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リチウムイオンバッテリーの熱暴走を抑制するSTOBA(R)の製造販売に関する独占ライセンスについて 〜STOBA(R)は、LIBの発火リスクを大幅に低減します〜

 台湾工業技術研究院(院長:徐爵民、以下 ITRI)は、三井化学株式会社(代表取締役社長:淡輪敏、以下 三井化学)の台湾子会社である亞太三井化学股イ分有限公司(董事長:平岩 健司)に対し、ITRIが発明した世界唯一(※ITRI、三井化学調べ)のリチウムイオンバッテリー(LIB)の熱暴走を抑制する技術STOBA(R)の製造販売に関する特許独占ライセンスを供与することを決定し、9月16日に契約を締結しました。


 ITRIは、2006年に台湾政府によるサポートの下、従来の安全材料とは異なるメカニズムでLIB異常時の熱暴走を抑え込む革新的な材料STOBA(R)を世界で初めて開発し、2009年には米国R&D100 Awardを獲得しています。2012年からは三井化学と共同開発を実施するとともに共同で市場性を評価してきました。
 STOBA(R)は、ナノサイズの樹木状構造を持つ機能性ポリマーであり、LIB異常発生の高温時になると被膜を形成し、リチウムイオンの移動を抑制することで電池を安全に停止させます。既に台湾では、スマートフォンなどの電子機器に採用されるとともに、安全性を重視するEバイクなどのパーソナルモビリティ(PMV)にも採用されています。
 蓄電市場では、更なる高エネルギー化(高出力・高容量)、大型化や、電気自動車などの車載用途拡大に伴う安全性の向上が喫緊の課題となっています。さらに、危険性の高い高エネルギー系正極材料の市場も拡大し、より一層電池の安全性が求められており、STOBA(R)独自の安全メカニズムは、“STOBA(R) inside”のLIBの信頼性を高めるとともに、LIB市場の拡大に大きく貢献すると考えられます。
 今後、三井化学は、2016年度までにSTOBA(R)の台湾での製造拠点設立を進めるとともに、保有するポリマー技術及び複合技術との融合で、STOBA(R)の性能向上を図り、将来的にはSTOBA(R)を使用したLIB用の部材開発も進める計画です。


■関係者コメント
<台湾経済部 技術処 傅偉祥 副処長>
 高安全性のLIB材料STOBA(R)は2009年に米国R&D100 Awardを獲得し、全世界の注目を集めました。台湾国内の4大電池企業(Molicel、Amita、SYNergy ScienTech、Lion Tech)での採用を促進し、既に日本の無停電電源装置やモバイル電源として採用されています。また、自動車メーカーと共に電気自動車向けの電池を開発し、さらに台湾国内のLIBの競争力を向上させました。ITRIがSTOBA(R)材料の独占ライセンス権を三井化学グループへ供与したことで、STOBA(R) inside電池とともに台湾電池メーカーの国際的知名度を高め、台湾において高安全で高品質なLIB産業が構築される事を期待しています。

<ITRI 徐爵民 院長>
 三井化学は日本を代表する化学企業です。新製品開発と量産技術の豊富な経験を持ち、グローバルな自動車メーカーと密接な関係を持っています。ITRIは、STOBA(R)を三井化学グループに独占ライセンス権を供与したのち、台湾が高い安全性を誇るSTOBA(R) inside電池の重要な製造拠点となることを期待しています。同時に三井化学が構築している自動車メーカーとの関係によりこの独創的で先進的なLIB安全材料は世界中に広まり、STOBA(R) inside電池がそのサプライチェーンを通して、安全なLIBとしてのグローバルな地位を確立し、台湾の電池関連産業が発展することを望んでいます。

<西 美緒 氏(2014年Draper賞受賞)>
 LIBは有機電解液を使用しているため、電池の誤使用による熱暴走が起こると発火の恐れが生じます。ITRIで開発されたSTOBA(R)はこの熱暴走を抑制する非常に優れた材料です。STOBA(R)を初めて目にした時、「高度に発達した科学技術は、魔術と区別がつかない」(米国SF作家、A.C.クラーク)という言葉を思い出しました。今回、三井化学グループがライセンスを取得したことは大変喜ばしいことであり、早期にビジネス化が実現することを望んでいます。

<三井化学 諫山 取締役常務執行役員>
 三井化学は、成長が期待できるターゲット事業領域として、モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージングの3分野を定め、新事業開発に取り組んでいます。ITRIが開発したSTOBA(R)は、モビリティ分野の中で成長が見込める電池材料の中でも、市場要求が特に強い安全性の確保を、特徴的な機構で効果的に実現することができます。この度、当社グループがSTOBA(R)の独占ライセンスを獲得したことで、当社の強みであるポリマーサイエンス技術を活用して、電池のグローバルな標準安全材料とすることを目指します。そしてこれにより、台湾の電池関連産業の大きな発展に貢献するものと確信しています。


【台湾工業技術研究院(ITRI)について】
 工業技術研究院は世界レベルの応用科学技術研究開発機関です。設立以来140名以上のCEOを育成し、2万件以上の特許取得、そして244社の企業育成の成果を上げてきました。グローバル競争と変革・革新のニーズに対応して国内での応用技術研究開発成果の事業化を普及させるため、工業技術研究院は先端技術の深化と異分野技術の融合へ取り組むほか、一貫とした研究開発提携とビジネスコンサルティングサービスを提供しています。新技術と新製品の受託開発、少量試作の受託、製造プロセス改善、検品測定や技術移転、知的財産権の価値向上などを支援すると共に、オープンラボとインキュベーションセンターを設置して新規事業の促進と育成を積極的に推進し、産業技術開発と新規ハイテク産業の創出の加速化に力を入れています。工業技術研究院は産業界と共に連携し、持続的技術革新とより良い未来の創出に努めたいと考えています。


【三井化学について】
 三井化学の起源は1912年に遡ります。当時の社会課題であった食糧増産のため、石炭副生ガスから日本で初めて化学肥料原料を生産し、農業の生産性向上に大きく貢献しました。その後、石炭化学からガス化学へとテクノロジーを進化させ、1958年には日本初の石油化学コンビナートを築き、日本国内の産業界を牽引してきました。今では数多くの世界トップ製品を有しており、売上高1兆5,000億円、世界27か国、135社以上を抱えるグローバル企業へと成長しています。その事業ポートフォリオは、環境に優しい次世代自動車材料、健康・安心な長寿社会を実現するヘルスケア、食品の安心安全を守るパッケージ、食糧増産に貢献する農業化学品、電子材料、環境エネルギー分野と多岐に亘っています。三井化学は、今後も卓越したソリューションと「新たな顧客価値の創造」を通じ、社会課題の解決に貢献してまいります。
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