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アイ・エス・ビー Research Memo(7):スマートグリッドに必要な家電のスマート化には同社技術が必須

注目トピックス 日本株

■中期経営計画と成長性

(2)中期成長実現のシナリオ

同社<9702>が手がける「スマートグリッド」(注)は、2015年12月期を最終年度とする中期経営計画とその後の中長期的な収益成長を支えると期待される。スマートグリッドが機能するためには、大きく2つの要素が必要だ。1つは、電力会社が導入する次世代スマートメーターの普及であり、もう1つは、家庭内の電化製品のスマート化だ。現在の電力計はそれぞれ独立した計器であり、ネットワークに接続されておらず、検針員が1台ずつ目でチェックしている。一方スマートメーターは、無線で各契約者の電力使用状況のデータをほぼリアルタイムで送信することができる。この結果、電力会社はより効率的で安定的な電力供給が可能になる。家庭や商店などの電力ユーザーもHEMS(Home Energy Management System:宅内エネルギー管理システム)やBEMS(Building Energy Management System:ビル内エネルギー管理システム)といった仕組みを利用して節電が可能になるというメリットがある。
(注)スマートグリッドは、通信及び制御機能を活用して効率的・安定的な電力供給、多様な契約形態あるいはコスト削減等を実現可能にする電力網のことをいう。

スマートグリッドのコンセプト自体は過去にも何度か話題になったが、いよいよ、2014年春から本格的に動き出すことになる。その先鞭が東京電力によるスマートメーターの配布開始だ。日本経済新聞は2014年3月15日付朝刊で、東京電力を始めとする大手電力10社が、2024年度までにスマートメーターを全世帯(約8,000万世帯)に配布する方針を固めたと報じた。なかでも東京電力は2014年4月からスマートメーターを導入し、2020年度までに配布を完了する計画だ。記事はスマートメーターの価格を1台1万円とした場合、工賃やシステム費用などを合わせた市場規模は1兆円に達するとの見方も示している。

政府もスマートメーターの利用を後押ししている。2014年2月にはスマートメーターの電波利用料を大幅に引き下げることを盛り込んだ電波法改正案を閣議決定している。改正案では、通信会社が国に納入する電波利用料は利用者負担が原則だが一定規模以上の導入は電波利用料がゼロになり負担が軽減されることになる。

同社は独立行政法人情報通信研究機構(NICT)との共同研究で、スマートメーターとホームゲートウエイ(宅内)間の通信で採用される通信規格「Wi-SUN」(注)の通信プロトコルスタックの開発に成功した。通信プロトコルスタックとは、ここでは、通信のための手順や規約(通信プロトコル)の集合体(スタック)がソフトウェアとして実装されたものを言う。ごく簡単に言えば、Wi-SUNという規格に基づいて通信を行うためのソフトウェア、と言える。
(注)次世代無線通信規格の1つで国際通信規格。SUNはSmart Utility Networkの略である。

前述のように、この4月から東京電力によってスマートメーターの導入が開始される。スマートメーター内には東芝<6502>とNECが開発した通信ユニットが内蔵される見通しとなっている。スマートグリッドの完成には、家電側のスマート化が必須だ。「スマートグリッド対応」「スマート家電」といったうたい文句は家電メーカーにとっても大きな商機を提供すると期待されるため、ある程度スマートメーターの設置が進めば、Wi-SUN対応の通信デバイスの搭載は一気に加速する可能性がある。

こうした見通しの元、同社は2年後の本格事業化を目標に、通信モジュール(機器)のデモ機の開発に取り組んでいる。技術的な面での熟成と併せて、同社は事業モデルの研究も進める意向だ。パートナー、納入形態、値決め方式など様々な角度から検討を加えて、自社技術の収益最大化に向けたベストソリューションを探っていく方針だ。

Wi-SUN規格については、いずれ携帯電話・スマートフォンにも標準搭載されるとの見方がある。この点はまだ十分な検討がなされている段階ではないので、収益には織り込むことはできない。しかし仮にそうなれば、元来携帯端末のファームウェアにおいて強みを発揮してきた同社にとっては、ポジティブな要因となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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