IEEEが提言を発表 高齢化が進む社会。ロボットは人間の世話をできるか?
[23/10/31]
提供元:@Press
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IEEE(アイ・トリプルイー)は世界各国の技術専門家が会員として参加しており、さまざまな提言やイベントなどを通じ科学技術の進化へ貢献しています。
世界人口の高齢化は驚くほど急速に進んでいます。1980年にさかのぼると、高齢者の割合が最も高かった国はスウェーデンで16%でした。現在のトップは日本で30%近くに達しています。国連によると2050年までに中国の人口の40%が65歳以上になると予想されています。
平均寿命は、生活水準の向上、医学の進歩、医療技術の革新によって延びていきました。しかし、こうした進歩に伴い、増加する高齢者のケアをどうするかという深刻な課題に直面しています。
介護ロボットはその答えのひとつなのかもしれません。生産年齢人口に比べて高齢者人口が増加していることから、介護ロボットは介護施設の人手不足を緩和したり、高齢者の自立に貢献できる可能性があります。
IEEEシニアメンバーでIEEE Robotics and Automation Magazineの編集長であるイ・グオ氏(Yi Guo)は、同僚とともにエイジング・イン・プレイス(高齢者が住み慣れた場所で暮らすこと)をサポートする統合ロボットとウェアラブル・センサー・システムに取り組んできました。同雑誌の最新号に掲載されたGuoの編集後記では、高齢者が運動やエクササイズを行うニューヨーク市の高齢者福祉センターで、彼女のグループがこのシステムをテストした様子を紹介しています。
そのテスト結果によると、新しい技術を楽しんでいると語る高齢者ほど、加齢に対しても肯定的にとらえている傾向がありました。
■ロボット工学のイノベーションが、具体的にはどのように高齢者の日常生活を支援し、全体的なケアを向上できるのか説明していただけますか?
ロボット工学のイノベーションにより、高齢者の運動、家事、薬の飲み忘れ予防、付添人としての精神的な支え、健康状態の監視、補助デバイスによる身体および感情データの記録、医師や介護者とのコミュニケーションなどを支援する技術や新しいデバイスを提供することができます。こういったことが高齢者の自宅や介護施設で可能になるでしょう。ロボット工学の主な研究分野には、社会支援、リハビリテーション、ウェアラブルセンサーなどがあります。
■最近、あなたがIEEE Robotics and Automation Magazineに寄稿した論説では、テクノフィリア(テクノロジーに対する熱狂的な支持)は、加齢に対する肯定的な自己認識の重要な予測因子であると論じています。詳しく説明していただけますか?
私たちの研究目的の1つは、ロボット技術に対する高齢者の考え方を見極めることでした。調査参加者から収集したデータで判明したことは、テクノフィリアの度合いの高さが、加齢に対する肯定的な自己認識の重要な予測因子になっているということです。つまり、新しいテクノロジーガジェットが好きな高齢者や、テクノロジーによって生活が楽になると考えている高齢者ほど、加齢に対して良い感情を抱いており、「年を取ることは思っていたより良いことだ」あるいは「若い頃と比べ、今も同じかそれ以上に幸せだ」と回答する傾向が強かったのです。
■その発見は将来の研究にどのような影響を与えますか?
今後の研究では、高齢者の加齢に対する自己認識とテクノロジー利用の関係や、高齢者のテクノロジーに対する姿勢を引き続き調査する必要があると考えています。デザインとユーザーの声をうまく統合できれば、高齢者の技術に対する肯定的な考え方を後押しし、受け入れやすくできるだけでなく、高齢者の加齢に対する肯定的な自己認識を高めるための医療機器を開発できる可能性もあります。テクノロジーとの積極的な関わりを可能にする、地域社会に根ざしたプログラムを開発することもできるでしょう。今後の研究では、高齢者が自宅で使用したいと考えるテクノロジーに対するニーズを調査する必要があります。
■高齢者の生活の質をさらに向上させるために、ロボットの役割は今後どのように進化していくとお考えですか?
ロボット技術は、ハードウェアとソフトウェアの両面で進歩しているので、ロボットは高齢者の自宅でよき伴侶となって必要に応じたサポートを提供できると思います。高齢者の生活の質は、自律性と自立性の向上、健康的なライフスタイルの奨励、友人や地域社会とのつながり、そして必要なときに助けを求められることによって向上させることができ、これらのことはすべて先進的なロボット技術によって叶えられます。
一方で研究者や技術開発者は、技術のマイナス面や誤用に注意を払い、ユーザーを尊重し、信頼される新技術の開発に責任を持つべきです。
■高齢者のテクノロジーとの関わりにおいて、一般的な固定観念や認識に疑問を投げかけるような、予想外の発見や洞察は得られましたか?
加齢に関する顕著な固定観念の1つは、高齢者がさまざまな形態の技術を使いこなす能力がないと思い込んでいることです。私たちの研究プロジェクトでは、自分たちで組み立てたセンサーを搭載した安価な実験用ロボットを使用したので、当初は参加者がこのロボットのそばにいて楽しいかどうか、またこの初期段階のテクノロジーについてどう思うかも想像できませんでした。
しかし驚いたことに、参加者は非常に協力的で、技術開発に貢献するために自発的に時間を割きたいと申し出てくれました。参加者はまた、ロボットに何ができるのかに興味を持ち、テクノロジーがどのように役立つのかもっと知りたがっていたのです。
ユーザーのニーズと体験を念頭に置いて適切に開発すれば、高齢者はロボット技術の使用を受け入れ、信頼してくれるようになると考えています。
■IEEEについて
IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。
IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2000以上の現行標準を策定し、年間1800を超える国際会議を開催しています。
詳しくは https://www.ieee.org/ をご覧ください。
世界人口の高齢化は驚くほど急速に進んでいます。1980年にさかのぼると、高齢者の割合が最も高かった国はスウェーデンで16%でした。現在のトップは日本で30%近くに達しています。国連によると2050年までに中国の人口の40%が65歳以上になると予想されています。
平均寿命は、生活水準の向上、医学の進歩、医療技術の革新によって延びていきました。しかし、こうした進歩に伴い、増加する高齢者のケアをどうするかという深刻な課題に直面しています。
介護ロボットはその答えのひとつなのかもしれません。生産年齢人口に比べて高齢者人口が増加していることから、介護ロボットは介護施設の人手不足を緩和したり、高齢者の自立に貢献できる可能性があります。
IEEEシニアメンバーでIEEE Robotics and Automation Magazineの編集長であるイ・グオ氏(Yi Guo)は、同僚とともにエイジング・イン・プレイス(高齢者が住み慣れた場所で暮らすこと)をサポートする統合ロボットとウェアラブル・センサー・システムに取り組んできました。同雑誌の最新号に掲載されたGuoの編集後記では、高齢者が運動やエクササイズを行うニューヨーク市の高齢者福祉センターで、彼女のグループがこのシステムをテストした様子を紹介しています。
そのテスト結果によると、新しい技術を楽しんでいると語る高齢者ほど、加齢に対しても肯定的にとらえている傾向がありました。
■ロボット工学のイノベーションが、具体的にはどのように高齢者の日常生活を支援し、全体的なケアを向上できるのか説明していただけますか?
ロボット工学のイノベーションにより、高齢者の運動、家事、薬の飲み忘れ予防、付添人としての精神的な支え、健康状態の監視、補助デバイスによる身体および感情データの記録、医師や介護者とのコミュニケーションなどを支援する技術や新しいデバイスを提供することができます。こういったことが高齢者の自宅や介護施設で可能になるでしょう。ロボット工学の主な研究分野には、社会支援、リハビリテーション、ウェアラブルセンサーなどがあります。
■最近、あなたがIEEE Robotics and Automation Magazineに寄稿した論説では、テクノフィリア(テクノロジーに対する熱狂的な支持)は、加齢に対する肯定的な自己認識の重要な予測因子であると論じています。詳しく説明していただけますか?
私たちの研究目的の1つは、ロボット技術に対する高齢者の考え方を見極めることでした。調査参加者から収集したデータで判明したことは、テクノフィリアの度合いの高さが、加齢に対する肯定的な自己認識の重要な予測因子になっているということです。つまり、新しいテクノロジーガジェットが好きな高齢者や、テクノロジーによって生活が楽になると考えている高齢者ほど、加齢に対して良い感情を抱いており、「年を取ることは思っていたより良いことだ」あるいは「若い頃と比べ、今も同じかそれ以上に幸せだ」と回答する傾向が強かったのです。
■その発見は将来の研究にどのような影響を与えますか?
今後の研究では、高齢者の加齢に対する自己認識とテクノロジー利用の関係や、高齢者のテクノロジーに対する姿勢を引き続き調査する必要があると考えています。デザインとユーザーの声をうまく統合できれば、高齢者の技術に対する肯定的な考え方を後押しし、受け入れやすくできるだけでなく、高齢者の加齢に対する肯定的な自己認識を高めるための医療機器を開発できる可能性もあります。テクノロジーとの積極的な関わりを可能にする、地域社会に根ざしたプログラムを開発することもできるでしょう。今後の研究では、高齢者が自宅で使用したいと考えるテクノロジーに対するニーズを調査する必要があります。
■高齢者の生活の質をさらに向上させるために、ロボットの役割は今後どのように進化していくとお考えですか?
ロボット技術は、ハードウェアとソフトウェアの両面で進歩しているので、ロボットは高齢者の自宅でよき伴侶となって必要に応じたサポートを提供できると思います。高齢者の生活の質は、自律性と自立性の向上、健康的なライフスタイルの奨励、友人や地域社会とのつながり、そして必要なときに助けを求められることによって向上させることができ、これらのことはすべて先進的なロボット技術によって叶えられます。
一方で研究者や技術開発者は、技術のマイナス面や誤用に注意を払い、ユーザーを尊重し、信頼される新技術の開発に責任を持つべきです。
■高齢者のテクノロジーとの関わりにおいて、一般的な固定観念や認識に疑問を投げかけるような、予想外の発見や洞察は得られましたか?
加齢に関する顕著な固定観念の1つは、高齢者がさまざまな形態の技術を使いこなす能力がないと思い込んでいることです。私たちの研究プロジェクトでは、自分たちで組み立てたセンサーを搭載した安価な実験用ロボットを使用したので、当初は参加者がこのロボットのそばにいて楽しいかどうか、またこの初期段階のテクノロジーについてどう思うかも想像できませんでした。
しかし驚いたことに、参加者は非常に協力的で、技術開発に貢献するために自発的に時間を割きたいと申し出てくれました。参加者はまた、ロボットに何ができるのかに興味を持ち、テクノロジーがどのように役立つのかもっと知りたがっていたのです。
ユーザーのニーズと体験を念頭に置いて適切に開発すれば、高齢者はロボット技術の使用を受け入れ、信頼してくれるようになると考えています。
■IEEEについて
IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。
IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2000以上の現行標準を策定し、年間1800を超える国際会議を開催しています。
詳しくは https://www.ieee.org/ をご覧ください。