テックファーム Research Memo(7):自動車アフターマーケット事業は下期以降、成長トレンドに転換へ
[17/03/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■テックファームホールディングス<3625>の今後の見通し
2. 事業セグメント別の見通し
(1) ソフトウエア受託開発事業
ソフトウエア受託開発事業の売上高は前期比横ばいの3,380百万円、セグメント利益は同43.0%増の535百万円を見込んでいる。モバイル系のシステム開発における競争激化が続くなかで、安定的な収益を獲得していくための事業基盤構築に引き続き注力していく方針となっている。
a) 受託開発
受託開発においては、優れたUX/UIを意識したデザイン思考を取り入れ、顧客ごとに最良なシステム開発提案を行うことで他社との差別化を図っていく。また、前期から注力しているIoTやAI分野でのソリューション提案活動を積極的に行い、新規顧客の開拓を進めていく方針となっている。IoT、AI分野の案件については、受注単価そのものは低いものの、新規顧客として取り込むことで他部署の開発案件を取り込める可能性があり、取引拡大のためのフック役としての効果を期待している。
売上拡大施策としては、業界セミナーへの積極的な参加や自社セミナーの開催、及び米国進出の日系企業からの開発案件獲得などによって新規顧客を開拓していくほか、既存顧客に対しては顧客の事業状況を把握した上での深耕営業や他部門への横展開に取り組んでいく。また、提案力向上のために社内の情報デザインチームを強化し、サービスデザイン(デザイン・シンキング)を活用した提案力強化を進めていく方針となっている。
なお、米国進出の日系企業あるいは現地のスタートアップ企業のシステム開発需要を取り込むため、2017年2月に米国に子会社を設立した。現地ではシステムエンジニアの単価が日本の2倍近くの水準となっているだけでなく、サービスの質も低いため、潜在需要は大きいと見ている。既に2社から受注を獲得しており、開発は国内もしくはベトナム等のオフショアを活用する。なお、米国子会社については、現地での最先端テクノロジーの情報を収集し、日本にフィードバックすること、及びグローバル人材の採用活動を行う役割も担っていく。
開発面での施策としては、引き続き不採算プロジェクトの抑制や生産性向上に向けた取り組みを継続していく方針だ。開発コストの低減ではオフショアの活用を推進していくほか、AWS(アマゾンウェブサービス)など外部ソリューション・パッケージの利用によるコスト削減などにも取り組み、開発スピードの向上を図っていく。
b) SIソリューション
IoTやAIを活用したソリューションビジネスが急速に拡大するなかで、同社も積極的に提案営業を行い顧客獲得に注力していく。既に自社開発のビーコンプラットフォーム「MoL(位置管理ソリューション)」を用いた工場内のフォークリフトの場所や状態などを管理するソリューションや、店舗の受付・発券システムのIoTソリューションを提案し、受注獲得につなげている。また、AI(音声認識ソリューション)を用いたソリューション提案なども進めている。
c) カジノ事業
米国でのカジノ事業については、現在フィールドテストの実施に向け現地規制当局との交渉が続いている段階で、当初の計画よりもやや遅れ気味となっている。同社では2017年6月期中にフィールドテストを開始し、2018年6月期中の本サービス開始を目指す方針に変わりないとしているが、今後のフィールドテストの開始時期によって遅れが生じる可能性もある。
同社ではサービス開始に向けた戦略として、パートナー企業づくりに注力している。2015年にカジノ向けATM/KIOSKやゲーム機の大手である米国Everiとモバイル決済ソリューションで共同開発を行ったほか、2016年12月にはカジノゲーム機向け印刷機で最大手となる米国Transactと、2017年春以降にソリューション開発を共同で進めていくことを発表している。歩みは遅いながらも、電子決済システムの普及が一般社会で広まるなかで、カジノ市場においてもいずれは導入されると考えられるため、今後の展開が注目される。
なお、日本においてもIR推進法が成立したことで、カジノに関する関心が高まっている。このため、同社では2017年2月より世界のカジノ市場の動向やレギュレーション情報等についての調査レポートを作成し、企業向けに販売を開始している。
d) ee-TAB*事業
ee-TAB事業に関しては、機能の拡充により大型ホテルでの採用拡大を進めていくほか、訪日外国人向けの民泊施設や他業種への横展開にも取り組んでいく方針だ。売上規模はまだ小さいものの、ストックビジネスとなるため、損益分岐点を超えれば安定した収益源として同社の業績に貢献してくることが期待される。
(2) 自動車アフターマーケット事業
自動車アフターマーケット事業の売上高は前期比3.4%増の1,320百万円、セグメント利益は同43.0%増の143百万円を見込んでいる。第2四半期までは一部開発案件の遅れを挽回するため、その他の営業活動が手薄になり売上高を落とす要因となっていたが、現状は正常化しており整備システムを中心に顧客開拓が進んでいる。また、第4四半期には部品・ガラス商向けの新規顧客獲得も期待できる状況にある。このため、今下期は黒字転換する見込みとなっている。
部品・ガラス商向けについては、従来、最大手1社の独壇場であったが、同社はデータベースの拡充が進んだことで、競合に引けを取らない商品を開発し、今後売り込みを図っていく。このため、来期以降は収益成長が加速していくものと弊社では予想している。現在の主力顧客である整備工場は町工場が多く、1〜2台しか導入しないものの、部品・ガラス商は規模が大きいため、1社決まると平均で10〜15台の導入となるためだ。1社当たりの売上規模が1ケタ大きくなるほか、ソフトウエア販売となるため固定費は同じで利益率も高くなる。同社のターゲットとなる見込み客は、整備工場の事業者数で約6.7万社あるのに対して、部品商(カーディーラー向けを除く)は約2,000社、ガラス商は約500社と少ないが、競合は1社だけのため価格やサービス面でのメリットを打ち出すことで顧客開拓は十分可能と見ている。また、整備システムに関しても整備事業者での普及率がまだ3割程度の水準にとどまっており、普及が進むことによる売上拡大余地は大きいと見られる。課題としては、営業リソースが不足していることにある。現在、営業人員は45名強程度とほぼ前期並みの水準にとどまっているが、このうち20名程度を部品・ガラス商向けの顧客開拓に振り向けているため、整備事業者向けの営業リソースを増員する必要がある。増員が計画どおり進まなければ成長ペースが鈍化する可能性もある。
なお、同社の既存商品については、政府が景気対策の一環として打ち出した生産性向上設備投資促進税制※1を活用できるほか、サービス等生産性向上IT導入支援事業※2の補助金対象サービスとして認定されており、中小企業からの需要増が今後期待されることも追い風となる。
※1 法人・個人事業主を対象とした、設備投資意欲を高めるための優遇税制。対象設備(機械装置やソフトウエア)は最新設備のほか、利益改善のための設備となり、2017年3月末までの投資分に対して特別償却50%または税額控除4%が認められる。
※2 中小企業者等におけるITツール(ソフトウエア、サービス等)の導入費用の補助を通じた中小企業者等の生産性向上を目的とした経済産業省の事業で、2016年度の補正予算として組み込まれた。IT導入補助金を利用すると、システム導入費用の3分の2(上限額:100万円、下限額:20万円)が補助される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業セグメント別の見通し
(1) ソフトウエア受託開発事業
ソフトウエア受託開発事業の売上高は前期比横ばいの3,380百万円、セグメント利益は同43.0%増の535百万円を見込んでいる。モバイル系のシステム開発における競争激化が続くなかで、安定的な収益を獲得していくための事業基盤構築に引き続き注力していく方針となっている。
a) 受託開発
受託開発においては、優れたUX/UIを意識したデザイン思考を取り入れ、顧客ごとに最良なシステム開発提案を行うことで他社との差別化を図っていく。また、前期から注力しているIoTやAI分野でのソリューション提案活動を積極的に行い、新規顧客の開拓を進めていく方針となっている。IoT、AI分野の案件については、受注単価そのものは低いものの、新規顧客として取り込むことで他部署の開発案件を取り込める可能性があり、取引拡大のためのフック役としての効果を期待している。
売上拡大施策としては、業界セミナーへの積極的な参加や自社セミナーの開催、及び米国進出の日系企業からの開発案件獲得などによって新規顧客を開拓していくほか、既存顧客に対しては顧客の事業状況を把握した上での深耕営業や他部門への横展開に取り組んでいく。また、提案力向上のために社内の情報デザインチームを強化し、サービスデザイン(デザイン・シンキング)を活用した提案力強化を進めていく方針となっている。
なお、米国進出の日系企業あるいは現地のスタートアップ企業のシステム開発需要を取り込むため、2017年2月に米国に子会社を設立した。現地ではシステムエンジニアの単価が日本の2倍近くの水準となっているだけでなく、サービスの質も低いため、潜在需要は大きいと見ている。既に2社から受注を獲得しており、開発は国内もしくはベトナム等のオフショアを活用する。なお、米国子会社については、現地での最先端テクノロジーの情報を収集し、日本にフィードバックすること、及びグローバル人材の採用活動を行う役割も担っていく。
開発面での施策としては、引き続き不採算プロジェクトの抑制や生産性向上に向けた取り組みを継続していく方針だ。開発コストの低減ではオフショアの活用を推進していくほか、AWS(アマゾンウェブサービス)など外部ソリューション・パッケージの利用によるコスト削減などにも取り組み、開発スピードの向上を図っていく。
b) SIソリューション
IoTやAIを活用したソリューションビジネスが急速に拡大するなかで、同社も積極的に提案営業を行い顧客獲得に注力していく。既に自社開発のビーコンプラットフォーム「MoL(位置管理ソリューション)」を用いた工場内のフォークリフトの場所や状態などを管理するソリューションや、店舗の受付・発券システムのIoTソリューションを提案し、受注獲得につなげている。また、AI(音声認識ソリューション)を用いたソリューション提案なども進めている。
c) カジノ事業
米国でのカジノ事業については、現在フィールドテストの実施に向け現地規制当局との交渉が続いている段階で、当初の計画よりもやや遅れ気味となっている。同社では2017年6月期中にフィールドテストを開始し、2018年6月期中の本サービス開始を目指す方針に変わりないとしているが、今後のフィールドテストの開始時期によって遅れが生じる可能性もある。
同社ではサービス開始に向けた戦略として、パートナー企業づくりに注力している。2015年にカジノ向けATM/KIOSKやゲーム機の大手である米国Everiとモバイル決済ソリューションで共同開発を行ったほか、2016年12月にはカジノゲーム機向け印刷機で最大手となる米国Transactと、2017年春以降にソリューション開発を共同で進めていくことを発表している。歩みは遅いながらも、電子決済システムの普及が一般社会で広まるなかで、カジノ市場においてもいずれは導入されると考えられるため、今後の展開が注目される。
なお、日本においてもIR推進法が成立したことで、カジノに関する関心が高まっている。このため、同社では2017年2月より世界のカジノ市場の動向やレギュレーション情報等についての調査レポートを作成し、企業向けに販売を開始している。
d) ee-TAB*事業
ee-TAB事業に関しては、機能の拡充により大型ホテルでの採用拡大を進めていくほか、訪日外国人向けの民泊施設や他業種への横展開にも取り組んでいく方針だ。売上規模はまだ小さいものの、ストックビジネスとなるため、損益分岐点を超えれば安定した収益源として同社の業績に貢献してくることが期待される。
(2) 自動車アフターマーケット事業
自動車アフターマーケット事業の売上高は前期比3.4%増の1,320百万円、セグメント利益は同43.0%増の143百万円を見込んでいる。第2四半期までは一部開発案件の遅れを挽回するため、その他の営業活動が手薄になり売上高を落とす要因となっていたが、現状は正常化しており整備システムを中心に顧客開拓が進んでいる。また、第4四半期には部品・ガラス商向けの新規顧客獲得も期待できる状況にある。このため、今下期は黒字転換する見込みとなっている。
部品・ガラス商向けについては、従来、最大手1社の独壇場であったが、同社はデータベースの拡充が進んだことで、競合に引けを取らない商品を開発し、今後売り込みを図っていく。このため、来期以降は収益成長が加速していくものと弊社では予想している。現在の主力顧客である整備工場は町工場が多く、1〜2台しか導入しないものの、部品・ガラス商は規模が大きいため、1社決まると平均で10〜15台の導入となるためだ。1社当たりの売上規模が1ケタ大きくなるほか、ソフトウエア販売となるため固定費は同じで利益率も高くなる。同社のターゲットとなる見込み客は、整備工場の事業者数で約6.7万社あるのに対して、部品商(カーディーラー向けを除く)は約2,000社、ガラス商は約500社と少ないが、競合は1社だけのため価格やサービス面でのメリットを打ち出すことで顧客開拓は十分可能と見ている。また、整備システムに関しても整備事業者での普及率がまだ3割程度の水準にとどまっており、普及が進むことによる売上拡大余地は大きいと見られる。課題としては、営業リソースが不足していることにある。現在、営業人員は45名強程度とほぼ前期並みの水準にとどまっているが、このうち20名程度を部品・ガラス商向けの顧客開拓に振り向けているため、整備事業者向けの営業リソースを増員する必要がある。増員が計画どおり進まなければ成長ペースが鈍化する可能性もある。
なお、同社の既存商品については、政府が景気対策の一環として打ち出した生産性向上設備投資促進税制※1を活用できるほか、サービス等生産性向上IT導入支援事業※2の補助金対象サービスとして認定されており、中小企業からの需要増が今後期待されることも追い風となる。
※1 法人・個人事業主を対象とした、設備投資意欲を高めるための優遇税制。対象設備(機械装置やソフトウエア)は最新設備のほか、利益改善のための設備となり、2017年3月末までの投資分に対して特別償却50%または税額控除4%が認められる。
※2 中小企業者等におけるITツール(ソフトウエア、サービス等)の導入費用の補助を通じた中小企業者等の生産性向上を目的とした経済産業省の事業で、2016年度の補正予算として組み込まれた。IT導入補助金を利用すると、システム導入費用の3分の2(上限額:100万円、下限額:20万円)が補助される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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