MRT Research Memo(3):関東から関西へ、医師からコメディカルへ事業領域を拡大
[17/08/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
1. 非常勤医師の紹介サービス「Gaikin」
非常勤医師紹介サービス「Gaikin」は、24時間365日対応の外勤診療紹介を目的とした医師と医療機関を自動的にマッチングするサービス。非常勤医師紹介サービスは、雇用形態別にレギュラーとスポットに分類※されるが、システムに医療現場の要望をできるだけ反映させることが可能であるため、スポットに関しては医師が勤務するまでのプロセスのほとんどをサイト内で完結できる仕組みとなっている。なお、MRT<6034>では、医師に対して、勤務・キャンペーン・アンケートに応じてMRTポイント(一定ポイントを貯めると現金交換が可能)を付与し、医師へ還元している。
具体的な非常勤医師紹介の流れは以下のとおり。
1)求人側の医療機関は、あらかじめ運営サイトに会員登録し、医師求人の募集要項(診療科、勤務時間、報酬など)を運営サイトに掲載する。
2)就業を希望する医師は、医療機関と同様に会員登録した上で、掲載されている募集要項を確認し、運営サイト経由で応募する。
3)医療機関は、運営サイト経由で医師からの応募内容を確認し、雇用を同意する場合に両者の労働契約が成立。なお、レギュラーの場合は、同社の専任スタッフが開始時期などを調整する。
4)同社は一定の紹介手数料を医療機関から受領する。
5)レギュラーの場合は、医師と医療機関との労働契約の維持を図るとともに、労働契約が終了した場合に他の医師を適時紹介できるように、同社の専任スタッフが医師及び医療機関に対して、適宜コミュニケーションを取る。
※レギュラーとスポットは同社が事業開始当初より使用している呼称。レギュラーとは、「毎週定期で勤務する勤務枠」を指し、週5日勤務ではないものの、正規雇用と同等の条件で期間の定めのない労働契約を締結している短時間正規雇用、もしくは契約期間2ヶ月以上の非常勤雇用の形態。スポットとは、「単発勤務の時間枠」を指し、レギュラーを除く非常勤雇用の形態。2016年3月期より請求体系の変更に伴い、一部のレギュラーにかかる紹介件数を含んでいない。
2. 常勤医師の転職紹介サービス「career」
常勤医師紹介の流れは、求人側の医療機関及び転職希望の医師が同社に会員登録等を行い、その後、同社の常勤医師紹介専任スタッフが直接面談を行い、会員医師の要望を把握した上で、医療機関と転職希望医師のマッチングを行う。医療機関と医師が合意した場合、労働契約が締結され、一定の紹介手数料を医療機関から受領する。
3. 医療人材サービス(医師のみ)における主な経営管理指標
以下に、主要な数値指標を示す。
1)同社グループ登録医師会員数
…約2万1千人(全国医師数は約31万人)
2)東京大学医学部卒の医師における同社グループ登録率
…約3人に1人(2017年3月期末時点)
3)年間非常勤医師紹介件数
…約11万件(2017年3月期)
4)累計医師紹介件数
…約95万件(2017年6月時点)
また、非常勤医師紹介サービス「Gaikin」と常勤医師転職紹介サービス「career」を合わせた医師のみの医療人材サービスの2017年3月期の売上高は、987百万円(前期は939百万円、前期比5.2%増)となった。
4. コメディカル紹介・派遣サービス
同社は、医師の紹介のほかに、コメディカルと言われる看護師、薬剤師、臨床検査技師、臨床工学技士、放射線技師についても医師紹介と同様の紹介サービスを提供している。2017年1月に連結子会社化したNOSWEATは、医療従事者(看護師等)に特化した紹介予定派遣サービスを提供しており、約3000名のコメディカル登録者がいる。京都市の創業支援を受けて設立された経緯があり、医療機関以外に福祉施設、寺院等とも取引が多い。M&A以前のNOSWEATの売上高は286百万円(2016年5月期)であり、2017年3月期第4四半期のみの連結ではあったが同社のコメディカル紹介・派遣他の売上高は125百万円(前期は46百万円、NOSWEATは第4四半期から連結)と飛躍した。
5. 「ネット医局」サービス
医師の勤怠管理、代診を含む市中病院への医師紹介、医師の募集など多岐にわたる医局の管理業務(スケジュール管理、情報共有、アポイント管理)を支援するグループウェア。大学医局を中心とする医師ネットワークを構築・拡大する観点から無償で提供している。医局は「ネット医局」を導入することで、管理業務を大幅に効率化、省力化できるメリットがある。一方、同社にとっては、大学病院を中心にその関連の市中病院、開業医に至るまで医局単位で医師をカバーし、医師会員数の増加につながるメリットがある。
2017年3月期末時点の導入医局数は305医局(前期末は150)。期初の計画(1年間で約150医局増加)を達成した。東京の全大学病院(13大学)に導入されているなど関東エリアが71%、大阪の大学病院で採用されるなど関西エリアが17%と拡大、九州でも10%と全国的に採用されている。
6. 強み・競合
同社の強みは、以下の3点に集約できる。
1)インターネットを活用した「医療」情報プラットフォーム
2)「現役医師」が設立した「医師視点」のサービス
3)創業来構築してきた「医師ネットワーク」
医療分野の人材紹介に当たっては、専門性の高い人材を相手とするため、緊急手術、急患対応などの即時対応性、大学派閥の人事特殊性、専門的スキルと経験等を理解した上で迅速な対応が要求される。同社の紹介システムは医師が快適かつ迅速に外勤探しができるようにインターネットを活用しており、創業来培ってきた業務経験・ノウハウによる医師ネットワークの事業基盤があり、医師目線で医師の利便性を重視したサービス体制を整えている。
主力事業である非常勤医師紹介に関しては、医療業界に関する特殊性を理解することが必要不可欠となるため、参入障壁は高く、競合は少ないのが現状。加えて、同社の医師ネットワークが口コミや紹介をベースに構築されてきたことにより差別化が図られていると考えられ、紹介件数は順調に増加する傾向にある。一方、スタッフが介在する常勤紹介などに関しては、参入障壁は低く、一般の人材紹介会社との競合も多いものの、同社の医師会員向け付加価値サービスとして展開している。
新規サービスとしては、以下の3つがあり、今後の成長が期待される。
1)ポケットドクター
…本レポートの「中長期の成長戦略」の項目で詳述。
2)医科歯科.com
…子会社のMRT NEOが運営する、医師とコンシューマをつなぐプラットフォーム。全国の医科歯科クリニックの検索・問い合わせができる。
3)微量採血検査サービスLifee
…エム・ビー・エス(同社出資額147百万円、出資比率19.5%)が研究開発する「指先採血検査」を軸に両社の持つネットワークを相互に有効活用した医療・ヘルスケアサービスを共同開発しており、採血デバイスの販売や検査サービスの本格的な提供が始まる予定。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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1. 非常勤医師の紹介サービス「Gaikin」
非常勤医師紹介サービス「Gaikin」は、24時間365日対応の外勤診療紹介を目的とした医師と医療機関を自動的にマッチングするサービス。非常勤医師紹介サービスは、雇用形態別にレギュラーとスポットに分類※されるが、システムに医療現場の要望をできるだけ反映させることが可能であるため、スポットに関しては医師が勤務するまでのプロセスのほとんどをサイト内で完結できる仕組みとなっている。なお、MRT<6034>では、医師に対して、勤務・キャンペーン・アンケートに応じてMRTポイント(一定ポイントを貯めると現金交換が可能)を付与し、医師へ還元している。
具体的な非常勤医師紹介の流れは以下のとおり。
1)求人側の医療機関は、あらかじめ運営サイトに会員登録し、医師求人の募集要項(診療科、勤務時間、報酬など)を運営サイトに掲載する。
2)就業を希望する医師は、医療機関と同様に会員登録した上で、掲載されている募集要項を確認し、運営サイト経由で応募する。
3)医療機関は、運営サイト経由で医師からの応募内容を確認し、雇用を同意する場合に両者の労働契約が成立。なお、レギュラーの場合は、同社の専任スタッフが開始時期などを調整する。
4)同社は一定の紹介手数料を医療機関から受領する。
5)レギュラーの場合は、医師と医療機関との労働契約の維持を図るとともに、労働契約が終了した場合に他の医師を適時紹介できるように、同社の専任スタッフが医師及び医療機関に対して、適宜コミュニケーションを取る。
※レギュラーとスポットは同社が事業開始当初より使用している呼称。レギュラーとは、「毎週定期で勤務する勤務枠」を指し、週5日勤務ではないものの、正規雇用と同等の条件で期間の定めのない労働契約を締結している短時間正規雇用、もしくは契約期間2ヶ月以上の非常勤雇用の形態。スポットとは、「単発勤務の時間枠」を指し、レギュラーを除く非常勤雇用の形態。2016年3月期より請求体系の変更に伴い、一部のレギュラーにかかる紹介件数を含んでいない。
2. 常勤医師の転職紹介サービス「career」
常勤医師紹介の流れは、求人側の医療機関及び転職希望の医師が同社に会員登録等を行い、その後、同社の常勤医師紹介専任スタッフが直接面談を行い、会員医師の要望を把握した上で、医療機関と転職希望医師のマッチングを行う。医療機関と医師が合意した場合、労働契約が締結され、一定の紹介手数料を医療機関から受領する。
3. 医療人材サービス(医師のみ)における主な経営管理指標
以下に、主要な数値指標を示す。
1)同社グループ登録医師会員数
…約2万1千人(全国医師数は約31万人)
2)東京大学医学部卒の医師における同社グループ登録率
…約3人に1人(2017年3月期末時点)
3)年間非常勤医師紹介件数
…約11万件(2017年3月期)
4)累計医師紹介件数
…約95万件(2017年6月時点)
また、非常勤医師紹介サービス「Gaikin」と常勤医師転職紹介サービス「career」を合わせた医師のみの医療人材サービスの2017年3月期の売上高は、987百万円(前期は939百万円、前期比5.2%増)となった。
4. コメディカル紹介・派遣サービス
同社は、医師の紹介のほかに、コメディカルと言われる看護師、薬剤師、臨床検査技師、臨床工学技士、放射線技師についても医師紹介と同様の紹介サービスを提供している。2017年1月に連結子会社化したNOSWEATは、医療従事者(看護師等)に特化した紹介予定派遣サービスを提供しており、約3000名のコメディカル登録者がいる。京都市の創業支援を受けて設立された経緯があり、医療機関以外に福祉施設、寺院等とも取引が多い。M&A以前のNOSWEATの売上高は286百万円(2016年5月期)であり、2017年3月期第4四半期のみの連結ではあったが同社のコメディカル紹介・派遣他の売上高は125百万円(前期は46百万円、NOSWEATは第4四半期から連結)と飛躍した。
5. 「ネット医局」サービス
医師の勤怠管理、代診を含む市中病院への医師紹介、医師の募集など多岐にわたる医局の管理業務(スケジュール管理、情報共有、アポイント管理)を支援するグループウェア。大学医局を中心とする医師ネットワークを構築・拡大する観点から無償で提供している。医局は「ネット医局」を導入することで、管理業務を大幅に効率化、省力化できるメリットがある。一方、同社にとっては、大学病院を中心にその関連の市中病院、開業医に至るまで医局単位で医師をカバーし、医師会員数の増加につながるメリットがある。
2017年3月期末時点の導入医局数は305医局(前期末は150)。期初の計画(1年間で約150医局増加)を達成した。東京の全大学病院(13大学)に導入されているなど関東エリアが71%、大阪の大学病院で採用されるなど関西エリアが17%と拡大、九州でも10%と全国的に採用されている。
6. 強み・競合
同社の強みは、以下の3点に集約できる。
1)インターネットを活用した「医療」情報プラットフォーム
2)「現役医師」が設立した「医師視点」のサービス
3)創業来構築してきた「医師ネットワーク」
医療分野の人材紹介に当たっては、専門性の高い人材を相手とするため、緊急手術、急患対応などの即時対応性、大学派閥の人事特殊性、専門的スキルと経験等を理解した上で迅速な対応が要求される。同社の紹介システムは医師が快適かつ迅速に外勤探しができるようにインターネットを活用しており、創業来培ってきた業務経験・ノウハウによる医師ネットワークの事業基盤があり、医師目線で医師の利便性を重視したサービス体制を整えている。
主力事業である非常勤医師紹介に関しては、医療業界に関する特殊性を理解することが必要不可欠となるため、参入障壁は高く、競合は少ないのが現状。加えて、同社の医師ネットワークが口コミや紹介をベースに構築されてきたことにより差別化が図られていると考えられ、紹介件数は順調に増加する傾向にある。一方、スタッフが介在する常勤紹介などに関しては、参入障壁は低く、一般の人材紹介会社との競合も多いものの、同社の医師会員向け付加価値サービスとして展開している。
新規サービスとしては、以下の3つがあり、今後の成長が期待される。
1)ポケットドクター
…本レポートの「中長期の成長戦略」の項目で詳述。
2)医科歯科.com
…子会社のMRT NEOが運営する、医師とコンシューマをつなぐプラットフォーム。全国の医科歯科クリニックの検索・問い合わせができる。
3)微量採血検査サービスLifee
…エム・ビー・エス(同社出資額147百万円、出資比率19.5%)が研究開発する「指先採血検査」を軸に両社の持つネットワークを相互に有効活用した医療・ヘルスケアサービスを共同開発しており、採血デバイスの販売や検査サービスの本格的な提供が始まる予定。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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