マーケットE Research Memo(4):仕入基盤拡充、販売力強化、レンタルビジネスの本格稼働に重点的に取り組む
[18/04/06]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略と進捗状況
1. 中長期的な成長戦略の全体像
マーケットエンタープライズ<3135>は2017年6月期と2018年6月期の2年間を、中長期的な飛躍に向けた戦略的投資の実行に充てるという方針を表明している。その大枠として同社は、短期、中期、長期の3つの時間軸において、それぞれ、仕入基盤の拡充、販売力の強化、レンタルビジネスの本格稼働に向けた布石、の3点を掲げている。
上記の短期、中期、長期という時間軸の表現は、その実体に照らすと若干誤解を招く可能性があるだろう。仕入れの拡充は2018年6月期においても実行されているが長期にわたる施策であり、1つの区切りがつくまでにはあと数年を要する。一方、長期施策とされるレンタルビジネスの本格稼働への取り組みも今現在行われている。これの完成は早ければ来期中、遅くとも2020年6月期中にはスタートするというスピード感で作業が進められている。
同社は2017年6月期において、MVNO事業への進出、Amazon買取サービスの受託、越境ECなど、新たな挑戦にも積極的に取り組んだ。越境ECは外部環境の変化もあってアクセルを踏むのを止める判断をしたほか、MVNO事業も競争環境が当初想定したよりも厳しい現実を踏まえて路線を転換した。反対に、農機具事業は想定を超えるスピードで事業が拡大しており、農機具事業での経験を踏まえて新たに中古建機事業の開始へとつながっている。また、Amazon買取サービスは当初の期待値が高すぎたこともあり、計画よりもスローな出だしとなったが、2018年6月期にヤフーと提携したことで、このビジネスの位置付けが大きく変わろうとしている。さらに、2018年6月期第2四半期においては新たに2件の資本業務提携を行った。
同社の様々な取り組みは一見すると、それぞれが独立しているようにも見えるがそうではない。むしろ、他の施策とどうつながるか、どんなシナジーを生みだせるか、という意識が常に働いていて、その上で個々の施策が実行されている。したがって、ある一定の段階に達した時点で、それらの事業が一気につながってシナジー効果により収益がジャンプアップする可能性がある。弊社ではここ1、2年の同社の取り組み・施策をみて、同社の中長期的成長の実現性について確信を深めつつある。同社の持つ潜在力を最大化するためには、まだまだ足りない部分もあり、時間も資金もさらに必要となると弊社ではみているが、現在進めている施策が一旦の完成を見る2020年6月〜2021年6月の時点では、同社の姿は現在とは大きく変わっている可能性があると弊社ではみている。
全国に展開する買取拠点の存在が決め手となって、Amazonに続きヤフーとも買取サービス事業で提携
2. 仕入基盤の拡充
(1) リユースセンターの全国展開の推進
同社が進める仕入基盤の拡充策の中で、最もベースとなるのは買取拠点であるリユースセンターの全国展開だ。2018年6月期第2四半期においては西東京(2017年9月)と札幌(2017年12月)の2ヶ所を新規にオープンし、2017年12月末時点で10ヶ所のリユースセンターを擁するに至っている。
同社の「ネット型リユース企業」というビジネスモデルに照らして考えたとき、リユースセンターのような物理的な拠点の存在は経営上のマイナスではないかという見方をする向きもあるだろう。しかしながら、同社の取扱品目は幅広く、大型のもの(家具、農機具など)も多数含まれることを考えると、買取拠点は不可欠だ。また、物理的な買取拠点の存在はSEO対策上も有利であるといった新しい展開が現れているほか、何よりも全国各地に拠点を有することが同社の“バリュー(価値)”に結び付いているという現実がある。詳細は後述するが、買取拠点の存在が、Amazon及びヤフーという2大EC事業者が同社との業務提携に踏み切った大きな理由だと弊社ではみている。
同社のリユースセンターはあくまで買取拠点であって販売拠点ではないため、駅近の商業地域ではなく、地価(賃借料)の低さを最優先に立地を決めている。建屋も“店舗”ではなく“倉庫”であるため投資額が相対的に安価だ。リユースセンターの設置は、同社の規模にとっては決して軽くはないが、投資額自体は1拠点当たり数千万円単位のものであり、リスクは低いと弊社では考えている。
同社はリユースセンターの当面の区切りとして全国20ヶ所体制の構築を掲げている。これは政令指定都市全20市に最低1ヶ所ずつ設置するという構想から来ている。当然、20ヶ所というのは通過点に過ぎない。20ヶ所の達成時期は、これまでの年間3ヶ所の出店ペースから判断して、2021年6月期になると推測している。
(2) ヤフーとの提携
当第2四半期の進捗事項の中で弊社が最も注目するのがヤフーとの提携だ。ヤフーは『カウマエニーク』というサービスブランドで買取サービスを行っているが、そのバックヤード業務を同社が担うというのが提携内容だ。同社はAmazonとの間でも同様に買取サービスの業務代行を行っており、日本における2つの代表的なECマーケットプレイス事業者と買取サービス業務で提携したことになる。
同社がこれら大手事業者との間で買取サービスの業務代行契約に至った背景には、同社の2つの要素が評価されたためとみられる。1つはEC買取のインフラ、ノウハウを有していることであり、もう1つは全国対応を行っていることだ。この全国対応という中には、物理的な買取拠点であるリユースセンターの存在が大きな評価ポイントになったと弊社ではみている。
買取サービスのバックヤード代行業務は、現時点では同社の収益に大きなインパクトはないが、中長期的なポテンシャルは大きいと弊社では考えている。ECの成長性を維持あるいは加速させるためには、消耗品以外については現在消費者が保有しているものをどうするかが極めて重要になってくると考えられるためだ。例えばシュッピン<3179>は高級カメラや高級時計という限定された領域ではあるが、新品の販売を伸ばす触媒として、中古品の買取・販売を有効に生かすビジネスモデルを確立し、成長を続けている。同様のことが他の商材でも不可欠となる時代が到来する可能性があると弊社では考えており、買取のシステム、ノウハウ、拠点をすべて備えた同社のアドバンテージは非常に大きい。今後、ここが同社の重要な評価軸として浮かび上がってくる可能性があると弊社では考えている。
(3) 農機具事業の現状と建機事業への参入
リユースセンターへの投資が顕著に効果を発揮した事例として農機具事業がある。同社は2017年6月期から本格的に参入したが、これまでのところ順調に拡大し、2018年6月期第2四半期の取扱実績は1億円を突破した。これは同社の想定よりも約3割早いペースとみられる。業界に先駆けて「自動査定フォーム」を導入したことで検索エンジン上位にランキングし、また他事業者と比べて競争力のある買取価格を提示できているため、買取成約数が順調に伸びたことが計画を上回る業容拡大につながっているもようだ。
同社は農機具事業の成功体験と、他社との資本業務提携によって、建設機械の取扱いを開始することを決定した。これまでも小型のパワーショベルなどが農機具とともに農家から買取依頼を受けることが多く、同社は中古建機にも一定の需要がありそうだという手応えを得ていた。そうしたなかで中古建機販売プラットフォーム「ALLSTOCKER」を運営するSORABITO(株)と事業提携に至った。
提携の目的及び両社の役割分担は明確で、同社は仕入基盤を活用して中古建機の買取りを進め、SORABITOの専門マーケットプレイスを通じて国内外のユーザーに販売していくことになる。国内の建機市場ではリースが利用されることが多いため、集まってきた中古建機の販売ルートを確保できないと本格展開には踏み切れなかった。しかし「ALLSTOCKER」では海外のバイヤーの利用者が多数を占めており、その問題解決の見通しが立った。農機具と合わせて建設機械がどのような成長曲線を見せるか、注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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1. 中長期的な成長戦略の全体像
マーケットエンタープライズ<3135>は2017年6月期と2018年6月期の2年間を、中長期的な飛躍に向けた戦略的投資の実行に充てるという方針を表明している。その大枠として同社は、短期、中期、長期の3つの時間軸において、それぞれ、仕入基盤の拡充、販売力の強化、レンタルビジネスの本格稼働に向けた布石、の3点を掲げている。
上記の短期、中期、長期という時間軸の表現は、その実体に照らすと若干誤解を招く可能性があるだろう。仕入れの拡充は2018年6月期においても実行されているが長期にわたる施策であり、1つの区切りがつくまでにはあと数年を要する。一方、長期施策とされるレンタルビジネスの本格稼働への取り組みも今現在行われている。これの完成は早ければ来期中、遅くとも2020年6月期中にはスタートするというスピード感で作業が進められている。
同社は2017年6月期において、MVNO事業への進出、Amazon買取サービスの受託、越境ECなど、新たな挑戦にも積極的に取り組んだ。越境ECは外部環境の変化もあってアクセルを踏むのを止める判断をしたほか、MVNO事業も競争環境が当初想定したよりも厳しい現実を踏まえて路線を転換した。反対に、農機具事業は想定を超えるスピードで事業が拡大しており、農機具事業での経験を踏まえて新たに中古建機事業の開始へとつながっている。また、Amazon買取サービスは当初の期待値が高すぎたこともあり、計画よりもスローな出だしとなったが、2018年6月期にヤフーと提携したことで、このビジネスの位置付けが大きく変わろうとしている。さらに、2018年6月期第2四半期においては新たに2件の資本業務提携を行った。
同社の様々な取り組みは一見すると、それぞれが独立しているようにも見えるがそうではない。むしろ、他の施策とどうつながるか、どんなシナジーを生みだせるか、という意識が常に働いていて、その上で個々の施策が実行されている。したがって、ある一定の段階に達した時点で、それらの事業が一気につながってシナジー効果により収益がジャンプアップする可能性がある。弊社ではここ1、2年の同社の取り組み・施策をみて、同社の中長期的成長の実現性について確信を深めつつある。同社の持つ潜在力を最大化するためには、まだまだ足りない部分もあり、時間も資金もさらに必要となると弊社ではみているが、現在進めている施策が一旦の完成を見る2020年6月〜2021年6月の時点では、同社の姿は現在とは大きく変わっている可能性があると弊社ではみている。
全国に展開する買取拠点の存在が決め手となって、Amazonに続きヤフーとも買取サービス事業で提携
2. 仕入基盤の拡充
(1) リユースセンターの全国展開の推進
同社が進める仕入基盤の拡充策の中で、最もベースとなるのは買取拠点であるリユースセンターの全国展開だ。2018年6月期第2四半期においては西東京(2017年9月)と札幌(2017年12月)の2ヶ所を新規にオープンし、2017年12月末時点で10ヶ所のリユースセンターを擁するに至っている。
同社の「ネット型リユース企業」というビジネスモデルに照らして考えたとき、リユースセンターのような物理的な拠点の存在は経営上のマイナスではないかという見方をする向きもあるだろう。しかしながら、同社の取扱品目は幅広く、大型のもの(家具、農機具など)も多数含まれることを考えると、買取拠点は不可欠だ。また、物理的な買取拠点の存在はSEO対策上も有利であるといった新しい展開が現れているほか、何よりも全国各地に拠点を有することが同社の“バリュー(価値)”に結び付いているという現実がある。詳細は後述するが、買取拠点の存在が、Amazon及びヤフーという2大EC事業者が同社との業務提携に踏み切った大きな理由だと弊社ではみている。
同社のリユースセンターはあくまで買取拠点であって販売拠点ではないため、駅近の商業地域ではなく、地価(賃借料)の低さを最優先に立地を決めている。建屋も“店舗”ではなく“倉庫”であるため投資額が相対的に安価だ。リユースセンターの設置は、同社の規模にとっては決して軽くはないが、投資額自体は1拠点当たり数千万円単位のものであり、リスクは低いと弊社では考えている。
同社はリユースセンターの当面の区切りとして全国20ヶ所体制の構築を掲げている。これは政令指定都市全20市に最低1ヶ所ずつ設置するという構想から来ている。当然、20ヶ所というのは通過点に過ぎない。20ヶ所の達成時期は、これまでの年間3ヶ所の出店ペースから判断して、2021年6月期になると推測している。
(2) ヤフーとの提携
当第2四半期の進捗事項の中で弊社が最も注目するのがヤフーとの提携だ。ヤフーは『カウマエニーク』というサービスブランドで買取サービスを行っているが、そのバックヤード業務を同社が担うというのが提携内容だ。同社はAmazonとの間でも同様に買取サービスの業務代行を行っており、日本における2つの代表的なECマーケットプレイス事業者と買取サービス業務で提携したことになる。
同社がこれら大手事業者との間で買取サービスの業務代行契約に至った背景には、同社の2つの要素が評価されたためとみられる。1つはEC買取のインフラ、ノウハウを有していることであり、もう1つは全国対応を行っていることだ。この全国対応という中には、物理的な買取拠点であるリユースセンターの存在が大きな評価ポイントになったと弊社ではみている。
買取サービスのバックヤード代行業務は、現時点では同社の収益に大きなインパクトはないが、中長期的なポテンシャルは大きいと弊社では考えている。ECの成長性を維持あるいは加速させるためには、消耗品以外については現在消費者が保有しているものをどうするかが極めて重要になってくると考えられるためだ。例えばシュッピン<3179>は高級カメラや高級時計という限定された領域ではあるが、新品の販売を伸ばす触媒として、中古品の買取・販売を有効に生かすビジネスモデルを確立し、成長を続けている。同様のことが他の商材でも不可欠となる時代が到来する可能性があると弊社では考えており、買取のシステム、ノウハウ、拠点をすべて備えた同社のアドバンテージは非常に大きい。今後、ここが同社の重要な評価軸として浮かび上がってくる可能性があると弊社では考えている。
(3) 農機具事業の現状と建機事業への参入
リユースセンターへの投資が顕著に効果を発揮した事例として農機具事業がある。同社は2017年6月期から本格的に参入したが、これまでのところ順調に拡大し、2018年6月期第2四半期の取扱実績は1億円を突破した。これは同社の想定よりも約3割早いペースとみられる。業界に先駆けて「自動査定フォーム」を導入したことで検索エンジン上位にランキングし、また他事業者と比べて競争力のある買取価格を提示できているため、買取成約数が順調に伸びたことが計画を上回る業容拡大につながっているもようだ。
同社は農機具事業の成功体験と、他社との資本業務提携によって、建設機械の取扱いを開始することを決定した。これまでも小型のパワーショベルなどが農機具とともに農家から買取依頼を受けることが多く、同社は中古建機にも一定の需要がありそうだという手応えを得ていた。そうしたなかで中古建機販売プラットフォーム「ALLSTOCKER」を運営するSORABITO(株)と事業提携に至った。
提携の目的及び両社の役割分担は明確で、同社は仕入基盤を活用して中古建機の買取りを進め、SORABITOの専門マーケットプレイスを通じて国内外のユーザーに販売していくことになる。国内の建機市場ではリースが利用されることが多いため、集まってきた中古建機の販売ルートを確保できないと本格展開には踏み切れなかった。しかし「ALLSTOCKER」では海外のバイヤーの利用者が多数を占めており、その問題解決の見通しが立った。農機具と合わせて建設機械がどのような成長曲線を見せるか、注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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