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イノベーション Research Memo(2):BtoB企業向けに特化した営業・マーケティング支援サービス事業を展開

注目トピックス 日本株
■会社概要

1. 会社沿革
イノベーション<3970>は2000年に現代表取締役の富田直人(とみだなおと)氏によって設立された。富田氏は1987年の大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス<6098>)に入社し、テクノロジー系サービスの新規事業に関わる営業に携わってきた。日々の営業活動に従事するなかで、属人的で非効率的な部分が多いと感じ、ITを活用することでこうした非効率な部分を改善し、法人営業の生産性向上に貢献するサービスを手掛けたいという思いから起業に至っている。例えば、新規顧客開拓プロセスでは、やみくもに飛び込み営業や電話でのアポ取りを行うのではなく、買い手企業から逆に資料請求等の問合せがくるインバウンド営業の仕組みに変えたり、ニーズのある企業を把握し効率的なアポ取りを行えるような仕組みを、ITを活用することによって実現していく。同様に、既存顧客においても顧客が抱える課題を「見える化」し、最適なタイミングで最適な提案を行うシステムを提供することで、営業の生産性は大きく向上することになる。

同社は2002年にテレマーケティング代行サービスやリスティング広告代行サービスなどのマーケティング代行事業からスタートし、2007年に現在の主力サービスである法人向けIT製品の比較・資料請求サイト「ITトレンド」を開発、サービスを開始した。2008年には法人向け各種サービスの比較・資料請求サイトの「BIZトレンド」を、2010年にはクラウド型のMAツール「List Finder」のサービスを開始するなど、現在の主力事業をこの時期に相次いで立ち上げている。また、顧客ニーズや市場の競争環境を鑑みて、2015年には収益性の低かったテレマーケティング代行サービスから撤退し、リスティング広告代行サービスも譲渡するなど事業の集中と選択を進め、2016年12月に東証マザーズ市場に株式上場を果たしている。なお、2015年7月に(株)日経BP及び(株)リンクアンドモチベーション<2170>を引受先とする第三者割当増資を実施しており、日経BPとは事業面での協業も行っている。

2. 事業内容
事業内容は、法人向けのインターネットマーケティング支援事業となり、法人営業における見込み顧客獲得(リードジェネレーション)、見込み顧客育成(リードナーチャリング)及び顧客獲得後のフォローアップまで、全てのプロセスにおいてサービスを提供していることが特徴となっている。このうち、見込み顧客獲得までのサービスは、比較・資料請求サイトである「ITトレンド」「BIZトレンド」で、見込み顧客育成から顧客獲得後のフォローアップをまでを「List Finder」を中心にサービス提供する格好となっている。

事業セグメントとしては、オンラインメディア事業とセールスクラウド事業に区分している。

(1) オンラインメディア事業
オンラインメディア事業では、法人向けIT製品の比較・資料請求サイトとして業界最大級となる「ITトレンド」と、法人向けアウトソーシングサービスの比較・資料請求サイト「BIZトレンド」の運営、及び日経BPが提供するオンラインメディアを中心としたデジタル広告の販売代行サービスが含まれる。

「ITトレンド」「BIZトレンド」は、IT製品やアウトソーシングサービスを販売する企業(以下、掲載企業)が、見込み顧客を獲得するため、自社製品・サービスを掲載するWebサイトとなり、2016年12月時点で「ITトレンド」は約400社、約1,400件の製品を、「BIZトレンド」では約120社、約220件のサービスを掲載している。同サイト来訪者は掲載されている製品・サービスの中から、関心のあるものに対して一括して無料で資料請求することができるようになっている。

ビジネスモデルとしては、ユーザーが資料請求を行った段階で発生する掲載企業からの成果報酬が売上高の大半を占めており、1件の請求で1万円または1.5万円となる(「ITトレンド」に関しては掲載企業から初期登録費用として別途3万円を徴収)。自社の製品・サービスに関心度の高い見込み顧客となるため、成約までの確率も高くなる。見込み顧客の獲得コストとして1件当たり1万円という水準は、最終的な成約率まで考慮すれば有力メディアに広告を出稿するよりも割安な水準となるため、掲載する企業数や製品・サービス数も増加傾向となっている。費用としては、Webサイトを運営するためのサーバー費用のほか、掲載する製品・サービスの紹介文等の作成及び顧客対応に携わる人員の人件費、Webサイトの認知度を向上し、来訪者を増やしていくためのインターネット広告費等が挙げられる。費用としては広告費以外はほぼ固定費となるため、限界利益率の高いビジネスモデルとなる。

資料請求件数を増やすための施策としては、掲載品目数を拡充していくと同時に、同サイトへの来訪者を増やしていくことが重要となる。現在、来訪者の流入経路としては検索エンジンを経由したものが約7割を占めており、検索エンジンで上位に表示されるようなSEO対策等に注力している。2016年12月時点の月間ユニークユーザー数は「ITトレンド」が約38万UU、「BIZトレンド」が約4万UUとなっており、売上高の比率もほぼ同様の比率となっている。

なお、競合する比較・資料請求サイトとしてはスマートキャンプ(株)のボクシルがあり、2017年4月時点で掲載社数は約1,000社、月間PV数で約100万PVとなっている。料金プランはほぼ同じで資料請求件数1件当たり1万円からとなっている。

(2) セールスクラウド事業
セールスクラウド事業では、法人営業に特化したMA※ツール「List Finder」を提供しているほか、オンライン商談システム「bellFace」(提供元ベルフェイス(株))の代理販売、及びこれらを基軸としたWebサイトへの集客施策等を実施するコンサルティングサービスからなる。

※MA:マーケティングオートメーションとは、マーケティング活動におけるプロセスの自動化や効率化を支援するシステムの総称で、見込み顧客情報を管理し、中長期にわたって良好な関係性を築くためのコミュニケーションや最適なタイミングで営業に引き渡す事に必要な煩雑な業務を自動化するために開発されたツールのことを指す。


主力の「List Finder」は、法人営業プロセスの中で見込み顧客の育成から成約・クロージング(リードナーチャリング)、アップセル・クロスセル(フォローアップ)までを効率的に行うツールとなる。主な機能としては名刺情報に基づいた見込み顧客の一元管理、一括メール配信、自社サイト来訪個人解析、自社サイト来訪企業解析、フォーム作成機能等が挙げられる。

MAツールの市場は、3〜4年ほど前から日本でも(株)セールスフォース・ドットコムや(株)マルケトなど外資系企業が販売を開始したのを契機に、年々市場規模が拡大している。ただ、いずれも高機能でシナリオ設計が複雑となり、ツールを使いこなすにはマーケティングに精通した人材が必要で、BtoBの中堅・中小企業では普及が進んでいなかった。同社ではこうした市場環境から、簡単な機能で低コストな製品を提供できれば、中堅・中小企業等でも需要が拡大するとみて、「List Finder」を開発した。

同社はBtoB企業を顧客対象に絞って販売を展開してきた結果、BtoB向けのクラウド型マーケティングオートメーションツールの導入アカウント数では業界トップとなっている(2017年3月時点での顧客アカウント数※は613件)。競合製品との比較で見ると、(株)マルケトや(株)シャノン<3976>よりも低料金で運用でき、また導入に要する期間も短期間となっていることが特徴となっている。現在、サービス料金や機能面でカイロスマーケティング(株)の製品と競合する格好となっている。

※Webサイト(ドメイン)ごとの契約となるため、複数のWebサイトに導入する場合は導入分の契約件数となる。


同社のサービス料金は初期導入費用10万円のほか、顧客件数や導入するWebサイトの月間PV数に応じた月3万円からの従量課金プラン制となっている。また、フォーム作成機能などはオプション料金となっている。クラウドサービスのため、アカウント件数の増加とともに収益が毎月、安定的に積み上がるストック型のビジネスモデルとなっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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