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映画『河童のクゥと夏休み』はどう作られたか?映画と本が調和する デジタル出版物の新しい道

ボイジャーは、昨年7月28日に公開されたアニメーション映画『河童のクゥと夏休み』(原作:木暮正夫、脚本・監督:原 恵一)の「映画と本が調和する新しい電子的出版物」を構想し、来る5月28日のDVD発売を前にWeb上のメイキング版『クゥの映画缶』としてインターネット上に公開致しました。
ボイジャー(本社:東京都渋谷区、代表取締役:萩野 正昭、以下:ボイジャー)は昨年7月28日に公開されたアニメーション映画『河童のクゥと夏休み』*(原作:木暮正夫、脚本・監督:原 恵一*)と出会い、約一年の期間をかけて映画と本が調和する新しい電子的出版物を構想してまいりました。このたび完成し、来る5月28日のDVD発売を前にWeb上のメイキング版『クゥの映画缶』としてインターネット上に公開致しました(http://www.dotbook.jp/coo/)。

 『クゥの映画缶』は、ボイジャーのホームページよりフリーパス(525円/90日有効)を購入してご覧いただくことを基本としていますが、おおよそ全般を見る無料の試し読みもできる対応が施されています。

* 原 恵一:『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!!オトナ帝国の逆襲』(2001)などで幅広い世代に高い評価を得ているアニメーション監督
* 『河童のクゥと夏休み』:文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞・毎日映画コンクールアニメーション映画賞・日本PTA全国協議会特別推薦作品など多数受賞

 『クゥの映画缶』は三つの本がリンクし合い、映画がどのように構想され、演出され、デザインされていったかを知るものです。これら三つの本はCrochet(クロッシェ)*によって相互に連動しています。

全編コマブック(4,865ページ):2時間18分の本編約1,500カットから抜き出されたコマです。
コメントブック(434ページ):原 恵一監督の絵コンテに対するコメントです。
絵コンテブック(862ページ):絵コンテ用紙約850枚の全てが収録されています。


 今回のプロジェクトでは、映画『河童のクゥと夏休み』製作委員会の全面的な協力によって、制作プロセスに残された多くの素材、資料が提供されました。また原 恵一監督の長時間にわたるインタビューから編集された制作秘話が素材・資料の断片を関連づけ、読み物としての一つの文脈を形づくっています。このことによって、デジタル時代の情報性に富むコンテンツの一例を具現化することができました。それでいて『クゥの映画缶』では、本編の映像や音声・音楽、制作現場の記録映像などは一切使用しておりません。本編映像のカットから抜き出された4,800もの映像フレイムをコマ抜きし、本のページとして配置し、読者が一切のコントロールを握る本のもつ独特のユーザーインターフェースを徹底して尊重しています。「読むように見る」「見るように読む」が追求されたのです。

 また、約4,800の全編コマは、75話に分割され、携帯電話で可読するコミック体裁の「フィルムブック」として配信・販売されています。ワンセグ導入以来人気上昇中のワイド型携帯電話での配信・販売も行われています。これらの全てはボイジャーのドットブック(.book)を"原液"として導きだされるワンソース・マルチの制作技術に基づいて展開されたものです。

■「フィルムブック」販売サイト:

ケータイ理想書店(http://www.dotbook.jp/coo/mobile/
コダワリ編集部イチオシ!(http://104book.jp/
ケータイ読書館(http://spacetownbooks.jp/

■デジタル出版としての『クゥの映画缶』について

デジタルコンテンツが貢献できる社会的な意味は何なのだろうか。これを見極めることは私たちボイジャーのテーマでした。デジタル時代の出版社として成り立つためには、必ず越えねばならない課題なのだとしてきたことです。

すべてがビジネス一辺倒のIT社会風潮のなかにあって、新しいメディアは今までの方法とは異なった別種のアプローチがあるはずだと私たちは模索してきましたが、コンテンツの創造を電子的に実現するためには言い尽くせない困難がありました。多くはさまざまに重なり合う諸権利であり、コンテンツを切り開き、生み出すことを躊躇させてきました。しかしデジタル時代のコンテンツの特徴は、それ自身が内包する情報性であり、関連する情報のリンクこそ圧倒的な強味だったのです。

アニメーションは日本が世界に誇るコンテンツであることは広く認められています。そうでありながら、本質を探る手だては諸先輩による何冊かの書籍や若干のテレビ番組以外に接する余地はありませんでした。ビジュアルな創造物の魅力を冷静に見る試みこそデジタル時代のコンテンツ制作者として見逃すことの出来ない課題であったといえます。

同時にアニメーション映画には多くの技術が含まれるだけではなく、果敢に挑戦するクリエーターの情熱や思想を含む情報の坩堝であるといって過言ではありません。当然にも多くの著作権を持つ総合芸術であったわけです。従って、作品そのものを商品として提供する以外に、デジタル化された別種の創造へのトライは普通では考えられないことに近かったのです。

今回インターネット上に公開された『クゥの映画缶』は、『河童のクゥと夏休み』製作委員会の理解をいただきました。私たちボイジャーに与えられた大きなチャンスでした。はじめて作品の作られた背景に迫るメイキング版をデジタルコンテンツとして作り上げる機会を与えられたと同時に、作品に関わる膨大な素材、資料を提供されました。これは製作委員会の特別な配慮と英断によって可能になったものです。私たちボイジャーは15年の電子出版経験の全てをここに投じました。

創造が一人の力によってのみできるものではないことを今回程身にしみて感じさせられたことはありません。私たちに貴重な機会を与えてくれた映画『河童のクゥと夏休み』のスタッフ全員に対して深い敬意を抱くとともに、難解な私たちの計画に勇気を持って手を差し伸べてくださった製作委員会の方々へ心から感謝の気持ちを抱きます。

どうか『クゥの映画缶』をご覧いただき、一編のアニメーション映画に込められた人の気持ちを見届けていただきたく思います。

報道用画像URL

『クゥの映画缶』画面サンプル:
http://www.voyager.co.jp/hodo/images/img_080527/kijungamen.jpg
標準型携帯電話画面:
http://www.voyager.co.jp/hodo/images/img_080527/sample_normal.jpg
ワイド型携帯電話画面:
http://www.voyager.co.jp/hodo/images/img_080527/sample_wide.jpg


* 注:株式会社ボイジャーについて
株式会社ボイジャーは、1992 年10 月設立、電子本ビューア『T-Time』を開発、TTX というHTML ベースのタグ体系のソースファイルをもち、商業的配布に対してはドットブック(.book)という出版フォーマット化を実現させた。T-Time で作成されるドットブック(.book)ファイルとWeb ブラウザ用プラグインを用いて、日本語本来のたて書き・ルビといった表示を実現、携帯電話を含む液晶デバイスに最適な機能を有するところから、業界で活用されている。詳細は、http://www.voyager.co.jp/

* 注:ティータイムクロッシェ(T-Time Crochet)について
T-TimeはT-Time専用形式ドットブック(.book)、TTZ(.ttz)形式、テキスト、HTMLを読む、電子出版用ソフトウェア。Crochetとは「かぎ針編み」の意。ネット上に置かれたいくつものドットブック(.book)を連動させ、相互にリンクして情報を把握するボイジャーの電子出版技術。詳細は、http://www.dotbook.jp/crochet/

* 注:ドットブック(.book)について
2000年に商用に電子本を販売することを目的としてボイジャーが開発した。インターネット上で全文が立ち読みでき、かつ不正コピーの防止等ができる。T-Timeをビュアーとして縦書き文庫本スタイルで可読できる。講談社、集英社、角川書店、新潮社、文藝春秋、筑摩書房などがすでに採用している。詳細は、http://www.voyager.co.jp/dotbook/dotbook.html

ドットブック作品を販売する「理想書店」でドットブック作品の立ち読みが可能です。
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