBD製品が規制管理されていると推定されます。この推定は、科学的な慣習とは相容れないものであり、判例法とも相容れない可能性があります。

欧州のほとんどの国では、消費者向けの製品に含まれる規制対象のカンナビノイドについて、最大濃度が合意されています。これは、消費者向け製品中のTHCが0.001mg/kg(EU(EFSA)およびドイツ)から0.007mg/kg(スイスおよびクロアチア)までの範囲であり、またCBD最終製品中のTHCの制限値(オランダの0.05%からガーンジー島の<3%までの範囲)も含まれています。

英国の規制の異常性に対処するために、本報告書では、入手可能なすべてのデータを独自に検討し、THCの安全基準を0.03%または1日あたり21μgとすることを推奨していますが、これは次のように導き出されます。

・英国食品基準庁(FSA)によるCBDを安全に摂取する濃度1日当たり70mgまで

・ 2015年の食品チェーンのコンタミネーションに関する欧州食品安全機関(EFSA)パネルでは、THCの安全な急性参照用量を83μg(約1μg/kg/日)と報告しており、これに異議を唱える証拠は見当たりません。

・CBD製品に含まれる微量の他の植物由来の化学物質の薬力学的または薬物動態学的な影響の可能性については、2の不確実係数を加えます。

・消費者の中には、推奨一日摂取量を超えて製品を使用する人もいます。そのため、使用量の変化を考慮して、さらに不確実係数を2とすることを提案します。

・これらの追加の不確実係数(2×2=4)を欧州食品安全機関(EFSA)の急性参照用量(ARfD)に適用すると、CBDの最大1日投与量の0.03%に相当する21μgが閾値となります。

提案されている0.03%という安全基準は、CBD食品や消費者製品に含まれる規制対象のカンナビノイドの総量を考慮したものであることを推奨します(つまり、Δ9THCよりも一般的ではなく強力ではない他のTHCとCBNを含む)。このレベルのTHCは、THC薬物検査で陽性となる可能性は極めて低いものです。

入手可能な文献のギャップレビューに基づき、我々は以下の研究を推奨します。

精製したカンナビノイド製品および混合したカンナビノイド製品を動物およびヒトに経口、吸入、舌下、外用で投与した場合の急性および慢性毒性試験、CBDユーザーの人口統計および消費パターンの研究、CBD製品のフェーズ4(製造販売後臨床試験)スタイルの調査研究などです。

本報告書の文献調査と安全性評価に基づき、以下の政策提言を行います。

1.カンナビノール誘導体(THCおよびCBN化合物)の含有量が21μg以下、または総濃度が0.03%以下のCBDベースの製品を規制対象から除外する。

2.最終製品のカンナビノール誘導体の含有量が0.03%以下である、承認された大麻草の乾燥葉および花を規制対象外とする。

3.英国食品基準庁(FSA)は、CBDベースの製品の製造者に対し、必須の警告ラベルを記載し、事前に承認された消費者向けアプリケーションを通じて、疑わしい有害事象を追跡・報告することを義務付ける規制を設けること。

4.英国内務省は、CBD製品の法的規制を明確にするため、最新の公的指針を緊急に発行すること。

5.英国内務省と英国食品基準庁(FSA)は、CBDをベースにした新規および非新規の食品の輸出入、製造、供給に関する規制上の管理と要件について、産業界に共同で指針を発行すること。

補足事項
本報告書の政策提言には、規制対象となるカンナビノイドを0.03%〜0.2%含むCBD製品は、2001年薬物乱用防止法のスケジュール5(処方箋なし、OTC、ドラッグストア販売可)に分類され、英国内で合法的に店頭販売されるべきであると推奨しています。これは、世界保健機関(WHO)が行った、THCが0.2%以下のCBD製品を規制管理対象から外すという勧告は、乱用の可能性がないことを根拠にしています。

●欧州におけるCBD製品のTHC制限値

英国領ジャージー島、ガーンジー島 <3%
スイス              <1%
オーストリア、ルクセンブルク、チョコ共和国 <0.3%
ポーランド、ギリシャ、スペイン、ベルギー <0.2%
ルーマニア、ドイツ、デンマーク <0.2%
オランダ  <0.05%
フランス、スウェーデン、ノルウェー  制限値がない
英国、スロバキア  制限値がない
ブルガリア、イタリア 不明

【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000240566&id=bodyimage1

図1 欧州におけるCBD製品のTHC制限値

CBD製品におけるTHC濃度の健康指針-安全性評価と規制に関する推奨事項の概要仮訳
はこちらへ
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=115383

本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。

原文
Health Guidance Levels for THC in CBD products-Safety Assessment & Regulatory Recommendations
https://theaci.co.uk/wp-content/uploads/2021/03/Joint-report-CMC-ACI-CPDRG-Health-Guidance-Levels-for-THC-in-CBD-products.pdf


<用語解説>

Δ9-THC:
デルタ9−テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。

CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。

ヘンプ(産業用大麻)
大麻草に含まれ、向精神作用のあるTHC濃度が1%未満の品種を栽培し、そこから衣類、食品、化粧品、建材、製紙、飼料、敷料、自動車用品などの産業用途に使用すること。嗜好用や医療用の大麻と区別するために、ヘンプ(Hemp)と呼ばれている。

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。





配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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