ラクーン Research Memo(2):主力のスーパーデリバリーでは出展企業の質の向上が進む
[14/07/08]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
ラクーン<3031>の事業セグメントは、EC事業と子会社T&Gが手掛ける売掛債権保証事業の2つの事業で構成されている。各事業の概要は以下のとおり。
(1)EC事業
BtoBのeコマース関連サービスを展開しているEC事業には、「スーパーデリバリー」と2011年10月よりサービスを開始した「Paid」が含まれる(2014年3月より開始した「COREC」は後述する)。
○スーパーデリバリー
同社の主力事業である「スーパーデリバリー」は、アパレル・雑貨を中心とした中小小売店向けの仕入れECサイト事業である。2014年4月末時点での会員小売店数は40,441店舗、出展企業数948社、商材掲載数453,115点となっており、BtoBに特化した専門サイトとしては日本最大級。
会員小売店舗数が年々、拡大している一方で出展企業数が減少しているが、これは質の高いECサイトを構築するために、出展企業の審査を厳格化した影響による。実際、1社当たりの商材掲載点数は年々増加傾向にあり、出展企業の質の向上が進んでいることがうかがえる。
会員小売店は、同サイトを利用することによって距離的な問題で今まで仕入れる機会がなかったサプライヤーとの取引が可能になるといったメリットを享受できる。一方で、出展企業(メーカー・卸業者)にとっては、新規取引先開拓にかかる営業費用及び販売代金回収のための決済コストを、同サイトを利用することによって削減できるというメリットがある。特にここ最近は、企業における人材不足が顕在化していることもあり、ECサイトを活用するメリットは今まで以上に大きくなっているものと思われる。
「スーパーデリバリー」の収益構造は、会員小売店、出展企業の両者から料金を徴収するバランスのとれたビジネスモデルとなっている。安定収入としては出展企業から得る出展基本料(月額4万円)と、会員小売店から得る小売店月会費(月額2千円)とがある。また、変動収入としては出展企業から会員小売店に卸した商品代金の10%をシステム利用料として徴収している。
実際のモノの流れとしては、出展企業が直接会員小売店に商品を送る格好となるため、同社は介在していない。しかし、代金の流れとしては、同社が出展企業の代わりに会員小売店から回収し、出展企業に支払う格好となるため、売上高として商品代金を計上し、システム利用料を控除した額を売上原価に計上している。
以上から、「スーパーデリバリー」の粗利益の構造は、毎月徴収する会費や基本料などの安定収入(粗利益率はほぼ100%)とシステム利用料(粗利益率10%)の合計となる。つまり、商品売上高が大きくなればなるほど全体の粗利益率は10%に近づいていくことになる。ただ、販管費はほぼ固定費に近いため、粗利率が低下したとしても売上高が拡大していけば販管費率が低下し、営業利益率は上昇する格好となる。
○Paid
「Paid」は企業間取引において、取引先に対する与信審査から請求・代金回収手続きまでを一括して請け負い、売掛金を保証する決済サービスのことである。売掛金の保証額に対して一定料率を掛けたものを「保証料」(保証額の3.0%程度)として売上高に計上している。
一般的には、企業間取引の90%以上が「掛売り決済」で行われているが、インターネットを通じた企業間取引で見ると、「掛売り決済」の導入率は10%程度にとどまっている。同社は2004年に「スーパーデリバリー」で「掛売り決済」を導入した後、売上高が急成長した実績があり、「スーパーデリバリー」以外の企業間取引にも広く開放するために開始したサービスが「Paid」である。同サービスを利用する販売企業は「Paid」に加盟企業登録を行い、また、購入企業はPaidメンバー登録を事前に行う必要がある。Paidメンバーからの代金回収リスク部分に関しては、T&Gの売掛保証サービスを利用することで100%ヘッジされている。
売上規模としては年間で数千万円程度とまだ小さいものの、決済ニーズの高いアーリーステージのベンチャー企業を中心に、導入社数は900社を超えるまでに拡大しており、今後の成長が期待される。
○競合状況
EC事業における競合サービスの状況としては、楽天<4755>やディー・エヌ・エー<2432>など大手IT企業がサービスの一部としてBtoB用のメニューを立ち上げている。ただ、これらサービスにおける出展企業や会員小売店の属性は多岐に広がっており、サイトのコンセプトそのものが異なっていると言える。このため、ECサイトでの競合先は見当たらない状態であり、同社では既存の卸売企業を競合先として位置付けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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ラクーン<3031>の事業セグメントは、EC事業と子会社T&Gが手掛ける売掛債権保証事業の2つの事業で構成されている。各事業の概要は以下のとおり。
(1)EC事業
BtoBのeコマース関連サービスを展開しているEC事業には、「スーパーデリバリー」と2011年10月よりサービスを開始した「Paid」が含まれる(2014年3月より開始した「COREC」は後述する)。
○スーパーデリバリー
同社の主力事業である「スーパーデリバリー」は、アパレル・雑貨を中心とした中小小売店向けの仕入れECサイト事業である。2014年4月末時点での会員小売店数は40,441店舗、出展企業数948社、商材掲載数453,115点となっており、BtoBに特化した専門サイトとしては日本最大級。
会員小売店舗数が年々、拡大している一方で出展企業数が減少しているが、これは質の高いECサイトを構築するために、出展企業の審査を厳格化した影響による。実際、1社当たりの商材掲載点数は年々増加傾向にあり、出展企業の質の向上が進んでいることがうかがえる。
会員小売店は、同サイトを利用することによって距離的な問題で今まで仕入れる機会がなかったサプライヤーとの取引が可能になるといったメリットを享受できる。一方で、出展企業(メーカー・卸業者)にとっては、新規取引先開拓にかかる営業費用及び販売代金回収のための決済コストを、同サイトを利用することによって削減できるというメリットがある。特にここ最近は、企業における人材不足が顕在化していることもあり、ECサイトを活用するメリットは今まで以上に大きくなっているものと思われる。
「スーパーデリバリー」の収益構造は、会員小売店、出展企業の両者から料金を徴収するバランスのとれたビジネスモデルとなっている。安定収入としては出展企業から得る出展基本料(月額4万円)と、会員小売店から得る小売店月会費(月額2千円)とがある。また、変動収入としては出展企業から会員小売店に卸した商品代金の10%をシステム利用料として徴収している。
実際のモノの流れとしては、出展企業が直接会員小売店に商品を送る格好となるため、同社は介在していない。しかし、代金の流れとしては、同社が出展企業の代わりに会員小売店から回収し、出展企業に支払う格好となるため、売上高として商品代金を計上し、システム利用料を控除した額を売上原価に計上している。
以上から、「スーパーデリバリー」の粗利益の構造は、毎月徴収する会費や基本料などの安定収入(粗利益率はほぼ100%)とシステム利用料(粗利益率10%)の合計となる。つまり、商品売上高が大きくなればなるほど全体の粗利益率は10%に近づいていくことになる。ただ、販管費はほぼ固定費に近いため、粗利率が低下したとしても売上高が拡大していけば販管費率が低下し、営業利益率は上昇する格好となる。
○Paid
「Paid」は企業間取引において、取引先に対する与信審査から請求・代金回収手続きまでを一括して請け負い、売掛金を保証する決済サービスのことである。売掛金の保証額に対して一定料率を掛けたものを「保証料」(保証額の3.0%程度)として売上高に計上している。
一般的には、企業間取引の90%以上が「掛売り決済」で行われているが、インターネットを通じた企業間取引で見ると、「掛売り決済」の導入率は10%程度にとどまっている。同社は2004年に「スーパーデリバリー」で「掛売り決済」を導入した後、売上高が急成長した実績があり、「スーパーデリバリー」以外の企業間取引にも広く開放するために開始したサービスが「Paid」である。同サービスを利用する販売企業は「Paid」に加盟企業登録を行い、また、購入企業はPaidメンバー登録を事前に行う必要がある。Paidメンバーからの代金回収リスク部分に関しては、T&Gの売掛保証サービスを利用することで100%ヘッジされている。
売上規模としては年間で数千万円程度とまだ小さいものの、決済ニーズの高いアーリーステージのベンチャー企業を中心に、導入社数は900社を超えるまでに拡大しており、今後の成長が期待される。
○競合状況
EC事業における競合サービスの状況としては、楽天<4755>やディー・エヌ・エー<2432>など大手IT企業がサービスの一部としてBtoB用のメニューを立ち上げている。ただ、これらサービスにおける出展企業や会員小売店の属性は多岐に広がっており、サイトのコンセプトそのものが異なっていると言える。このため、ECサイトでの競合先は見当たらない状態であり、同社では既存の卸売企業を競合先として位置付けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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