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サイバネット Research Memo(3):MCAE、ビッグデータ、可視化分野まで幅広いCAEソリューションを提供

注目トピックス 日本株
■事業内容

同社グループは、サイバネットシステム<4312>及び親会社の富士ソフトと、海外ソフトウェア開発子会社3社(米Sigmetrix、カナダMaplesoft、ベルギーNoesis)と海外販売子会社2社(中国・莎益博工程系統開発(上海)、台湾・思渤科技股フン有限公司)を含む連結子会社12社で構成される。

手掛ける事業は、CAEソフトウェアの開発・販売及び技術支援などのサービスを提供するCAEソリューションサービス事業と、セキュリティサービス、IT資産管理などのITソリューションサービスの提供を行うITソリューションサービス事業に分類される。2015年12月期におけるセグメント別売上高構成比はCAEソリューションサービス事業88.3%(全社費用配賦前セグメント利益構成比90.6%)、ITソリューションサービス事業11.7%(同9.4%)であった。なお、事業分野別の売上高構成比はCAE 62.2%、可視化3.5%、IT11.4%、開発子会社17.7%、販売子会社5.3%。

(1) CAEソリューションサービス事業

CAD※1システムと連動して解析・シミュレーションを行う構造解析、音響解析、樹脂流動解析、光学設計・解析・評価、公差解析マネジメントなどの様々な分野のCAEソリューションを始め、電子回路や基板の設計、モデルベース開発(MBD:Model Based Development)※2、最適設計支援などの幅広いソリューションのほか、導入支援、コンサルティング、受託開発などの技術サービスを提供する。加えて、ユーザー教育・支援(セミナー、ユーザーカンファレンス、事例発表会の開催等)なども行っている。

※1 CAD:Computer Aided Designの略で、コンピュータによる設計支援システム。CADシステムには、主に図面作成に利用される2次元CADシステムとコンピュータの仮想空間に3次元形状を作成しながら設計を進めていく3次元CADシステムがある。
※2モデルベース開発(MBD:Model Based Development)は、1D-CAE(対象とする製品やシステムなどの機能を数学モデル(数式)で表現し、評価解析する手法)などのシミュレーションモデルを用いた事前評価を取り入れた開発のことを指す。従来の仕様にとらわれない全体最適の観点での製品づくりや、開発後半での手戻りの抑制などの効果が見込める。

同社では、単独のCAEソリューション事業を応用分野別にMCAE(Mechanical CAE)分野、光学設計分野、EDA(Electronic Design Automation)分野、MBD(Model Based Development)分野、ビッグデータ分野、テスト・計測分野、可視化分野とその他の分野の8つに分類している。

・MCAE(Mechanical CAE)分野
構造、伝熱、電磁場、熱流体の解析である有限要素法※解析、プラスチック樹脂流動解析、音響解析及び構造物の振動と音場の連成解析などの幅広い解析業務をサポートするソフトウェア及びサービスを提供する。主力商品は、米ANSYS Inc.製品の「ANSYS」(マルチフィジックス解析ツール)。

※有限要素法:構造物の変形や応力を解析するために、対象面を小さな領域(要素)に分け、1つ1つの要素の変形等を解析し、それらの要素を全部組み合せることによって、構造物全体の変形等を解析する手法

・光学設計分野
光学解析、照明解析、及び有機ELや光学部材特性等の測定ツールやソリューション、サービスを提供する。主力商品は、米Synopsys社製品「CODE V」(光学設計評価プログラム)、「LightTools」(照明設計解析ソフトウェア)など。

・EDA(Electronic Design Automation)分野
電子機器や半導体の設計を自動化するツールを取り扱い、LSI設計/回路設計から基板設計・解析・製造/実装までの運用提案・設計解析サービスを提供する。主力商品は、米Mentor Graphics社製品の「Xpedition Enterprise」「HyperLynx」など。

同社は米Cadence Design Systems, Inc.(以下、Cadence)販売代理店として製品を取り扱ってきたが、2014年12月期に取扱商品をMentor Graphics Corporation(以下、Mentor)製品へ変更した。EDAにはIC(Integrated circuit:集積回路)設計やPCB (Printed circuit board:プリント回路版)設計機能が含まれるが、同社は元々PCBに強い。これに対し、CadenceはIC設計に強く、IC設計に関しては日本法人が直販し、PCB設計を同社が販売するという関係となっていた。一方、MentorはPCB設計に強く、また世界的なシェアは約5割となっているものの、日本では伸び悩んでいた背景があり、日本でPCB設計の経験、販売力を持つ同社と利害が一致した。

・MBD(Model Based Development)分野
製品開発において具体的な形や寸法を決める前に、機能で考え、事前評価し、最適な特性値を見出すことにより、早期に問題点をつぶし手戻りの少ない基本設計を行うことを主な目的とする。主力製品は、同社グループのMaplesoft製のSTEMコンピューティング・プラットフォーム「Maple」や、システムレベルモデリング・シミュレーションツール「MapleSim」など。

・ビッグデータ分野
情報検索によるイノベーション支援、ビッグデータのマップ化、特許情報調査を基にしたアイデア創出支援等のソリューションを提供する。イノベーション支援として「Goldfire」など米IHS Inc.社製品を扱う。このほかでは、ビッグデータ可視化エンジン(データを見える化(マップ化)するミドルウェア)の提供や、技術戦略立案支援サービス「R&D Navi」をクラウドで提供する。

・可視化分野
解析数値データ、医療データなどを分かりやすく「見える化」、その他AR※(拡張現実)/VR(Virtual Reality:仮想現実)等のソリューションを提供する。用途に応じて1)汎用可視化(実験データや測定データを取り込み、3次元可視化処理を行うソフトウェアの提供)、2)医用・医療(医用画像をソフトウェアのみで高画質・高速処理する基盤ソフトウェアを活用するパッケージソリューションを提供)、3)AR/VR、の3つに分類される。

※Augmented Reality:拡張現実。カメラなどを通して見る現実の背景に、画像認識技術や位置センサーなどの情報をもとにデジタル情報を重ねて表示し、現実世界とデジタル空間を結び付ける技術。

・テスト・計測分野、その他の分野
テスト・計測分野は同社が開発したFPD(Flat Panel Display)自動検査システムなどを提供する。一方、その他の分野では、同社グループ製品である3次元公差マネジメントツール(評価対象の組立部品寸法、部位バラツキ評価を基にしたコストと品質の最適化)、最適設計支援ツール(解析の自動化、ロバスト性・信頼性評価、品質工学適用等)に加えて、CAE技術教育サービスなどを提供している。

(2) ITソリューションサービス事業

サーバーやクライアントPC等のウイルス感染・情報流出等を防ぐエンドポイント・セキュリティ、IT資産管理ソリューション等を、オンプレミス型(自社運用型)、及びクラウド型サービスで提供する。また、データベース開発支援やアプリケーション性能管理など、企業のITインフラを支える様々なソリューションも提供している。さらに、CAEソリューションサービスと同様、ユーザーの環境に応じた運用コンサルティング、導入支援、ユーザー教育支援などを手掛けている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)



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