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トラストテック Research Memo(7):16/6期は大幅増収増益、業績予想値を上回っての着地

注目トピックス 日本株
■業績動向

(1) 2016年6月期決算

トラスト・テック<2154>の2016年6月期決算は、売上高30,143百万円(前期比44.8%増)、営業利益2,549百万円(同59.6%増)、経常利益2,528百万円(同55.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,523百万円(同48.7%増)と大幅増収増益となった。同社は2016年2月に業績予想の上方修正を発表したが、実績はそこで示された業績予想値を売上高、利益ともに上回っての着地となった。

事業セグメント別に見ると、技術系領域セグメントは売上高21,903百万円(前期比72.3%増)、セグメント経常利益2,282百万円(同58.2%増)と大幅増収増益となった。自動車業界や半導体メーカー等からの人材ニーズが引き続き堅調に推移したことと、期中に子会社化したトラィアル、フリーダム両社及びテクノパワーから事業譲受したIT領域事業部門がいずれも好調な業績であったことの2つの要因から、業績を大きく伸ばした。セグメント経常利益率は、前期の11.3%から2016年6月期は10.4%に低下したが、この理由はM&Aにかかる一時費用によるものだ。実体的な収益性を示す派遣単価はタイトな労働需給環境を反映して、上昇基調が続いている。

製造系領域セグメントは売上高8,220百万円(前期比2.2%増)、セグメント経常利益284百万円(同58.1%増)となった。自動車部品メーカーなど輸送機器業界や電気機器メーカーからの受注が強含みで推移するなか、採用マッチングの効率化や案件ごとの利益確保、固定費削減に努め、利益体質の強化を図った。その結果、セグメント経常利益率は、前期の2.2%から2016年6月期は3.5%に改善した。これはリーマンショック以降の8年間(2009年6月期から2016年6月期)の中で最も高い値となった。

その他の収益は障がい者雇用の共生産業と不動産賃貸事業の収益からなっている。2016年6月期において収益が大きく悪化したのは、2015年9月末をもって賃貸用不動産を売却し、不動産賃貸事業を終了させた影響が大きい。

全体としては、好調な雇用環境が続いて人手不足感が強まるなか、積極的に新卒採用及びキャリア採用(中途採用)を進めて人材確保に努めたことと、事業承継やシナジー追求を求めて市場に出てくるM&A案件をうまく取り込んだことが大幅増収増益につながったと言える。また、同社にとって課題の1つであった製造系領域の利益率改善について、2016年6月期はリーマンショック後の最高値を更新した点は、経営努力の成果として大いに評価できるポイントだと弊社では考えている。

(2) 2017年6月期見通し

2017年6月期について同社は、売上高42,000百万円(前期比39.3%増)、営業利益3,120百万円(同22.4%増)、経常利益3,100百万円(同22.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,870百万円(同22.7%増)を予想している。

2017年6月期の業績予想では、通期の営業利益予想に対する第2四半期累計の営業利益以下の各利益項目の進捗率が低くなっている。これはMTrecの買収関連費用と前年同期に比較して営業日数が減少していることが主たる原因だ。のれんについては年間約1.4億円の償却費が10年間にわたり続くが、初年度の2017年6月期は1億円程度の見込みだ。また一時費用は約2億円と見込まれている。これらの費用は第2四半期累計期間に計上されるため、第2四半期累計の営業利益が圧縮されて、低い進捗率見通しとなっている。また営業日数の減少は同社の収入(売上高)減少に直接結び付く。一方で、同社から社員に対する支払い(費用)は月給制であるため、営業日数に関係なく一定額が支払われることになる。この差が営業利益圧縮要因となる。

こうした一時的要因をこなした上でなお、2017年6月期の通期営業利益は前期比22.4%増と高い伸びが予想されている点こそが注目・評価されるべきであると弊社では考えている。

セグメント別内訳に関して同社は、2016年8月にMTrecを子会社化したことに伴い、報告セグメントの変更を予定している。その詳細は固まっていないが、同社は2017年6月期の業績予想に関し、2016年6月期までの報告セグメント(技術系領域と製造系領域の2セグメント)から香港事業を取り出し、MTrecと合わせて“海外事業”として加えたうえで、技術系領域、製造系領域、及び海外事業の3セグメント体制で収益予想の内訳を示している。

技術系領域について同社は、売上高257.7億円(前期比39.7億円増)、営業利益29.1億円(同2.6億円増)と予想している※。これらに基づく営業利益率は11.3%となる。弊社ではこの業績見通しは十分実現性が高いと考えている。2016年6月期に引き続き、輸送用機器業界や半導体・半導体製造装置業界からの人材ニーズはタイトな状況が続くと予想される。そうした状況のなか、同社は積極的な採用を進めて需要に応じた配属を推進する方針だ。派遣・請負単価は引き続き上昇トレンドが続くと見込まれるため、営業利益率も拡大基調が続くと期待している

※同社からの公表値は億円単位のため当レポートもそれに倣った

製造系領域について同社は、売上高88.0億円(前期比5.4億円増)、営業利益3.8億円(同1.1億円増)と予想している。これらに基づく営業利益率は4.3%となる。製造系領域の事業である製造スタッフの派遣や製造請負は、技術系領域に比較して派遣・請負単価が低いため、本質的に利益率が低いという性質を有している。これに対して同社は地域密着営業を強化することで、製造スタッフのロジスティクス面での費用を削減し、利益率の拡大を目指す戦略だ。弊社では、4.3%という営業利益率の実現は決して簡単な目標ではないと考えているが、労働需給がタイトな現況において、需要地での採用が順調に進めば達成は十分可能であり、期待を持って見守りたいと考えている。

海外事業は英MTrecとアジアの子会社数社の業績から構成される。MTrecの業績は、2017年3月期分がフルに連結されることになる。海外事業について同社は、売上高75.2億円(前期比74.1億円増)、営業利益4.2億円(同4.2億円増)と予想している。香港等のアジアでは収益規模は売上高100百万円前後、営業利益は10百万円前後の営業損失とみられ、前期比増減相当額がMTrecの収益貢献と考えられる。前述のように、MTrecはイングランド北東部に集積する自動車関連メーカーや家電メーカーなどを顧客に抱え、高成長が続いている。英国のEU離脱問題は潜在的リスク要因と考えるべきであるが、2017年6月期においてはそのリスクが一気に顕在化する可能性は低いと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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