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群馬大学との共同研究 【青梅加熱濃縮エキス成分の肺がん細胞への抑制効果に関する研究成果】国際医学雑誌「Journal of Cancer Science & Therapy」にて論文発表

AdaBio株式会社(群馬県高崎市 / 代表取締役 足立 正一)は、群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学 砂長 則明 助教(主任教授 森 昌朋)らの研究グループと共同で、同社が手掛ける青梅加熱濃縮エキスに含まれる成分MK615が、肺がん細胞(非小細胞肺がん株)に対して増殖抑制作用、細胞死誘導作用、IL-8産生抑制作用を有することを論文発表いたしました。


今回の研究は、日本における健康食品の代表ともいえる「梅」の医薬利用素材としての可能性を示すものであると期待を致しております。当社は、全国第2位の生産量を有する群馬県産の梅を活用し、梅の加熱濃縮エキスに関する加工食品を製造・販売して参りました。今回の研究成果を踏まえて、梅の加熱濃縮エキスに含まれる成分の医薬開発にも注力して参ります。

尚、今回の研究はあくまでもin vitro(試験管内)の検討結果であり、実際の肺がん患者さまでの有効性を示すものではありません。有効性を確立するには生体(in vivo)及び臨床での更なる検討と検証が必要であることを合わせてご承知おきください。

今回の研究成果は、国際医学雑誌「Journal of Cancer Science & Therapy」の電子版に公開されました。


【研究内容】
当社は、これまで青梅加熱濃縮エキスの成分であるMK615の抗がん作用や抗炎症作用について研究開発を実施して参りました。今回の研究は、群馬大学 大学院医学系研究科 病態制御内科学 砂長 助教らの研究グループと共同で、肺がん細胞(非小細胞肺癌株)9種と非がん不死化細胞(不死化気道上皮細胞株[*1])を用い、in vitroにおけるMK615の抗がん作用について検討を行いました。

その結果、肺がん細胞9種のうち7種では明らかな増殖抑制作用がみられ、非がん細胞(HBEC4)と比べて肺がん細胞での高い感受性が示されました。MK615に対して強い感受性を有するがん細胞株(H157、H1299)では、autophagy[*2]が誘導され、TypeIIプログラム細胞死[*3](autophagyを伴なう細胞死)が誘導されていることを確認しました。また、H157細胞、H1299細胞では、細胞周期のG0 / G1期で細胞分裂 / 増殖が停止するG0 / G1アレスト[*4]が観察されました。

また、IL-8[*5]を過剰発現している肺がん細胞株H1792では、がん細胞からのIL-8産生が低下(mRNA、蛋白のいずれのレベルでも低下)しました。IL-8は血管新生を促進する因子であることが広く知られており、がん組織の血管新生(がん周囲に血管を作らせること)によってがん細胞に有利な環境を作り出す一因であると考えられています。共同研究を行った群馬大学の同グループでは、非小細胞肺癌におけるがん関連遺伝子K-ras変異とIL-8の過剰発現の関連性について明らかにしており、IL-8のがん細胞増殖促進への作用にも着目しております。

今回のMK615が肺がん細胞からのIL-8産生を抑制するという結果は、K-rasに変異が見られるがん細胞自体の増殖抑制作用に関わるとともに、がん周囲の血管新生の抑制という面でも期待がもたれます。

今回の研究結果から、青梅加熱濃縮エキス成分のMK615が、肺癌細胞株に対して細胞増殖抑制、autophagy誘導、G0 / G1アレスト、IL-8産生抑制を含む複数の抗がん活性を有することが示されました。


(用語説明)
[*1]不死化気道上皮細胞株
気道上皮に由来する正常細胞(非がん細胞)が不死化した細胞。通常の細胞は、一定の細胞分裂回数で細胞増殖が止まり、寿命死をむかえて死滅します。しかし、一部の遺伝子が改変した場合、細胞は細胞増殖を継続し、不死化細胞(増え続ける細胞)となる場合があります。不死化が確認された非がん細胞株は、がん細胞との比較細胞として使用されることがあります。

[*2]autophagy
細胞が、自らの細胞内成分を食胞内(phagosome)に取り込み分解する現象で、自食を意味する現象です。異常蛋白や過剰蛋白を分解し、細胞を適切に維持する基本的な細胞機能ですが、プログラム細胞死や細胞内に進入した微生物の排除などに関連することが知られています。

[*3]TypeIIプログラム細胞死
多細胞生物では、恒常性維持のためある種のストレスを受けた細胞(傷ついた細胞や古い細胞)が細胞死になる様にプログラムされた機構を有しています。この機構による細胞死をプログラム細胞死といいます。プログラム細胞死はいくつかのタイプに分類されており、TypeIIプログラム細胞死は形態学的にautophagyを伴う細胞死とされています。別のプログラム細胞死にはapoptosisがあります。

[*4]G0 / G1アレスト
増殖細胞の細胞周期がG0期またはG1期の何れかの状態で停止すること。細胞が分裂増殖するプロセスは細胞周期と言われ、静止期(G0期)、間期(G1期、S期、G2期)、分裂期(M期)の各段階に分けられています。

[*5]IL-8
インターロイキン 8(別名 CXCL8)はケモカインの一種で、白血球の遊走因子あるいは血管新生の促進因子として作用し、炎症や免疫反応に関わるメディエーターとして知られています。様々な正常細胞から産生されますが、がん細胞からも産生されることがあります。


【論文掲載について】
<掲載誌>
「Journal of Cancer Science & Therapy」
2012年4月1日より同誌ホームページ(in press)に電子版が公開されております。
掲載誌URL http://omicsonline.org/jcsthome.php

<掲載論文>
MK615, A Compound Extract from the Japanese Apricot “Prunus mume” Inhibits In vitro Cell Growth and Interleukin-8 Expression in Non-small Cell Lung Cancer Cells
J Cancer Sci Ther 2012, S11-002
doi: 10.4172/1948-5956.S11-002

<筆頭著者>
砂長 則明(群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科学)
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