ガイアックス Research Memo(2):ソーシャルメディアとシェアリングエコノミー領域に事業展開
[17/10/31]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 会社沿革
ガイアックス<3775>は、広告収入モデルによるコミュニティサイトの企画運営を主な目的として1999年3月に有限会社ガイアックスとして設立後、1999年5月に株式会社ガイアックスへ組織変更された。創業当初は、ブログSNSサービス運用等のソーシャルメディア領域のBtoC事業を行っていたが、BtoCで培った運用ノウハウをもとに2003年から運用代行サービスの法人クライアントへの提供に事業内容を変更した。2005年7月、名古屋証券取引所セントレックスへの上場を果たした後、連結子会社の設立やM&Aを重ね、現在では19社の連結子会社を抱える企業グループとなっている。
2. 事業概要
同社は、「人と人をつなげる - Empowering the people to connect.」をミッションに掲げ、ソーシャルメディア及びシェアリングエコノミーを事業領域に事業を展開している。事業セグメントは、ソーシャルサービス事業、受託開発事業、インキュベーション事業の3つ。同社では、ソーシャルサービス事業と受託開発事業を安定成長事業と、インキュベーション事業を戦略的成長事業と位置付けている。
(1) ソーシャルサービス事業
ソーシャルサービス事業では、ソーシャルメディアの総合サービス企業として、SNS・ブログ・ソーシャルメディア、Webマーケティング、デジタルコンテンツサービス等の企画・開発・運営サービスを、主に法人クライアントに提供している。主な業務は、投稿モニタリング及びカスタマーサポート業務。領域別の主な業務は以下のとおり。
a) ソーシャルメディア領域
1) コミュニティパッケージ、企業向けブログ、活性化サービス:Facebook、Twitter、LINE@、Instagram、ブログ等、ソーシャルメディア活用の企画提案やシステム構築・運営、多店舗向けのブログシステムを提供。
2) 投稿モニタリング、ソーシャルリスニング:ソーシャルメディア上の声の収集、調査分析を行うソーシャルリスニングや、安心安全なサイト運営のための投稿モニタリングを提供。
3) 学校向けネットいじめ対策:教育委員会や私立学校など学校向けに、ネットいじめ・インターネット上の個人情報流出等、学校生活上の課題への対策として学校裏サイトのパトロールやソーシャルメディアリテラシー講座を提供。
b) ソーシャルアプリ領域
1) カスタマーサポート:ソーシャルゲーム等のソーシャルアプリに対するカスタマーサポート代行を24時間・多言語体制で、独自開発のエスカレーションツールを利用し提供。
c) 企業内SNS領域
1) 社内SNS、グループウェア:企業の社内コミュニケーションをサポートするクラウド型社内SNS、内定者SNS、育児休業者SNSやクラウド型グループウェアを提供。
d) マーケティング支援領域
1) ソーシャルメディアマーケティング、Webマーケティング:ソーシャルメディアやブログ等を活用したマーケティングのコンサル業務、Webサイトの構築・運営。
2) デジタルコンテンツサービス:スマートフォン、PC、モバイル端末向けに、ゲーム・占い・レシピ・スタンプなど様々なデジタルコンテンツを制作・提供。
ソーシャルサービス事業の柱となる投稿モニタリングとカスタマーサポート業務は、アディッシュ(株)を中心に展開している。アディッシュの2016年12月期の売上高は1,530百万円(連結売上高比26.7%)、経常利益は9百万円、当期純利益は7百万円となっている。フィリピンにある連結子会社adish International Corporationは、投稿モニタリング及びカスタマーサポート業務の英語及び多言語対応を提供している。主にソーシャルサービス事業に属する連結子会社は次のとおり。
(2) 受託開発事業
受託開発事業は、Webシステムに関するコンサルティングからパッケージソリューション、システムインテグレーション、保守・運用をワンストップで提供しており、コミュニティサイトの開発受託も含め、(株)電縁及びアイ・オーシステムインテグレーション(株)が主に行っている。電縁の2016年12月期の売上高は2,323百万円(連結売上高比40.6%)、経常利益は79百万円、当期純利益は58百万円となっている。主要顧客は伊藤忠テクノソリューションズ<4739>で、2016年12月期の受託開発事業の外部顧客への売上高の約半分を占めている。主に受託開発事業に属する連結子会社は次のとおり。
(3) インキュベーション事業
インキュベーション事業は、同社グループ事業との親和性が高い企業やシェアリングエコノミー関連企業等に対し投資・育成支援を行うグループ外インキュベーションと、グループ内での新規事業開発等を行うグループ内インキュベーションから構成される。グループ外インキュベーションには同社を卒業した社員が創業した企業への投資も含まれる。主にインキュベーション事業に属する連結子会社は次のとおり。なお、(株)テンエックスラボと(株)Tadakuについては、2016年12月に関係会社株式評価損を特別損失として計上している。
他にグループ内インキュベーションとして、地元の人と交流ができる地域体験予約サイト「TABICA」を運営しているほか、シェア事業者やフィンテック事業者にAPI型本人確認サービスを提供する「TRUST DOCK」、Mirai Institute(株)との資本業務提携によりシェアオフィス事業「GRID」を展開している。
グループ外インキュベーションにおける主な投資先は次のとおり。
3. 収益構造
(1) 売上高・営業利益構成
2016年12月期のセグメント別連結売上高は、ソーシャルサービス事業が2,738百万円(連結売上高に占める割合は46.9%)、受託開発事業が2,545百万円(同43.7%)、インキュベーション事業が545百万円(同9.4%)だった。連結営業利益の内訳は、ソーシャルサービス事業が129百万円、受託開発事業が95百万円、インキュベーション事業が524百万円の営業損失、調整額がマイナス284百万円となっている。インキュベーション事業は、2016年12月期において先行費用や株式の評価損が売上原価に計上されたため、損失計上となっている。
(2) セグメント別の収益モデル
ソーシャルサービス事業は、Facebook、Twitter、LINE@、Instagram、ブログなどソーシャルメディア活用の企画提案、投稿モニタリングやシェアリングエコノミー企業からのサービス利用収入によって構成されており、積み上げ型で比較的安定的と言える。また、市場拡大につれ収益は自然増となるため、リスクは低いと言える。収益貢献までの期間は、短期〜中期(1〜5年)。受託開発事業もソーシャルサービス事業と同様に安定的な推移が見込める。一方で、インキュベーション事業はマーケット環境や市況動向などに左右されやすい。グループ内インキュベーションは、サービス利用者からの手数料収入が収益源で、事業会社型となっている。リスクは低いものから中程度まで幅広く同社がコントロール、収益貢献までは中長期(3年〜)を想定している。一方、グループ外インキュベーションの収益はキャピタルゲインで、株式売却時のスポット型となっており、この業績予測は難しい。リスクは中程度の位置付けだが、育成支援を行っているため、ベンチャーキャピタルとの比較ではリスクは低いと同社は考えている。収益貢献までの期間は長期(5年〜)を想定している。
(執筆:フィスコアナリスト 廣田 重徳)
<MW>
1. 会社沿革
ガイアックス<3775>は、広告収入モデルによるコミュニティサイトの企画運営を主な目的として1999年3月に有限会社ガイアックスとして設立後、1999年5月に株式会社ガイアックスへ組織変更された。創業当初は、ブログSNSサービス運用等のソーシャルメディア領域のBtoC事業を行っていたが、BtoCで培った運用ノウハウをもとに2003年から運用代行サービスの法人クライアントへの提供に事業内容を変更した。2005年7月、名古屋証券取引所セントレックスへの上場を果たした後、連結子会社の設立やM&Aを重ね、現在では19社の連結子会社を抱える企業グループとなっている。
2. 事業概要
同社は、「人と人をつなげる - Empowering the people to connect.」をミッションに掲げ、ソーシャルメディア及びシェアリングエコノミーを事業領域に事業を展開している。事業セグメントは、ソーシャルサービス事業、受託開発事業、インキュベーション事業の3つ。同社では、ソーシャルサービス事業と受託開発事業を安定成長事業と、インキュベーション事業を戦略的成長事業と位置付けている。
(1) ソーシャルサービス事業
ソーシャルサービス事業では、ソーシャルメディアの総合サービス企業として、SNS・ブログ・ソーシャルメディア、Webマーケティング、デジタルコンテンツサービス等の企画・開発・運営サービスを、主に法人クライアントに提供している。主な業務は、投稿モニタリング及びカスタマーサポート業務。領域別の主な業務は以下のとおり。
a) ソーシャルメディア領域
1) コミュニティパッケージ、企業向けブログ、活性化サービス:Facebook、Twitter、LINE@、Instagram、ブログ等、ソーシャルメディア活用の企画提案やシステム構築・運営、多店舗向けのブログシステムを提供。
2) 投稿モニタリング、ソーシャルリスニング:ソーシャルメディア上の声の収集、調査分析を行うソーシャルリスニングや、安心安全なサイト運営のための投稿モニタリングを提供。
3) 学校向けネットいじめ対策:教育委員会や私立学校など学校向けに、ネットいじめ・インターネット上の個人情報流出等、学校生活上の課題への対策として学校裏サイトのパトロールやソーシャルメディアリテラシー講座を提供。
b) ソーシャルアプリ領域
1) カスタマーサポート:ソーシャルゲーム等のソーシャルアプリに対するカスタマーサポート代行を24時間・多言語体制で、独自開発のエスカレーションツールを利用し提供。
c) 企業内SNS領域
1) 社内SNS、グループウェア:企業の社内コミュニケーションをサポートするクラウド型社内SNS、内定者SNS、育児休業者SNSやクラウド型グループウェアを提供。
d) マーケティング支援領域
1) ソーシャルメディアマーケティング、Webマーケティング:ソーシャルメディアやブログ等を活用したマーケティングのコンサル業務、Webサイトの構築・運営。
2) デジタルコンテンツサービス:スマートフォン、PC、モバイル端末向けに、ゲーム・占い・レシピ・スタンプなど様々なデジタルコンテンツを制作・提供。
ソーシャルサービス事業の柱となる投稿モニタリングとカスタマーサポート業務は、アディッシュ(株)を中心に展開している。アディッシュの2016年12月期の売上高は1,530百万円(連結売上高比26.7%)、経常利益は9百万円、当期純利益は7百万円となっている。フィリピンにある連結子会社adish International Corporationは、投稿モニタリング及びカスタマーサポート業務の英語及び多言語対応を提供している。主にソーシャルサービス事業に属する連結子会社は次のとおり。
(2) 受託開発事業
受託開発事業は、Webシステムに関するコンサルティングからパッケージソリューション、システムインテグレーション、保守・運用をワンストップで提供しており、コミュニティサイトの開発受託も含め、(株)電縁及びアイ・オーシステムインテグレーション(株)が主に行っている。電縁の2016年12月期の売上高は2,323百万円(連結売上高比40.6%)、経常利益は79百万円、当期純利益は58百万円となっている。主要顧客は伊藤忠テクノソリューションズ<4739>で、2016年12月期の受託開発事業の外部顧客への売上高の約半分を占めている。主に受託開発事業に属する連結子会社は次のとおり。
(3) インキュベーション事業
インキュベーション事業は、同社グループ事業との親和性が高い企業やシェアリングエコノミー関連企業等に対し投資・育成支援を行うグループ外インキュベーションと、グループ内での新規事業開発等を行うグループ内インキュベーションから構成される。グループ外インキュベーションには同社を卒業した社員が創業した企業への投資も含まれる。主にインキュベーション事業に属する連結子会社は次のとおり。なお、(株)テンエックスラボと(株)Tadakuについては、2016年12月に関係会社株式評価損を特別損失として計上している。
他にグループ内インキュベーションとして、地元の人と交流ができる地域体験予約サイト「TABICA」を運営しているほか、シェア事業者やフィンテック事業者にAPI型本人確認サービスを提供する「TRUST DOCK」、Mirai Institute(株)との資本業務提携によりシェアオフィス事業「GRID」を展開している。
グループ外インキュベーションにおける主な投資先は次のとおり。
3. 収益構造
(1) 売上高・営業利益構成
2016年12月期のセグメント別連結売上高は、ソーシャルサービス事業が2,738百万円(連結売上高に占める割合は46.9%)、受託開発事業が2,545百万円(同43.7%)、インキュベーション事業が545百万円(同9.4%)だった。連結営業利益の内訳は、ソーシャルサービス事業が129百万円、受託開発事業が95百万円、インキュベーション事業が524百万円の営業損失、調整額がマイナス284百万円となっている。インキュベーション事業は、2016年12月期において先行費用や株式の評価損が売上原価に計上されたため、損失計上となっている。
(2) セグメント別の収益モデル
ソーシャルサービス事業は、Facebook、Twitter、LINE@、Instagram、ブログなどソーシャルメディア活用の企画提案、投稿モニタリングやシェアリングエコノミー企業からのサービス利用収入によって構成されており、積み上げ型で比較的安定的と言える。また、市場拡大につれ収益は自然増となるため、リスクは低いと言える。収益貢献までの期間は、短期〜中期(1〜5年)。受託開発事業もソーシャルサービス事業と同様に安定的な推移が見込める。一方で、インキュベーション事業はマーケット環境や市況動向などに左右されやすい。グループ内インキュベーションは、サービス利用者からの手数料収入が収益源で、事業会社型となっている。リスクは低いものから中程度まで幅広く同社がコントロール、収益貢献までは中長期(3年〜)を想定している。一方、グループ外インキュベーションの収益はキャピタルゲインで、株式売却時のスポット型となっており、この業績予測は難しい。リスクは中程度の位置付けだが、育成支援を行っているため、ベンチャーキャピタルとの比較ではリスクは低いと同社は考えている。収益貢献までの期間は長期(5年〜)を想定している。
(執筆:フィスコアナリスト 廣田 重徳)
<MW>