ソフトクリエイトHD Research Memo(4):顧客選別をしつつもECサイト支援では業界トップシェア
[15/01/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業の詳細と2015年3月期の第2四半期の状況
(1)ECソリューション事業
(A)事業の詳細
ECソリューション事業は、顧客企業のeコマース(インターネットを活用した通信販売)事業をサポートする業務で、子会社の「ecbeing」が「ecbeing」の名称でサービスしている。ECサイトの構築とその運営・保守及びマーケティング支援などを一括で提供している。
eコマースは個人商店から大企業まで、非常に幅広い事業者が行っているため、そのサポートを行う業者も多数存在する。そのなかで、ソフトクリエイトホールディングス<3371>は顧客獲得にあたり以下の2つの条件を設定している。
1つ目は、その企業あるいは商品自体が、既にある程度のブランドとビジネス基盤を確立できていることだ。裏を返せば、eコマース専業の企業は顧客としないということだ。同社では過去の経験から、その企業や商品の現業とeコマースの融合で強みを発揮することが重要と考えている。
2つ目は年商規模が100百万円〜10,000百万円規模の企業もしくは商品を対象とすることだ。個人商店や起業直後のベンチャーなどは顧客としては想定していない。これは同社の強みを発揮してサービスを提供する場合、料金が相応に高額となるため、それをカバーできるだけの事業規模を有していることが必要なためだ。典型的な同社の契約の料金モデルは、ECサイトの初期構築が15百万円程度、その後の月々の保守メンテ費用が0.3百万円程度となっている。
同社の主戦場においては、競合他社も多い。システムインテグレータ<3826>、エスキュービズム、コマース21などが代表的な競合相手となっているようだ。この中で同社は累計で826社(2014年3月末時点)のECサイト支援実績を誇り、業界のトップシェア企業となっている。
(B)業績の推移
ECソリューション事業の収益は順調な拡大を続けている。売上高は、2010年3月期から2014年3月期の4決算期の間に年平均17.3%、経常利益は同13.6%の成長を達成した。収益の中心はECシステム売上高(ECサイト構築売上高と保守・メンテナンス・運用からのストック売上高の合計)であるが、最近の注目すべき動きとしてはWebプロモーション売上高の伸びが挙げられる。Webプロモーションとは、同社が「デジタルマーケティング事業」と呼んでいる比較的新しい事業で、いわゆるインターネット広告のビジネスだ。
2015年3月期の第2四半期(2014年4月-9月)は、新規受注件数が48本(前年同期比14.3%増)となったことでECサイト構築売上高が1,394百万円(同19.0%増)に、ストック売上高も896百万円(同5.2%増)と堅調な伸びを示した。Webプロモーション売上高は505百万円(同38.4%増)と急成長が続いており、累計顧客数が順調に拡大して2014年9月末には約70社にまで増加した。これらの結果、ECソリューション事業全体の外部売上高は2,794百万円(同17.0%増)となった。
ECソリューション事業の重要な指標(KPI)であるECサイト構築件数(累計)は2014年9月現在で800社を大きく超え、2015年3月末には900社を超える見込みだ。各年の推移を見ると2007年3月期をピークに、その後は年間60件台で推移していたが2013年3月期から増加スピードが増してきている。弊社ではこの背景にWebプロモーションとのシナジー効果があるとみている。
(C)Webプロモーション事業の概況
Webプロモーション事業はいわゆるインターネット広告事業であり、「デジタルマーケティング事業」と呼んでいる。これは同社の「ecbeing」の顧客を対象に、上乗せでネット広告サービスを提供するという事業モデルだ。同社がこの事業に参入した理由は、eコマース支援事業のトップシェア企業がインターネット広告に進出することで、それぞれの領域の専業他社に対し明確な差別化を図り、事業拡大のためのシナジー効果を獲得できると考えたためである。すなわち、ECサイト運営を通じて得られるデータと、インターネット広告からのデータを両方活用することで、より効果的な広告を打ち出したり、あるいは逆に広告効果の分析に基づいてECサイトを改変したりといったことが、同社が両方を手掛けることによって、より効率的かつスピーディにできることになる。同社の提供するECソリューションとWebプロモーションの融合サービスは、着実に顧客の支持を集め、急速に収益が拡大している分野だ。
Webプロモーションの本質は広告代理店であり、広告枠の仕入販売、運用型広告やアフィリエイト型広告など、インターネット広告代理店専業事業者と同じ内容となっている。Webプロモーション担当者のスキルはECソリューションと異なるため、本事業には専従者(2014年9月末現在50名程度)を配置する必要がある。ただ、今後は仕事量に合わせてこの体制を漸増させていく計画だ。また、広告代理店であるため、この事業のマージンはネット広告代理店専業並みに収まる。弊社ではECソリューションの粗利益率を30%程度と推測しているが、通常ネット広告代理店の粗利益率は15%〜20%程度にとどまるようだ。弊社では、Webプロモーション事業の利益率は低いものの、同社にとってはECソリューション事業とのシナジー効果が新規契約獲得や既存顧客の囲い込みといった形で具現化してくることで、その存在意義は十分に正当化することができると考えている。
同社のようにeコマース支援ビジネスとインターネット広告代理店ビジネスを併営している企業は現時点ではほとんどいない。Eストアー<4304>やシステムインテグレータ<3826>はeコマース支援ビジネスを専業とする企業であり、セプテーニ・ホールディングス<4293>やオプト<2389>はインターネット広告代理店専業だ。Eストアーはマーケティング支援の事業強化を打ち出してソフトクリエイトグループと同じ方向を目指していると考えられるが、規模感やマーケティング支援の手法(広告代理店としての手法)などで、まだ競合という関係にないと弊社では判断している。そうしたなかで、同社と顧客層も含めてかなり重なるのがトランスコスモス<9715>であると考えられる。トランスコスモスはネット広告代理店というよりはコールセンター側からeコマース利用者にアクションを行うアウトバウンドコールなどによる販促支援が主業務ではあるが、顧客から見れば似たような効果が期待できるという意味で、同社にとって最も近い競合企業と言えよう。
(D)ECソリューション事業におけるソフトクリエイトグループの強み
ECソリューションで業界のトップシェア企業となっている同社であるが、その強みをまとめると以下のようになろう。
○徹底したカスタマイズ対応で顧客ニーズに対応
同社はECソリューションの本質的価値を千差万別な顧客の要求に最大限応えることにあると考え、基本ソフトをカスタマイズして顧客ニーズに対応している。これはコストアップ要因となるが、同社はそれを料金に反映させている。そうした料金体系を受け入れることができるという意味で、対象顧客を事業規模が100百万円から10,000百万円模の企業に設定している。
○オムニチャネル対応力
同社はかつて、PCの店舗販売とインターネット販売の両方を手掛けていた。その時の経験と、さらに過去800社を超える累計実績を活かして、PC・スマートフォンなど数多くの方法でeコマースの利用を可能にする「オムニチャネル」という潮流に対しても高レベルのECソリューションの提供が可能となっている。
○マーケティング支援能力
WebプロモーションとECソリューションの融合のことだ。事業の性格は異なるが、目指すところは共通している2つの要素を、同一の企業が担当するメリットは顧客の側からも大きいと言える。Webプロモーション事業の存在がECソリューションの契約獲得につながるケースも出始めており、いわゆるシナジー効果の加速が今後とも期待される。
○コスト競争力
同社は外部のデータセンターを活用したデータセンター利用サービスも提供している。また、このデータセンター利用に当たっては、セキュリティ維持に関してラック<3857>と包括契約を締結している。このように、外部のサービスを有効利用することで、高いセキュリティと低コストでeコマースが利用可能な環境を提供している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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