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MDV Research Memo(5):電子カルテ情報を取り込み、唯一無二の存在に

注目トピックス 日本株
■事業概要

(4)新たな診療データベースの構築

医薬品会社が入手していたデータは、メーカー及び卸売会社の出荷データであり、営業上の利用であった。一方、メディカル・データ・ビジョン<3902>が提供するデータは、収集が難しく、把握が困難とされていた病院における薬剤処方や疾患規模の実態などを明らかにするものであり質的な違いがある。ただし、DPCデータの弱点は、急性期入院医療に限定され、データ収集も診療してから約3ヶ月後になる。一方、電子カルテ情報は、検査値を含めすべての診療情報が網羅されるうえ、リアルタイムの入手が可能になる。投薬前後の検査値を比較することで、投薬効果などが確認できる。従来のDPCデータにカルテ情報が加わることで、唯一無二のデータベースを構築することになろう。

a)電子カルテシステムのアドオンソフト「CADA-BOX(仮称)」
「CADA-BOX」とは、患者自身が診療情報の一部を管理・閲覧できるWebサービス「カルテコ」と、「CADA決済」等を融合した、既存の電子カルテシステムと連結させる病院向けの仕組みである。同社が開発したこのアドオンソフトは、既存の電子カルテシステムと連携して、電子カルテに記載されている診療録を同社データベースに蓄積するもので、同社は、この仕組みを病院に導入することでより多様性のある診療データの収集を図る。関連者である患者、医療機関、電子カルテベンダー、同社の間にWin-Winの関係を築く。

「カルテコ」とは、患者が自身の診療情報の一部を保管・閲覧できるようになるWebサービス。「カルテコ」では、受診した医療機関情報、傷病名、検査結果、処方薬、処置・手術などを保管・閲覧できる。ただし、医師が諸事情を鑑み共有しないと判断した情報については、患者は閲覧できない。「CADA決済」とは、診療が終わった後に患者が会計を待たずに帰宅できるうえ、自身の経済状況に合わせて支払条件を自由に設定できる医療費後払いサービス。例えば、急な入院で高額な医療費を支払わなければならない時、高齢者でも定期収入の無い患者でも、自身の状況に合わせて、支払日や支払回数などを患者が自由に決められる。病院にとっては、より患者視点に立ったサービス提供ができるほか、医療費の未回収金の解消が実現できる。連携する電子カルテベンダーにとっては、他社との差別化が期待できる。

具体的な運用は以下の通りだ。患者は、受診の際に病院から共通診察券機能付きIDカード「CADA」を受け取る。「CADA」は、CADA対応の医療機関で使用できる共通診療券であるため、複数の医療機関で生じる同一患者の診療情報を統合する機能を有する。患者は、Webサービスの「カルテコ」のマイページ上で自身の診療情報を閲覧することができる。「カルテコ」を利用できるのは、診療情報の二次利用(個人情報は除く)に同意した患者であり、これら患者のデータが同社に集積される仕組みとなっている。

2016年8月に、電子カルテシステムのトップクラスの企業であるCSIと業務提携した。CSIの電子カルテシステム「MI・RA・Isシリーズ」は、2016年6月末現在733病院に導入されている。同社は、CADA-BOXの導入数の目標を一般の入院に関わる医療を提供する二次医療圏の344としている。特定地域に偏らない、全国規模のデータ収集を目標とする。

b) IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業「七福神」に参画
経済産業省が進める「平成27年度補正予算IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業」(企業保険者等が有する個人の健康・医療情報を活用した行動変容促進事業)にて、「毎日の糖尿病管理を七福神が伴走!未受診・脱落・コントロール不良をなくせ!!」をスローガンとするプロジェクトに参加している。チームの代表は愛知県健康づくり振興事業団で、メンバーは聖隷福祉事業団、名古屋大学、日本オラクル<4716>、アビームコンサルティング(株)、オムロン ヘルスケア(株)と同社になる。

同プロジェクトでは、治療中の糖尿病患者並びに健診で発見されたHbA1c高値者に対し、活動量等のIoT情報を活用して新規開発した「七福神アプリ」にて生活習慣改善支援を実施、患者の行動変容を促し検査値を改善しうるか、本仕組みが臨床に役立つかを検証する。実証は24医療機関、2健診・保健指導機関にて実施する。対象者は200名となる。同社の役割は、参加する医療・健診保険指導機関で発生した対象者の診療・健診データとなる属性・体重・血圧・血糖・HbA1c・服薬情報・合併症などをデータベースへ格納するシステムの構築・データ管理・分析になる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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