「パートナーシップ証明書」には企業からも多くの問い合わせ、長谷部健渋谷区長
[16/03/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
グローバル化、変化の早い時代に対処するため、企業においても働き方や属性の違いによるダイバーシティ(多様性)の必要性が高まっていると言われている。ダイバーシティにも様々あるが、中でもジェンダー(性別の違い)、特にLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど性的マイノリティ)に焦点を当てると、日本で初めて同性カップルに「パートナーシップ証明書」の発行を2015年11月5日から始めた渋谷区の取組みは、企業経営、投資先企業を選別する際の今後の参考になろう。長谷部健渋谷区長に話を聞いた。
■「パートナーシップ証明書」への背景〜東京のクリエイティブ性とつながる
長谷部渋谷区長は原宿生まれの原宿育ち。渋谷の情報発信力の強さは折り紙つきだが、以前は渋谷でしか得られなかった情報が、渋谷のような街が全国に増えていくことで、街の発信力の低下を懸念していた。また、視点を日本と海外というところまで広げてみると、渋谷区のある東京は世界の都市の中でもクリエイティブ力が高いと言われているが、それに対して自覚や自信を持って強みにしていくことも必要と感じていたようだ。海外の先進的な都市では、LGBTは「普通」の存在となっており、また、さまざまな分野で活躍している人も多くいて、街の元気を取り戻すうえで重要な存在と考えている。それだけに、日本では「普通」になっていないことに違和感があり、LGBTに対する差別がない、誰もが個性や能力を十分に発揮できるような街にしていくことが、クリエイティブでダイバーシティの街づくりにつながると考えている。長谷部渋谷区長においては、クリエイティブな街づくりという面とLGBTへの理解がつながり、それが同性パートナーシップ証明書を推進することとなった。
長谷部氏はLGBT当事者でない。当事者でない人が条例成立に寄与したことも特筆しておくべきであろう。長谷部氏は学生時代の海外旅行に加え、トランスジェンダーである杉山文野氏と出会い10年以上の付き合いのなかで、LGBTも普通だと思えるようになったことが大きい。また、電通総研の調査では日本人の5%がLGBTとされるが、それでも600万人という人数になる。そのような気づきも、同性パートナーシップ証明書発行への原動力になった。ダイバーシティを実現して渋谷区をクリエイティブな街にする際、LGBTの人たちの果たす役割の大きさを周りに説き、約3年をかけて条例成立に向けて取り組んだ。
■「パートナーシップ証明書」の今後〜民間企業の動きが社会の意識を変えていく〜
長谷部氏は渋谷区と同等の動きを、国に求めるということではなく、国が何らかを考えるきっかけになれば良いという思いでいる。また、文化は民間が作るものであるという思いもある。生命保険での保険受取人にパートナーシップ証明書を活用するといった動きもあるが、渋谷区に多くあるIT企業などからも、福利厚生への活用(婚姻と同等の関係と認める)に関して、多くの問い合わせがある。こうした民間企業の動きが、社会の意識を変えていき、世の中の空気が変わっていくことにつながると期待している。
現状、パートナーシップ証明書の申請に必要な公正証書の作成には少なくとも1万円超という費用がかかる。ただし、こうした書類をもとにパートナーシップ証明書を交付することで、証明書の信頼性を高めることになり、これにより企業も福利厚生や顧客サービスに活用しやすくなるという効果が期待できる。2016年2月末現在、既に8件の申請がある。制度の開始は、あくまでスタートラインに立ったものであり、安定してしっかりと運用されることに力を注ぎながら、多くの人々にLGBTに対する理解を深めてもらい、企業も含めた社会の意識の変化を進めていきたいという考えだ。
<TN>









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