BS11 Research Memo(3):良質の番組をいかに提供していくかが同社の成長戦略
[16/10/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期経営計画の概要と進捗状況
(1)成長戦略と中期経営計画の概要
a)成長戦略:“良質の番組提供による売上拡大の追求”
日本BS放送<9414>は黎明期から拡大・成長期へとステージが移行したとの認識のもと、「売上高の拡大」を経営の最重要課題として明確に位置付けた。その上で同社は、「良質の番組作りをすることが認知度の向上へとつながり、結果として売上高も必ず付いてくる」という信念を持って経営に当たることを決定した。すなわち、同社において成長戦略とは「良質の番組を如何にして継続的に供給していくか」ということであると言える。同社が現在取り組む中期経営計画は、この成長戦略をベースとしている。
ところで、番組作りにおいては制作費の発生が先行する。その費用を回収できる可能性は100%ではないため、同社の成長戦略の本質は、一定のリスクを取ることを決断したことということができる。しかしそれは決して無謀な賭けなのではなく、成功体験の積み上げとリスク許容度の拡大という裏付けと自信があってのことであるというのが弊社の見方だ。成功体験の積み上げの具体例として、『尾上松也の古地図で謎解き!にっぽん探究』や『あのスターにもう一度逢いたい』などのヒット作の輩出の積み重ねがある。また、リスク許容度の拡大とは、売上高の規模が10,000百万円の大台に乗ったことで予算規模が拡大し、番組関連費の拡大と安定利益の確保の両立について確信度が高まったことを意味している。
b)中計経営計画の概要
同社は2016年8月期から2018年8月期までの3ヶ年中期経営計画『Forward 18 by Team BS11』を策定し、現在取り組んでいる。今中期経営計画の基本戦略は、「3つの“力”」と「5本の矢」の2つから成り立っている。「3つの“力”」とは企画力、キャスティング力、マーケティング力の3要素を表している。「5本の矢」とは、自社制作番組の選択と集中など、番組作りと番組編成に関する5項目である。今中期経営計画は、前述の成長戦略の考え方に立脚したものであり、その根本的な理念と目標は「良質の番組をどのように制作・編成し、どのように収益に結びつけていくか」ということである。「3つの“力”」と「5本の矢」はそのための基本戦略を表している。
同社は上述の基本戦略を徹底し、今中期経営計画の最終年度である2018年8月期において「売上高150億円」の達成を業績目標として掲げている。前述のように、売上高の「150億円」という規模は、キー局系列BS先行5社の売上高の水準を意味している。同社は、ヒット番組を積み上げているほか、スポンサーと視聴者の双方で固定ファンを増大させており、成長・拡大期に入ったと認識している。同社としては、この勢いを加速させて売上高を拡大し、BS放送業界でトップ6社の一角を占める存在になるという強い意志を、「売上高150億円」という業績目標に込めたものと弊社では考えている。
一方、利益面に関しては目標数値が掲げられていない。この点については、「良質の番組作りによる売上高の拡大」という同社の事業戦略に関連しているとみられる。同社はこれまで、売上原価(及びその中の細分化された各費目)や販管費について対売上高比率の目標水準を設定し、厳格な経営管理を行ってきた。しかし今中期経営計画期間においてはそうした制約を一旦取り払って経営の自由度を増し、良質の番組作りを最優先させる姿勢を明らかにしている。「良質の番組作り」は自社制作番組のことであるが、それは番組制作費を同社がまず負担することを意味し、利益の圧迫へとつながる可能性がある。同社は、今中期経営計画の3ヶ年の間は売上高目標の達成を優先し、利益については優先順位を下げる経営判断を下し、それが利益目標をあえて外したことへとつながっている。
こうした方針について、弊社ではまったく懸念はしていない。まず第1に同社は“前期比増益の確保”は依然として目標として保持していることがある。これは中期経営計画の業績目標のイメージ図にも明確に描かれている。先行費用の投資によって利益の伸び率が鈍化することが想定されているに過ぎない。
次に、売上高150億円の達成の意味合いはその後の同社の発展・成長にとっては非常に大きく、一時的な利益成長の鈍化を甘受するだけの価値があると考えられることがある。売上高が150億円の水準に達したということは同社の認知度もそれに見合うレベルに達したということができる。一旦向上した認知度は簡単には低下しないと考えられる。また、売上高が150億円の規模に達すると100億円の時に比べて費用投資の余裕度が一段と増し、売上高比率で従来ペースに戻したとしても、費用の絶対額は大きく増加することになる。BS放送局の同社は、地上波放送局に比べてローコストオペレーションのコスト構造となっているため、一時的な費用増加を元に戻すことは比較的容易であり、今中期経営計画期間で売上高目標を実現した後は、再び従来の営業利益率の水準を取り戻すことができると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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(1)成長戦略と中期経営計画の概要
a)成長戦略:“良質の番組提供による売上拡大の追求”
日本BS放送<9414>は黎明期から拡大・成長期へとステージが移行したとの認識のもと、「売上高の拡大」を経営の最重要課題として明確に位置付けた。その上で同社は、「良質の番組作りをすることが認知度の向上へとつながり、結果として売上高も必ず付いてくる」という信念を持って経営に当たることを決定した。すなわち、同社において成長戦略とは「良質の番組を如何にして継続的に供給していくか」ということであると言える。同社が現在取り組む中期経営計画は、この成長戦略をベースとしている。
ところで、番組作りにおいては制作費の発生が先行する。その費用を回収できる可能性は100%ではないため、同社の成長戦略の本質は、一定のリスクを取ることを決断したことということができる。しかしそれは決して無謀な賭けなのではなく、成功体験の積み上げとリスク許容度の拡大という裏付けと自信があってのことであるというのが弊社の見方だ。成功体験の積み上げの具体例として、『尾上松也の古地図で謎解き!にっぽん探究』や『あのスターにもう一度逢いたい』などのヒット作の輩出の積み重ねがある。また、リスク許容度の拡大とは、売上高の規模が10,000百万円の大台に乗ったことで予算規模が拡大し、番組関連費の拡大と安定利益の確保の両立について確信度が高まったことを意味している。
b)中計経営計画の概要
同社は2016年8月期から2018年8月期までの3ヶ年中期経営計画『Forward 18 by Team BS11』を策定し、現在取り組んでいる。今中期経営計画の基本戦略は、「3つの“力”」と「5本の矢」の2つから成り立っている。「3つの“力”」とは企画力、キャスティング力、マーケティング力の3要素を表している。「5本の矢」とは、自社制作番組の選択と集中など、番組作りと番組編成に関する5項目である。今中期経営計画は、前述の成長戦略の考え方に立脚したものであり、その根本的な理念と目標は「良質の番組をどのように制作・編成し、どのように収益に結びつけていくか」ということである。「3つの“力”」と「5本の矢」はそのための基本戦略を表している。
同社は上述の基本戦略を徹底し、今中期経営計画の最終年度である2018年8月期において「売上高150億円」の達成を業績目標として掲げている。前述のように、売上高の「150億円」という規模は、キー局系列BS先行5社の売上高の水準を意味している。同社は、ヒット番組を積み上げているほか、スポンサーと視聴者の双方で固定ファンを増大させており、成長・拡大期に入ったと認識している。同社としては、この勢いを加速させて売上高を拡大し、BS放送業界でトップ6社の一角を占める存在になるという強い意志を、「売上高150億円」という業績目標に込めたものと弊社では考えている。
一方、利益面に関しては目標数値が掲げられていない。この点については、「良質の番組作りによる売上高の拡大」という同社の事業戦略に関連しているとみられる。同社はこれまで、売上原価(及びその中の細分化された各費目)や販管費について対売上高比率の目標水準を設定し、厳格な経営管理を行ってきた。しかし今中期経営計画期間においてはそうした制約を一旦取り払って経営の自由度を増し、良質の番組作りを最優先させる姿勢を明らかにしている。「良質の番組作り」は自社制作番組のことであるが、それは番組制作費を同社がまず負担することを意味し、利益の圧迫へとつながる可能性がある。同社は、今中期経営計画の3ヶ年の間は売上高目標の達成を優先し、利益については優先順位を下げる経営判断を下し、それが利益目標をあえて外したことへとつながっている。
こうした方針について、弊社ではまったく懸念はしていない。まず第1に同社は“前期比増益の確保”は依然として目標として保持していることがある。これは中期経営計画の業績目標のイメージ図にも明確に描かれている。先行費用の投資によって利益の伸び率が鈍化することが想定されているに過ぎない。
次に、売上高150億円の達成の意味合いはその後の同社の発展・成長にとっては非常に大きく、一時的な利益成長の鈍化を甘受するだけの価値があると考えられることがある。売上高が150億円の水準に達したということは同社の認知度もそれに見合うレベルに達したということができる。一旦向上した認知度は簡単には低下しないと考えられる。また、売上高が150億円の規模に達すると100億円の時に比べて費用投資の余裕度が一段と増し、売上高比率で従来ペースに戻したとしても、費用の絶対額は大きく増加することになる。BS放送局の同社は、地上波放送局に比べてローコストオペレーションのコスト構造となっているため、一時的な費用増加を元に戻すことは比較的容易であり、今中期経営計画期間で売上高目標を実現した後は、再び従来の営業利益率の水準を取り戻すことができると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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