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特許力からみた業界分析 -鉄鋼業界 【特許力指数ランキング、新日本製鐵とJFEの大手二社が突出】

工藤一郎国際特許事務所は、特許価値を評価するための特許価値評価手法(YKS手法)を用いたサービスを提供している。今回はそのYKS手法を用いて、特許力の面から見た鉄鋼業界についての分析を試みる。
工藤一郎国際特許事務所では、特許の経済的価値を正確かつ客観的に評価する手法としてYKS手法を用いたサービスを提供している。YKS手法により算出される特許力指数(YK値)は、いわば特許がお金を稼ぐ力を指数化したものであり、各企業の特許による競争力を指数で示したものだ。

東証一部上場企業の鉄鋼業界における特許力指数ランキングは次のようになった。

【鉄鋼業界の特許力指数ランキング】
     企業名         YK値   YK偏差値
1位  新日本製鐵       12775.06    87.72
2位  JFEホールディングス 11370.44    83.11
3位  神戸製鋼所         6790.81    68.07
4位  住友金属工業       5245.35    63.00
5位  日立金属          3649.99    57.76
6位  日本冶金工業       929.74    48.83
7位  大同特殊鋼         858.11    48.59
8位  日新製鋼           714.75    48.12
9位  東洋鋼鈑           617.80    47.80
10位  三菱製鋼           453.19    47.26
(算出基準日:2008年6月1日)

このように鉄鋼業界最大手の新日本製鐵が特許力指数でもトップに立った。僅差の二位には業界2位のJFEホールディングスがランクイン。この大手二社が業績だけでなく特許力でも大きな存在感を示す結果となった。以下、神戸製鋼所、住友金属工業、日立金属などの大手企業が名を連ねた。また、大手企業が名を連ねる中で、比較的小さな企業ながらランクインした三菱製鋼や東洋鋼鈑などにも注目しておきたい。


次に、先程紹介した鉄鋼業界の上位10社が保有する特許のうちで最も価値の高い特許ベスト3は次のようになった。

【特許別の特許力指数ランキング】
    発明の名称(略称)【企業名(権利者名)】
1位  高温鋼鈑の冷却装置 【JFEホールディングス(JFEスチール)】
2位  含塩素高分子樹脂の塩素除去装置【JFEホールディングス(JFEスチール)】
3位  ピソライト鉄鉱石を原料とする製鉄用焼結鉱及びその製造方法【新日本製鐵】

本ランキング1位の特許は、熱間圧延された高温鋼鈑の冷却装置についてのJFEホールディングスの発明である。従来技術では水冷中に冷却ムラが生じやすく、鋼板の変形や材質のバラツキなどの原因となっていた。この発明では均一な冷却で冷却ムラや鋼板の反りが発生しないので、均質な鋼板を安定的に製造すること、また低コストで厚鋼板を製造することが可能になる。

次いで2位もJFEホールディングスの特許である。この特許は、プラスチックなどの合成樹脂類を処理するにあたり、環境汚染を生じさせる有害ガスの発生を抑えるため、また焼却処理時に焼却炉を傷めないように合成樹脂類から塩素を除去する装置についての発明である。この発明により、従来よりも塩素除去装置の設備コストや処理コストを大幅に低減させることができる。

3位の特許は、特許力指数で1位の新日本製鉄の特許で、製鉄の主要原料である焼結鉱を、これまでのヘマタイト鉱石ではなくピソライト鉄鉱石を原料として製造する発明である。良質なヘマタイト鉱石は枯渇の方向にあり、埋蔵量が莫大で採掘費用が安く供給が安定しているピソライト鉄鉱石を使用することができればコスト削減などの経済的効果や、資源の有効活用が期待できるのである。


これらのような価値の高い特許は大きな影響力を持っていて、価値の高い特許を持っていれば持っているほど企業は技術的に有利に事業を進められるのである。


***
【鉄鋼業界の特許戦略】

日本の鉄鋼メーカーは世界の中でも高級鋼に強みを持っている。高級鋼とは自動車向けの「軽くて強い鋼板」などといった高付加価値品で、製造には高いレベルの技術力が必要なのだ。このため日本の大手鉄鋼メーカーは研究開発に熱心に取り組んできており、鉄鋼業界においては技術力・特許力が企業戦略の非常に重要な部分を担うようになった。先ほどの特許力指数ランキングで大手企業が軒並みランクインしたことも、このような特許戦略の重要性を如実に物語っているのである。


ここで鉄鋼業界におけるYK値と経済指標の相関係数を見ていただきたい。
      YK値との相関係数
時価総額     0.9600
売上高       0.9859
営業利益     0.9745
経常利益     0.9650
(相関係数とは二つの現象の間の相関的関係の程度を表す係数で、1に近いほど関係が強いといえる。)

これを見ると、鉄鋼業界ではYK値と各経済指標の間に非常に強い相関関係があることがわかる。もはや特許力がほぼそのまま経済指標に直結するといってもいいような相関である。つまり、このデータによると、企業の特許力は業績に非常に大きな影響を与えているのである。

また、各企業のROE(自己資本利益率)を見てみると、上位十社の平均が約17%と高い値を示している(東証一部上場の鉄鋼企業平均は約12.5%)。ROEとは、どれだけ製品に付加価値をつけられるかといったことが問われ、そこには技術力が大きく寄与する。よって特許力指数の高い上位10社ではROEが高くなっている傾向が見て取れるのである。


さらに最近では資源高、原材料高が鉄鋼各社の大きな負担となっていて、新技術の開発による効率化や省エネ化が急務となっている。また、温暖化対策についていえば、日本の産業界全体が排出する温室効果ガスのうちの4割を占める鉄鋼業界には環境技術の開発を求める声が多く存在するのが現状である。このようなことから、鉄鋼業界にはさらなる技術力の向上が求められているのだ。


以上の分析から、鉄鋼業界において特許力は非常に重要なものだと分かっていただけたであろう。日本の鉄鋼メーカーにとって技術力は非常に重要な資産であって、鉄鋼メーカー各社はどのような知財マネジメントを展開していくかが今後のカギを握っているといえるだろう。また、投資等においては、こうして特許力から企業を選別するのもまた有力な方法であるといえるだろう。


【YKS手法とは】
YKS手法とは、特許の独占排他力を評価することに主眼をおいた特許価値評価手法であり、工藤一郎国際特許事務所において独自に開発された手法である。独占排他力の大きな特許とは競争相手から見れば自身に事業障害をもたらす原因であり、この障害を検知し、排除しようとする行動が必然となる。そこで、特許に対して起こされる競争相手のアクションを評価することで特許の独占排他力を評価する。


*本リリースにおけるJFEホールディングスのYK値はグループ企業であるジェイエフイーホールディングス、JFEスチール、JFEエンジニアリング、JFE都市開発、JFE技研、ユニバーサル造船、川崎マイクロエレクトロニクス、日本鋼管の8社の特許を対象として算出を行いました。一方、弊社ホームページではジェイエフイーホールディングス、JFEエンジニアリング、日本鋼管の3社の特許を対象として算出を行っているため、YK値が異なることをご了承ください。


企業特許力指数ランキングの詳細はこちら
【 http://www.kudopatent.com/a23.html 】


YKS手法についての詳細はこちら
【 http://www.kudopatent.com/a21.html 】



【本件に関するお問い合わせ先】
工藤一郎国際特許事務所
担当 : 小林
電話 : 03-3216-3770
E-mail:office@kudopatent.com


《関連URL》
http://www.kudopatent.com/
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