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シノケンG Research Memo(2):不動産販売事業をコア事業に、M&Aを活用しながら周辺事業領域を拡大中(1)

注目トピックス 日本株
■会社概要

1. 会社沿革
シノケングループ<8909>は、現代表取締役社長の篠原英明(しのはらひであき)氏が25歳だった1990年に(株)シノハラ建設システムとして福岡市に設立された。「土地を持たない一般的なサラリーマン層に土地付き木造アパートを販売する」という従来のアパート経営の常識を覆すビジネスモデルで事業を開始し、2001年に東京に進出。2002年にはJASDAQ上場を果たした。

土地付きアパートの投資を検討するサラリーマン層は、投資用ワンルームマンションも投資の対象になるため、顧客を取りこぼすことがないよう、2003年に東京で中堅規模の投資用マンションデベロッパーであった(株)日商ハーモニー(現(株)シノケンハーモニー)を約2.8億円で買収し、投資用マンションの開発、販売に進出した。2005年11月に元一級建築士による耐震偽装事件が社会問題化した際、同社が手掛けたマンションにもこの元一級建築士が関わった物件が7件あったが、同社は該当物件に関し総額30億円の補償でオーナーから買戻すことを即断。この影響で2006年3月期は約6億円の最終赤字となったが、素早い対応や危機管理能力が同社の信用をむしろ高める結果となり(返金を受けたオーナーの多くはその資金を元手に新たに同社の物件を購入したという)、翌期の業績においてV字回復を果たしている。

2007年10月には商号を(株)シノケングループに変更するとともに、シノケングループを純粋持株会社とするホールディング制に移行した。2008年秋のリーマンショックにより、国内不動産市場は大きなダメージを受け、同社の2009年3月期の業績も41.4億円の最終赤字を計上し、財政状況が一時的に悪化したが、金融及び不動産市場が落着きを取り戻したことを受け2010年12月期には黒字転換を果たし、以降は投資用不動産市場の拡大を背景に右肩上がりの成長を続けている。また、成長の過程でM&Aを活用しながら、介護事業やゼネコン事業など周辺事業へ事業領域を拡大している。

2. 事業概要
同社は2017年12月期より、グループ経営における意思決定及び戦略実行の迅速化を図り、より適切な経営管理を行うための組織変更を実施、それに伴い報告セグメントを「不動産販売事業」「不動産管理関連事業」「ゼネコン事業」「エネルギー事業」「介護事業」と「その他」に変更している。主な変更点は、従来の「アパート販売事業」と「マンション販売事業」を統合して「不動産販売事業」に、「不動産賃貸管理事業」と「金融・保証関連事業」を統合して「不動産管理関連事業」とした。また、従来「その他の事業」に含まれていたLPガスの小売販売事業を2017年12月期より新たに開始した電力小売販売事業と合わせて「エネルギー事業」として独立させている。「その他」については主に海外事業が含まれている。

また、ビジネスモデルでは販売時に収益を獲得するフロービジネスと毎月安定して収益が得られるストックビジネスとに大別され、フロービジネスには「不動産販売事業」「ゼネコン事業」が、ストックビジネスには「不動産管理関連事業」「介護事業」「エネルギー事業」が該当することになる。コア事業である「不動産販売事業」が拡大すれば、販売物件(マンション)の建築工事を請け負う「ゼネコン事業」が伸びるほか、賃貸管理・分譲マンション管理や各種保証サービス、LPガスや電力の小売販売といったストックビジネスの契約件数が積み上がり、収益が拡大する格好となる。不動産販売件数が減少した場合でも、関連するストックビジネスは積み上がっていくため、収益基盤は年々安定性が増していくことになる。

(1) 不動産販売事業
不動産販売事業は、子会社の(株)シノケンハーモニー及び(株)シノケンプロデュースで展開している。このうちアパート販売については、対象とする販売エリアを賃貸需要の高い5大都市圏(東京圏、福岡、名古屋、関西(京阪神)、仙台)に限定しており、その中でも人口増加率の高いエリアで、かつ駅から徒歩10分圏内を用地物件の仕入れを行ううえでの条件としている。利便性が高く人口が増加しているエリアは需要も多く、入居率が高くなるためだ。また、アパートは単身者やDINKSを対象とし、間取りは1K〜1LDKを標準としている。人口の減少傾向が続いているものの、単身世帯数は逆に増加傾向にあり、単身世帯向けアパートの需要は今後も堅調に推移することが予想されるためである。

ビジネスモデルとしては、同社でアパート用地を一旦取得し、木造アパートを建築した上で、土地・建物をセットで個人投資家等に販売する。用地を取得した段階で投資家向けの営業を開始する。受注から引渡し(売上計上)までの事業期間はおおむね6〜8ヶ月となっている。販売価格は土地・建物を合わせて5,000万円から1億円前後となる。販売価格のうち土地部分についてはほぼ仕入価格と同水準とし、アパート建築部分で利益を得るモデルとなる。このため、土地価格の高い東京エリアは販売価格が高くなるものの、利益率としては逆に低くなる。また、アパートは1棟当たりおおむね4〜8戸で、一部空室が発生しても投資家は賃貸キャッシュフロー上、致命的な打撃を受けないため、同社では、サブリース(家賃保証)は行っていないが、希望があれば対応するケースもある。購入者は30〜40代の一般的な会社員・公務員が中心で、年収も1,000万円未満の購入者が約70%を占める。このため、金利が上昇する局面では金融機関からの融資条件が厳しくなるため、需要が冷え込むリスクがある点に留意する必要がある。

一方、マンション販売では東京エリア(東京と一部、神奈川)を中心に一部、名古屋において投資用マンションを企画、開発し、個人投資家等に区分販売している。平均販売価格は2〜3千万円台とアパートに比べ低いため借入金額も少なくて済み、購入者の心理的負担が小さい導入商品的な位置付けとなっている。

原則、住戸のタイプはワンルームで専有面積は20〜30平方メートルの単身世帯者向けデザイナーズマンションとなる。だが、条例によるワンルームマンション規制(区によって様々な規制がある)で、40〜50平方メートル、あるいはそれ以上の広さの住戸をつくり込む場合もある。未婚化、晩婚化により単身世帯やDINKS世帯が増加していることもあり、2013年1月に実需用マンション販売チームを新設し、広めの住戸については投資用だけでなく実需用としての販売も行っている(販売戸数全体に占める比率は1割に満たない程度)。

また、2015年9月にはマンションの開発販売を行う(株)プロパスト<3236>と資本・業務提携を行い(持分法適用関連会社、出資比率19.4%)、DINKS向けの住戸部分の販売や用地仕入れ情報の相互紹介などで協業しているほか、2014年2月に子会社化したゼネコンの(株)小川建設では、シノケンが開発するマンションの約70%を施工及びプロパストが開発する大半を施工するなど、グループ会社間でのシナジーを生かして収益力を高めている。

アパートと異なり、マンションについては原則サブリースにより家賃保証を行っている。マンションは、1戸のみの購入のため入居者の入れ替わりにより空室が発生すると一時的に家賃収入がなくなり、投資家にとって投資リスクが高くなるためだ。サブリース賃料は2年ごとに見直しを行っており、同社に逆ざやリスクは発生しない仕組みとなっている。

(2) 不動産管理関連事業
不動産管理関連事業のうち賃貸管理については、(株)シノケンファシリティーズで展開している。アパートやマンション等の賃貸住宅の入居者募集、家賃回収及びメンテナンス等、賃貸住宅経営を全面的にサポートしている。また、管理物件に関して売買が発生し、売買仲介に関与できた場合、売買仲介手数料は当該セグメントに計上される。2017年12月期末の賃貸管理戸数27,358戸のほとんどは、同社グループが開発したアパート、マンションとなるが、他社が開発した物件の管理も若干程度行っている。平均入居率は2017年12月末時点で97.9%(自社開発物件)となっており、全国平均の80%台や競合他社と比較しても数ポイント高い水準で推移している。前述したように同社の物件は需要が旺盛な市街地の駅近に立地していることや、単身世帯、DINKS向けに特化していることが入居率の高さにつながっていると見られる。

そのほか、(株)シノケンアメニティが東京エリアで、(有)マンションライフが名古屋エリアで分譲マンション管理(管理組合からの受託)、ビル管理を展開しており、清掃や設備点検などを行っている。分譲マンション管理戸数は2017年12月期末で5,361戸となっている。

一方、家賃等の滞納が生じた場合に、滞納家賃等を立替える家賃等の債務保証業務を(株)シノケンコミュニケーションズで行っている。2017年12月期末の保証件数は21,600件、保証額は1,327百万円と着実に積み上がっている。新規の入居者には必ず加入してもらう契約となっており、アパート、マンションの累積販売数に連動して増加していくことになる。保証件数が賃貸管理戸数よりも少ないのは、約15年前に当該事業を開始する以前の入居者がまだ一定数残っていることや空室が一定数あるためだが、時間の経過とともに賃貸管理戸数に近付くものと考えられる。なお、延滞率は2017年12月期で0.69%と非常に低いため、安定した収益を獲得できる事業となっている。

また、50%を出資する子会社のジック少額短期保険(株)で、同社グループが販売したアパート、マンションの入居者向けに家財保険を中心とした「生活安心総合保険」を販売している。同保険では、日本初の賃貸人を被保険者とする「孤立死原状回復費用保険」のほか「ストーカー対策費用保険」「ホームヘルパー費用保険」等のユニークなオプション(特約)も付いている。なかでも2014年7月に販売された「孤立死原状回復費用保険」は、独居老人の孤立死が社会問題化するなかでニーズの高い保険商品として注目されている。従来の保険では孤立死した被保険者の法定相続人しか保険金を請求できず、身寄りがない場合には賃貸住宅オーナーが原状回復のための費用を全額負担せざるを得ず、費用負担が発生していた。「孤立死原状回復費用保険」(特約)では、賃貸住宅オーナーを被保険者とすることでこうした問題をクリアしている。高齢単身者にとってもこの特約に加入することで賃貸住宅への入居が容易となるため、社会的意義の高い保険と言える。一方、オーナー向けにも2015年9月より「賃貸経営サポート保険」の販売を開始している。「事故物件」となった場合の原状回復費用や家賃収入等の損失分を補償するサービスで、安心してアパート経営投資ができる環境を整備していることも同社の強みとなっている。さらに、少額短期保険会社としては国内初の「民泊対応型保険」も開発。民泊利用によって家財に生じた損害だけでなく、民泊利用者が物件オーナーまたは第三者に対して、民泊利用の際の部屋の使用・管理に起因して損害を賠償しなければならない場合における損害賠償責任も保証できる仕組みを整えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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