ソフトバンテク Research Memo(4):M&Aでグループ入りした子会社群が寄与
[14/10/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■構造改革の進展状況
(3)構造改革実現に向けた具体的な進展
続いて、事業構造改革の実現のためにソフトバンク・テクノロジー<4726>がここ数年にわたり実行してきた具体的な方策について触れる。特に重要な方策は、積極的なM&Aとグループ企業を含めた人材の拡充である。以下にこれらの進展状況を説明する。
1.M&A
M&Aの目的は、サービスプロバイダーへの転換を実現するための中核技術を確保することにある。従来、同社は他社の製品や技術を活用したサービスを提供するビジネスが中心であった。これには、技術が陳腐化した場合、より最新の技術に乗り換えることなどにより常に最先端のサービスを提供できるといったリスク回避のメリットがあったが、リスクが回避できる分、競合他社のサービスとの差別化が困難であったり、利益率の高いサービスを提供しにくい側面もあった。中核技術を自社で持つことは、リスクを負う面はあるが、仕入先の状況や市場環境に寄らずとも継続して事業成長していくには有効な戦略となるとして「持たない経営」から「持つ経営」に大きく舵を切ったのが、2012年6月に就任した代表取締役社長CEOの阿多親市(あたしんいち)氏である。阿多社長のこの新方針のもと、同社が実行してきたM&Aは以下のものである。
○フォントワークス
フォントワークス(株)<松雪文一(まつゆきぶんいち)代表取締役社長、本社:福岡市博多区>は、デジタルフォント(書体)の製作やソフトの開発を行っている。資本金は2,000万円、従業員数は35人(いずれも2014年6月末時点)。
フォントワークスは、デジタルフォントに強みを持つ会社である。従来は審美性の高いフォントをウェブサイト等に採用する場合は、画像として埋め込むのが主流であったが、EC市場が広がりを見せる中、検索エンジンで上位にヒットするSEO対策の重要性が高まっており、デザイン性を保ちつつウェブ上で活用できるデジタルフォントのニーズが高まっている。このデジタルフォントのマーケットで高い市場シェアを誇るフォントワークスを傘下に置くことは、サイト構築のための重要な基盤技術を手に入れることにつながる。
ビジネスモデルは、クライアントにフォントのライセンスを一定期間与え、ライセンス料を得るというものであり、更新率の高いストックビジネスである。
なお、M&A効果を除いたEC関連サービスは、既に成熟期に入っており、大きな成長は見込めないが、一定の収入が継続して入るため、事業投資のための収益の源泉として成長を支えるうえでは重要な位置付けとなっている。
○環
(株)環<江尻俊章(えじりとしあき)代表取締役社長、本社:東京都新宿区>は、ウェブ解析サービスを展開している。このほか、ホームページのアクセス解析技術を認証する「ウェブ解析士」で認証団体の事務局を務めている。資本金は10百万円、従業員は13人(2014年6月末時点)である。
2013年6月に資本業務提携し、その後完全子会社化した環は「シビラ」と呼ばれる独自の解析ツールを持ち、その技術は高く評価されているため、データアナリティクス分野の基盤技術を取り込めることになる。また、環はウェブマーケティングに必要な能力を証明できる資格である「ウェブ解析士」の認定機関であるウェブ解析士協会を運営している。同協会によれば「初級ウェブ解析士認定講座」の受講者数は2014年7月までに累計8,000名を超え、広告関連業界を中心に認知度が高まっているという。将来的には、環を通じて、優秀な解析士をライバルに先んじて確保できるメリットが享受できる。
環の業績への貢献は絶対額では大きくはないと考えられるが、データアナリティクス分野の拡大に寄与していると言える。
○サイバートラスト
サイバートラスト(株)<眞柄泰利(まがらやすとし)代表取締役社長、本社:東京都港区>は、1995年に創業した情報セキュリティサービスの老舗である。資本金は1,422百万円、従業員は81人(2014年6月末時点)。
2014年4月に子会社化したサイバートラストは、以前から業務提携関係にあった。ソフトバンク・テクノロジーの販売するサービスにサイバートラストのスマートデバイス向け端末認証を組み込んでいたため、ソフトバンク・テクノロジーのセキュリティビジネスにおいてサイバートラストの持つセキュリティの要素技術は同分野における中核技術に位置付けられる。
サイバートラストの業績への貢献度は非常に高く、2015年3月期第1四半期におけるセキュリティソリューション分野の売上高は前年同期比2.9倍の714百万円となった増収効果のうち429百万円はサイバートラストによる貢献となっている。
○モードツー
(株)モードツー<蓮見智威(はすみともたけ)代表取締役社長、本社:東京都千代田区>は、広告・販売促進戦略の企画・制作を行っている。資本金は35百万円、従業員は74人(2013年8月末時点)。
2014年4月に業務提携した後、5月には資本提携によって持分法適用会社としている。
資本業務提携の目的は、データアナリティクス分野のなかでも注目度の高いオムニチャネルに対応したマーケティングサービスを展開することにあるという。ソフトバンク・テクノロジーは、ウェブや店舗など複数のチャネルからユーザーの購買データを収集し、分析した結果をユーザーの購買行動に結び付けるマーケティングプランまでワンストップで提供することを目指しており、イベントの企画業務などを通じて実際の購買行動に繋がるノウハウを有するモードツーとの資本提携で、ビッグデータ時代に活躍するソリューションをワンストップで提供する基盤構築が一歩進んだと言える。
なお、モードツーの収益への貢献は、持分法適用会社となるため限定的ではあるが、ビジネス上のシナジーによる押し上げ効果が今後期待できる。
○ミラクル・リナックス
ミラクル・リナックス(株)<児玉崇(こだまたかし)代表取締役社長、本社:東京都港区>は、日本でも有数のLinuxOSの開発力を持つオープンソースソフトウェアベンダーである。資本金は400百万円(2014年6月1日時点)。
2014年7月に発行済株式の58%を取得して連結子会社化した目的は、新しいプラットフォームソリューションビジネスの開拓である。前述のサイバートラストのセキュリティ技術と組み合わせることによって、デジタルサイネージや、IoT(インターネット・オブ・シングス=あらゆるモノがインターネットに接続されて相互に情報交換や制御できる次世代のプラットフォーム)へのビジネス展開を目指す。
ミラクル・リナックスの2013年5月期における売上高は7.9億円、営業利益は7.9千万円と収益面ですぐに大きく貢献するとは言えないが、今後大きなビジネスに成長する可能性を秘めていると言えよう。
2.人材の拡充
ソフトバンク・テクノロジーは1つの目標として、グループ社員1,000人という目標を掲げている。同社への取材によれば、1,000人というのは大型のサービス案件が受注できる規模であると同時に、サービスプロバイダーへ事業展開していくために最低限必要な人員構成であるとしている。
2014年6月末時点でのグループ従業員数は742人となっており、3月末に比べ118人もの増加である。サイバートラストの子会社化が最も大きな要因ではあるが、ソフトバンク・テクノロジー本体も4月に中途採用を含めて大規模な人員増強を行っており、単体の従業員数は6月末時点で3月末比33人増となっている。さらに、足元では既に連結ベースで800人を超えており、目標の1,000人は2015年の秋口には達成できそうだとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)
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