中国によるウクライナ「和平」の働きかけ:それは中ロ関係にとって何を意味するのか(1)【中国問題グローバル研究所】
[23/05/31]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
*16:54JST 中国によるウクライナ「和平」の働きかけ:それは中ロ関係にとって何を意味するのか(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)テムール・ウマロフの考察を2回に渡ってお届けする。
中国のユーラシア問題担当特別代表の李輝大使は「和平協議推進」のため、ロシアによる侵攻後初めてウクライナを訪問する(※2)。5月15日からの外遊中、同特別代表はポーランド、フランス、ドイツ、ロシアも訪れる予定だ。
ウクライナにおける軍事衝突をめぐり、中国がその存在感の高まりを誇示するの一連の試みの中で、これは最新の動きの1つとなる。ロシアによるウクライナ侵攻開始以降で初となる、習近平国家主席とウォロディミル・ゼレンスキー大統領の会談もやはりその一環だ。
それに先立ち、ロシアがウクライナへの侵攻を本格化させて2年目となる日に、中国は紛争を解決するための「和平案」を発表した。さらに3月には、習近平国家主席が3選後初めてロシアを訪問している(※3)。だが、中国政府の対応を一義的にとらえてはならない。
なぜロシアは中国を必要としているのか
ウラジーミル・プーチン大統領から「親愛なる友人」と呼ばれる(※4)習近平国家主席は、ロシアを訪れることで、支持を最も必要としている、まさにそのときに、大きな贈り物をしたことになる。現代ロシアが今ほど外交的孤立を深めたことはなく、またプーチン大統領自身も、ハーグの国際刑事裁判所から自らの逮捕状が出される(※5)まで、今日のような有害な政治家ではなかった。
習国家主席のほかにも、中国の高官がさまざまなタイミングでロシアを訪れているが、最も重要なのはやはり主役の訪問だ。
中ロ関係の現状について、習国家主席の訪ロ後に形成された世論は大きく2つある。1つはロシアが中国の子分(ジュニアパートナー)となり、中国はロシアを命令通りに動かすことができるようになったというもの。そしてもう1つは、中ロ間で同盟関係が結ばれ、習国家主席が結局のところ、プーチン大統領によるウクライナ侵攻を支持し、武器供与に同意したというものだ。
だが、言うまでもなく、これもやはり「真実はその中間にこそある」。両サイドに相手から得るものがあるとはいえ、本格的な同盟とは程遠い。
ロシアにとって、中国側がモスクワを訪問することがなぜ重要なのか。その答えは明白だ。軍事衝突の激化と、西側諸国のロシアに対する全面的な経済制裁を受け、中国に対する依存を強める以外、ロシア政府に選択肢はない。2022年のデータを見ると、ロシア経済の中国依存が急速に強まっていると断言できるだけの事例が蓄積されていることが分かる。現在、ロシアの輸入の約40%(※6)が中国産で、ロシアの対中国エネルギー資源輸出量は過去最大を記録し(※7)、人民元が為替取引の33%、ロシア国内の決済の14%をそれぞれ占める(※8)。また一部中国企業は、グローバルブランドが去ったロシア市場でシェアを拡大している。
政治的に見ると、習国家主席の訪ロはプーチン大統領の評判・名声を国内外で高めるためにも非常に重要であった。ロシアの大統領が自らの身の安全や評判・名声を心配せずに訪問できる国がほとんどないのと同様、世界最大の侵略者と笑顔で握手をするのをいとわない指導者も今やほとんど(※9)いない。
ここで、より興味深い疑問が浮かぶ。世界第2位の大国の指導者がなぜ、現代ロシアのような国を訪問する必要があったのか。
なぜ中国はロシアを必要としているのか
有害な国であるにもかかわらず、長く国境を接し、両国の経済構造が相互補完される関係にあり、両国の政治体制が本質的に権威主義的であるなどといった客観的理由(※10)により、中国政府にとってロシアは重要な国であることに変わりない。とはいえ、重要さを増しているのは第4の要因 ? 米国が中心的な役割を果たす国際秩序は不当だとすることについての、両国の見解の一致だ。
ロシア政府と中国政府はいずれも、国際秩序を変えようとしているが、その手法はそれぞれ異なる。ロシアは2008年に起きたジョージアとの紛争やクリミア併合などの紛争により、そして今またウクライナ侵攻により、国際的な注目と尊敬を集めようとしている。
一方、中国政府のアプローチは異なる。中国が飛躍的な発展を遂げることができたのは、主に現在の国際秩序のおかげだ。中国の戦略は、簡単に言うと、国際秩序で不可欠な役割を担い、徐々になくてはならない存在となって、最終的には国際秩序を中国政府のニーズに沿ったものにすることであろう。中国はすでに世界GDPの20%(※11)近くを、世界の物品輸出の15%(※12)弱を占め、国連の年間予算の分担率も12%(※13)に上る。
その一方で、中国政府は「人類運命共同体」というビジョンを共有する支持国も必要としている。
このビジョンにおいて中国政府をロシアのように支持してくれる国をほかに見つけることは難しい。しかもロシアは、政治体制が不安定な発展途上国の一つ(中国の構想の主な信奉者)であるだけではなく、核保有国であり、国連安全保障理事会の常任理事国でもある。その上、西側諸国との対立で、ロシアは中国よりはるかに踏み込んだ行動を取り、自国の経済発展や、場合によっては政治的安定ですら犠牲にすることを厭わない。
戦略的あいまいさ
中国とロシアが等しく、現在と将来の国際秩序を懸念しているのであれば、なぜ米国が何十年間にもわたり西側諸国と築いてきたような、本格的な同盟関係を結ばないのだろうか。
中国政府とロシア政府が両国の関係を、単に西側からの圧力により親交関係の確立を余儀なくされた結果生まれたものではなく、はるかに息が長く、重要なものであると世界に信じ込ませたいと思っていることは間違いない。「同盟」は、その趣旨を考えると適切な言葉なのだろう。だが、同盟を結べば、同盟相手が関与するすべての紛争に、自国の紛争であるかのように加わると約束したとみなされることになる。
中国政府は、ロシア政府による予想外の行動に責任を負うことを望んでいない。その一例が、ロシアによるウクライナ侵攻と、それに対する中国の反応だ。一方、ロシア政府も中国と周辺国の領土紛争に巻き込まれることを望んでいない。
真の同盟国は、自国の行動に対して、同盟相手が少なくとも責任の一端を負わされることを自覚し、自国の意向を互いに通告し合う。ウクライナ侵攻の20日前にプーチン大統領が北京を訪れたが、これを通告と解釈する向きは多い。その際に、両国は二国間関係について「両国の友情に限界はない」とする共同声明(※14)に署名した。中国政府がロシアに唯一求めたのは、中国の評判・名声にとって大切な冬季オリンピックが終了するまで侵攻を待ってほしいということだったというのは論理的な推察と言える。
だが、実際にはプーチン大統領が「親愛なる友人」である習国家主席に通告せず、中国は不意打ちを食らったのかもしれない。その根拠は、中国がウクライナ在住の何千人もの自国民を事前に退避させなかった(※15)ことだ。
同盟とは、2カ国以上が個々の問題について同じような見解を示すだけでなく、外交政策の優先順位について正式な合意を得ていることも示唆している。つまり、ロシアと中国の場合、国際秩序が不当なものであるという共通の考えを持っているだけでは不十分であり、両国の外交政策の優先順位もほぼ完全に合致する必要がある。
ところが、中ロ間でそうした認識はない。仮にあったとしたら、中国政府はプーチン大統領の侵略戦争にすでに加担しているだろう。現在のところ、それを裏付ける証拠はほとんどみられない。二次的制裁が科せられる恐れがあることから、ロシア市場でのプレゼンス縮小、社員のロシアからの移転、ロシアの組織・団体との協力の限定などを図る中国企業も出てきた。例えば、Huawei社はオンライン注文の受付を停止(※16)し、社員を中央アジアに移転させた(※17)。また、Loongson社製プロセッサのロシアへの輸出を中国政府が禁止した(※18)という報道や、中国人民銀行がロシアでの銀聯(UnionPay)決済システムの設置を制限している(※19)との報道もある。
ウクライナ侵攻開始の初日から、中国政府は厄介な立場(※20)に立たされていた。米国の覇権と戦う姿勢ではロシアと一致する一方、ロシア政府の行動は、台湾に対する自らの主張の正当化で中国が持ち出す、領土の一体性という原則と明らかに矛盾する。
そのため、中国は1年以上にわたり、「戦略的あまいさ」の方針を貫いて、中立姿勢を取り、できるだけウクライナ侵攻から距離を置くよう努めてきた。だが、実質的に何もしないことで、中国政府はすでに、ロシアを孤立させ、中国への依存を一段と強めさせただけでなく、米国の関心を自国から、支援するウクライナへと向けさせた。
「中国によるウクライナ「和平」の働きかけ:それは中ロ関係にとって何を意味するのか(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
写真: 代表撮影/ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.reuters.com/world/europe/top-chinese-envoy-visit-ukraine-russia-peace-mission-2023-05-15/
(※3)https://www.reuters.com/world/europe/top-chinese-envoy-visit-ukraine-russia-peace-mission-2023-05-15/
(※4)http://kremlin.ru/events/president/news/70746
(※5)https://www.icc-cpi.int/news/situation-ukraine-icc-judges-issue-arrest-warrants-against-vladimir-vladimirovich-putin-and
(※6)https://carnegieendowment.org/politika/89374
(※7)https://www.reuters.com/markets/commodities/russia-is-chinas-top-crude-supplier-jan-feb-volumes-up-238-yoy-2023-03-20/
(※8)https://carnegieendowment.org/politika/88926
(※9)https://carnegieendowment.org/politika/89741
(※10)https://carnegiemoscow.org/commentary/86104
(※11)https://chinapower.csis.org/tracker/china-gdp/
(※12)https://chinapower.csis.org/trade-partner/#:~:text=In%25201995%252C%2520the%2520value%2520of,by%2520Germany%2520at%25207.7%2520percent.
(※13)https://chinapower.csis.org/china-un-mission/#:~:text=China%2520contributed%2520a%2520total%2520of,US%2520(amount%2520and%2520percent).
(※14)http://www.kremlin.ru/supplement/5770
(※15)https://www.globaltimes.cn/page/202202/1253174.shtml
(※16)https://www.themoscowtimes.com/2022/04/11/huawei-suspends-new-orders-furloughs-russia-staff-amid-sanctions-threat-reports-a77303
(※17)https://www.themoscowtimes.com/2022/09/05/chinas-huawei-moves-russian-staff-to-central-asia-vedomosti-a78716
(※18)https://www.rferl.org/a/china-bans-loongson-processor-exports-russia/32174659.html
(※19)https://www.themoscowtimes.com/2022/09/02/chinas-visa-alternative-cuts-off-russian-banks-over-sanctions-rbc-a78704
(※20)https://carnegieendowment.org/2022/02/24/china-faces-irreconcilable-choices-on-ukraine-pub-86515
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◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)テムール・ウマロフの考察を2回に渡ってお届けする。
中国のユーラシア問題担当特別代表の李輝大使は「和平協議推進」のため、ロシアによる侵攻後初めてウクライナを訪問する(※2)。5月15日からの外遊中、同特別代表はポーランド、フランス、ドイツ、ロシアも訪れる予定だ。
ウクライナにおける軍事衝突をめぐり、中国がその存在感の高まりを誇示するの一連の試みの中で、これは最新の動きの1つとなる。ロシアによるウクライナ侵攻開始以降で初となる、習近平国家主席とウォロディミル・ゼレンスキー大統領の会談もやはりその一環だ。
それに先立ち、ロシアがウクライナへの侵攻を本格化させて2年目となる日に、中国は紛争を解決するための「和平案」を発表した。さらに3月には、習近平国家主席が3選後初めてロシアを訪問している(※3)。だが、中国政府の対応を一義的にとらえてはならない。
なぜロシアは中国を必要としているのか
ウラジーミル・プーチン大統領から「親愛なる友人」と呼ばれる(※4)習近平国家主席は、ロシアを訪れることで、支持を最も必要としている、まさにそのときに、大きな贈り物をしたことになる。現代ロシアが今ほど外交的孤立を深めたことはなく、またプーチン大統領自身も、ハーグの国際刑事裁判所から自らの逮捕状が出される(※5)まで、今日のような有害な政治家ではなかった。
習国家主席のほかにも、中国の高官がさまざまなタイミングでロシアを訪れているが、最も重要なのはやはり主役の訪問だ。
中ロ関係の現状について、習国家主席の訪ロ後に形成された世論は大きく2つある。1つはロシアが中国の子分(ジュニアパートナー)となり、中国はロシアを命令通りに動かすことができるようになったというもの。そしてもう1つは、中ロ間で同盟関係が結ばれ、習国家主席が結局のところ、プーチン大統領によるウクライナ侵攻を支持し、武器供与に同意したというものだ。
だが、言うまでもなく、これもやはり「真実はその中間にこそある」。両サイドに相手から得るものがあるとはいえ、本格的な同盟とは程遠い。
ロシアにとって、中国側がモスクワを訪問することがなぜ重要なのか。その答えは明白だ。軍事衝突の激化と、西側諸国のロシアに対する全面的な経済制裁を受け、中国に対する依存を強める以外、ロシア政府に選択肢はない。2022年のデータを見ると、ロシア経済の中国依存が急速に強まっていると断言できるだけの事例が蓄積されていることが分かる。現在、ロシアの輸入の約40%(※6)が中国産で、ロシアの対中国エネルギー資源輸出量は過去最大を記録し(※7)、人民元が為替取引の33%、ロシア国内の決済の14%をそれぞれ占める(※8)。また一部中国企業は、グローバルブランドが去ったロシア市場でシェアを拡大している。
政治的に見ると、習国家主席の訪ロはプーチン大統領の評判・名声を国内外で高めるためにも非常に重要であった。ロシアの大統領が自らの身の安全や評判・名声を心配せずに訪問できる国がほとんどないのと同様、世界最大の侵略者と笑顔で握手をするのをいとわない指導者も今やほとんど(※9)いない。
ここで、より興味深い疑問が浮かぶ。世界第2位の大国の指導者がなぜ、現代ロシアのような国を訪問する必要があったのか。
なぜ中国はロシアを必要としているのか
有害な国であるにもかかわらず、長く国境を接し、両国の経済構造が相互補完される関係にあり、両国の政治体制が本質的に権威主義的であるなどといった客観的理由(※10)により、中国政府にとってロシアは重要な国であることに変わりない。とはいえ、重要さを増しているのは第4の要因 ? 米国が中心的な役割を果たす国際秩序は不当だとすることについての、両国の見解の一致だ。
ロシア政府と中国政府はいずれも、国際秩序を変えようとしているが、その手法はそれぞれ異なる。ロシアは2008年に起きたジョージアとの紛争やクリミア併合などの紛争により、そして今またウクライナ侵攻により、国際的な注目と尊敬を集めようとしている。
一方、中国政府のアプローチは異なる。中国が飛躍的な発展を遂げることができたのは、主に現在の国際秩序のおかげだ。中国の戦略は、簡単に言うと、国際秩序で不可欠な役割を担い、徐々になくてはならない存在となって、最終的には国際秩序を中国政府のニーズに沿ったものにすることであろう。中国はすでに世界GDPの20%(※11)近くを、世界の物品輸出の15%(※12)弱を占め、国連の年間予算の分担率も12%(※13)に上る。
その一方で、中国政府は「人類運命共同体」というビジョンを共有する支持国も必要としている。
このビジョンにおいて中国政府をロシアのように支持してくれる国をほかに見つけることは難しい。しかもロシアは、政治体制が不安定な発展途上国の一つ(中国の構想の主な信奉者)であるだけではなく、核保有国であり、国連安全保障理事会の常任理事国でもある。その上、西側諸国との対立で、ロシアは中国よりはるかに踏み込んだ行動を取り、自国の経済発展や、場合によっては政治的安定ですら犠牲にすることを厭わない。
戦略的あいまいさ
中国とロシアが等しく、現在と将来の国際秩序を懸念しているのであれば、なぜ米国が何十年間にもわたり西側諸国と築いてきたような、本格的な同盟関係を結ばないのだろうか。
中国政府とロシア政府が両国の関係を、単に西側からの圧力により親交関係の確立を余儀なくされた結果生まれたものではなく、はるかに息が長く、重要なものであると世界に信じ込ませたいと思っていることは間違いない。「同盟」は、その趣旨を考えると適切な言葉なのだろう。だが、同盟を結べば、同盟相手が関与するすべての紛争に、自国の紛争であるかのように加わると約束したとみなされることになる。
中国政府は、ロシア政府による予想外の行動に責任を負うことを望んでいない。その一例が、ロシアによるウクライナ侵攻と、それに対する中国の反応だ。一方、ロシア政府も中国と周辺国の領土紛争に巻き込まれることを望んでいない。
真の同盟国は、自国の行動に対して、同盟相手が少なくとも責任の一端を負わされることを自覚し、自国の意向を互いに通告し合う。ウクライナ侵攻の20日前にプーチン大統領が北京を訪れたが、これを通告と解釈する向きは多い。その際に、両国は二国間関係について「両国の友情に限界はない」とする共同声明(※14)に署名した。中国政府がロシアに唯一求めたのは、中国の評判・名声にとって大切な冬季オリンピックが終了するまで侵攻を待ってほしいということだったというのは論理的な推察と言える。
だが、実際にはプーチン大統領が「親愛なる友人」である習国家主席に通告せず、中国は不意打ちを食らったのかもしれない。その根拠は、中国がウクライナ在住の何千人もの自国民を事前に退避させなかった(※15)ことだ。
同盟とは、2カ国以上が個々の問題について同じような見解を示すだけでなく、外交政策の優先順位について正式な合意を得ていることも示唆している。つまり、ロシアと中国の場合、国際秩序が不当なものであるという共通の考えを持っているだけでは不十分であり、両国の外交政策の優先順位もほぼ完全に合致する必要がある。
ところが、中ロ間でそうした認識はない。仮にあったとしたら、中国政府はプーチン大統領の侵略戦争にすでに加担しているだろう。現在のところ、それを裏付ける証拠はほとんどみられない。二次的制裁が科せられる恐れがあることから、ロシア市場でのプレゼンス縮小、社員のロシアからの移転、ロシアの組織・団体との協力の限定などを図る中国企業も出てきた。例えば、Huawei社はオンライン注文の受付を停止(※16)し、社員を中央アジアに移転させた(※17)。また、Loongson社製プロセッサのロシアへの輸出を中国政府が禁止した(※18)という報道や、中国人民銀行がロシアでの銀聯(UnionPay)決済システムの設置を制限している(※19)との報道もある。
ウクライナ侵攻開始の初日から、中国政府は厄介な立場(※20)に立たされていた。米国の覇権と戦う姿勢ではロシアと一致する一方、ロシア政府の行動は、台湾に対する自らの主張の正当化で中国が持ち出す、領土の一体性という原則と明らかに矛盾する。
そのため、中国は1年以上にわたり、「戦略的あまいさ」の方針を貫いて、中立姿勢を取り、できるだけウクライナ侵攻から距離を置くよう努めてきた。だが、実質的に何もしないことで、中国政府はすでに、ロシアを孤立させ、中国への依存を一段と強めさせただけでなく、米国の関心を自国から、支援するウクライナへと向けさせた。
「中国によるウクライナ「和平」の働きかけ:それは中ロ関係にとって何を意味するのか(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
写真: 代表撮影/ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.reuters.com/world/europe/top-chinese-envoy-visit-ukraine-russia-peace-mission-2023-05-15/
(※3)https://www.reuters.com/world/europe/top-chinese-envoy-visit-ukraine-russia-peace-mission-2023-05-15/
(※4)http://kremlin.ru/events/president/news/70746
(※5)https://www.icc-cpi.int/news/situation-ukraine-icc-judges-issue-arrest-warrants-against-vladimir-vladimirovich-putin-and
(※6)https://carnegieendowment.org/politika/89374
(※7)https://www.reuters.com/markets/commodities/russia-is-chinas-top-crude-supplier-jan-feb-volumes-up-238-yoy-2023-03-20/
(※8)https://carnegieendowment.org/politika/88926
(※9)https://carnegieendowment.org/politika/89741
(※10)https://carnegiemoscow.org/commentary/86104
(※11)https://chinapower.csis.org/tracker/china-gdp/
(※12)https://chinapower.csis.org/trade-partner/#:~:text=In%25201995%252C%2520the%2520value%2520of,by%2520Germany%2520at%25207.7%2520percent.
(※13)https://chinapower.csis.org/china-un-mission/#:~:text=China%2520contributed%2520a%2520total%2520of,US%2520(amount%2520and%2520percent).
(※14)http://www.kremlin.ru/supplement/5770
(※15)https://www.globaltimes.cn/page/202202/1253174.shtml
(※16)https://www.themoscowtimes.com/2022/04/11/huawei-suspends-new-orders-furloughs-russia-staff-amid-sanctions-threat-reports-a77303
(※17)https://www.themoscowtimes.com/2022/09/05/chinas-huawei-moves-russian-staff-to-central-asia-vedomosti-a78716
(※18)https://www.rferl.org/a/china-bans-loongson-processor-exports-russia/32174659.html
(※19)https://www.themoscowtimes.com/2022/09/02/chinas-visa-alternative-cuts-off-russian-banks-over-sanctions-rbc-a78704
(※20)https://carnegieendowment.org/2022/02/24/china-faces-irreconcilable-choices-on-ukraine-pub-86515
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