政府も後押しする「ロボット革命」向けた動き
[17/03/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
日本は世界でも類を見ないスピードで少子高齢化が進展しており、これに伴う生産年齢人口の減少と人手不足や社会保障費の増大、老朽インフラの増加など、多くの社会課題を抱えた「課題先進国」であり、ロボットを活用して課題解決を図ることが期待されている。
ロボット技術は、製造業の生産現場、医療・介護現場、農業・建設・インフラの作業現場などの幅広い分野で、人手不足の解消、過重な労働からの解放、生産性の向上などの社会課題を解決する可能性を有している。
産業分野においては、製造業において国際競争力低下は否めず、付加価値生産額の低下が続き、過去20年間で少なくとも20兆円近くが失われているといわれている。業種によっては安価なオペレーションを求めて海外生産に依存する傾向もあるが、将来にわたり日本経済の国際競争力を維持・強化していく観点からは、拡大する海外市場も見据えつつ、国内立地の魅力を高めることも、日本の直面する重要な課題である。こうした中、「日本再興戦略」において、「ロボットによる新たな産業革命」として、ロボット技術の活用により生産性の向上を実現し、企業の収益力向上、賃金の上昇を図ることなどが掲げられた。
なお、ロボットと言えばヒト型のものを思い浮かべられるだろうが、経済産業省では、(1)センサー、(2)知能・制御系、(3)駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システムをロボットと定義している。製造分野でよく使われている溶接ロボットや組立ロボット、人間の上半身のような双腕型ロボット、医療分野で使われている手術支援ロボットや病院内搬送ロボットがある。
また、介護現場では、介護者の腕や腰の負担を軽減するためのロボットや被介護者・高齢者の移動を支援するロボットなどが活用されている。防災・建設・インフラ分野においては、ドローン(小型無人機)が、土砂災害の際に人が立ち入れない被災地の情報を上空から収集し、救命捜索に活用されている。がれきの下からレスキューを行う災害対応ロボットや、老朽化したインフラの点検を行うロボットなどに対する期待も高まっている。農業分野では、自動運転の技術を活かした無人トラクターや田植機のほか、介護と同じく重い荷物を持つためのアシストスーツや除草ロボットなどがある。
日本は、産業用ロボットの稼働台数や出荷台数で世界1位(2014年)を誇る「ロボット大国」である。出荷額では産業用ロボットが占め、自動車や電子機械産業が主要なユーザーとなるが、サービス分野でのロボットの出荷額も急速に拡大してきている。ロボット生産においては、日本は世界シェア上位に複数の企業が位置する高い競争力を有しており、世界的な産業用ロボットの市場拡大によって、日本からの産業用ロボット輸出額は直近5年間で80%増加している。ただし、デジタル化・ネットワーク化を用いた欧米の追い上げや、中国などの新興国によるロボット投資の加速が顕著な状況にあり、競争は激化している。
こうした状況の中、日本が「ロボット大国」としての地位を今一度高めるべく、政府は「ロボット革命」というコンセプトを打ち出している。官民で、総額1000億円のロボット関連プロジェクトへ投資し、現状6500億円とされるロボットの市場規模を2.4兆円(年間)へ拡大させる。これによりみえてくるものとして、(1)センサー、AIなどの技術進歩により、従来はロボットと位置づけられてこなかったモノまでもロボット化し(2)製造現場から日常生活の様々な場面でロボットが活用されることにより、(3)社会課題の解決やものづくり・サービスの国際競争力の強化を図る。
日本を代表するロボットメーカーといえばファナック<6954>であろう。同社は工場の生産ラインなどで動くロボットを開発しており、産業用ロボット分野で世界トップである。視覚認識機能を持つビジョンセンサを搭載し、目で見て作業を行うことができる。例えば、ロボットがネジを締め、きちんと締まっていることを確認する。また、人とロボットが同じ空間で働くことができるロボットは、センサで人を感じ、人の接触を感じると瞬時に動作を停止する。学習するロボットは生産ラインに余力があるかを自分で計測し、ロボット自身が学習してスピード等を調整する。
このように「ロボット革命」向けた流れのなか、とりわけ「センサー」が重要な役割を担う。TDK<6762>は、センサー事業を成長分野と位置づけ、スイスのミクロナス社、フランスのトロニク社、米国のインベンセンス社などM&Aを活発化しており、IoTや車載向けセンサー製品の拡充につなげる。
<SK>
ロボット技術は、製造業の生産現場、医療・介護現場、農業・建設・インフラの作業現場などの幅広い分野で、人手不足の解消、過重な労働からの解放、生産性の向上などの社会課題を解決する可能性を有している。
産業分野においては、製造業において国際競争力低下は否めず、付加価値生産額の低下が続き、過去20年間で少なくとも20兆円近くが失われているといわれている。業種によっては安価なオペレーションを求めて海外生産に依存する傾向もあるが、将来にわたり日本経済の国際競争力を維持・強化していく観点からは、拡大する海外市場も見据えつつ、国内立地の魅力を高めることも、日本の直面する重要な課題である。こうした中、「日本再興戦略」において、「ロボットによる新たな産業革命」として、ロボット技術の活用により生産性の向上を実現し、企業の収益力向上、賃金の上昇を図ることなどが掲げられた。
なお、ロボットと言えばヒト型のものを思い浮かべられるだろうが、経済産業省では、(1)センサー、(2)知能・制御系、(3)駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システムをロボットと定義している。製造分野でよく使われている溶接ロボットや組立ロボット、人間の上半身のような双腕型ロボット、医療分野で使われている手術支援ロボットや病院内搬送ロボットがある。
また、介護現場では、介護者の腕や腰の負担を軽減するためのロボットや被介護者・高齢者の移動を支援するロボットなどが活用されている。防災・建設・インフラ分野においては、ドローン(小型無人機)が、土砂災害の際に人が立ち入れない被災地の情報を上空から収集し、救命捜索に活用されている。がれきの下からレスキューを行う災害対応ロボットや、老朽化したインフラの点検を行うロボットなどに対する期待も高まっている。農業分野では、自動運転の技術を活かした無人トラクターや田植機のほか、介護と同じく重い荷物を持つためのアシストスーツや除草ロボットなどがある。
日本は、産業用ロボットの稼働台数や出荷台数で世界1位(2014年)を誇る「ロボット大国」である。出荷額では産業用ロボットが占め、自動車や電子機械産業が主要なユーザーとなるが、サービス分野でのロボットの出荷額も急速に拡大してきている。ロボット生産においては、日本は世界シェア上位に複数の企業が位置する高い競争力を有しており、世界的な産業用ロボットの市場拡大によって、日本からの産業用ロボット輸出額は直近5年間で80%増加している。ただし、デジタル化・ネットワーク化を用いた欧米の追い上げや、中国などの新興国によるロボット投資の加速が顕著な状況にあり、競争は激化している。
こうした状況の中、日本が「ロボット大国」としての地位を今一度高めるべく、政府は「ロボット革命」というコンセプトを打ち出している。官民で、総額1000億円のロボット関連プロジェクトへ投資し、現状6500億円とされるロボットの市場規模を2.4兆円(年間)へ拡大させる。これによりみえてくるものとして、(1)センサー、AIなどの技術進歩により、従来はロボットと位置づけられてこなかったモノまでもロボット化し(2)製造現場から日常生活の様々な場面でロボットが活用されることにより、(3)社会課題の解決やものづくり・サービスの国際競争力の強化を図る。
日本を代表するロボットメーカーといえばファナック<6954>であろう。同社は工場の生産ラインなどで動くロボットを開発しており、産業用ロボット分野で世界トップである。視覚認識機能を持つビジョンセンサを搭載し、目で見て作業を行うことができる。例えば、ロボットがネジを締め、きちんと締まっていることを確認する。また、人とロボットが同じ空間で働くことができるロボットは、センサで人を感じ、人の接触を感じると瞬時に動作を停止する。学習するロボットは生産ラインに余力があるかを自分で計測し、ロボット自身が学習してスピード等を調整する。
このように「ロボット革命」向けた流れのなか、とりわけ「センサー」が重要な役割を担う。TDK<6762>は、センサー事業を成長分野と位置づけ、スイスのミクロナス社、フランスのトロニク社、米国のインベンセンス社などM&Aを活発化しており、IoTや車載向けセンサー製品の拡充につなげる。
<SK>