UMN Research Memo(3):次世代バイオ医薬品事業のビジネスモデルとグロ−バルエコシステムの構築
[16/08/29]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■会社概要
(5)ビジネスモデルと事業提携について
a)独自の製造コアプラットフォーム“BEVS”との出会い
2006年8月に、米国PSC(Protein Sciences Corporation)と出会った。PSCはタンパク質の独自製造技術BEVS(バキュロウイルスによるタンパク質発現システムを用いたバイオ医薬品大量製造技術)を有するベンチャー企業で、当時いわゆるH5N1強毒性新型インフルエンザワクチンの開発に取り組んでいた。UMNファーマ<4585>は革新的タンパク質製造技術BEVSの将来性を高く評価して、日本での次世代組換えインフルエンザワクチン独占開発製造販売契約のライセンス契約を締結した(後にアジア5ヶ国でのライセンス契約へ拡大)。
b)製造パートナーとワクチンの大規模製造バリューチェーンの確立
インフルエンザワクチンの事業化に際して、国内製薬メーカーとの提携推進には、インフルエンザワクチンの安定的大量供給体制の確立が必要条件であった。そこで、インフルエンザワクチンの原薬製造のパートナーとして、(株)IHI<7013>と共同研究を開始し、2010年には原薬製造に関して提携し、原薬製造子会社(株)UNIGENをJ/V(IHI50%、同社50%)で設立した。2013年5月には次世代インフルエンザワクチン1,300万〜2,000万接種回分を供給(21,000L培養層2基時、最大8基まで増設可能)できる最新鋭バイオ医薬品の岐阜工場を竣工した。
また、各種健康食品等のOEM製造受託で有名なアピ(株)(岐阜県、年商約300億円、医薬品・健康食品の製造受託)と2010年、新ワクチンの製剤委託の業務・資本提携を締結した。
これにより、新ワクチンの原薬〜製剤まで大規模な製造バリューチェーンが確立し、新ワクチンの安定的大量供給体制が整った。
c)ワクチンの大手医薬品メーカーとの開発・販売提携
同社はインフルエンザワクチン市場への後発参入者として、当初は新型インフルエンザワクチンに注力した研究開発を進めていたが、2010年9月に季節性インフルエンザワクチンの国内トップシェアのアステラス製薬(株)<4503>との開発販売提携を契機に、既存品分野である季節性インフルエンザワクチンへ研究開発をシフトしていった。また、2012年10月には韓国の日東製薬(株)と開発販売提携に基本合意し、韓国市場でのインフルエンザワクチンの販売の準備が整った。
d)ノロウイルス分野では第一三共(株)<4568>と共同研究推進中
インフルエンザワクチン以外の事業領域では、2014年2月より、ノロウイルスワクチンについて第一三共(株)と共同研究を推進しており、同社は組換え型ノロウイルスVLP抗原を提供し、第一三共(株)で開発可能性を検討し、最適な開発候補の選択に取り組んでいる。
e)米国向けインフルエンザワクチン原薬輸出ビジネスの展開
ワクチンライセンス契約先でもある米国PSCでは、2013年より販売している季節性組換えインフルエンザワクチン(Flublok® 同社が国内で開発中のUMN-0502と同一成分)の原薬生産能力が100万接種回分(米国市場の0.6%相当)しか持っておらず、米国市場でのインフルエンザワクチンの本格的事業拡大するためには、同社の低コストで大量かつ安定的に供給できるワクチン原薬製造委託が不可欠と判断し、2016年2月に米国向けFlublok®原薬供給に正式合意した。
f)その他のアライアンス活動
その他にも、タンペレ大学(フィンランド)からノロ・ロタウイルス混合ワクチンの全世界独占事業化権の取得、直近ではジカウイルス(熱帯感染症)ワクチン開発コンソーシアムへの参加などが挙げられる。
ベンチャー企業である同社が、壮大な「次世代組換え型ワクチンの開発と製造」のグローバル事業展開をするに当たっては、事業パートナーとの関係づくり、グローバルエコシステム(パートナー連携)の構築は不可欠であり、これまでの事業化準備段階では、開発・製造・販売面で有力な事業パートナーとの関係が築けていると言えるだろう。
また、資金調達や財務活動では、金融機関やファンドとの緻密な関係づくりは重要な経営活動であるが、同社のIR活動をみている限りでは、適時適切な情報公開や説明責任を果たしており、また事業パートナーとの緻密な協議を通して、事業戦略と実践活動が共有化されており、“信用創成”に向けての努力が見受けられ、投資家も含めたステークホルダーに安心感を与えていると言えるのではないか。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水 啓司)
<HN>
(5)ビジネスモデルと事業提携について
a)独自の製造コアプラットフォーム“BEVS”との出会い
2006年8月に、米国PSC(Protein Sciences Corporation)と出会った。PSCはタンパク質の独自製造技術BEVS(バキュロウイルスによるタンパク質発現システムを用いたバイオ医薬品大量製造技術)を有するベンチャー企業で、当時いわゆるH5N1強毒性新型インフルエンザワクチンの開発に取り組んでいた。UMNファーマ<4585>は革新的タンパク質製造技術BEVSの将来性を高く評価して、日本での次世代組換えインフルエンザワクチン独占開発製造販売契約のライセンス契約を締結した(後にアジア5ヶ国でのライセンス契約へ拡大)。
b)製造パートナーとワクチンの大規模製造バリューチェーンの確立
インフルエンザワクチンの事業化に際して、国内製薬メーカーとの提携推進には、インフルエンザワクチンの安定的大量供給体制の確立が必要条件であった。そこで、インフルエンザワクチンの原薬製造のパートナーとして、(株)IHI<7013>と共同研究を開始し、2010年には原薬製造に関して提携し、原薬製造子会社(株)UNIGENをJ/V(IHI50%、同社50%)で設立した。2013年5月には次世代インフルエンザワクチン1,300万〜2,000万接種回分を供給(21,000L培養層2基時、最大8基まで増設可能)できる最新鋭バイオ医薬品の岐阜工場を竣工した。
また、各種健康食品等のOEM製造受託で有名なアピ(株)(岐阜県、年商約300億円、医薬品・健康食品の製造受託)と2010年、新ワクチンの製剤委託の業務・資本提携を締結した。
これにより、新ワクチンの原薬〜製剤まで大規模な製造バリューチェーンが確立し、新ワクチンの安定的大量供給体制が整った。
c)ワクチンの大手医薬品メーカーとの開発・販売提携
同社はインフルエンザワクチン市場への後発参入者として、当初は新型インフルエンザワクチンに注力した研究開発を進めていたが、2010年9月に季節性インフルエンザワクチンの国内トップシェアのアステラス製薬(株)<4503>との開発販売提携を契機に、既存品分野である季節性インフルエンザワクチンへ研究開発をシフトしていった。また、2012年10月には韓国の日東製薬(株)と開発販売提携に基本合意し、韓国市場でのインフルエンザワクチンの販売の準備が整った。
d)ノロウイルス分野では第一三共(株)<4568>と共同研究推進中
インフルエンザワクチン以外の事業領域では、2014年2月より、ノロウイルスワクチンについて第一三共(株)と共同研究を推進しており、同社は組換え型ノロウイルスVLP抗原を提供し、第一三共(株)で開発可能性を検討し、最適な開発候補の選択に取り組んでいる。
e)米国向けインフルエンザワクチン原薬輸出ビジネスの展開
ワクチンライセンス契約先でもある米国PSCでは、2013年より販売している季節性組換えインフルエンザワクチン(Flublok® 同社が国内で開発中のUMN-0502と同一成分)の原薬生産能力が100万接種回分(米国市場の0.6%相当)しか持っておらず、米国市場でのインフルエンザワクチンの本格的事業拡大するためには、同社の低コストで大量かつ安定的に供給できるワクチン原薬製造委託が不可欠と判断し、2016年2月に米国向けFlublok®原薬供給に正式合意した。
f)その他のアライアンス活動
その他にも、タンペレ大学(フィンランド)からノロ・ロタウイルス混合ワクチンの全世界独占事業化権の取得、直近ではジカウイルス(熱帯感染症)ワクチン開発コンソーシアムへの参加などが挙げられる。
ベンチャー企業である同社が、壮大な「次世代組換え型ワクチンの開発と製造」のグローバル事業展開をするに当たっては、事業パートナーとの関係づくり、グローバルエコシステム(パートナー連携)の構築は不可欠であり、これまでの事業化準備段階では、開発・製造・販売面で有力な事業パートナーとの関係が築けていると言えるだろう。
また、資金調達や財務活動では、金融機関やファンドとの緻密な関係づくりは重要な経営活動であるが、同社のIR活動をみている限りでは、適時適切な情報公開や説明責任を果たしており、また事業パートナーとの緻密な協議を通して、事業戦略と実践活動が共有化されており、“信用創成”に向けての努力が見受けられ、投資家も含めたステークホルダーに安心感を与えていると言えるのではないか。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水 啓司)
<HN>