国内初!活動的なオフィスへの移転による健診データの維持・改善を確認
[21/03/18]
提供元:@Press
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公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所(本部:東京都新宿区、理事長:中熊 一仁)、株式会社オカムラ(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:中村 雅行、以下 オカムラ)は、2018年10月より共同で開始したオフィス環境改善による働き方改革に関する実証実験結果について報告し、その結果が、産業衛生と環境医学分野の国際学術雑誌「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載されました。
本実証実験では、座りすぎ(※1)を減らして活動的に働くことができるオフィスに移転することで、従業員の健診データが維持・改善することを明らかにしました。本知見は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、オフィス環境の見直しが迫られている昨今において、健康に働くことができる新しいオフィスづくりに役立つことが期待されます。
※1 座りすぎ:オフィスワーカーの新たな健康リスク。長時間継続して座り続けていると、生活習慣病を発症しやすく、死亡リスクが増加する。
■ポイント
◎移転後オフィスには、昇降デスク、自由に選べる共用席、歩きやすい回遊型通路を設置
◎オフィス移転後に座っている時間が減少し、少し早めに歩くなどの中高強度の身体活動が増加
◎対照群との比較により、腹囲、HDLコレステロール、HbA1cの維持・改善を確認
本研究の成果は、「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に2021年2月25日付で先行公開されました。本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金の助成を受けて実施されました。なお研究実施の際には、利益相反による問題が生じないよう十分配慮しました。
■論文
題名 :Impact of ergonomics on cardiometabolic risk in office workers:
Transition to activity-based working with height-adjustable desk.
(人間工学的職場環境がオフィスワーカーの心血管・代謝性の疾患リスクに及ぼす影響:
昇降デスクを含むアクティビティベースドワーキングへの移行)
著者名 :Jindo T, Kai Y, Kitano N, Makishima M, Takeda K, Arao T.
書誌情報:Journal of Occupational and Environmental Medicine (Volume Publish Ahead of Print)
■実験の背景と概要
現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、オフィスや働く環境を見直そうという機運が高まっています。オフィス改装や移転は稀な機会であるため、従業員の生産性や健康に影響する様々な点について熟考する必要があります。特にオフィスワーカーでは、長時間の「座りすぎ」による心身の健康や生産性関連指標への悪影響が指摘されており、効果的な施策が必要です。しかし、オフィス施策と座りすぎの研究は欧米諸国を中心に行われており、世界一座っている時間が長いといわれる我が国からの知見はありませんでした。
これまでに我々は、オフィス施策による座りすぎ解消効果について報告してきました(参考:プレスリリース「オフィス環境改善による座りすぎ解消効果を確認」 https://www.my-zaidan.or.jp/pressrelease/detail.php?id=578afdc270945db5fab0884095f3bd8e&tmp=1614221971 )。そして今回新たに、オフィス移転に伴う健診データへの影響について、実証実験結果を公表しました。本実証実験では、ABW(Activity Based Working)という新しい働き方を取り入れたオフィスへの移転に着目しました。ABWとは「従業員がその時の仕事内容に適した場所や作業席を選択できる働き方」であり、オフィスの省スペース化も狙いのひとつです。
オフィス移転前後で、座りすぎや身体活動の変化をみるとともに、定期健康診断データの変化を対照群と比較することで、心血管・代謝性疾患のリスク因子(※2)への影響を検証しました。
※2 心血管・代謝性疾患リスク因子:心血管疾患やII型糖尿病、脂質異常症などの発症と関係する形態や血圧、糖・脂質代謝指標を指す。
■実験の内容と結果
<オフィス移転について>
対象とするオフィス移転は、都内のオフィス4拠点から、1拠点に集約した事例です。従来型のオフィスから、オカムラが推進する働き方改革プロジェクトのコンセプトに基づき、心身の健康保持増進や従業員一人ひとりがいきいきと働くことを実践・検証する場となる「ラボオフィス」のひとつに移転しました。通常、オフィスの執務スペースは6-7割程度しか使用されていないことが知られています。これを踏まえ、移転後オフィスでは従業員数当たりのデスク数が削減されました。分析対象は、移転した従業員131名のうち、健診の有効データがあった95名としました(※3)。
※3 今回の実験における定期健康診断結果データについては、対象者の同意を得て使用しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/251680/LL_img_251680_1.jpg
オフィス移転のポイント
<ABWオフィスの特徴>
ABWの考え方を取り入れ、立位作業が可能な昇降デスクを導入し、自由に選択できる共用席を増設、さらに様々な目的地にアクセスできる回遊型通路を設置しました。作業する場所や姿勢を自由に変えられることや、広い通路で歩きやすい点が特徴です。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/251680/LL_img_251680_2.jpg
移転後オフィスにおける特徴的なスペース
検証(1) オフィス移転による座りすぎ、身体活動の変化
オフィス移転の対象となった従業員に活動量計を装着してもらい、座位行動や強度別の身体活動データを取得しました。測定時期は、オフィス移転の約2ヵ月前と約10ヵ月後としました。各時期、2週間にわたって、睡眠・入浴時等を除いた終日測定を行い、分析対象となった95名中79名が測定を完了しました。
<結果>
・オフィス移転前と比較して、座位行動が13分/日減少しました。
・少し早めに歩くなどの中高強度の身体活動が9分/日増加しました。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/251680/LL_img_251680_3.jpg
移転前後の座りすぎ、身体活動の変化
検証(2) 心血管・代謝性疾患リスク因子への影響:基本属性や生活習慣等の違いを調整した対照群との比較
対象従業員から移転前後の健康診断データの提供を受け、心血管・代謝性疾患の発症と関係する形態(体重、BMI、腹囲)、血圧、糖代謝指標(HbA1c、空腹時血糖)、脂質代謝指標(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)を分析に用いました。なお、移転実施から健診受診までの期間は平均5ヵ月でした。
対照群として、明治安田新宿健診センターで実施している明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ(※4)に参加し、オフィス移転群と同時期に健診を受診した勤労者2,975名のデータを使用しました。基本属性や生活習慣等の背景要因を揃えるために、傾向スコアマッチングという統計手法により分析に用いる対照群を設定しました。傾向スコアマッチングでは各群の分析対象者の比率を設定できるため、本研究では1:2(移転群:対照群)の割合で抽出しました。以下の結果は、分析対象となった移転群74名と対照群148名の比較です。
※4 明治安田厚生事業団ホームページ. 明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ)について: https://www.my-zaidan.or.jp/tai-ken/information/mylsstudy/
<結果>
◎オフィス移転群の健診データは、対照群と比較して、腹囲は増加が抑制、HDLコレステロールとHbA1cは良好に変化していました。
◎拡張期血圧は対照群と比較して良好に変化する傾向がありましたが、移転前後の変化は誤差範囲にとどまっていました。
◎これらのうち、HbA1cは身体活動の変化と弱い相関を示し、中高強度身体活動量の増加が大きいほど、改善が大きい傾向がみられました。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/251680/LL_img_251680_4.jpg
維持・改善傾向が認められた心血管・代謝性疾患リスク因子
■まとめと展望
昇降デスクを含むABWオフィスへの移転は、心血管・代謝性疾患リスクの改善に有効であることが示唆されました。本実証実験結果は、オフィス環境改善という新しいアプローチによる従業員の健康増進の可能性を示唆するものです。これを踏まえ、オフィス環境を見直す際には、従業員が座りすぎにならず、活動的に働くことができるよう配慮されることが期待されます。
一方、今回維持・改善が確認された心血管・代謝性疾患リスク因子の項目は限られており、改善幅も小さいため、オフィス環境改善による健診データへの効果について結論付けるには更なる検討が必要といえます。また今後は、新しいオフィスや働き方が従業員のコミュニケーションにも影響を及ぼすかという点についても検討し、より良いオフィス環境づくりに関する知見の発信を目指します。
■各社の役割
本実証実験における各社の役割は次のとおりです。
【明治安田厚生事業団 体力医学研究所】 https://www.my-zaidan.or.jp/
・国民の健康増進を目的とした学術研究を行っており、現在は座りすぎの健康影響とその解決策、地域や職域における集団的な健康づくりの方法などについて研究しています。
・本実証実験では、プロジェクト全体の企画立案・統括と、活動量計と健診データの分析と効果検証を担当しました。
・引き続き、時代とともに変化する健康課題に対する有効な施策を検討し、社会実装を目指していきます。
【オカムラ】 http://www.okamura.co.jp
・組織の個性を最大限に引き出すワークプレイスづくりを提案しています。
・本実証実験では、全国に複数ある「ラボオフィス」のひとつを実験場とし、効果検証の場を提供しました。
・上記成果は、働き方改革に取り組む顧客企業を支援するオフィスソリューションサービスに還元します。
本実証実験では、座りすぎ(※1)を減らして活動的に働くことができるオフィスに移転することで、従業員の健診データが維持・改善することを明らかにしました。本知見は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、オフィス環境の見直しが迫られている昨今において、健康に働くことができる新しいオフィスづくりに役立つことが期待されます。
※1 座りすぎ:オフィスワーカーの新たな健康リスク。長時間継続して座り続けていると、生活習慣病を発症しやすく、死亡リスクが増加する。
■ポイント
◎移転後オフィスには、昇降デスク、自由に選べる共用席、歩きやすい回遊型通路を設置
◎オフィス移転後に座っている時間が減少し、少し早めに歩くなどの中高強度の身体活動が増加
◎対照群との比較により、腹囲、HDLコレステロール、HbA1cの維持・改善を確認
本研究の成果は、「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に2021年2月25日付で先行公開されました。本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金の助成を受けて実施されました。なお研究実施の際には、利益相反による問題が生じないよう十分配慮しました。
■論文
題名 :Impact of ergonomics on cardiometabolic risk in office workers:
Transition to activity-based working with height-adjustable desk.
(人間工学的職場環境がオフィスワーカーの心血管・代謝性の疾患リスクに及ぼす影響:
昇降デスクを含むアクティビティベースドワーキングへの移行)
著者名 :Jindo T, Kai Y, Kitano N, Makishima M, Takeda K, Arao T.
書誌情報:Journal of Occupational and Environmental Medicine (Volume Publish Ahead of Print)
■実験の背景と概要
現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、オフィスや働く環境を見直そうという機運が高まっています。オフィス改装や移転は稀な機会であるため、従業員の生産性や健康に影響する様々な点について熟考する必要があります。特にオフィスワーカーでは、長時間の「座りすぎ」による心身の健康や生産性関連指標への悪影響が指摘されており、効果的な施策が必要です。しかし、オフィス施策と座りすぎの研究は欧米諸国を中心に行われており、世界一座っている時間が長いといわれる我が国からの知見はありませんでした。
これまでに我々は、オフィス施策による座りすぎ解消効果について報告してきました(参考:プレスリリース「オフィス環境改善による座りすぎ解消効果を確認」 https://www.my-zaidan.or.jp/pressrelease/detail.php?id=578afdc270945db5fab0884095f3bd8e&tmp=1614221971 )。そして今回新たに、オフィス移転に伴う健診データへの影響について、実証実験結果を公表しました。本実証実験では、ABW(Activity Based Working)という新しい働き方を取り入れたオフィスへの移転に着目しました。ABWとは「従業員がその時の仕事内容に適した場所や作業席を選択できる働き方」であり、オフィスの省スペース化も狙いのひとつです。
オフィス移転前後で、座りすぎや身体活動の変化をみるとともに、定期健康診断データの変化を対照群と比較することで、心血管・代謝性疾患のリスク因子(※2)への影響を検証しました。
※2 心血管・代謝性疾患リスク因子:心血管疾患やII型糖尿病、脂質異常症などの発症と関係する形態や血圧、糖・脂質代謝指標を指す。
■実験の内容と結果
<オフィス移転について>
対象とするオフィス移転は、都内のオフィス4拠点から、1拠点に集約した事例です。従来型のオフィスから、オカムラが推進する働き方改革プロジェクトのコンセプトに基づき、心身の健康保持増進や従業員一人ひとりがいきいきと働くことを実践・検証する場となる「ラボオフィス」のひとつに移転しました。通常、オフィスの執務スペースは6-7割程度しか使用されていないことが知られています。これを踏まえ、移転後オフィスでは従業員数当たりのデスク数が削減されました。分析対象は、移転した従業員131名のうち、健診の有効データがあった95名としました(※3)。
※3 今回の実験における定期健康診断結果データについては、対象者の同意を得て使用しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/251680/LL_img_251680_1.jpg
オフィス移転のポイント
<ABWオフィスの特徴>
ABWの考え方を取り入れ、立位作業が可能な昇降デスクを導入し、自由に選択できる共用席を増設、さらに様々な目的地にアクセスできる回遊型通路を設置しました。作業する場所や姿勢を自由に変えられることや、広い通路で歩きやすい点が特徴です。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/251680/LL_img_251680_2.jpg
移転後オフィスにおける特徴的なスペース
検証(1) オフィス移転による座りすぎ、身体活動の変化
オフィス移転の対象となった従業員に活動量計を装着してもらい、座位行動や強度別の身体活動データを取得しました。測定時期は、オフィス移転の約2ヵ月前と約10ヵ月後としました。各時期、2週間にわたって、睡眠・入浴時等を除いた終日測定を行い、分析対象となった95名中79名が測定を完了しました。
<結果>
・オフィス移転前と比較して、座位行動が13分/日減少しました。
・少し早めに歩くなどの中高強度の身体活動が9分/日増加しました。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/251680/LL_img_251680_3.jpg
移転前後の座りすぎ、身体活動の変化
検証(2) 心血管・代謝性疾患リスク因子への影響:基本属性や生活習慣等の違いを調整した対照群との比較
対象従業員から移転前後の健康診断データの提供を受け、心血管・代謝性疾患の発症と関係する形態(体重、BMI、腹囲)、血圧、糖代謝指標(HbA1c、空腹時血糖)、脂質代謝指標(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)を分析に用いました。なお、移転実施から健診受診までの期間は平均5ヵ月でした。
対照群として、明治安田新宿健診センターで実施している明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ(※4)に参加し、オフィス移転群と同時期に健診を受診した勤労者2,975名のデータを使用しました。基本属性や生活習慣等の背景要因を揃えるために、傾向スコアマッチングという統計手法により分析に用いる対照群を設定しました。傾向スコアマッチングでは各群の分析対象者の比率を設定できるため、本研究では1:2(移転群:対照群)の割合で抽出しました。以下の結果は、分析対象となった移転群74名と対照群148名の比較です。
※4 明治安田厚生事業団ホームページ. 明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ)について: https://www.my-zaidan.or.jp/tai-ken/information/mylsstudy/
<結果>
◎オフィス移転群の健診データは、対照群と比較して、腹囲は増加が抑制、HDLコレステロールとHbA1cは良好に変化していました。
◎拡張期血圧は対照群と比較して良好に変化する傾向がありましたが、移転前後の変化は誤差範囲にとどまっていました。
◎これらのうち、HbA1cは身体活動の変化と弱い相関を示し、中高強度身体活動量の増加が大きいほど、改善が大きい傾向がみられました。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/251680/LL_img_251680_4.jpg
維持・改善傾向が認められた心血管・代謝性疾患リスク因子
■まとめと展望
昇降デスクを含むABWオフィスへの移転は、心血管・代謝性疾患リスクの改善に有効であることが示唆されました。本実証実験結果は、オフィス環境改善という新しいアプローチによる従業員の健康増進の可能性を示唆するものです。これを踏まえ、オフィス環境を見直す際には、従業員が座りすぎにならず、活動的に働くことができるよう配慮されることが期待されます。
一方、今回維持・改善が確認された心血管・代謝性疾患リスク因子の項目は限られており、改善幅も小さいため、オフィス環境改善による健診データへの効果について結論付けるには更なる検討が必要といえます。また今後は、新しいオフィスや働き方が従業員のコミュニケーションにも影響を及ぼすかという点についても検討し、より良いオフィス環境づくりに関する知見の発信を目指します。
■各社の役割
本実証実験における各社の役割は次のとおりです。
【明治安田厚生事業団 体力医学研究所】 https://www.my-zaidan.or.jp/
・国民の健康増進を目的とした学術研究を行っており、現在は座りすぎの健康影響とその解決策、地域や職域における集団的な健康づくりの方法などについて研究しています。
・本実証実験では、プロジェクト全体の企画立案・統括と、活動量計と健診データの分析と効果検証を担当しました。
・引き続き、時代とともに変化する健康課題に対する有効な施策を検討し、社会実装を目指していきます。
【オカムラ】 http://www.okamura.co.jp
・組織の個性を最大限に引き出すワークプレイスづくりを提案しています。
・本実証実験では、全国に複数ある「ラボオフィス」のひとつを実験場とし、効果検証の場を提供しました。
・上記成果は、働き方改革に取り組む顧客企業を支援するオフィスソリューションサービスに還元します。