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一尾仁司の「虎視眈々」:市場展望、二つの隠れた要素

注目トピックス 経済総合

〇ヘッジファンド攻防激しく

23日付ブルームバーグは、大手投資会社カーライル・グループ傘下のヘッジファンドのクラレン・ロードAMが10−12月期に9.5億ドル(約1150億円)の解約請求に見舞われていると伝えた。運用資産はピークだった14年9月の85億ドルから年明けは12.5億ドルに減少する見込みとしている。情報は非公開で詳細は不明だが、7−9月期に約20億ドルの解約請求を受け、その支払いも遅れているようだ。チョット驚かされたのは、通常の解約通知の「45日前ルール」が事実上なくなっていると見られること。売り圧力は五月雨的に発生している。

HFR(ヘッジファンドリサーチ)によると、ヘッジファンドは1995年以降、急成長し、07年に運用資産1.8兆ドルに達した。リーマン危機で一旦シュリンクしたが、10年以降再膨張、現在の推定規模は約3兆ドル。15年の運用成績は平均0.3%と苦戦が目立ち、イベント・ドリブン(個別企業の重要イベントを投資機会とする)型やマクロ型(為替・債券などと組み合わせ、国・地域の経済バランス変動を投資機会とする)などの苦戦、資金流出が目立っている。商品ファンドは壊滅状態。

一方、好成績は大手運用会社ブラックストーン・グループ、D.E.ショー、ミレニアム・パートナーズ、シタデルなど。ブラックストーン傘下のファンドの23%を筆頭に二ケタの運用成績。一極集中より分散型、強いブランド力を持つ安定した企業への投資、ノイズの多い市場の影響を受け難い企業の発掘、市場が荒れる場合の大型株志向などに特色があると言う。

年前半は資金は好調組に集まって運用攻勢が掛けられ易いが、当面、保守的傾向が続くものと考えられる。

〇欧州の苦境続く

世界の機関から、今年の数値の発表が相次いでいる。スイス再保険は今年の自然災害死者数は2.6万人、昨年比2倍強、経済損失は850億ドル(14年1130億ドル)。WHO(世界保健機関)は汚染食品により、年間42万人が死亡しているとの推定結果を初公表した。罹患者数は約6億人。食品安全問題、環境汚染などの深刻化を訴える。

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は「今年初めて、難民や国内避難民が6000万人を超える見通し」と発表した。うち難民は推定2020万人、今年上半期の独、露、米などへの難民申請は過去最高の約100万件、約250万人は未処理状態。今年の欧州への難民は100万人突破と発表されたが、実勢はそれをはるかに超えると見られている。シリアだけで既に420万人が外国に逃れ、国内避難民(流出予備軍)は760万人とされる。難民問題が突出した年だったと言える。

市場展望では米中情勢が大きな焦点であることに変わりはないが、難民問題の巨大圧力を受ける欧州の変質も目の離せない展開となろう。既に政治の右傾化、EU脱退気運、ユーロ不安定化など様々な影響が出ている。

比較的安定していた欧州の揺らぎがさらに大きな課題になると考えられる。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(12/25号)



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