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鴻池運輸 Research Memo(4):ワンストップ提供する複合ソリューションと全国規模の定温輸送

注目トピックス 日本株

■会社概要

(3)特色、強み

○ワンストップで複合ソリューションを提供できる

鴻池運輸<9025>の物流サービスの特色は、「生産工程」に関連した物流サービスが多い点である。製品や原材料を単に輸送するのではなく、「製造・生産」に関連しながら物流サービスを提供している点が、同業他社と比較した場合の特徴であり、「製造・生産」に関連した各種のサポート業務を請負って顧客の製造工場や構内などにおいて複合的に提供できる点が同社の最大の強みだろう。顧客側から見ても、様々な業務をアウトソーシングする場合、それぞれ別々の企業に委託するよりもワンストップで提供してくれる企業に委託するほうが効率的なはずだ。

また、近年では同社の空港業務に見られるように、サービスの請負も増えている点も注目したい。

○顧客との長期的な信頼に基づいたパートナーシップ関係

既述のとおり、主要顧客である新日鐵住金やサントリーグループとは既に50年以上の取引が続いている。このように長いパートナーシップが続いたのは、同社が提供するサービスに顧客が充分に満足してきた結果であり、顧客から厚く信頼されている証である。一方で顧客は、周辺業務を同社へアウトソーシングすることで、コアコンピタンス事業に集中できるのだ。

さらに長い取引を続けるなかで顧客から新たなサービスへのニーズが出され、これに同社が応えてきたことで同社の業務内容が現在の規模に膨らんだのも事実である。同社にとっては、顧客の要求に応えながら培った経験やノウハウが蓄積され、新たな顧客に対する展開が可能になっている。このような主要顧客との長い取引関係や厚い信頼関係は、一朝一夕で築けるものではなく、同社の大きな財産であり強みである。

○「安全」と「品質」へのこだわり

安全と品質はどの企業にとっても重要なテーマだが、特に同社は経営の最重要テーマの1つと位置付けて以下のような施策を実施している。

安全・品質の研修にグループ全従業員が参加しやすいように「安全品質研修センター」を開設し、事故災害事例からの学習、危険予知訓練、フォークリフトに関する座学や実技講習などの研修を各地で開催している。

また生産工程の請負業務において顧客からの信頼を得るために「鴻池テクノ研修センター」を設置・運営している。ここでは実技実習を基本として、各種資格取得に向けた実技指導や生産ラインの工程管理技術習得に向けた実践的な研修を行っている。さらに「鴻池技術研究所」においては、次世代のテクノロジーに対する調査研究を行うと同時に、新たな物流技術、ロボット関連技術、冷凍関連技術などについての研究開発、商品・サービス開発などを行っている。

このように同社では、目先の収益に直接関係ない「安全」や「品質」に関する調査、研究、開発などを積極的に行っているが、これが上記のような顧客との長い信頼関係につながっているとも言え、目に見えない同社の特色、強みであろう。

○変化に対応する企業体質

過去の長い歴史の中で同社は様々な分野に展開してきたが、それは社会環境や経済状況、顧客の業界環境、顧客の要望等が変わってきたことに対して同社が機敏かつ柔軟に対応した結果である。現在の同社の主力事業が、どのような背景で現在の姿になったかを要約すると下記のようになる。

このように経済環境や顧客企業の業界環境の変化に対して柔軟に対応できる、変化していける企業体質も同社の特色であり、強みの1つと言えるだろう。

○その他各分野での強み、特色

(a)定温関連分野では、全国の主要な消費地に近い14ヶ所に拠点(冷凍・冷蔵倉庫)を有しているが、これらの倉庫は単なる「保管型」ではなく、「流通型」の倉庫である。これによって、全国規模で冷凍・冷蔵食品を輸送する大手顧客の要望に応えることが可能であり、中小業者ではできないことである。

さらに自動化が可能な作業については、積極的に自動倉庫を導入しており、作業の効率を高めているだけでなく作業者にも優しい。この結果、不特定多数の顧客の荷物を預かり、さらにこれらの荷物を仕分け地別に効率的に配送することが可能となっており、この点も同社の定温関連分野の特色であり強みである。

(b)海外関連分野の特色は陸・海・空の国際複合一貫輸送サービスを提供できる点である。例えば、国内のバイヤーが様々な商品を海外から仕入れる場合、通常であれば生産工場が各地に点在しているため、国際物流は複数のルートをたどることになる。しかし同社グループを利用した場合には、各工場からの製品を海外の同社倉庫で集約し、そこで国内の各仕向け地別にコンテナ化してから海上輸送を行い、効率的に国内倉庫へ陸上輸送することができる。

また同社では、海上貨物・航空貨物の両方でフォワーディングに関わる通関や各種免税措置などに精通したスタッフを有しており、高品質かつスピーディな対応を行っている。

さらにこれらのサービスを一段と強化するために、同社では1984年のシンガポールを皮切りにアジア地域での拠点展開を積極的に行ってきた。特に近年では成長が見込まれるASEAN地域へ他社に先駆けて進出し、顧客企業の「チャイナ・プラスワン戦略」に対応したサービスを開発・提供しており、これも同社の特色、強みと言えるだろう。メキシコに中南米で初めての拠点を2014年4月に開設し、アメリカではシカゴに拠点開設を準備中である。今後、これらの拠点を足掛かりとした各地域での事業展開が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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