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BS11 Research Memo(5):独立系の強みを生かして更なる成長曲線を描く

注目トピックス 日本株
■中期経営計画の概要と進捗状況

(3)今後の計画と具体的施策

a)市場環境の現状認識
「売上高150億円」という中期経営計画の業績目標達成に向けて、日本BS放送<9414>自身は迷うことなく、「売上高の拡大⇒番組制作・編成予算の拡大による良質番組提供⇒売上高の拡大」というポジティブ・スパイラルを加速させていくことに集中している。しかしながら、同社が掲げる目標は達成が容易なものでは決してないことには留意すべきだ。

日本のBS放送の広告市場規模は、2000年代前半から右肩上がりで成長が続いている。電通「日本の広告費」によれば、2015年のBS放送を含む衛星メディア関連の広告市場は1,235億円に達した。直近10年間の年平均成長率は9.8%となっている。しかしながら2015年の前期比伸び率は1.5%と、過去10年の年平均成長率に比較して大きく鈍化している。BS放送はこの中で864.4億円を占め、前年比伸び率は4.0%であった。こうした成長鈍化の動きがこのままマイナス成長へとつながるとは弊社では考えていないが、市場全体が前年比2ケタ成長をするステージは終わったと考える必要があるとは言えるだろう。

b) BS11の強み
市場全体の伸びが1ケタ台に低下するなかで、同社の売上高の成長率は2ケタを維持しており、2016年8月期は15.2%へと加速した。言わば同社は独り勝ちを収めたわけだが、市場の急拡大がないとするならば、同社が中期経営計画で掲げる業績目標を達成するためには、独り勝ち状態を今後も続けなければならないということだ。

この命題に対して弊社では、同社が今後も独り勝ち状態を続けて中期経営計画の売上高目標を達成できる可能性は十分にあると考えている。そのように考える理由は、同社が独立系のBS放送局であり、独立系としての強みを発揮できれば市場全体の動きとは異なる成長曲線を描くことができると考えているためだ。

独立系としての強みは、番組作りや編成において高い自由度を有する点にある。番組作りでは最適・最良の番組会社を選定し、自由な発想で企画力を活かすことが可能だ。編成においても広告の時間枠を30秒単位から60分単位まで柔軟に設定して広告主の要望に応えることが可能だ。また他社からの番組の購入や他局との連携など、独立系であることを活かした収益力強化の余地は大いにあると期待される。

同社のような独立系のBS放送局が収益拡大に有利なポジションにあることを示すデータもある。電通の「日本の広告費」によると、BS放送の広告市場では、これまでは1社提供番組や特定スポンサーによるスポット大量出向が成長をけん引してきたが、2015年は編成の多様化によってスポーツ、音楽、映画などが増加したため、様々な企業による出稿が増加した。ここから弊社が期待することは、BS放送は地上波に比べてまだまだ改良の余地が大きく、その中で独立系の同社は、一段と自由な編成が可能であり、それを収益へとつなげていく高いポテンシャルを有しているということだ。

独立系であることは、キー局系BS放送局と比較すると資金力やコンテンツの供給、知名度などの点でハンディキャップとなり、それがBS放送草創期の成長スピードの差となって表れた。しかし同社は、その差を「時間」で埋め合わせて追いつきつつあり、ここからの数年間は先行したキー局系BS放送局に追いつく最後の段階だというのが弊社の理解だ。その意味でも、同社の売上高が100億円の大台を超えてきたことの意義は大きい。資金的余裕度がそれだけ拡大したと言えるからだ。独立系という強みと、それを生かすだけの資金力が合わさって、同社の売上高(=業容)拡大が加速することが期待される。

c)成長戦略実現への具体的施策と進捗状況
1)番組作り
同社は2016年8月期の期初から放送番組の充実に取り組み、2015年10月改編において『尾上松也の古地図で謎解き!にっぽん探究』などの期待作を投入したのち、2016年4月の大型改編において、報道、スポーツ、娯楽、教養の幅広い分野に注目新番組を投入した。

2016年10月までの経過を振り返ると、『あのスターにもう一度逢いたい』が大きなヒット番組となったほか、『報道ライブINsideOUT』や『中畑清 熱血!スポーツ応援団』などの番組も、固定ファンをつかむなど、一定の成果を収めることができている。また、前述の『尾上松也の古地図で謎解き!にっぽん探究』は開始から満1年を迎えて、安定した人気番組に成長してきた。

こうした状況を受けて2016年10月の番組改編では、4月に投入した番組について、コンセプトや番組構成等について補強を行って、さらに人気度、知名度の向上を図るほか、いくつかの新番組を投入した。特に期待されるのは篠原ともえを起用した『楽しさいっぱい写真旅』で、これには既に大手企業が1社提供という形でスポンサーとなっている。

2017年8月期でタイム収入の増加に大きな貢献が期待できる特番は『高橋英樹のクイズ!なるほど歴史館』と『夢を乗せて熱気球大空へIV(2016佐賀熱気球世界選手権)』が予定されている。このほかにも随時、特番をリリースしてくるとみられる。特番については、レギュラー番組化の前のテスト放送というケースも多用されている。リスクを抑えながらヒット番組の可能性を探る、同社の得意手法の1つだ。タイム収入の獲得と新規番組作りの2つの点で、今期も特番の動向には注目したいと考えている。

2)番組編成
番組編成に当たっては自社制作番組だけでなく、購入番組の活用も不可欠だ。同社の番組編成を制作者・ソース別に分類すると、約50%が自社制作、約40%が購入番組、約10%が持込番組という構成だ。持込番組は放送枠の販売によるタイム収入へと直接つながるので問題はない。自社制作番組は前述のように良質の番組作りで視聴者を増やし、広告スポンサーの獲得につなげるべく強化している最中だ。購入番組はドラマが中心となるが、購入番組についても広告スポンサーを獲得して着実に資金を回収する必要がある。

2016年4月の改編では、独立系の強みを活かして日本テレビ系で放送された『大都会』シリーズやフジテレビ系で放送された『ショムニ』等を導入した。2016年10月の改編では『大都会PART II』に加えて夏樹静子原作作品の中から名作をラインアップして『夏樹静子 追悼サスペンス』を新番組として開始した。

また同社は、韓国ドラマに強みを持ち、視聴者とスポンサーの獲得に成功している。2016年10月の改編ではBS放送で本邦初となる作品を9作品導入した。2016年8月期において韓国ドラマの通販スポット販売が堅調に推移して増収に貢献したこともあり、韓国ドラマの強化で、引き続きスポット収入の増大が期待される。

3)新たなチャレンジ
同社が中期経営計画において「5つの矢」として番組作りや番組編成の基本戦略を掲げているのは前述のとおりだ。この中で弊社が注目しているのは、“自社制作番組の選択と集中”と“地方局とのコラボレーション”だ。前者ではとりわけ、“番組を「作品」から「商品」に昇華”という点に同社の姿勢が象徴されていると考えている。前述のように、これまでリリースした新番組の中では一定の成功を収めているものも多い。これらについて同社は現状で満足するのではなく、一段の“商品力強化”を目指して積極的にコンセプトや企画の見直しを進める方針を示している。

地方局とのコラボでは、2016年8月期において独立系の地方放送局との間で、春の桜の開花情報のコーナーを設けるなどの協業事業を行った。こうした施策は視聴者からの評価も高く、固定ファンを掴むポテンシャルがあるという手応えを得ることができた。地方局の側にも新たな施策に取り組みたいという思いは強く、両者の思惑が合致する形で協業話が大きく進展する可能性があると弊社では期待している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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